弦巻家の彼は普通になりたい!   作:オオル

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今回で千歳編は終了です!長いですが最後まで見てね!あと2日連続投稿すごくないですか!?

それではどうぞ!

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誤字脱字は後日訂正します


弦巻シンは誰かの真似がしたくなった

 やって来ました体育祭、空は雲ひとつない晴天、絶好の体育祭日和とはまさにこの日のことだな

 

「生徒代表、2年亜滝光晴」

「はい!」

 

 おお、開会式の選手宣誓は亜滝先輩だったのか、ならちょうどいいや右から入れて左から出す感覚で聞き流せばいっか

 

「続きまして校長先生挨拶」

 

 これまた聞き流して

 

「ただいまより競技を始めまーす!」

「実況はアタシ羽丘生徒会長氷川日菜と!」

「花咲生徒会長…白金燐子です」

 

 またまた実況はこの2人か、球技大会を思い出すな!

 

「よし!赤組優勝目指して頑張るぞー!」

『おー!』

「優勝して焼肉ゲットだぜ!」

『おー!』

 

 蒼汰が高らかにそう叫ぶと赤組のみんなは返事をした。

 

 今回も秋月先生が優勝したら焼肉を奢ってくれるらしい!なんせ俺が入院していた時に決まったらしいから俺はいまさっき知った!

 

 ちなみに秋月先生は俺達紅組側の先生らしい、だからこの条件がついたってわけさ

 

「頑張ろうねシン!」

「おう!優勝したら一緒に焼肉行こうな!」

「うん!」

 

 クソ可愛ええー!沙綾と焼肉か!一緒に食べられるなんてなんと嬉しいことやら

 

「もちろんその隣は私だよね?」

「おたえ…あー勝手にしろ」

 

 しかし勝手に俺の彼女って言うのはなしな

 

「あれ?美咲達は?」

「みーくんとこころんは50メートル走に出るよ!」

「お、初っ端からこころ達か」

 

 聞いての通り体育祭は始まってしまった。

 

 土曜日俺は白鷺家の部屋を訪れたが千歳ちゃんは実家の方にいると言われた。

 

 何も出来なかった、金曜日の後俺はやれることをしたつもりだったけど本当の彼女を知った途端動けなくなってしまった。

 

「位置について…よーい、どん!」

 

 何も出来ないまま今日を迎え俺は体育祭に参加している。

 

 こんな気持ちを表に出してしまうとまたみんなに心配をかけてしまう。だから俺は隠し通してやり過ごさないと…

 

「シーン!!」

「ぐはっ!」

「こころちゃんゴールと同時にシン君にダイブだー!」

「羨ましい…」ボソ

 

 燐子さんの羨ましいって多分別の意味だろ!?

 

「てかこころ!?いきなり抱きつくな!」

「シン!あたし1位よ!褒めてくれるかしら!」

「ッ!」

 

 褒めて欲しい、か…

 

「私凄くないですか!?先輩!」

 

 千歳の笑った顔が脳裏に浮かぶ

 

 いやいや今はこころだ、目の前のこころの対応をしなければ!

 

「よ、よーしよし、凄いなこころ」

「……お母様も天国から見てくれてるかしら」

「ッ!ああ、見てるさ絶対にな」

「ええ!」

 

 あの人のことだ、太陽のように笑いながら空から俺達を見守ってくれてるはずだ。

 

「ほら早く並んでこい、点数入らないだろ?」

「そうね!並んでくるわ!」

 

 こころはそう答えると1位の列に並びに行った。

 

 っと、こころの後は美咲か

 

「はあ、はあ、はあ……はあ、ミッシェルのバイトしててよかったー」

 

 美咲も1位か!初っ端からこころと美咲のダブル1位は結構点数でかいぞ!

 

 次は蘭?蘭のやつ50メートル走だったのか!

 

「Ranちゃん頑張ってー!」

「ここでも1位取るのよ!」

「さあ!あなたのメイド魂を見せて!」

「みんな来ないでって言ったよね!?」

 

 はは、バイト先の人達が応援に来てやんの、なんやかんやあそこで楽しくバイトできてんだな蘭のやつ

 

 そんな蘭はみんなの応援があったおかげで無事に1位をもぎ取っていた。

 

「ご指名、待ってるから」

「ッ!お、おう」

 

 俺に指を指して言う蘭はその後ボンと音が聞こえるぐらい赤くなったと思えばすぐ列に並びに行ったのであった。

 

「戸山香澄!頑張ります!」

「はい、頑張ってください」

 

 次は香澄かマイエンジェル!お前は本当に可愛いな!?

