ビックリしてレッドブル吹き出してタブレット汚れちゃった('・ω・`)
今回詰め込むだけ詰め込んだんでクッッッッッソ長いです。暇な方推奨
7.62mm口径の銃身6本がモーター駆動によって高速で回転し、毎分2000発という圧倒的な発射レートでI.O.P社製Mk211徹甲榴弾という脅威を吐き出す。
左から右へ。なぞるようにして銃弾達の軌跡によって作られた"線"が流れてゆく。
堅牢なガードのシールドは紙細工よろしく、7.62mm弾によって見るも無惨にグシャグシャに破壊され、それを持っていた者も容赦無く脅威の餌食となる。
防壁が崩れてしまえばもう
厄介な先陣は
頃合いだ。
「Vector、一◯◯式。行け」
合図と同時に二つの影がブリッツとLWMMGの横を後ろから通りすぎた。
頭を下げて身を屈め、被弾面積を小さくした前傾気味な姿勢で敵陣に切り込んでいく。
「他は二人の援護だ。フレンドリーファイアなんてつまらんミスはしてくれるなよ」
『あら?誰に言ってるのかしら?RFB、わかる?』
『さっぱりわからないね!』
慢心を見せ、忠告に対し茶化すような口ぶり。しかしFALとRFBはすでに援護射撃を開始。浮き足だった敵に他のS10地区所属のAR人形も、今まさに敵陣に切り込もうとしている二人の為に道を切り開いている。RF組の正確無比な狙撃も組合わさり、的確にダメージを与えていく。
乱れた隊列の一部に穴が空く。SMG二人は迷わずそこへ飛び込んだ。
敵が密集し、その全てが武装している。
普通ならば絶望的な状況。しかし飛び込んだ二人は、生憎と普通ではない。
始めはVectorだ。二つの
バイザーは破損し、顔面にVectorの右足がめり込む。
強烈な勢いにヴェスピドは仰け反るが、Vectorの右足は顔面を捉えたまま離さず、やがて地面に叩きつけるようにして頭部を踏み潰した。
空き缶を気安く潰すように、ヴェスピドのヘッドパーツは原形を留めぬほどに破壊され、二度三度義体を痙攣させた後、止まった。
間髪入れず。足元の残骸をそのままに、二丁のヴェクターを使い左右にいた別のヴェスピドとリッパーに向けて、屈んだままマガジンに入った残り10発にも満たない.45ACP弾を全て浴びせる。電脳とコアを滅茶苦茶に破壊された2体は為す術もないまま機能停止。崩れ落ちていく。その最中で起き上がりがてら、右足を軸にしてリッパーに後ろ蹴りを食らわせる。外骨格のアシストもあって、無防備に蹴られたリッパーは紙屑よろしく周辺に蔓延っていた鉄血人形を何体か巻き込みながら吹っ飛ばされる。
同時に、銃殺したばかりのヴェスピドの襟首をひっ掴んで立たせる。
瞬間、銃撃がVectorに襲いかかる。が、立たせたヴェスピドが盾の役割を果たし、一発の被弾もなく済んだ。
数秒足らずで腕やら足やらが千切れ、ズタボロに破壊され尽くした哀れな人形が出来上がる。
その間に手早くリロードを済ませ、盾としての役割を終えた人形を放り捨て目についた人形を次々に銃火を浴びせる。
Vectorの周囲には鉄血兵が蔓延っている。下手に撃てば同士打ちになる為、迂闊な行動がとれない。
ならばナイフで、と判断を下してもその前にVectorは目敏く察知して即座に銃撃。
そういった情報が鉄血人形間で錯綜し、フリーズでも起こしたのかと思えるほどに行動が取れなくなる。
最早Vectorの独壇場と化していた。
そこへ切り込んできたのは、ナイフを持った人形ブルートだ。小柄ながらも素早い動きでVectorに向かって背後から突進する。
Vectorは背を向けたまま、別の人形を攻撃している。絶好のチャンス。逃す筈もない。
ブルートはナイフを振りかぶり、Vectorに襲い掛かる。
が、後少しというところでブルートの意識はブラックアウト。機能を停止した。
その理由。横から割り込むようにして、柄の長いトマホークを投擲しブルートの頭部に叩き込んだ一○○式機関短銃がやってきたからだ。Vectorは背後からブルートが接近してきている事に気が付いていたが、同時に一○○式が接近して来ていることにも気が付いていた。だからブルートに対し何のアクションも示さなかったのだ。
