S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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アニメ終わっちゃいましたね。
んまぁ、期待通りの出来映えだったなって・・・。

じゃけんVIVYとGATEとコヨーテラグタイムショウの一話を見返していきましょうね~。




OPERATION "Two-up" Ⅸ

 

 

『────これはどういう事だ?ミスタークルーガー』

 

民間軍事会社グリフィン&クルーガー社本部。そこに設けられた管制室、もとい、R20地区を襲った武装集団へ対応するための臨時対策司令室。

 

その最高責任者でありグリフィンのCEOであるベレゾヴィッチ・クルーガーは、元より厳つい顔を更に厳つくさせながら、モニターを見遣り、スピーカーから聞こえてくる異質な声を聴く。

 

通信の相手はR20地区を攻撃している武装集団の代表。変声機による耳障りな声質の裏には、不機嫌や不愉快といった負の感情が見え隠れしている。

 

その理由を、クルーガーは知っている。

 

「居住区の住民を避難させようと行動している所、敵部隊と遭遇し交戦した。私はそう聞いている」

 

居住区を攻撃していた一部小隊が瞬く間に全滅。おまけに他小隊も損耗が目立ち始めている。

 

優位に動けるよう工作し、人質も取った。ここまでやれば誰であれ言うことをきく。例えどれだけ殴り付けようとも、文句の一つも言わなくなる。

そんな、どれだけ殴っても殴り返さない傀儡が、いきなり殴り返してきた。それも思い切り。そうなったら驚くのも当然だ。

 

そして思う。自分のやってる事の意味を分かっているのかと。

 

無論、理解していない訳は無い。それがどれだけ危険である事かなど、クルーガーとしても理解している。

理解した上で、殴られれば殴り返すよう部下(ブリッツ)に命じたのだから。

何より、当の本人までもがその気だ。

 

しかしそれをバカ正直に伝えようものなら、人質であるヘリアントスがどうなるかもまた、理解している。

故にクルーガーはあくまで『大筋の報告は受けているが、現場で起こっている事の詳細は知らぬ』とシラを切った。

実際にそれに近しい展開が全滅した小隊との戦闘で起こっていた為、強ち間違いと言うわけでもないと。

 

そんな返答を聞かされれば落ち着いていられる訳はなく、ノイズ混じりの電子音声の奥にも明確な怒りが乗り始めた。

 

『ミスタークルーガー、貴方は何か勘違いしている様だ』

 

「勘違い?」

 

『我々は"お願い"をしているのではない。"命令"している。あの女を返して欲しくば、我々の求める物を大人しく寄越せと。そういう命令をだ。身代金500万ユーロ、それをこちらが指定した口座に振り込め』

 

提示された額面は、大手PMCの経営者ですら目眩を覚えるほどの大金。命には代えられないとはいえ、あまりにも莫大な金額を吹っかけてきた事にクルーガーの眉は大きく歪む。

 

「随分と金に困っている様だな。同情しよう」

 

あからさまに憐れむ様に皮肉を混ぜた声色で返答したクルーガーに、相手のマイクが一瞬何か擦れる様な音を拾う。

ピクリと片眉を上げ、得心した様に腕を組み目を瞑るクルーガー。その顔には先程までの威圧感はわずかに薄れ、少しだけ心に余裕を取り戻していた。

 

『ミスタークルーガー。貴方の優秀な副官の命は我々が握っている。この手に持ったナイフ一掻きでどうとでも出来るのだ。これ以上我々へ抵抗を続けると言うのならば、ヘリアントスの命の保証は出来ないと忠告させてもらう』

 

遂に直接的な明言が出た。人質をどうにでも出来ると。生殺与奪はこちらにあると。一見それは相手を焦らせ、精神的に追い詰めていく策の一つに思える。

しかし当のクルーガーはそれを聞いてもなおどっしりと構え、閉じていた眼を開いてこう言った。

 

「ならばお前達が民間人への攻撃を止めれば良いだけだ。我が社の人形や戦闘員ならともかく、民間人の避難まで妨害しているのはそちらだろう。

それでは道を開くために現場が動くのは当然、そこに私の意思が逐一投影されている訳ではない」

 

これも半分は本当だ。有利な状況に持ち込める先制攻撃を、グリフィン側の部隊にさせぬよう働きかける事は出来ても、罪のない民間人に累が及びかねない敵の攻撃に対応しないよう呼び掛けるのは、人道的に見ても出来ない事だ。

 