 

「ぐす、2位だったよー」

「……ドンマイ、香澄」

 

 宣言したのに2位だったなんてな!可哀想だがその表情がまた可愛いな!

 

「はあ、なんであたしがこんな目に、運動苦手なのに…!」

 

 有咲のやつ大丈夫か?スタートする前から顔色が悪いんですけど!?倒れたりしないよな…?

 

「い、市ヶ谷さん!?」

「おっと有咲ちゃんぶっ倒れちゃったねー、救護班!介護を!」

 

 担架に載せられ運ばれる有咲の顔を口から魂らしきものが抜けてて口がぽかーんと空いていたな、後でお見舞いにでも行くか

 

「続きまして2年の部に移ります」

 

 2年ってことは彩と千聖先輩が走るのか

 

「ふっ、私は白鷺千聖よ?50メートル走なんて1位を取って当然」

 

数秒後

 

「ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ、み、みんな早すぎよ」

「千聖ちゃん最下位!来年は頑張ってね!」

 

 見事に晒されてますやん!日菜さん容赦ないな

 

「ッ!な、なに見てるのよ?今回は本気を出してないだけなんだから!」

「はい!そうであります!」

 

 こうでも言わないとなんかまた言われそうだから適当に返事をしたがバレてませんよね!?

 

「次は彩か」

 

 それとずっと黙ってたが俺は今1人で観戦しているんだ。沙綾は次の競技だからもう集まってて香澄は一応敵チームだから観戦してないとして

 

 おたえに関してはわからん、後は誘ってないってところだ。

 

「千聖ちゃんは最下位だったけど私はそう上手くいかないよ?」

「1位を取ってシン君に頭を撫でてもらって…えへへ、ついでにキスも…」

「ダメだよシン君!ここは学校だから」

「……あの丸山さん?」

「でもシン君がどうしてもって言うなら…」

「丸山さん!?もう始まってますよ!?」

「えぇ!?う、うそだー!」

 

 もう最下位確定の彩だったが必死に泣きながら走る姿は言っちゃ悪いがなかなか様になっていた。

 

 可哀想だから後で頭でも撫でてやるか、本人が要求すればの話だけど

 

「私が華麗に1位を取ってしまう。これは運命だったんだね……ああ、儚い」

 

 1位のカードを掲げそう言う薫先輩を見て薫先輩らしいなと思ってしまうよ

 

「続いて3年の部に移ります」

 

 3年は誰も知り合いがいないから見なくていいかな

 

「ちょっと待ってよぉぉおおお!!」

「おお!?な、なんだ!?」

 

 後ろから物凄い音が聞こえてきたかと思えば!

 

「なんで私を無視するのー!」

「い、いやすみません忘れてました、後服引っ張らないでください伸びちゃいます!」

 

 ちなみにだが篠崎先輩の先輩が大きく揺れていて男子共はそれに釘付けになっていたそうだ。

 

「次は中学生の部」

「ッ!」

 

 急いで後ろを振り返ると千歳がスタートラインに立っていた。

 

「よーい、どん!」

 

 姉とは違い他の人達と圧倒的な差で見事に1位を独走していたが

 

「きゃっ!」

 

 途中で転けたようだ、後ろにいた人達にどんどん抜かされ気づけば最下位、近くにいる生徒も倒れてるんなら助けに行けよ

 

 俺は急いで千歳の元に近寄り声をかけた。

 

「大丈夫か千歳!立てるか?」

「ッ!私のことはもうほっといてください…!これぐらいどうってこと、ありませんから…」

 

 よろよろと立ち上がり最後まで走り切る千歳を俺はただ見届けることしかできなかった。

 

◆◆◆◆

 

「次はパン食い競走か」

 

 うちからはおたえと牛込さんと?同じ組にはモカとひまりがいたな

 

「よし、私の番だね!」

「おう、1位取ってこいよ?」

「1位とったらデートだね」

「うるさい黙れ!はよ行ってこい!?」

 

 赤組のテントにて待機してる中おたえがそう言うもんだから周りからなんか変な目で見られただろうが!

 

「決勝で会おうね!」

「決勝なんてない!それに俺の種目は違うしは同じチームだろ!」

「じゃあ」

「さっさと行けぇぇぇ!!!」

 

 おたえ1人の相手をするのがキツい!はよ行ってくれよ!?

