S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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どうでもいいことですが、ぼくはモンエナよりもレッドブルが好きです。
でも周りの人はみんなモンエナの方が好きだって言います。さびしい


2-3

 

 

円柱状に設計されたシェルター。輪郭に沿う形で太い柱が整然と等間隔に並び立ち、その柱間を埋める形で、正面玄関を中心に土嚢を積み重ねて即席のバリケード。もとい遮蔽物を設置。銃弾程度なら問題なく防げる。

ここ最近、鉄血兵の間で急速に配備の進んでいる指向性エネルギー兵器も防げるだろう。

 

シェルターを中心にした半径100mは整地され、不規則ながらコンクリート製のガードフェンスも設置されている。遮蔽物として利用できる。シェルター近くには今回の会議に召集された指揮官が利用した装甲車やジープが駐車されている。

 

そこから更に外側は森林地帯。木や岩影に鉄血兵が身を隠し、今にも飛びだして来そうな様相だ。

今は鉄血側は動きを見せないが、それも長くは続かないだろう事は、防衛側は良く理解している。攻め込むためにきたのだ。動かない理由はない。

 

鉄血側の全戦力は確認できないが、施設に攻め込むに足る規模の部隊が展開しているのは間違いない。

それが一気にやって来た場合、一体どれだけの時間堪えられるのか。ブリッツも、メリー指揮官も想像しきれない。

 

────キッカケが訪れたのは、最初の攻撃から5分後のことだった。

奥の森林地帯から、3機の自走砲台であるジャガーが姿を表した。

 

先と同様に砲撃を仕掛けるつもりなのは明白。そしてそれを黙って見過ごす事はしなかった。

 

シェルターの地上3階に陣取る8名からなるRFチーム。その内の3名。ブリッツの部下であるWA2000を筆頭にTAC-50と、幼児体型でありながら不相応なアンチマテリアルライフル、M99による一斉射が砲撃を封殺。

重厚な銃声が3発分。ほぼ同時に大気を震わせた。次の瞬間にはジャガーは砲撃を行う前に機能を停止。崩れ落ちた。

 

それを皮切りに、森に潜んで静観を決め込んでいた鉄血が一斉に飛び出してくる。

 

ぞろぞろと現れたプロウラーの大群に、2階に陣取った4名のMGチームが徹甲弾の雨を容赦なく浴びせる。瞬く間にプロウラーは原型を留めることも敵わず、残骸を撒き散らし見るも無惨な姿へと変貌していく。

その後ろにはガードもいたが、ついでとばかりに打ち倒される。

今の2体は動きが遅い。先手を取ってしまえば対処は容易い。

 

今度はリッパーとヴェスピドの群れ。二個分隊規模の数だ。2階と3階のMGとRFに向かって牽制射撃を行いながら猛然とシェルターに向かって前進していく。

 

そこを、正面玄関前の土嚢や柱の裏に隠れていた、ブリッツを含む15名のARチームが対処。無防備な所へまともに弾丸を食らい、次々に機能停止へと追い込まれていく。

 

戦術マップを見て状況をリアルタイムで監視してくれている、メリー指揮官からの指示や報告が突発的な状況を押さえ込み、それに合わせてブリッツが落ち着いた対応と動きを可能に。

 

有効射程距離に秀でたMGとRFによって、戦況は一方的な様相を呈していた。

 

しかしそれも、長くは続かない。

一度に攻め込む物量を増えれば、それだけ対応にも遅れが出てくるのは自明の理。

 

それを体現するようにダイナゲートとブルートがわらわらと現れる。

おまけに直線的ではなくジグザグと狙いを定めさせない工夫も拵えて。

 

圧倒的な制圧火力を発揮するMGの人形達でも、一度に処理できる数には限りがある。それが比較的耐久力の無いダイナゲートや軽装のブルートであってもだ。

MGチームの人形には倉庫から引っ張り出してきたアサルトパックを傍らに設置し、長時間の継続射撃を可能にしているが、それだけにリロードにやや時間がかかってしまう。ダミーがいればそれもまた違うのだろうが、生憎ダミーを連れてきている人形。延いては指揮官はいない。

 