一○○式は、ヘッドパーツに深く食い込んだ斧を無理矢理引っこ抜き回収。動かなくなったブルートを蹴飛ばしてどかす。右手に半身である機関短銃を、左手にトマホークという彼女独自の歪な二刀流が完成する。
鉄血兵は一○○式の斧を警戒し距離を取る。
一○○式機関短銃という銃の情報は鉄血兵同士のネットワークで共有されている。銃という飛び道具ではなく、銃剣と斧を警戒しての措置。頑丈さを売りにしている鉄血製戦術人形ならではの対応。
そこに、Vectorが付け込んだ。素早く二人の
粗方片付けたら適当に一番近くにいたリッパーに接近。高速で飛来する青緑のエネルギー弾を掻い潜り肉薄。
勢いをそのままに銃のストックで下顎に一撃。稼働部が損傷したリッパーの口がパックリと開く。
そこに焼夷手榴弾を捩じ込みピンを抜いた。腹の辺りを蹴り押すようにしてリッパーを後退させる。
リッパーが口に突っ込まれた手榴弾を取り除こうともがくが、それより早く焼夷手榴弾は炸裂。爆発時の威力自体は大した事無い。が、爆竹を手に握った状態で破裂させたら大怪我を負うように、衝撃でリッパーのヘッドパーツは内部から滅茶苦茶に破損。電脳も致命的な損傷を受けるに至り、その場に倒れた。
「思ったより地味だね」
「花火みたいなの期待したのに」と今しがた焼夷手榴弾で倒したリッパーの姿を見て、Vectorは小さく不満げに溢した。口内という限定されたポイントでの炸裂は確かに威力としては申し分はなかったが、焼夷手榴弾というシロモノにしては演出面での効果が(彼女的には)今一つだった。
そこで彼女は、不満を解消するために右手に持ったヴェクターのマガジンを変えた。そのマガジンには帯状の赤い線が入っている。
チャンバーに弾丸を送り、敵に向かってフルオート射撃。射線上にいたヴェスピドに命中。その刹那、ヴェスピドのボディに爆発のようなオレンジ色の閃光が走った。
弾丸の直撃によりボディ外郭は破損。そこを中心とした生体部品は焼け落ち、内部のメカニカルな部分が露出する。そこへ更に銃弾が撃ち込まれ、火炎の高熱による電子機器の熱害によってショートを起こし、機能不全が発生。
遂には電脳が焼き切れ
ILM社製45口径焼夷弾。Vectorが撃った弾丸の正体だ。
戦術人形の防弾装備の進化に対する回答の一つとして開発された特殊弾頭の一つ。グリフィンでは非制式採用だが、Vectorとブリッツが「
今回が初使用だが、効果は十分だと確認出来た。
その上でVectorは
「いいね」
口角を吊り上げ、満足げに微笑んだ。愉しげに焼夷弾を更にばら蒔いた。
一方で一○○式は、バックパックから発煙手榴弾を二つ取り出し、ピンを抜いて敵集団に向けて放り投げる。底部から白煙が吹き出し徐々に広がっていく。
白煙が集団の一角を覆いつくすのに然程時間は掛からなかった。すぐ隣にいる仲間の存在すら視認する事が困難な程に濃い煙幕。自然と動きも緩慢になる。
そんな白煙の中に、一○○式は躊躇う事無く飛び込む。
途端に様々な異音が煙幕の中から聞こえてくる。
金属が衝撃でひしゃげる音。潰れる音。切断される音。
ありとあらゆる破壊の音。それが一切途切れる事無く掻き鳴らされ続ける。
やがて滞留していた煙が風に吹かれて霧散した。白煙というベールが取り払われ、そこから表れたのは鉄屑と化した鉄血人形が倒れ伏している光景。しかし一○○式の姿は無い。
それもその筈。既に見切りを付けて別の集団に銃剣を突き付け、吶喊しているのだから。
一体のヴェスピドの胴体。コア部分に銃剣を突き刺し、掬い上げるようにしてヴェスピドを宙へと放り投げる。
放り投げられた鉄血兵が地面に着地するより早く、一◯◯式は次の獲物を仕留めにかかっている。
銃のストックで胸辺りを突いて体勢を崩し後退させる。そこへ縦に一閃。高周波ブレードは何の抵抗もなく、まるで熱せられたナイフに当てられたバターのようにスルリと、真っ二つに斬られた。
それを見届ける間もなく次の敵へと肉薄。一◯◯式にとって、倒した敵にもう感動はない。これから倒す敵が最優先であり感動の対象である。
リッパーの首に銃剣を水平に突き刺し、横へと薙ぐ。生体部品である人工肌の薄皮一枚を残して首が胴体から落ちる。
トマホークでヘッドパーツを電脳ごと叩き割る。
コア部分に銃剣を突き刺し、そのままフルオート射撃。胴体に風穴が空くまで弾丸を撃ち込む。