そして同時に、クルーガーは相手に自分の姿が見えていないのを利用して、オペレーターの端末にブリッツへこの通信を転送する様メールで指示をする。

程なく転送用意が整ったオペレーターからアイコンタクトを受け頷いた。

 

『・・・・・勝手な事を。我々の兵力をここまで削っておいてどの口が言うか』

 

「ならばその文句は張本人に言ってくれたまえ」

 

『は?』

 

「このままでは埒があかん。お前が直接、今現場の指揮を執っている男に伝えるんだな」

 

クルーガーが手を上げて合図を送った。合図を受けたオペレーターはすぐにそれを実行した。直ちに、相手と繋がっていた通信をブリッツの通信端末に転送する。

 

 

 

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───

 

 

「ゲート。今の内に現在の状況を教えてくれ」

 

治安維持部隊第3班と別れた後、ブリッツはR20地区の人形部隊であるB小隊の援護の為、6番ストリートからB小隊のいる5番ストリートに向けて進行中だ。

 

ジャマーの排除やCASに飛び回っているヘリを、安易に足として使えず。しかし車両での移動も住民が乗り捨てた大量の車か道路を塞いでいる。残る手段は徒歩での移動であった。

 

6番ストリート程ではないが、ここにも乗り捨てられた大量の自動車があり、それらの間を駆け足ですり抜けていく。

 

その移動中の時間を使い、ブリッツは状況把握をしようとナビゲーターに尋ねた。

 

『現在、第2第4第5部隊が敵と交戦中。損耗はありませんが、制圧には至っていません。敵の戦術と連携が巧みで優位性を奪われていますが、個々の練度によって持ちこたえている状況です』

 

「R20の部隊はどうだ」

 

『目もあてられません。部隊編成の偏りに、ハロルド指揮官の指揮が攻勢一辺倒だったせいで敵のゲリラ戦術に見事に嵌まり、被害が拡大。損耗率は40%に達しています』

 

「本来なら作戦失敗の撤退ものだが、ホームだからそれも出来ないか。いよいよ地獄めいてきたな」

 

退いたら地獄、行けども地獄。どん詰まりだ。

 

やはり、こちらで打開していくしかなさそうだ。

 

「アイツは。レイはどうしてる」

 

『下水道を使ってスラムから居住区へと移動中。水路図も提供しているので迷う事はないかと。─────それよりも、指揮官の耳に入れてほしい情報が』

 

低い声色から告げられたナビゲーターの一言に、ブリッツの双眸が細く鋭いものになる。

 

「続けてくれ」

 

『レイさん方が調べていたスラムのゲート。正確にはその監視システムですが、ある細工が施された形跡を発見しました。グリフィン基地への接続も物理的に切断されているというおまけ付きです。敵武装集団は、そこからこの地区に侵入したと思われます』

 

ここまで一定のペースで地を蹴飛ばしていたブリッツの足が、ピタリと止まった。

それに合わせ、人形たちも止まって周囲を警戒する。

 

「・・・警報は?」

 

『通知はされていましたが、故意に切られています』

 

「認識していたが無視したと」

 

『ただの怠慢では無いと思われます』

 

「・・・そうか」

 

額に手を当て空を仰ぐ。光源らしい光源がない現状で、満天の星空が瞬いているのが、何とも皮肉めいていて虚しく感じた。

 

『先の講堂でのブリーフィングも合わせて考えると、ハロルド・フォスター指揮官は今居住区を攻撃している武装集団を招き入れた可能性が極めて高いですね。理由はおそらく、わざと敵を入れて迎撃し実績を得るため。いわばマッチポンプを企てたと思われます。・・・これが、情報を入手したレイさん方の推測です。私も、この推測が可能性として一番高いと判断します』

 

「いや待て、それだとおかしい。それなら何故R20の部隊がここまでの損害を─────ああ、やっぱりいい。自分で言って気が付いた。利用されたんだな。R20を攻撃し、グリフィンに要求を呑ませる為に。適当な所で制圧される敵役だったのが本当に敵になったという訳だ」

 

『ここまで来ると、ヘリアントス上級代行官の拉致にも関わっていてもおかしくありません』

 

「間違いなく関わってるだろうな。それならあの手際の良さも納得だ。」

 

思い返すは、あの講堂でのハロルドの"演説"である。

地区への攻撃からすぐにヘリアントスの消息不明を察知し。その足取りを暫定的だが掴んでいた。普通、地区の攻撃と上官の行方不明は結び付かない。にも関わらず、ハロルドはそれを結び付けた。

 

知っていなくてはとても出来ない。

 