 

 無事に合流できたおたえは他の生徒達と同じように待機していた。

 

「続きましてパン食い競走になります」

「位置について、よーい、どん!」

 

 1番目は牛込さんか

 

「ッ!チョココロネ!」

「牛込さん!?それ私のパンですよ!?」

 

 牛込さん自分のレーンのパンがチョココロネじゃないからって人の奪ってるし…流石牛込さんだ

 

「次はモカちゃんでーす」

 

 おお次はモカか、牛込さん以上にパンが好きな人は一体どんな行動をとるのか見ものだな

 

「山吹ベーカリーのパンは全部モカちゃんのだよね〜!」

「えぇ!?隣の人にパン奪われたんですけど!?こ、この場合どうなるの!?」

 

 も、モカー!お前何してんだよ!?他のレーンのパン全て奪い去るなんてどんだけパン好きなんだよ!

 

「次は私、絶対決勝に勝ち進むよ」

 

 おたえのやついつまで同じこと言ってんだよ…

 

「よーい、どん!」

 

 パン食い競走ってのは袋に入ったパンを取ってゴールすればいい、のにおたえのやつはパンを取ったあと口にほおりこんだのだ。

 

「口がすげー形になってんぞあいつ」

 

 それにとどまらずまさかの1位、いやすげー

 

「やって来ました私の番!シン君見ててね!」

 

 クラウチングスタートの構えがなんかエロく見えるの気の所為として…

 

「えい!あれ?えい!えい!……と、取れない!」

 

 腕を後ろで組んでぴょんぴょん飛び跳ねせるひまりだが上手くパンが取れないようだ、でもその取ろうとしている際に揺れる揺れる。

 

「……流石ひまり、俺を落とそうとしてやがるな」

「ち、違うからぁぁぁああ!」

 

 その後ひまりは無事にパンを回収できたが当然最下位であった。

 

「続きまして」

 

 もういい!2年生だろ?誰が出るんだ?

 

「練習は本番のように、本番は練習のように…!」

 

 さ、紗夜さん!?目がガチってる!

 

「目指すは焼きそばパン、カレーパン、菓子パンに興味なんてありません!」

 

 モカと同じことしようとしてる!?あんた練習で何を練習してたんだよ!?

 

 練習通りにやり遂げだ紗夜さんは2位とかなりの差をつけゴールイン、なんか食べ物って人を変えるんだな

 

「よっこらしょっとーみんな元気だねー姉さんちょっとついていけないよ」

 

 姉さん口調で言ってるつもりかもしれんがよっこらしょは違うだろ!それはもうおばさんとかの領域だろ!?

 

「リサ…!頑張ってくれ!」

 

 いつの間にか隣いた亜滝先輩が必死に応援していた。そのかいもありリサさんは何とかギリギリ1位をもぎ取った。

 

 蘭の件もあるけど応援って結構重要なんだって知らされちゃうよ

 

「これにて…」

 

 パン食い競走は終了、次はなんだったけ?

 

「続きまして障害物競走になります選手の皆さんのご入場です」

 

 確か沙綾が出るって言ってた、頼むぞ沙綾!お前の点数で赤組の未来が変わるかもしれない!

 

 赤組の未来はお前に託したぞ!

 

「うう、なんかプレッシャーを感じるんだけど…?」

「さ、沙綾ちゃん大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!それにしてもつぐみと同じ組なんて…絶対負けないからね!」

「こっちだって負けられない理由があるからね!絶対負けないよ!」

「ッ!つ、つぐってるねー」

 

 何か話してるけど何話してるんだろう?気になるけど聞きに行けないしな…後で聞くか

 

「よーい、どん!」

 

 障害物競走だがネットをくぐるやつとハードルと最後はバットでぐるぐる10回回るヤツだ。いや結構キツー

 

「おっとつぐみちゃんネットのコースが早い!ね?なんで早いの!」

「ひ、日菜さん!嫌がらせですか!?」

 

 走りながら良く答えれるもんだ。まあ日菜さんが言いたいことって

 

「胸がないからだろ」

「ッ!お前なんてことを!?」

 

 と言い聞こえた方に体を向けて言うと

 

「……あーアギトさんか」

「今なんて言ってた?つぐみに胸がないとか言ったか?おい殺すぞ雑種」

「あ、有翔…お前来てたのか!」

 

 自分の彼女の酷い言われように対してた有翔君げきおこじゃないですか!ちなみに有翔の言う雑種はみんなの知ってる雑種ではないぞ

 

「悪かった、お前の彼女すげー可愛い」

「ふん、わかればいいんだ」

「てかお前ら!目立つからテントの中来るな!」

 

 赤色の髪なんて派手なんだよ!あとどう見て同学年の人がスーツ着こなしてたりしたら目立つだろ!?

