妖精さんの勧めで提督になりました   作:TrueLight

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52.砲撃戦―SIDE金剛―

 

「HEY皆さん、会敵ネ! 撃ちマス! Fireー!!」

 

 扶桑の指示で先行したワタシと、次いで天龍、朝潮、龍驤の四人は、岩陰から飛び出すと同時に敵を視認しマシタ。

 

 龍驤からの報告どおり、敵は戦艦長門を旗艦とする単縦陣。相手の航行速度が当初の想定より遅れていたため、こちらが敵の前を遮る様に岩陰から飛び出した形デース。

 

 丁字有利。状況を確認したワタシはすぐに砲撃へ移りマシタ。敵は即座にこの状況から逃れるべく行動するはずデース。このチャンスは逃せマセーン!

 

『交戦状況は?』

「丁字有利ネ!!」

 

 ワタシの言葉を受けて、遅れてやってくるはずの扶桑から通信が飛んできマス。一言で応答したワタシに、扶桑はすぐさま指示を下しマシタ。

 

『敵が対処する前に先頭を叩きなさい。他の艦は無視して構いません』

 

 さすが扶桑ネ! 十分な状況報告とは言えないワタシの言葉でも、十全に戦況を把握したようデス。

 

 一分としない間に敵は同航戦、もしくは反航戦に移るべく動くハズ。軍艦だった時代ならともかく、人の形を取って素早く交戦形態を変えることが出来る艦娘にとって、丁字有利とは瞬く間に過ぎ去る奇跡のような時間なのデス。

 

 下手に欲をかけば、誰も落とせず戦艦二隻と対峙することになる。それを避けるため、扶桑は旗艦の長門だけを狙うよう指示したのでショウ。

 

 直接肩を並べずとも、扶桑と共に戦っているのを実感しマース……!

 

「聞こえましたネ!? 狙いは旗艦長門のみ! 足を止めず、可能な限り丁字戦を維持しつつ食らいつきマース! Fireー!!」

 

「しゃあっ、うちもいくで! 隼鷹!!」

『あいよ、もう一回だね? やっちまえー!』

 

 敵に向けて主砲を発射し続けるワタシに続いて、龍驤と隼鷹も再び艦載機に指示を下し始めマシタ。空に千千と散っていた黒い点が、二人の意志によって長門へと向かっていきマス。

 

「チッ。悔しいが、オレらはひとまず牽制だ。朝潮、分かってるな?」

「はいっ。弾薬を切らさないようにします……っ!」

 

 交戦距離は控えめに言っても中射程のレンジ。天龍はともかく、駆逐艦の朝潮では砲撃が有効とは言えまセン。ましてや天龍の砲も届くというだけで、戦艦相手ではダメージを期待するのが門違いというモノ。それを理解してか、天龍は朝潮と共に長門を直接狙うことはしませんデシタ。

 

 常に長門の進行方向を遮るよう……丁字有利を一秒でも長引かせられるよう。つまりは威嚇射撃が狙いデス。効かないとは言っても、人の姿をとっている艦娘(わたしたち)。撃たれているという事実は意外に航行(あし)を鈍らせるモノ。現に長門は二人の砲撃を疎ましげに防盾で防いでいマシタ。

 

 真に警戒すべきなのはワタシと龍驤だと長門も分かっているハズ。しかし、ワタシや龍驤の攻撃に合わせて応変に守り、丁字不利打破のために移動しようとしても、ふと視界を過ぎる砲撃を無視できナイ。

 

 ダメージが期待できないというのはあくまでも撃っているこちら側の理屈デス。撃たれている向こうからすれば、小型艦の砲とはいえ当たり所によっては万が一もあり得ル。であれば無理に動いて下手を打たず、仲間の助けを待ツ。そういう算段なのでショウ。

 

 先頭の長門に、他敵艦が並ぶのも時間の問題デース……!

 

「金剛、直で狙えるのは多分一回きりや。合わせてや……!」

 

 長門に肉薄する艦載機が弧を画く直前、龍驤が呟きマシタ。狙いはきっと、ワタシと同じハズ。

 

「YES.……っ、ここネ! Fireー!!」

 

 長門の頭上からは爆撃機が爆撃を行イ。正面からは攻撃機が跳ね上がって、空へ帰る瞬間に雷撃を放ツ。その刹那、ワタシの砲門も光を迸らせマシタ。

 

 砲撃の音が空気を揺らすのも束の間、それ以上の轟音が長門がいたであろう場所から響き渡り、そこは水飛沫と薄灰色の煙に包まれマス。

 

「どや、これはやったやろっ! なぁっ!?」

「Best timing だったはずネ! 防盾ごと吹き飛ばしていてもおかしくないデース!」

 

『長門を落としたの?』

 

 ワタシと龍驤が声を上げると、扶桑から静かに通信が入りマシタ。

 

「分かりまセーン! が、ワタシの砲撃と龍驤の戦爆連合が直撃したのは間違い無いネ!」

「完全に霧が晴れるまでちっとかかるで……。意見具申! 触接しとる偵察機を接近させてもええかな?」

 

『許可します。長門の損傷状態の確認を優先して』

「了解やっ!」

 

 視界が晴れるまでは十数秒というところデショウ。しかし、その間ここでボーッと敵の動向を窺うのは愚策。もう役割をほとんど果たした偵察機を使って、龍驤は長門の様子を探りマス。

 

 どうなったんデスカ……!?

 

「っ……! うっそやろ……。敵旗艦長門、健在や! 無傷とは言わんけど、大破にはほど遠いで!」

 

「Shit!」

 思わずこぼしてしまいマース! あの状況で落とせないナンテ!?

 

「それに、偵察機も落とされてもうた。長門やないで、もう揃ったんや……!」

 憎々しげに龍驤が呟いた、その瞬間。

 

 霧が晴れるのを待たず、一人の艦娘が弾丸のように水飛沫を裂いて飛び出しマシタ。

 

「速ぇっ、来るぞ! 島風だ!!」

 

 天龍が声を上げたとおり、それは敵駆逐艦、島風デシタ……!

 


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