真っ先に「敵の制圧」ではなく「上官の救出」を優先したのは、「敵の規模や攻撃する範囲」を把握していたからだろう。

本来なら知り得ない情報を知っていたからこそ、優先順位を間違えた。

敵の排除、もしくは足止めをしつつヘリアントスを救出に行ける程度の戦力を地区内に招き入れた。

 

ハロルドはそのつもりだったのだろう。そういう約束事をした上で、予定通りの攻撃と思っていたハズ。

 

だが、敵はその約束事を反故にした。

敵は最初からこのR20地区を制圧する気で部隊を展開させた。その結果、ハロルドの部隊は甚大な被害を引き起こした。

 

してやられた、というのがハロルドの心境ではあろうが。ブリッツからすればただの"当たり前"でしかない。

ブリッツが敵サイドであれば、同じようにハロルドを利用する。侵略者としての汚名を被せられる位ならいっそ徹底的にやる。

 

あのビデオメッセージの通り、積年の恨みを晴らす事が目的ならば、これはまたと無い絶好の機会なのだから。

この攻撃でグリフィンをR20地区から追い出すも良し。追い出せずとも、居住区を傷物に出来ればグリフィンに軽くはないダメージが与えられる。

 

最早怒りを通り越して呆れすら覚える。

この事態がグリフィンの指揮官一人が人為的に引き起こした戦災だったとは。

 

「────いや。本当に一人か?」

 

確かに、事の発端にハロルドが関わっているのは間違いない。

だがあの青二才が、全て手引きしたとは思えない。ヘンブリーの件もある。おそらくはヘンブリーの武器取引の相手はあの教徒たちではない。

 

ヘンブリーは言っていた。「女が依頼してきた」と。この女がハロルドとヘンブリーを繋ぐ仲介人である可能性もあるにはある。だが、ああも練度が高く準軍事組織(パラミリタリー)並みの装備を揃えている集団が、また別件でヘンブリーに武器を注文するだろうか。

 

ハロルドとは別件で、偶々武器取引のタイミングが重なっただけか。そんなはずはない。偶然とするには不自然すぎる。ハロルドのマッチポンプとヘンブリーの武器取引は何かしらの形で。自分達が知り得ない何かで繋がっている。

 

ただどうにも見えてこない。まだ情報が少なすぎる。

おまけに、思考に時間をかけられる状況でもない。

仕切り直しとばかりに、止めていた足を再び動かし走り始める。

 

「そっちは後にしよう。他に何かあるか」

 

『404小隊がレイさんの指示で二手に分かれて行動中。UMP45とUMP9がグリフィン基地に向かいハロルド・フォスターのマッチポンプについての証拠集めに。侵入の際は私がサポートします。416とG11は例のゲート付近にて待機しております』

 

「・・・ああ、万が一の敵の逃走を防ぐためか。現状、この地区からの逃げ道はそこしかないからな」

 

『ご明察です。私はこの指示については妥当だと判断しましたが・・・問題はありますか?』

 

「いや、無い。俺もそう指示を出すだろう。それに、やつらもあれでプロだ。依頼を受けている以上合理的では無い指示は出さないだろうし、従わない。そっちは任せる」

 

『了解しました。それと、現在交戦中のB小隊についてですが────え?』

 

突然、ナビゲーターが困惑混じりの声を上げた。

 

「どうした」

 

『えっと、通信が入りました。グリフィン本部からです』

 

妙に歯切れの悪いナビゲーターの様子を訝しげに思いながらも、ブリッツはすぐに応える。

 

「本部から?クルーガー社長からか?まあいい、繋いでくれ」

 

微かな電子的で耳障りなノイズが一瞬響き、すぐに音質がクリアになる。

 

「クルーガー社長ですか?申し訳ありません。上級代行官の救出にはまだ時間がかかりそうです」

 

『─────なるほど、お前の仕業か』

 

ヘッドセットに飛び込んで来たのは、変声機を使った耳障りな声であった。

ブリッツは走り始めたばかりの足を止めた。

 

変声機を使っても分かる高圧的な声色は、この事態を引き起こした関係者である事を察するには十分過ぎた。

 

『本部経由で通信中。逆探知不可』

 

スマートグラスにそんな文章が表示される。

当然のようにされている逆探知の対策。ナビゲーターが本来の演算リソースを使えば例え複数のサーバーを経由し所在を眩まそうが、幾重にも施された高度なプロテクトを駆使していようが、ものの1分も掛からず発信源の座標をピンポイントで割り出せる。