 

「1位はつぐみちゃん!続いて沙綾ちゃん!」

 

 あー沙綾負けちゃったか…ま、まあ俺が変に言いすぎたのが原因なのかもしれん、すまん

 

「師匠に私の全力をお届けします!」

 

 なんか向こう側でイヴが手を振ってる。そう来たら俺も答えるように大きく手を降らないと

 

「イヴちゃん1位!流石イヴちゃん!大和撫子とはまさに君のことだァ!」

「えっへんです!」

 

 それにしても日菜さん実況上手いよな…天才ってやつはなんでもこなせるって本当のようだ。

 

 てかイヴって白組だろ!?敵じゃん!何応援してんだよ俺は!?

 

「続きまして」

 

 もういいって!2年生だろ!?

 

「おっとここで登場花咲生徒会長白金燐子!」

「が、頑張ります!」

 

 と意気込んだ結果

 

「うぅ、は、吐きそうです…!」

「10回バットのダメージが思った以上に来たようだ!実況は私に任せて休憩してて!」

「そ、そうさせてもらいます」

「……まあドンマイ」

 

 なんて声をかければいいかわからなかったよ、てかここら何か言ってもあっちに聞こえないか

 

 2年はどうやら燐子先輩だけだったようだ。

 

 その次の中学生の部のあこと来たら

 

「とう!あた!……とう!あた!」

 

 ハードルを上手く飛び越えることが出来ずまさかの最下位、あこのことだから1位とか取ってふっふっふ我の力が(省く)って言ってそうなのにな

 

「ふ、ふん、今回は大目に見ておこうぞ、来年は我の闇の力で貴様らを根絶やしに、いやぶち」

 

 危ない言葉なのでカット!!どこで覚えたそんな言葉!?女子がましてや中学生が言ってはいけない言葉ですよ!

 

 さ、さっきからつっこんでばっかりだ…そろそろ休みたいところだよ

 

「続いて1000メートル走になります。選手の皆さんの入場です」

 

 次は1000メートル走か、いやいや鬼畜だろ、体育祭でまさか持久走とか…うちは蒼汰とはぐみが出てたな

 

「蒼汰!亜滝先輩なんてぶっ倒して1位取って見せろ!」

「ああ!巴も勝ったら後で頭撫でてやるからな!」

「ッ!それはここでは言うなよ!?恥ずかしいだろ!?」

 

 あらまー仲良いこと、本当は頭撫でるより楽しいことしちゃってんじゃないの〜?

 

 って失礼だったか

 

 1000メートル走は三学年合同種目、男女にわかれてそれぞれ走るんだ。

 

「はぐみちゃん負けないよー!」

「はぐみも負けないからね!」

 

 おー日菜さんとはぐみがバチってる!これは目が離せない戦いになるぞ!

 

「借り物競争に出る方ーそろそろ集合場所に集まってください」

 

 ここに来て集合かよ…見れないじゃん!?

 

 く、くそー後で結果を聞くしかないのか

 

 ま、俺は今俺ができることをしないといけない。

 

「千歳大丈夫だろうか」

 

 転けたあと手当しただろうか、これから(・・・・)ちょっと動いてもらう必要があるんだけど…まあその時はその時だ、俺が何とかする。

 

 悪いが俺はそう簡単に諦めるほどやわな人間じゃないらしい、誰が苦しんでいるのを見過ごすことなんて俺はやっぱり絶対できない。

 

「シン!」

「ッ!千聖先輩!」

「あなたの言われた通りしたから」

「……ありがとうございます」

「どうしたのよ、これから可愛い可愛いうちの妹を助けようとしてるのにその顔は何?」

「ッ!」

 

 はは、やっぱり千聖先輩にはバレバレだよな

 

「まず最初は運勝負なのでねー」

「不幸なあなたならあなたなりの引き方があるでしょ?」

「うう、ま、まあそうですけど」

「……頼むわよ、あなたが最後なんだから」

 

 千聖先輩は俺の手を強く握って祈るようにかがみこんだ。自分の妹を他人に助けて欲しい、なんてこと普通は言わない。

 

 多分千聖先輩は俺の事を信用してくれてるから頼んでいるんだ。だったら俺はそれに答えよう。

 

「はーい、借り物競走のみんな入場してー」

「ッ!もう行かないと!それじゃあ!」

 

 急いで列に戻る。どうやら借り物競走は中学生の部、高等部の順番でそれぞれ学年が早いものかららしい、それに午前最後の種目

 

 そしてそれの1番最後の組とは…不幸だな

 

 中等部では明日香ちゃんが走ってたな、後ろからちらっと見ただけだから本当かどうかわからないけど

 

「高等部!2年の部始めます!位置について、よーい、どん!」

 

 3年はあっという間に終わり2年へと来た。

 

 後ろから見てたけど最初から友希那さんとは、あの人運動はどうなんだろう、走りきれるかな?

