「ここが工廠……」
「そーだー」
「ここがこーしょーだ」
「しろーとはてーだすんじゃねーぜ」
「あぶないからかべぎわいかないのよ?」
妖精さんの警告に理由なんて聞かない。僕は一度頷き、機材らしきものが積まれた壁際に近づかないよう歩を進めた。
「明かりは……あ。ありがとう妖精さん」
僕が室内灯のスイッチを探そうとすると、一人の妖精さんが一足先に光を
「かいー、これこれー」
「けんぞーどっくー」
「どれどれ。……なにこれ」
妖精さんに促されて工廠の奥に行くと、よく分らない施設が見えた。
浴槽というか、棺桶というか……。とにかく長方形の箱だ。
チューブのようなものがいくつも伸びていて、工廠内の貯水容器のようなものや、ドラム缶なんかに繋がれている。
そして何故か、その建造ドックとやらは半分ほどが水に
「なんか濡れてるけど……。まずいんじゃないの? これ。機械って普通水に弱いよね」
「だいじょぶだいじょぶ」
「むしろこれでよろしい」
「かいすいにつかってないとね、ね」
「よべないもんね、んね」
「そうなんだ。このままで使えるんだね」
建造ドックは二つ……いや、四つかな? それらしき施設は四つあるけど、二つはなんか格子状のシャッターで塞がれていた。やっぱり海水で故障したんじゃ……?
いやでも、妖精さんが大丈夫って言ってるし、違うのかな。
「かいー、はやくやろー」
「かいていとく、さっそくけんぞうするでありますー」
「あ、うん。そうだね、まずは……」
建造ドックの一つに近づき、コンソールだっけ? とにかく操作するための機械を覗き込んだ。
「ここで建造に必要な資材を投入する、と」
大淀に渡されたノートから建造について記されたページを探し、コンソールと照らし合わせてみる。
「まずは駆逐艦、だったよね。機動力に優れ、費用対効果優、と」
「よくできましたー」
「ちいさいから
「なおしやすいしー」
「でもきずつきやすいからちゅーいするのよ?」
「うん、気を付けるよ。
大淀のノートでは、投入資材が多ければ多いほど大型艦が建造できるって書いてあるけど。駆逐艦を建造するなら逆に、できるだけ少なくするって感じなのかな」
「ちょっとちがうけど、だいたいそー」
「燃料、弾薬、鋼材、……ボーキ? ボーキってなんだろ」
「ぼーきはぼーきさいとー」
「あるみだよー。あるにみ、あるみにうむー」
あ、誤魔化した。癒される。じゃなくて、そうか。アルミか。
「全部一桁から投入できるけど、1ずつでも建造できるのかな」
「できないよー」
「さんじゅうはほしいね」
「ぜんぶそれくらいいれればできるよー」
「そうなんだ。……妖精さん、ほんとに詳しいんだね。知らなかったよ」
「でへへー」
「それほどでもー」
「ありまするがー」
「じゃあ30ずつにするね? えーと」
妖精さんに端末の操作を教えてもらいつつ、四種類ある資材の投入数をそれぞれ30にした。
「これで、建造に移る、と。い、いいよね? これで」
「いいよいいよー!」
「うでがなるぜー!」
「さいしょだしね、あぶろうね」
「ばーなーあるの?」
「けっこうあるねー」
応答してくれる妖精さんたちはなんだか盛り上がっていた。手順は問題無いみたいだ。
「よし、じゃあいくよ。……建造、開始!」
僕が端末を操作し、建造開始のキーを押した途端。
「かかれー!」
「「おーーーー!!」」
工廠内にいた妖精さんが、突然作業着のようなものに早変わりし。
建造ドックに飛び掛かった!