大本営とやらで提督に就くことを承諾した僕こと
しばらく県道を走ったかと思うと、大本営を出入りしたときに見たような仰々しいゲートを通過し、海沿いの海軍基地らしき場所へ移動。
憲兵が門の両脇を固める、一見してレンガ造りの大きな建物の手前に降り立った。
「ていとくがちんじゅふにちゃくにんしましたぁ」
「ばんざーい! ばんざーい!」
「あかつきのすいへいせんに」
「しょうりをきざみなさーい」
何のことやら分からないが、妖精さんたちが楽し気にお喋りしながら僕の周りを舞っていて、僕もなんだか楽しくなってくる。
「海原提督ですね? ようこそお越しくださいました。どうぞ中へ」
「大本営直属の艦娘が提督室に待機しておりますので、まずは提督室に向かってください」
「……えっと。一人で向かえと?」
基地内を車で移動している時に窓から見えた範囲でも、とても単独で回りきれる広さじゃない。案内もなしに目的地に辿り着く自信が無いんだけど、僕一人でどうしろと言うんだろうか。
「申し訳ありませんが、定期調査を除いて、担当する提督以外の人間が鎮守府に入ることは禁じられています。中に入っていただければ目立つ場所に案内図があると思われますので」
ちっとも申し訳なくなさそうな二人の憲兵は、両開きの重厚な扉を開き、慇懃無礼な態度で僕を中に入るよう促した。
「はやくいこーいこー」
「れっつごー」
「あんないなんていらないよー」
「あっちー。あっちからおーよどのけはいがするの」
「うわっ。分かった、分かったから押さないでよ。髪引っ張らないでって。おーよどって何?」
憲兵の二人は妖精さんが見えないのであろう。急に声をあげて建物に入っていく僕を、怪訝な表情で見送っていた。
妖精さんに導かれるまま、案内図も素通りして広い建物をどんどん進んでいく。
階段に差し掛かると、妖精さんたちは躊躇なく最上階へと僕を
そんなことを考えていると、目の前に浮遊した妖精さんが、一つの部屋を指さした。
[提督室]とプレートに書かれている。どうやら無事、目的地へ着いたようだった。
長年一緒に過ごしてきた妖精さんたちも、初めてここを訪れるはずだけど、なんで場所が分かるんだろう。おっさんの説明通り、鎮守府やら艦娘、提督とは深い繋がりがあるということなのか。
「……とりあえず、後でいろいろ教えてね」
妖精さんに一つ囁いて、僕は提督室の扉を開いた。すると中には――――。
「お待ちしておりました。海原提督。
大本営より、当鎮守府運営についての指南役を仰せつかりました。軽巡洋艦、大淀です。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
黒の長髪にカチューシャ。眼鏡をかけ、改造したセーラー服のような出で立ち。知的な雰囲気を身に