 

「!」キョロキョロ

「?」

 

 借り物競走とはカードを引きそのカードに書かれている条件に合うものを持っていきゴールをするって競技だ。

 

 例えそれが物でも人間でも、動物でも構わない、条件にあってたらいいのだから

 

「シン」

「おお、な、なんすか?」

「ちょっと来て欲しいのだけれど」

「え!ちょ、俺まだ競技終わってない!」

「だからよ」

 

 友希那さんが引いたカードはまだ競技にでてない男子生徒、と書かれていた。

 

 な、なるほどだから俺なのね

 

 友希那さんと手を繋ぎ仲良くゴールイン、結果は残念ながら3位、まあ無難な順位だよな?

 

「ありがとう、戻って結構よ」

「俺は執事かなんかですか」

「私の彼氏役よ」

「ッ!そ、そうですね!それじゃあ!」

 

 普通に恥ずかしいこと言えるから困るよな…あの人なんで恥ずかしくないのだろうか

 

 戻ったらちょうど次のレースが始まったようだ、次は大和先輩が走ってるようだ

 

「ッ!え、えぇ!ちょ、これ本当っすか!?」

「書かれているなら本当です」

「な、なら変えるっすよ!」

 

 言い忘れてたがこのカードは引き直すことができるんだ、1度伏せてまだ拾われてないカードなら拾うことが可能だ

 

「え!もう恥ずかしいカードしかないじゃないっすか!?」

「諦めてください」

「世界は厳しいっす!」

 

 大和先輩は若干泣き目になりながら後ろの方に走ってきた。

 

「シンさん!助けて欲しいっす!」

「…………今度はなんですか」

「異性で仲良いのなんてシンさんぐらいっすよ!」

「あー!はいはい!」

 

 本日2度目!カードに書かれているのは異性とか!コミ障がこんなの引いてたら地獄だぞ!?

 

「麻弥ちゃんゴールイン!いやー1枚目のカードが気になるね!」

「多分、私が仕込んだカードです」

『ッ!?』

 

 この言葉に大きく反応したのは俺と大和先輩、そして恐らく紗夜さんとリオ、篠崎先輩辺りだろう。

 

 あの人のことだ、えげつないやつ入れてんだろう。

 

 てかリオのやつ見てないんだけど?あいつちゃんと競技出てんのかな?

 

「とりあえず助かったす、ありがとうございます!」

「い、いえ、じゃあ戻ります!」

 

 自分が走る前に何回走らせるんだよ!次はもうないよな!?

 

 次は花音先輩?んー不安しかない

 

「ふぇ、ふぇぇ、もうこのカードしかないよ」

 

 走るの遅くてカードを回収するのに出遅れたんだろう、慌ててめくってキョロキョロするとこっちに来たぞ…!?

 

「あー!俺ですね!俺ですよね!?行けばいいんでしょ行けばー!」

「ふぇぇ、ありがとうシン君」

 

 ちらっと見えたカードには弟と書かれていた。弟なら俺じゃなくてリオもいたと思うんだが!?

 

「シン君モテモテだねーひゅうひゅーう」

「や、やめてください日菜さん!?」

 

 日菜さんにからかわれながらゴールイン、もう1年の部が始まるもんだから急いで自分の所へ戻る。

 

 あのアレックスとの修行がなければ多分ヘタレてて自分の時なんか走れてなかったと思う。

 

 ありがとうアレックス、あんたのおかげでこれからのことも何とかなりそうだ。

 

「続いて1年の部……」

 

 1年の部が始まりあっという間に最後の俺のレーンの番になった。

 

「位置について、よーい!」

 

 足に力を込めて

 

「どん!」

 

 解き放て!

 

『ッ!』

「は!シンのやつ足速くないか!?」

「……あー、あれのおかげか」

「美咲ー?あれとは何?」

「なんでもないよ」

 

 美咲は知っていた。シンが夏休み屋敷でアレックスと稽古をしていたことを

 

「まずは1枚目!」

 

 誰よりも早くつくことでカードを引き直すチャンスがやってくる。

 

「これじゃない!次だ!」

 

 その次も

 

「違う!」

 

 クソが!こんな時に不幸を引かなくていいんだよ!

 

 ああ後ろのヤツらがもう来てる!これが最後!頼むから出てくれ!

 

「ッ!来たぁぁあ!!」

 

 目的のカードを引き当て高らかに掲げる。

 

『ッ!』

「え?これって!?」

「嘘だろ!」

「ま、まじかーい!?」

「天国は本当にあったんだ…!」

 

 他の男子が驚くのも無理はない、そう、何故なら!