そんな事を繰り返している内に、一◯◯式の身体は徐々にドス黒い赤に染まっていく。鉄血兵から噴出する人工血液と潤滑油。それらが敵を仕留める度に一◯◯式を染めていく。
染められていく内に、妖しく光る一◯◯式の紅い瞳がより際立っていく。
さしもの鉄血兵も、恐ろしさを覚えたのか。やや離れた位置からイェーガーがスコープ越しに一◯◯式を見る。
味方集団の隙間から見える一◯◯式の姿を捉え、誤射せぬよう意識しつつも引き金に指をかける。あと少し指先に力を加えれば、エネルギー弾が鮮血に染まった恐ろしい
しかしそれは叶わない。何故なら基地のルーフトップからSV-98がイェーガーに狙撃を敢行したためだ。
一発で脳天を貫かれ、引き金に指をかけたまま機能を停止。ボルトハンドルを引き、SV-98は更に狙撃。
彼女が狙うのは中衛のやつらではない。それはARの仲間に任せる。狙いは後方から狡猾にも狙っているスナイパーだ。
撃たれる前に撃つ。射程距離と命中精度の高さを謳う彼女に取って。ましてや、任務でよく動く対象を自分も動いている状態で狙撃しているような状況が多い彼女にとっては、こうしてバイポッドを展開し伏せた状態で撃てる援護射撃など、鼻唄混じりに容易く行える所業であった。
それはすぐ隣にいるWA2000も同様だった。
SV-98のようなボルトアクションとは違って、連続して撃てるセミオートのWA2000は、次々に敵を屠っていく。
こういうとき、SV-98は銃の構造からくる射撃速度の差を恨めしく思ってしまう。
そんな事を思っていても仕方ないことは分かっているが、どうしても考えてしまうのだ。
だからこういう時、SV-98は考え方を変える。射撃速度の改善はどうしようもない。ならば、今の自分は何が勝っていて、そこで何が出来るか。
彼女の答えはこうだ。
「より遠くの敵を仕留めればいい」
探す。見つける。イェーガーだ。まだ移動中だ。移動速度と風を読む。狙いをつける。撃つ。命中。仕留めた。
距離にして約850mの遠距離スナイプに成功。
「むっ・・・・・・」
それに気付いたWA2000の顔つきが変わる。それもそうだろう。自身の有効射程外の敵を一発で仕留められたのだから。
ボルトハンドルを引き、更に一発。今度は約870mの狙撃に成功だ。
フフンと得意気に鼻を鳴らす。
「むむむ・・・・・・」
悔しげに唇を尖らせて唸るWA2000はお返しとばかりに空になった箱形弾倉を交換し、有効射程内のイェーガー5体を瞬く間に仕留める。
今度はWA2000が得意気にニヤリと笑い、SV-98が悔しげに頬を膨らませた。
これを機に、二人の小さな戦いが静かに勃発した。
それと同時に、基地左翼方面から接近している敵集団の左側面を叩こうと、ブリッツとLWMMGは敵に悟られぬよう移動していた。
多少遠回りになってしまったが、ブリッツの操縦でライドの後ろにLWMMGが乗ることで移動時のロスを無くし、ここまでは順調に進んできていた。
そう、"ここまでは"。
敵集団の横っ面が見えた所で急にヴェスピドやリッパー。おまけにプラウラーまでブリッツの存在に気が付いて銃口を向けてきた。
「あ、ヤバイな」
どこか他人事のような。呑気さすら窺えるような反応をブリッツは溢した。その瞬間、鉄血兵たちが一斉にブリッツとLWMMG目掛けて銃撃を開始した。
「頭下げてろ」
あくまで冷静にブリッツはLWMMGに命じ、その通りに彼女は頭を下げた。
敵から放たれたエネルギー弾はライドに当たる。が、元々これは鉄血からの鹵獲品だ。頑丈さは折紙付きである。そうそう壊れはしない。
ブリッツも伏せた状態のまま射撃レバーのトリガーを引く。
M134ミニガンの銃身が回転を始め、大量の7.62mm弾をばら蒔き敵に浴びせていく。凪ぎ払っていく。
バタバタと倒れていく。
敵からの銃撃が止んだ辺りで体勢を直し、ブリッツはスロットルペダルを大きく踏み込み操縦レバーを前に倒した。
ライドは地を蹴って走り出す。同時に、ミニガンを撃ち続ける。ライドに搭載された高精度姿勢制御バランサーがミニガン射撃時に生じる強い反動も制御し、例え移動中であっても安定した制圧射撃を実行させてくれる。