だが現在ナビゲーターは作戦支援のためにかなりの演算リソースを使っている。いくら彼女でも、これ以上はどうしようもないだろう。

 

『随分と暴れてくれたものだな。おかげで部隊の損耗率が予想を大幅に越えてしまったぞ。R20だけなら、ここまでにはならなかった』

 

この口ぶりに、いよいよをもってブリッツは確信を抱く。コイツは敵だと。今この地区に蔓延る武装集団を纏めあげる存在だと。

 

「・・・そういうアンタも、随分困らせてくれたな」

 

受け答えをしつつ、ブリッツはハンドサインで人形たちに指示を出す。

一時的にライトに指揮を任せ、一〇〇式、RFB、WA2000を先に行かせる。

残りの二人、VectorとFALには残って一緒にいてもらう。

 

それぞれが頷いて、先へと駆け出していく者とその場に残って周囲を警戒する者に別れる。

 

その一方で、話も進んでいく。

 

『甘く見ていた。実戦らしい実戦を知らぬポンコツどもと思っていたが、よもや本物も混じっていようとは』

 

「そっちも、テロリストにしてはよく訓練されている」

 

『我々をその辺にいる蛮族と一緒にしないで頂きたい』

 

「やってる事は同じだろう。────それともPMC崩れとでも言ってほしいのか?」

 

煽るような。それでいて確かめるような。そんなブリッツの一言に、相手は押し黙った。

相手がどんな表情を浮かべているかは分からない。が、少なくとも愉快そうにはしていない事は確かだ。

 

「ずっと考えていたんだ。『もしこの蜂起を実行に移すならどんな勢力なのか』と。素人じゃダメだ。最初は良くても後々破綻する。となるとプロしかいない。それも、高度な訓練を受け実戦経験も積んだプロ中のプロだ。しかし、実際に事を起こすのなら何かしらのモチベーションが必要になる。仕事だとしても、グリフィン相手に戦争を吹っ掛けるにはリスクが大きすぎるからな。下手なプロ気取りは尻込みする。尤も、そこはあのビデオメッセージが答えを教えてくれたが。で、グリフィンに恨みを持つ武装勢力とくれば、PMCしかいない。PMCは現代における花形職業だが、この辺りの地域ではグリフィンに殆どのシェアを持ってかれているからな」

 

相手は未だに沈黙を保っている。

どういう心情なのかは一切分からないが、ブリッツは気にせず続ける。

 

「そして現在、戦力的にグリフィン相手に戦えるPMCは四社のみ。後は消去法だ。グリフィンに恨みを持ち、かつ所属している実行部隊が人形ではなく訓練を受けた人間兵士のみで構成され、かつ大規模に部隊を展開出来る。そんなPMCは一社だけだ。────お前らフレイム・スコーピオンズ社だろ」

 

『───!』

 

無線機の向こうで相手が息を飲んだのが分かった。どうやら当たりのようだ。畳み掛けるようにブリッツは言葉を紡いでいく。

 

「変電所といったライフラインを破壊したのに、病院や学校といった施設が破壊されたという情報はない。そういった分別があるあたり、確かにそこらにいるテロリストよりマトモだろうな。さもなきゃ戦争犯罪だ。

それにナノマシンによる情報保護機能による燃焼処理もそうだ。そりゃあ徹底して情報を隠蔽するだろうな。何せフレイム・スコーピオンズ社もPMCとしては大手だ。それが居住区を攻撃しているだなんて知れたらそれこそグリフィンと全面戦争だ。おまけにこちらは先手を取られてる。報復としては十分な理由だ。ハロルドもそのつもりだったんだろうな。わざとお前たちを迎え入れて、お前たちを叩き潰すことで実績を得て、グリフィン内での立場を確固たるものにする。お前らはそれを利用して逆に叩き潰す選択をしたようだが、そこはハロルドがマヌケだったというだけの話だ」

 

続けざまに言葉を紡ぎながらに、ブリッツは思う。そう考えると色々な辻褄が合うと。

 

しかしだ。

 

「だがそんな事はもう関係ない」

 

いかなる経緯があろうと無かろうと、今現在"事"が起きている時点でブリッツの考えは揺らがない。

 

「ひとつだけ伝えておくぞ。俺は必ずお前らをブッ潰す。首を洗って待っていろ」

 

相手が誰であろうとも、居住区を攻撃したのみならず、話の通じる信頼できる上官を拉致された。その事実が有る限り、ブリッツのやる事は変わらない。

 