 

「おー!スペシャルカード!パスパレのカードだ!引いた男子諸君!アタシ達の誰かと一緒に走れるよ♪」

 

 そう、パスパレのメンバーのみんなにお願いしたんだ。

 

 借り物競走に参加して欲しいと

 

 決してパスパレのみんなを物扱いしていわけじゃない!でも、これで俺は彼女を救うことができるんだ。

 

 目指すは中等部(・・・)のテント!そこにいるのは

 

「よっ千歳、ちょっと協力してくれないか?」

「……なんですか、何用ですか」

「お前を救いに来た」

「ッ!」

 

 こないだとは打って違った反応、敵意むき出しの目ではなくもうどこか諦めているような目で千歳はこう言った。

 

「もういいんですよ、私のことなんか気にしないでください」

「いや、このカードを引いたからには俺はお前を連れていかないといけない」

 

 俺は引いたカードを千歳にわかりやすく見やすいように立てて見せてやった。

 

「ッ!白鷺、千聖…?」

「あぁ、なんですか…?やっぱり先輩も!私のことなんか白鷺千聖の代用品として見てたんですね!」

「違う」

「何が違うんですか!」

 

 そう違うんだ、千聖先輩は千聖、そして千歳は千歳なんだ。

 

「このカードで俺がお前は白鷺千歳だって証明してやる」

「白鷺千聖ではない別の誰かを連れて来たら…点数なんて入らないよな?」

 

 こうすることで嫌ってほど自分が白鷺千聖ではないことがわかるだろ?

 

「……そんなことなんてしても意味がありません」

「意味はある。千歳自身が自分のことを認める」

「ッ!もういいんですって!余計なお世話です!だいたいなんで私なんかを」

「余計なお世話をするのが正義の味方ってやつなんだよ」

「ッ!?」

 

 例え助けなんていらない言いながら困ってる所が目に入ってしまうと余計に助けたいと思ってしまう、それが正義の味方だろ…!

 

「千歳、俺な中学の時いじめられてたんだ」

「は、はぁ?」

「……金目的で仲良くするやつがほとんどでもう幾ら金を渡したのかわからないぐらいだよ」

「………………………………」

「そんな中俺は自分の家が嫌いになって、生きてる意味がなんなのかよくわからなくなって」

 

 あの時の俺は自分でもどうかしてたと思う。何もやることなくただたんとバイトの仕事をこなすだけ、生きてる意味なんて感じ取れる毎日なんて送れてすらいなかった。

 

「そんな時俺を見つけてくれた人がいるんだ」

「……?」

「そいつには本当…返しても返しきれない恩があるよ」

 

 暗い闇の中にいた俺をあいつは…モカは見つけてくれてこの世界に引っ張り出してくれた。その後も色々…まあめんどくさいこともあったけど構ってくれた。

 

 そんなモカを一時期嫌ってた俺は本当の恩知らずってやつだと思う。

 

「だから次は俺の番だ」

「ッ!」

「俺が、お前を…!千歳を見つけてやる!」

 

 くさいセリフだなんてわかってる。でも一度は言ってみたい言葉だと思わないか?

 

「握れ千歳!そんな退屈な世界から俺がお前を引き出してやる!」

「……わ、私は」

 

 千歳は震える手で俺の手を握ろうとしてきた、でも急にはっ!となり手を急いで引っ込めてしまった。

 

「無理ですよ、私は物なんです。先輩の気持ちは嬉しいですが手を取れません」

「お前は物なんかじゃない!命を持ってる一人の人間だ!」

「……それにしたいことなんて特にないし、今のまま演じていた方が…い、いいのかもしれない…!」

「したいことならあるじゃないか!」

 

 好きすぎて動画をネットに上げてしまうほど千歳には大好きなことがあるだろ!

 

「歌が好きなら歌えばいい!歌手になればいい!」

「な、なったところで私の歌なんて!誰も聞いてくれませんよ!」

「俺がいるだろ!」

「ッ!?」

 

 俺だけじゃない!千聖先輩含むパスパレのみんな!千歳が実は歌が、音楽が好きだって知れば香澄も友希那さんも!こころに蘭も興味を持つに決まってる!

 

「先輩だけでも」

「俺から初めて1人!次に10人、その次に100人!1000人!そこから1万10万100万人ファンにすればいいじゃないか!」

「そんなこと私にはできません…」

「あーもう!いいか千歳!」

「は、はい」

 

 こんなうじうじしているのは千歳らしくない!お前はもっと笑顔で可愛く笑って!誰かに褒めてもらいたくて!近寄ってくる優しいやつだ!