中衛のほとんどを薙ぎ倒した辺りで、突如ミニガンの射撃が止まった。
「あっ」
やっちまった。そんな感じの声がブリッツの口から無意識に溢れ落ちる。実際言いそうになったが喉元まで出掛かった所を何とか堪えて飲み込んだ。
コントロールパネル上のディスプレイに表示されたミニガンの残弾数がゼロを示していた。
つまりは弾切れである。
「────ブリッツ?」
低く冷たく静かに、それでいて怒気も籠った声がブリッツの背後から聞こえる。腹の底が冷え込むような寒気を覚え、ビクリと彼の肩が震えた。
「まさか、800発はあった弾薬全て使いきった。なんてこと言わないよね・・・・・・?」
弾薬コストに厳しい女、LWMMG。好きな言葉は百発百中。嫌いな言葉は無駄撃ち。
そんな彼女が投げ掛ける問いかけ。ブリッツは答えられなかった。
しかし、沈黙は是なりという言葉があるように、その無言こそが何よりの返答になってしまった。
「また後で話そうか」
「・・・・・・はい」
帰還後、副官からのお説教が確定した瞬間だった。
ともかく、仕事である。弾切れによる戦闘能力の消失で、ライドは無用の長物と化した。このまま使っても盾にしかならない。
一つわざとらしい咳払いをかませてから、ブリッツは後ろに乗るLWMMGに告げる。
「ライト、行くぞ」
「了解」
言って、LWMMGはライドから降りる。ブリッツもそれに続き、背中に背負うようにして所持していたHK21Eを構える。それを、態勢を立て直そうとしている鉄血兵達に向ける。
一度崩した態勢を立て直させる理由はない。カバーに向かっている鉄血人形目掛けて二人は銃撃。
.338ノルママグナムと7.62mm弾の嵐が吹き荒れる。
「リロード」
「OK」
LWMMGの後ろに回り、HK21Eのボックスマガジンを手早く交換。装填を行う。
「完了」
「了解。変わって」
今度はLWMMGがブリッツの背後に回る。機関部にちょっとした改造を施し、200連装ボックスマガジンを取り付けられるようにした中機関銃に弾薬を装填する。その間をブリッツがカバー。幾度となく繰り返してきたコンビネーション。一つ一つの動きに淀みや迷いはなく、何も言わずとも標的の遠近を合わせ、効率的に敵集団を外側から排除。削っていく。
その光景を、ドローンカメラから転送される映像を指揮システムから見ていたジルフォードは、その表情を驚愕に染め上げていた。ブリッツの動きに気付いた彼が、何かサポートが出来ればとドローンをそちらに飛ばしたのだ。
いくら外骨格を身に纏い武装をしても、いくら戦術人形を同行させても、大量の鉄血兵相手では力不足だろうと思っていた。
しかしそれは要らぬ心配だったと気付かされた。
銃火に曝されようとも冷静さを失わず反撃し、使えなくなった兵器を即座に放棄して即座にマシンガンで攻撃を継続する。
闇雲に撃つのではなく、きっちりと選定した上で敵の頭を押さえ込み、かつ撃破する。
如何に鉄血製戦術人形と言えども、1発2発ボディに撃ち込まれればそれだけで深刻なダメージだ。彼らに対応しなくてはならない。
しかし、内側に潜り込んだVectorと一○○式にも対応する必要がある。さもなくば、内側から部隊が食い破られるからだ。
イェーガーやストライカー、ジャガーによる後方からの支援攻撃も、基地屋上からの狙撃部隊が目敏く撃破している。移動中の鉄血兵まで潰してきている念の入れようだ。
対応を決めあぐねている外と内の中間にいる兵達は、AR人形が形成した防御陣地から一斉射撃を食らって倒れる。
時折グレネードまで飛ばして完膚なきまでに破壊するという周到さ。
敵の心理を読み、知略を巡らせ、効率とリスクを天秤にかけて実行に移す。そんな戦略性の高い戦い方とはとても言えない。
高い火力と技術による、戦術という名の力押し。それでも、その戦略性の無い力押しの戦術に、頑強な鉄血兵が劣勢を強いられている。
信じ難い光景であった。たった10人前後。一個分隊規模の戦力加入で、戦況を引っくり返してしまった。
自分が知っている常識という枠組から逸している。
そんな分隊の内の一人。一体に、ジルフォードは背中を向けたまま声をかける。
「君は行かなくていいのか?」
「もう手遅れよ。今行っても大して役に立てないわ」