『・・・忘れているのか?こちらには人質がいる。いかにお前たちが抵抗しようとも、人質の生殺与奪は我々が握っている。もっと理性的に考えろ。さもなくば、ヘリアントスは切り刻まれ、その肉がグリフィン本部に届くことになる』

 

相手が平静を装った、落ち着き払った態度でそう切り出した。

確かに、その通りだ。その通りではあるが、忘れている訳がない。この怒りの根元がそれなのだから。

 

「分かっているさ。だから丁重に扱えよ。彼女が死ねばこちらに遠慮をする理由がなくなる。お前らが今そうして俺にクソ生意気な口を叩けるのは、彼女がまだ生きているからだ。だが生きていたとしても許す気はない。テロリストには譲歩しない。これは国際常識だ。常識のないお前らは知らないだろうがな」

 

吐き捨てるだけ吐き捨てて一拍溜める。溜め込んだ息とどす黒い感情を言葉として吐き出すために。

 

「お前らが始めた戦争だ。降伏は認めない。五体満足で朝日を拝めると思うな」

 

通信を強制的に切断する。

 

「随分な大口を叩いたわね」

 

茶化すような、呆れるような。そんな口ぶりでFALが言う。Vectorも、やれやれといった具合に肩をすくめてみせた。

 

「言い過ぎたと思うか?」

 

「いいえ?むしろスッキリしたわ。そうでなくちゃね」

 

「早く行かない?敵さん火葬してあげなきゃ」

 

「ああ────」

 

ブリッツが振り返る。同時にレッグホルスターに収めていたMP7を引き抜き、すぐ傍に聳え立つビルの2階に銃口を向けた。その先。例の武装集団、フレイム・スコーピオンズ社の兵士が窓から身を乗り出すようにしてブリッツにSCAR-Hの銃口を向けていた。ゴーグルとフェイスマスクで表情は分からないが、ビクリと体を震わせたところを見るに驚いてはいるようだ。

 

「────灰塵に帰してやろう」

 

そんな様子を見つつもブリッツはMP7のトリガーを引いた。都合3発のバースト射撃。4.6mmスチール弾頭は敵兵士の鼻先に直撃し脳幹を破壊した。痙攣一つ起こすこと無く、糸の切れた操り人形のように力無く項垂れ、窓枠から溢れるように落下。その途中でナノマシンの情報保護機能が作動し青白い炎に包まれ、地面に落ちる頃には灰と化して虚空に舞った。

 

間髪入れず。反対側のビルに照準を合わせる。二方向からのクロスファイアを目論んでいると即座に察して動く。

が、それよりも早くVectorが同様に2階にいた敵を仕留めていた。FALも反応していたようだがVectorに一歩先を取られたようだった。

 

無表情ながらどこか勝ち誇った風に銃をリロードするVectorと、口を尖らせるFALの視線が交錯する。

負けん気を出すのは結構だが、こんなことで張り合うのは正直やめてほしいところだ。

 

それに、少数とはいえこうして敵がこちらの位置を捕捉し攻撃を仕掛けてきた。あまり長い時間同じ場所に留まるのはよろしくない。早急に移動しよう。

 

『指揮官、レイさんたちがC小隊の援護を開始しました』

 

「了解。引き続きサポートしてやってくれ」

 

『かしこまりました』

 

通信が終わり、一つ息をつく。

現状劣勢状態だ。ハロルドも敵であることがほぼ確定。R20の人形たちも戦力としては不安しかない。

 

幸いなのが、こちらには空からの目があること。そして、優秀な協力者がいることだ。間接的とはいえ鉄血と協力するのは気に入らないが、贅沢も言ってられない。使えるものは何でも使う。

 

「さあ、行くぞ」

 

MP7から417に持ち変えて、ブリッツは援護を待つB小隊の元へと向かい、地を蹴って走り出した。

 

 

 





今回はかなり難産でした・・・。
ぶっちゃけ前半はコラボ先の筆者であるchaosraven氏にめちゃくちゃ助けてもらいました。この場でも改めてお礼の言葉を述べさせていただきます。ありがとうございましたぁ!


前回、ゲーム内での戦友を募集したところ沢山の申請が届きまして、一気に50人を越えました。正直そこまで来ないだろうなと思っていたので驚きと嬉しさが同時にやってきました。なんか・・・暖かい・・・!

ところでメンテナンス後のアプデしたらスマホの容量が不足してゲーム出来なくなったんですがドルフロ君重すぎない??
現在執筆に使ってるタブレットでプレイしてます


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