 

「お前の本当の声を聞かせてくれ」

「ッ!」

 

 千歳はこの時思った。

 

 なんでこの人はこんな私を助けようとするの?どうしてそんなに恥ずかしいセリフを幾つも言えるの?

 

 なんで…あんなに酷い言葉を言っていたのにこの人は、この人なんでこんなにも清々しいように、自分がいかにも正しいかのように堂々として手を差し伸べてくれるの?

 

「わた、しは」

 

 私はどうなりたい?このままずっと白鷺千聖の代用品として…物していき続けるの?

 

 なんなんだろう。この人なら本当に私を変えてくれるかもしれないと思ってしまう。

 

 でも私はたくさんの人を傷つけた、クラスのみんなには酷い態度をとって、リオにも強い口調で話してたりもした。

 

 そんな私は…許されるの?

 

「人間誰にでも消えないいやな過去、過ちだってたくさんある。それを…償って生きていくのが人間ってやつだろ?千歳」

 

 ああ、なんで忘れてたんだろう。私は人間なんだ、物じゃない、そうやって私は成長して生きていくんだ。

 

 なら私は罪を償いながら、でもちょっとは贅沢に

 

「せん、ぱい」

「おう」

千歳(・・)は、千歳は…!」

 

「自由に、なりたいです…!」

 

 よくできました。白鷺千歳()

 

「なら俺がその自由の一歩を一緒に踏み出してやる!さあ!手を取れ!」

「…………はい!」

 

 千歳は涙を拭い本当の笑顔を俺に向けてそう答えてくれた。

 

 なら俺が次にとる行動は!

 

「よし千歳!揺れるけどちょっと我慢だぞ!」

「はい!」

 

 千歳をおぶり走り出す。

 

「ま、丸山さん!俺と走れてう、嬉しい?」

「え?う、うん……う、嬉しいなー」

「(本当はシン君と走りたかったなんて言えない!)」

 

 そんな彩の横を通り過ぎ

 

「えい!やあ!とーう!」

「どうです私の剣さばき!惚れ惚れしましたか?」

「木刀振ってなくてもイヴちゃん最高!」

 

 次はイヴの横を通り過ぎて

 

「え!?じ、ジブンのファンですか!ふへへ、う、嬉しいっす!」

「生ふへへいただきました!」チーン

 

 大和先輩と倒れた男子生徒の横を通って

 

「ほらファイトー!アタシに追いつかないと手、繋げないよー!」

「ちょ!は、早すぎます!」

「あはは!おっと!?」

 

 その日菜さんよりも早く走り抜けて

 

「おっとシン君1位!後ろに担いでいるのは…?」

「なんと!白鷺千歳ちゃんだ!千聖ちゃんじゃないぞ!?」

「ふう……燐子先輩!」

「あ、はい!」

 

 燐子先輩がマイクを俺に投げてくれてそれをキャッチする。

 

「すぅぅ」

 

 空気を大きく吸って

 

「あっれぇー?間違えたー!これは白鷺千聖じゃなくて白鷺千歳だぁー!」

「うん、紛れまない千歳だ、確かに目元とか口元とかめっちゃ似てるけど近くで見る全然違う!」

「ホクロがあるのかないとか、うん!色々違う!」

『………………………………』

 

 観客のみんなは何が言いたいの?とでも言いたげそうな雰囲気が漂っていた。

 

「だから……全くの別人だから点数、入んないよね?」

「……せ、先輩!?」

「大丈夫だって」

 

 そう答えた瞬間

 

「そうだそうだ!白鷺千聖と千歳は別人!シン君には点数が入りませーん!」

「……うぅ」

 

 千歳は怖がるように身をかがめるが

 

「何やってんだ弦巻シン!1位とったのに台無しじゃねーか!?」

「お前やる気あんのか!?確かに似てるけど間違えんなよ!?」

「別人連れてきてどうするんだよ元実行委員長!?」

「…………へ?」

 

 なんて間抜けな返事なことやら

 

 誰かが言った言葉がきっかけでみんながそう言い出した。

 

「いやまじごめん!みんな許してくれえーい!」

「……ま?こうゆうのがあって体育祭?って言うしな!」

「まさか有名姉妹使ってこんなことするなんてな!」

『あっはははは!!』

 

 会場が笑いに囲まれた、誰かさんが馬鹿なことをしたおかげで起きた笑いは

 

「ッ〜!ッ〜!」

 

 千歳にとっては周りの人達から自分と白鷺千聖が全くの別人と捉えてくれたという証明になった。

 

