吉野萌香はただ、知りたい   作:長門ルイ

8 / 8
8.吉野このみは楽しみたい

 

 

 

 

「お姉ちゃんお姉ちゃん!明日圭ちゃんと萌葉が遊びに来るって!」

 

「よかったじゃん。バレンタイン以来じゃない?」

 

 

 私が帰ってきて早々、このみが嬉しそうにそう言いながら出迎えてくれた。因みに圭ちゃんとは会長の妹さんの白銀圭(しろがね けい)ちゃんのことで、萌葉ちゃんは千花の妹である。この二人とこのみは非常に仲が良く、一緒に遊ぶこともある。しかし、圭ちゃんと萌葉ちゃんは中等部の生徒会役員でありまぁまぁ忙しく、加えて萌葉ちゃんは藤原家の教育方針が厳しく、このみはこのみで引き籠っちゃってるのであまり頻繁に集まれない。そんな中、恐らくLINE等で連絡があったのだろう。そりゃ嬉しいわけだ。

 

 

「うん。お姉ちゃんも一緒に遊ぶ?」

 

「う~ん…暇だったら。」

 

 

 まぁどうせ暇だけど…。渚はどうせマキ達と…あ、そっか、金曜一緒に帰ってなかったから渚は土日空いてる可能性があるのか。

 

 

「え!?お姉ちゃん土日に暇じゃないことなんてなかったじゃん…。あっ…もしかして…。」

 

 

 ちょっとこのみさん?何故口を隠して照れたような表情をされているの?

 

 

「…彼氏と…デート?」

 

「んなわけあるかい。」

 

 

 もはやお姉ちゃん、妹がボケてるようにしか見えなくなってきたぞ。

 

 

「だよね…。よかったぁ…ついにお姉ちゃんが捕られちゃったかと思った。」

 

「そんな大げさだよ。」

 

 

 ナチュラルに姉を物扱いしていく妹、吉野このみ。それにしても土日か~…。ぶっちゃけ暇だけど、このみの同年代の友達の輪の中に入りづらいんだよね~。そんなことを考えていると私のスマホからLINEの通知音が聞こえた。相手は…。

 

 

『ねぇ萌香ちゃ~ん♡

土日暇ですか?暇ですよね(><)

このみちゃんから聞いたと思いますけど、明日萌葉達がそっち行くじゃないですか~

私も行けることになったので、萌香も家に居てくださいね~☆』

 

 

 ゆるふわ巨乳ビッチこと、藤原千花だった。相変わらずLINEでは癖の敬語は抜けてないしその割には無理やり記号や顔文字使いたがるし明日の引きこもりを強制させられるし…。

 

 

「あ、千花ちゃんだ~。…これでお姉ちゃんもこころおきなく一緒に遊べるね!」

 

「そ、そうね。」

 

 

 このみにはスマホ覗かれて千花が来ることがばれるし…。私が『こころおきなく』いられるのは、一人もしくはこのみと二人きりの二択なの!『吉野萌香のこころおきなく』っていう一人喋りのラジオ番組を毎週日曜の20:00~20:30に配信したいまであるもん。

 

 

「っていうかお姉ちゃん、千花ちゃんのLINE10件も未読無視(スルー)してるのひどくない?」

 

「それこのみが言う?」

 

 

 そう、私は他人から個人チャットにLINEを送られた時に通知画面で内容を確認した後、その返信をしない場合はそのままにして既読をつけない癖がある。これを『未読無視(スルー)』と言うが、千花の場合、ツイート感覚で私にLINEを送りつけているので、たまに返信に困ったりして、いつの間にか10件も未読無視(スルー)をしていた。そしてこの癖はこのみにもある。まぁこのみの場合は去年の秋頃から少し人間不信になって私以外の人のLINEには返信したくても出来なかったっていう諸事情があるからしょうがない。

 

 

「だって…萌葉とかたまに怖い画像とか送ってくるんだよ?」

 

「それは全力で無視しなさい。」

 

 

 あ~そういう理由(そっち)ね。確かに萌葉ちゃんそういうところあるからなぁ~。圭ちゃんとかいずれヤバそう。流石、千花の妹なだけあるわ。

 

 

「さて、とりあえず夕飯の準備をしますか。」

 

「私も手伝う~。」

 

 

 

 地味に久々の姉妹共同作業となりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、一緒に夕飯を作って食べたら、このみは部屋に戻ってすぐに寝てしまった。また無理をしてるんじゃないかとお姉ちゃんは心配よ。それはそうと、誰かが帰ってきたのか、玄関から音がした。おそらくお父さんだろう。私は玄関に向かってお父さんに声をかけた。

 

 

「ごめんお父さん…ちょっといい?」

 

「ん?萌香か…。どうした?」

 

「ちょっと話があって…。」

 

「あぁ…全然大丈夫だよ。リビングに座って待ってなさい。」

 

「うん。」

 

 

 疲れた表情をしているお父さんに少し罪悪感があったが、重要な話だったので今すぐ話したかったんだよね。なんとかOKをもらえてよかった。

 

 