ダイナゲートとブルートの大群。その半分も処理できずに、MGからの射撃がピタリと止まる。好機と見て、二つの軍勢は一直線にシェルター目掛けて突っ込んでくる。

 

「ARチーム、ファイア」

 

十分に引き付け、かつ安全を確保できる距離で正面玄関のバリケードに身を隠していたARチーム。総勢15名がブリッツの合図で一斉に姿を現し銃口を迫り来る敵に向け、引き金を引いた。

正確に狙いを定めなくても当たってしまう程に密集したダイナゲートとブルートは弾幕に晒され、瞬く間に鉄屑に変えていく。

 

しかしその弾幕を掻い潜り、一体のブルートが遂にシェルターに到達。即席バリケードの土嚢を飛び越え、目前にいる獲物。ブリッツに対し逆手に持ったナイフを振りかぶる。

一閃。刃が不気味な光を放ちながら横凪ぎに振るわれる。しかしそこに鮮血の赤い彩りは一切なく。更に言えばナイフが振るわれた場所にブリッツの姿はない。

 

その瞬間。ブルートは後頭部を手で掴まれた感覚を覚え───そこから先、ブルートは何が起きたかを理解する間もなく機能停止(ブラックアウト)した。

 

ナイフ攻撃をかわしたブリッツは瞬時にブルートの背後へと回り、後頭部を掴んでそのままコンクリートの地面に顔面を叩きつけた。

頑丈なコンクリートが割れる程の力でもって叩きつけられたブルートは一溜まりもなく。更にコアにMk23で2発撃ち込むという徹底した処理によって二度と動くことはない。

 

「しきか~ん、気を付けてよね~」

 

「ああ、もう大丈夫だ」

 

欠片も心配なぞしていないとわかるRFBの発言と、落ち着き払ったブリッツの声が、銃撃戦の最中だというのにやけに人形達の耳に残る。FALはFALでブリッツに見向きもせず、近付こうとするダイナゲートの群れにMGL-140の榴弾を叩き込む。

 

戦利品回収といった具合にブルートのナイフを回収し、ブリッツは即座にHK417に持ち変えて銃撃を再開。

同じように飛び込もうとしていたブルートに7.62mm弾を食らわせる。銃を振るようにして空マガジンを弾き飛ばし、新しいマガジンをレシーバーに叩き込み更に銃撃。あまりに早い再装填に近寄る間もなく撃ち殺される。

 

FALやRFBといったS10地区の第一部隊メンバーからしてみれば見慣れた光景ではあるが、ブリッツを知らない他地区の戦術人形や、たまたまドローンカメラ越しにブリッツを見たメリーからしてみれば、その手際は末恐ろしいものであり、それ以上に頼もしさを感じた。

 

こういったシチュエーションにおいて、グリフィンに属する戦術人形に共通して思うことは、指揮官の身の安全を確保すること。

指揮官無くして部隊の展開や基地の運営は出来ない。ぶっちゃけてしまえば、指揮官さえいれば部隊がロストしても基地が攻め落とされても何とかなるのだ。だから戦術人形は自分を使役する指揮官を守ろうとする。

 

それは今回の防衛戦でも同様であり、こうして戦線に立って戦術人形たちと肩を並べて戦う事は、かなり稀である。

 

グリフィン内で出回っている社内報では、実際に戦場に赴き鉄血相手にキルスコアを稼いでいる指揮官の存在を報じているが、グリフィン全体で見れば戦う指揮官の存在はかなりの少数であり、それでいて大抵が批判的な意見が集まる。実際、ここに集まる指揮官達はそういう批判的な視点で戦う指揮官を見ている。わざわざ危険な場所に飛び込むなぞバカがやることだと。

彼女たちは、戦う指揮官という存在に不慣れであり、またそれが当たり前の環境で今日まで戦ってきた。

 

それ故に思う。指揮官と共に戦う事の心強さ。頼もしさ。

彼の部下であるFALとRFBも、それが良くわかっているのだろう。ブリッツに対して一切の不安も抱いていない。

だからこそのあの態度。信頼していなければ出来ない。

羨ましかった。自ら戦場に出て、戦術人形と同等の実力を持つ指揮官を持つ、あのS10地区の人形が。

 