「先輩」

「んー?」

「千歳はどうやら白鷺千聖じゃないみたいですよ?」

「ッ!ああ、だから点数が入らないんだよなーまじショック、てな?」

「ふふ、あはは!もう、先輩ったら!」

 

 ああ、やっとだ、やっと心の底から本当の笑顔で笑ってくれたね、千歳

 

「はーい!次は昼休み!みんな羽目を外さないようにね!ではかいさーん!」

 

 日菜さんのアナウンスのおかげで生徒達は一時解散、グランドの真ん中には俺と千歳、そしてガールズバンドのみんなが集まっていた。

 

「千歳」

「ッ!姉さん!ごめんなさい!千歳は姉さんのこと」

「いいのよ、あなたのことを気づいてあげられなかった私にも非があるわ」

「うぅぅ!ごめんなさい!千歳は姉さんのこと好きだけど白鷺千聖のことを」

「もういいの、今のあなたはもう前の千歳じゃないでしょ?」

「……ね、姉さん!」

 

 千歳は千聖先輩の胸に抱きつき顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き付いていた。

 

 これで姉妹の仲も元通り、一件落着ってやつだな

 

「千歳ー!千歳!千歳ー!」

「あー!明日香!明日香もごめん!いっぱい酷いこと言って…」

「ううん、私はなんとも思ってないよ?」

「千歳にとってあれが白鷺千聖だったから…つい悪い口になって」

 

 おい!あの暴言は千聖先輩の真似をしてたのかよ!?流石にあそこまで酷い言葉を言いませんよ!?

 

「あーちゃんー!私も混ぜてぇー!」

「ちょ!お姉ちゃん!」

「明日香の姉さんとは少し話をしてみたかったんですよ!」

「本当!?」

 

 マイエンジェルが千歳を……コミ力高いよな、本当

 

 その後香澄に引かれガールズバンドの大半が千歳を囲うように集まり何やら楽しそうな話をしていた。

 

 そんな中俺は輪から離れ遠くからそれを眺めていた。

 

「シン君お勤めご苦労さーん」

「……モカ、お勤めなんかじゃない、俺がしたいからしただけだ」

「……シン君のしたいことかー正義の味方ってやつ〜?」

「まあそんなところだな」

 

 それもあるけどさ

 

「……俺はどっかの誰かさんに助けられたからな」

「ッ!?」

「ちょっと真似したくなった」

「え、えへへーその人ってどんな人なのかな〜?」

「…………可愛くてウザイ」

「可愛いって言ってくれたーモカちゃん嬉しいな」

『ッ!』

 

 ふと近寄ってきたモカの手が俺に当たる。

 

 ちょっとぐらい…俺から行ってみてもいいだろうか?どんな反応するかな?……でもやってみたいと思ったなら自分の気持ちに素直になってみよう。

 

 シンはモカの手を取り自ら恋人繋ぎをし始めた。一体何がどうなって彼が動いたのかは本人しかわからない。

 

「ッ!……素直になりなよ」

「うるさいバカ、こ、こっちみんな」

 

 そう答えたシンはモカから顔を逸らして耳まで真っ赤になっているのはモカから見てもわかる。

 

 モカは心底嬉しそうな顔をしながらシンの手を強く握り返した。

 

 お互い誰にもバレないように端で手を繋ぎながら千歳を囲う輪を眺めていたのであった。

 

「あ、彩先輩」

「ん?なーに千歳ちゃん!先輩!の私に何か話があるのかな?言ってみなー?」

「あ、彩ちゃん…いばれる後輩がいないからって」

 

 千聖はやれやれと言わんばかりに手で顔を隠していた。それとは裏腹に千歳は

 

「彩先輩のこと影で負けヒロインとか嫉妬の塊的なこと言ってました、本当にすみませんでした」

「……へ?」

 

 千歳の爆弾発言をもろにくらった彩はその後何も返事が出来ずに突っ立っていた。

 

「あ!ごめんなさい、言わない方がよかったですか?でもやっぱり謝らないと」

「うわぁぁん!白鷺姉妹で私を虐めるよー!!」

「ちょっと!私は虐めてないわよ!?」

 

「あぁぁぁぁあ!不幸だよぉー!!!!」

 

 シンではなく彩の叫びがグランドに響きみんな仲良く笑いあっていたのであった。




いかがでしたか?シン君の成長はみなさんの目から見てもまるわかりだと思います。本当に成長したよ君は

次回はみんなの約束(デート)編!そしてその次はアギト(○○○○)編!かな?

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくです!目指せ赤バー!

それでは次回の約束(デート)編でお会いしましょう!

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