妖精さんの勧めで提督になりました   作:TrueLight

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21.かいぞーかいぞーだーかいぞー

 

「改造?」

 

 とある日の朝。いつものように遠征と哨戒任務へ赴く艦娘たちを送り出した後、提督室で執務に取り掛かろうとした僕に、妖精さんたちが声をかけてきた。

 

「うむ」

「ゆうだちがいけそげー」

「おもってたよりはやいね」

「んねー」

 

 妖精さんの話によれば、作戦行動によってある程度経験を積んだ艦娘は、改造することで能力を向上させることが出来るらしい。

 

「それって夕立だけなの? 経験で言えば他の艦娘も似たようなものじゃないのかな」

 

「こたいさがあるのね」

「くちくとけいじゅんでちがったり」

「おなじくちくかんでもそれぞれちがったりするー」

 

 そういうものなんだ。

 

「改造って、具体的にどうするの?」

 

「けんぞーどっくにいれてー」

「あとはわれわれにおまかせ」

 

 また焼いたりするのかな……。資源から建造する時はともかく、中に艦娘が入ってるのが分かってる状態でそれはちょっと見たくないんだけど……。

 

 でもまぁ、妖精さんたちの言うことだし、きっと危険は無いんだと思う。

 それに五人が作戦から戻ったら、直接話を聞いてみれば問題ないはずだ。

 

「それじゃあ、皆が揃ったら話してみるよ」

 

「よきよき」

「せんりょくぞーきょーもたいせつなおしごとよ?」

 

・・・

 

「という訳なんだけど。どうかな、夕立。皆も意見があれば聞かせて欲しいな」

 

「夕立が改造……。ほ、ほんとに? もうできるっぽい?」

 

 海から戻った五人を提督室に集合させ、僕は妖精さんからの提案をそのまま聞かせた。

 話に挙がった夕立は少し呆けた様子を見せたけど、次第に頬を紅潮させて喜色を浮かべている。

 

「それが本当なら喜ばしいことだけど……」

「う、うん。どうなんだろうね?」

 

 ただ五十鈴と時雨は懐疑的な表情を浮かべている。雷も困ったように眉を寄せていた。

 響はぼーっとした様子で執務机の妖精さんたちを見つめている。ちなみに妖精さんたちは何かを振り上げては勢いよく叩きつける動作を延々と繰り返していた。

 

 改造のデモンストレーションらしけど、僕にはエア餅つきにしか見えない。

 

「何か不安なことでもあるの?」

 

 僕の質問に対し、口を開いたのは五十鈴だ。

 

「不安というか……。そもそも改造できるかどうかって、特殊な艦娘でないと判別できないのよ。工作艦、明石。そして兵装実験軽巡、夕張ね。艤装の開発やメンテナンスに精通したこの二隻だけが、艦娘が改造に耐えうる練度に達しているかを測ることが出来るの」

 

「え、じゃあその二隻が居ない鎮守府ってどうしてるの?」

 

「他の鎮守府や大本営直属の艦娘を定期的に招聘(しょうへい)して確認しているはずよ。申請すれば鎮守府の定期調査に同行させてチェックすることも出来るわ」

 

「なるほど。……あー、ということは」

「ええ。貴方が妖精から受けた提案が正しいかどうか、五十鈴たちには判断できないの。でも本当に改造できたとしたら、大事件ね」

 

「そうなの?」

 

「当たり前でしょう? 明石と夕張にしか出来ないと思われていた改造の可否判定が、妖精にはできる。可能性の話になるけれど、他にも大本営や艦娘(わたしたち)が出来ないと思っていたことが、妖精には出来るかもしれない。そして、その妖精と明確にコミュニケーションが取れるのは一人だけ……」

 

「提督さん凄いっぽい!」

Хорошо(ハラショー).さすが私たちの司令官だね」

「誇らしいことじゃない!」

 

 夕立に響、雷は好意的な反応を示してくれるけど……。

 

「五十鈴の口ぶりだとあまり良いことには聞こえないね」

 

「それはそうよ。特別待遇で大本営に席を用意する、って建前で軟禁されてもおかしくないわ」

 

「僕も同意見だね。急いで戦力を増強したい提督の中には、改造の可否が分からない状態で無理に実行して、資源を無駄に消費したり艦娘を傷つける場合もある。

 妖精と会話できるって能力は今のところ、提督としての資質の高さとしか見られてないみたいだけど。もし本当に妖精の言う通りなら……」

 

「その力は大きなアドバンテージになる。出世欲旺盛な、野心が強い軍人なら尚更でしょうね。妖精との意思疎通能力解明のために、実験動物扱いされるかも知れないわ」

 

 冗談じゃない! ……というか五十鈴と時雨は、ずいぶん大本営への風当たりが強いね。

 一般人の僕を提督として鎮守府に放り込んだという話をしてから、不信感は隠そうともしていなかったけど……まさかここまでだなんて。

 でも僕の身を案じてのことだと考えれば、くすぐったい気持ちになる。

 

「そんなことさせないっぽい!」

 

 夕立が一転して気色ばむと、響と雷もうんうんと大きく頷いてくれた。そんなに心配してくれるなんて……。

 

「……とにかく、確認してみるしかないわね。妖精の言葉が本当か分かるなら、失敗しても資源の無駄にはならないでしょうし。でも夕立、貴女は良いの? 最悪身体を傷つけることになるわよ?」

 

「大丈夫っぽい! 夕立は提督さんを信頼してるから! 提督さんのお友達の言うことなら、きっと本当だと思うっぽい!!」

 

「夕立……よし。妖精さんたち!」

 

 夕立の信頼に応えるため、僕は執務机の妖精さんたちに視線を向けた。

 

「おまかせあれー」

「かいぞーかいぞーだーかいぞー」

「ようせいさんのほんきみせたげるー!」

 

「頼んだよ! さぁ、工廠に行こう!!」

 


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