「待たせたか?」

 

「全然。それでね…_________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった…。後でお母さんにも話しておこう。」

 

「うん。ありがとうお父さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日…土曜なのでいつもならまだ寝てるんだけど…平日に起きる時間帯にはもう目がぱっちり覚めてしまいました。『遠足を前日に控えて眠れない…けど早く起きる小学生』というよりかは『修学旅行の出発の朝に意味もなく早く起きる引きこもりがちな陰キャ』って感じかな?…ただの事実やん。

 

 

「…部屋の掃除でもしますか…。」

 

 

 このみの部屋より私の部屋のほうが若干広いので、千花と年下組が両方来るなら私の部屋を使うほうがいいだろう。特別散らかってるわけでもないけど、一応お客様が来るわけだし軽く掃除機でもかけよう。そう思って掃除機を取りに行こうとしてふと思った。

 

 

「そういえば萌葉ちゃん達は何時くらいに来るんだろう?」

 

 

 このみは今日とは言っていたけど何時かは言ってなかったな。千花にLINEでもして確認するか…。意外と早起きだった記憶があるし、今送っても大丈夫だろう。案の定すぐに既読がつく。

 

 

『あーそれはこのみちゃんに確認してませんでしたね(><)

私たちはいつでもいいのでこのみちゃんが決めちゃって大丈夫ですよ~✨

決まったら連絡くださいね~』

 

 

 なるほど、じゃあこのみが起きるまで待ちますか。…と思っていたらこのみの部屋のドアが開いた。ちょうど起きたみたいだ。

 

 

「おはよ。」

 

「…おはよ~お姉ちゃん。」

 

「今日萌葉ちゃん達が来るじゃん。でも時間とか決めてなかったみたいだから、いつ来たほうがいいかこのみが決めていいって。」

 

「あ、そっか時間決めてなかったんだ。」

 

「うん…何時くらいがいい?」

 

「じゃあ~…今すぐがいいかな?」

 

 

 このみは悪戯っ子がするような笑みを浮かべてそう言った。いやいや…いくら藤原姉妹と圭ちゃんが早起きだからって無理がありません?それにあなた寝起きでしょう。私もだけど。

 

 

「流石に無理じゃ…」

 

「でも部屋の窓から圭ちゃんが見えたよ?」

 

「え?」

 

 

 まだ寝惚けておるのかうちの妹は。そう思いながら窓から外を眺めると…。

 

 

「ほらね?」

 

「えぇ…。」

 

 

 綺麗なロングヘアーとレースのヘアバンドが特徴的な女の子がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。言うまでもなく白銀御行会長の妹、白銀圭ちゃんだ。

 

 

「このみは早いとこ着替えておいで。圭ちゃんは私が家に入れとくから。」

 

「あ!まだパジャマだったの忘れてた~。」

 

 

 そう言いながらこのみは部屋に戻っていった。

 

 

「やっほ~。久しぶりです萌香ちゃん。来ちゃいました~。」

 

 

 玄関の扉を開けると圭ちゃんは急に私に抱き着いてきた。圭ちゃん私の彼女かよ…嬉しいじゃない。

 

 

「…まさかこんな早い時間に来るなんて思ってなかったよ。またお兄さんにイライラでもして家に居られなくなったりしたん?」

 

「あはは…生憎(おにぃ)は今日珍しく朝から外出してて…なんか映画見に行くとか言ってた気が…。まぁ家に居てもやることないし…やっぱりこんな時間に来るのは迷惑だった…かな?」

 

「ううん。正直びっくりしたけど親は土曜も仕事だからいないし、このみもみんなに早く会いたがってたし全然大丈夫だよ~。ただ…。」

 

「??」

 

「そろそろ離れてくれないかなぁ~なんて思っちゃったりして。なんとなくこのみがこの光景見たら不機嫌になる気がする。」

 

「あ~そういうことならしょうがないね…残念だけど。」

 

 

 うん、私もすごく残念。私たちが離れるとちょうど着替え終わったこのみが玄関まで来た。危ない危ない。

 

 

「あ~圭ちゃん久しぶり~。」

 

「このみも久しぶり~。それにしても…いつ見ても似てるなぁ~。目の色と身長しか違わないなんて本当に凄いよね。」

 

「まぁこのみはまだ中学生だし、身長は私に追いつくとして…。」

 

 

 なんで目の色だけ違うんだろう?偶然と言ってしまえばそれまでだけど…。

 

 

「いや…引きこもりのプロになりつつあるこのみはいろいろ萌香ちゃんとは違う環境で生きてるから、このままだと身長は追いつけないかも…。ゆっくりでいいから外に出る練習とかしないと萌葉にも見下されるかもよ~?」

 

「うっ…善処します…。」

 

 

 まぁいろいろと難しいんだよね。お姉ちゃん、分かるよ。

 

 

「あ、萌葉で思い出したんだけど…藤原姉妹、あと五分くらいでうち来るって。」

 

「え?」

 

 

 みんな朝から元気だなぁ~…。萌香ちゃん、まだ若干眠いっす…。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。