だが今日だけ。今だけは彼の部下だ。指揮官にカッコ悪いところは見せられない。

 

何を言うでもなく、示し合わせたように彼女達の意思は統一され、士気が高揚する。狙いは精確性を帯び、命中率が上がり、弾幕の質と密度が上がる。ダイナゲートとブルートの大群も、次第に近寄る前に破壊されてしまう。

 

その間にMGチームもリロードを終わらせて加勢。

弾丸の点と点が密集し、やがて面攻撃となって鉄血の頭を押さえるに至る。

 

「メリー指揮官。救援はあとどのくらいですか」

 

『あと10分です!なんとか持ちこたえてください!』

 

「10分か。了解」

 

祈るように振り絞った声で声援を送るメリーに対し、ブリッツは終始冷静に返す。

ずっと銃を撃ち続けていたせいで時間感覚が狂ってきた。いつの間にか開戦から20分も経っていたらしい。

 

これなら何とか持ちこたえられそうだと安堵する反面、まだ何が起きるか分からないという不安に苛まれる。

倉庫内の弾薬だって無限ではない。種類によってはそろそろ在庫切れという事態になっていてもおかしくはない。

 

土嚢に背を預け、手持ちのマガジンを確認する。土嚢のおかげで直撃は受けないが、すぐ頭上を高速で飛来するエネルギー弾の存在はあまりいい気分にはさせてくれない。

隠れたまま、ベストに詰めた30連マガジンは残り3つ。90発分を地面に置く。今装填されている分を足して残り115発。10分は持たない。補給がいる。

 

「一○○式かVector。7.62mm弾はあとどのくらい残ってる?」

 

『こちらVector。7.62mmはあと2ダース。後は5.56mm弾が殆ど』

 

「・・・・・・了解。とりあえずFALやRFBの分も均等にマガジンに詰めて全部持ってきてくれ」

 

『了解』

 

残弾数の心許なさに、ブリッツはため息が溢れそうになるのを辛うじて堪えた。

残り10分。永い10分になる事は明白であり、確定である。

 

『ブリッツ指揮官。こちらMGチームのPKPだ。弾が切れそうだ。救援はまだなのか』

 

『指揮官!M99です!もう弾がなくなりそうです!』

 

今正に恐れていた事態が発生している。

どれほど火力に秀でていても、弾薬がなければどうしようもない。

 

ゲームのように無限に弾薬補充が出来る訳がなく、必ずクリア出来るよう難易度調整がなされているわけでもない。

弾が切れればどうなる?簡単だ。物量に押し潰されてからのなぶり殺しが始まる。

それで終わりだ。自分や今戦っている戦術人形だけじゃない。地下の奥深くに居座る指揮官連中やヘリアントス上級代行官も、満遍なく殺される。

ましてや鉄血からしてみれば目の上のたん瘤であるグリフィンの指揮官を大勢殺せるチャンス。容赦はしないだろう。

 

どうすればいい。どうすればこの状況を好転させられる。

頭を使う。必死に回転させて、打開策を思案する。

 

『───ッ! ブリッツ逃げて!』

 

ヘッドセットに飛び込むメリーからの叫び。緊急性が高いと想像できる発言であるが、全く別の事を考えていたブリッツには、すぐにその台詞の真意を掴むことができない。

 

危険な戦場において、一瞬の判断の遅れは即死に繋がる。最前線で戦ってきたブリッツはそれをよく知っており、体がそれを記憶している。

だから真意を掴めずとも、その場から離れるという回避行動を無意識下で取ることが出来た。

 

しかしほんの数瞬だけ遅かった。行動も対処も。

 

ブリッツがそれを自覚したのは、すぐ背後から襲いかかる爆発音と爆風に曝されたその瞬間の事であった。

 

 

 





戦闘描写や銃撃の描写って難しいっすねぇ・・・・・・。実銃撃ってみてぇけどな~俺もな~。

地の文もワンパターンになっちゃったりだから、もっと本読んで勉強しないといけないな~って思っちゃいます。

作中に出てきた総勢32名の戦術人形。残り30名はどうぞご自由に想像して活躍させてください。(投げ遣り)


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