憮然と、というよりかは拗ねているような口調で、マイクロUziは口を尖らせながら答えた。
ブリッツの命令で、基地内部にクリアリングをかけていた彼女の仕事は終わっているのだが、すでに仲間が大多数を食い荒らしてしまった。
今日のUziの戦果は、クリアリングの際遭遇したリッパー5体だけだ。既に侵入経路も塞ぎ、今はジルフォード指揮下の人形が警戒している。
何でもないような顔をしているが、ジルフォードからしてみればUziも十分に枠からはみ出した人形だ。
クリアリング時の動きと判断。敵との咄嗟の遭遇にも驚かず怯まず狼狽えず、冷静かつ迅速に排除。
今彼女の足元に転がっているリッパーだった鉄屑も、Uziの戦果の一つであった。頭部の電脳と胴体のコアが綺麗に撃ち抜かれている。
まるでアクション映画の主人公だ。
「君たちは、強いんだな」
「かなり鍛えられたから、
「彼は何者なんだ?」
「さあ、私たちもあまり知らない。本人も語らないしね。多分元軍人」
なるほど、軍人か。ジルフォードはそう納得するしかなかった。
二人はドローンから送られる映像を見る。HK21Eを構えて撃ち続ける
そこへ、通信が入った。
ジャミングで使えない筈の通信機材から、着信を伝えるアラームをがなり立てたのだ。
当然すぐに応答する。
「こちらS08地区司令基地」
『S10から援護にきたM2HBよ。たった今ジャミング装置を全て破壊したわ』
「・・・・・・ああ!こちらからもジャミングの消失を確認出来た!感謝する!」
『あと1分ちょっとでそちらに戻るわ。本部からの増援と一緒にね』
吉報に次ぐ吉報だった。ヘリが戻ってきてくれればあとは消化試合だ。
すぐにブリッツに通信を繋ぐ。
「ブリッツ指揮官!こちらジルフォードだ。たった今そちらのM2HBがジャミング装置を破壊してくれた」
『了解。こちらでも基地との通信リンク復活を確認した。ヘリからの支援攻撃に備え、一時撤退します』
「了解。気を付けてくれ。アウト」
───この通信が終了した約1分後。M2HBを乗せた武装ヘリと、グリフィン本部からやって来た支援部隊の到着により、形勢は一気にグリフィン側に傾く。
上空から降り注ぐ暴力的な弾丸の雨は満遍なく敵部隊にダメージを与え、尽くを金属の残骸へと変えていく。
地上に降りた支援部隊の活躍もあり、多大な損害を被った鉄血兵は撤退。その場に残ったのは、大量の薬莢と爆発によって生じたクレーター。そして、鉄血製戦術人形だった物。
そして、傷だらけのグリフィン戦術人形による歓喜の笑顔と歓声であった。
そして現在、ブリッツ主導のもとS10地区司令基地の部隊の撤収準備が、着々と進められている。
その最中で、ジルフォードがブリッツに手を差し伸べていた。
「ありがとう。おかげで助かった」
「いえ、間に合って何よりでした」
ジルフォードの差しのべた手をブリッツは握る。他の人形も同様に握手を交わしたり、泥だらけ傷だらけなのも気にせずハグをしたりと、非常に和やかな雰囲気に満ちている。
今回の戦闘で被害の大小は様々にあるが、S08地区司令基地の人形が完全に破壊されるという事態には陥らなかった。十分に大勝利といえるだろう。
「何かあれば、また呼んでください。すぐに駆け付けます」
「ああ、それはこちらも同じだ。困ったことがあったら言ってくれ」
「あら、それは私たちもいいのかしら?」
指揮官二人の会話に割って入ったのは、今回本部から派遣された支援部隊。FN小隊の隊長FALであった。
その後ろを、同じく小隊メンバーであるFN49が「ちょっと・・・!失礼では・・・!?」と慌てた様子でおろおろとしている。FNCはS08のFNCと鉢合わせし、仲良さげにチョコを頬張っている。
そして、FALの隣には兎の耳を彷彿とさせるようなリボンの付け方をしている白い髪の戦術人形、Five-sevenが、表情を暗くしてブリッツを見ていた。
(支援部隊って、FN小隊の事だったのか)
本部に支援を要請した際、部隊を送るとは言われたがどこの誰々が来るとは聞いていなかったブリッツは、これには少々面食らう。
同時に、Five-sevenの表情にも納得がいった。
「ブリッツ。撤収準備、完了したわ・・・よ」
そこへ、S10の方のFALがやって来た。やって来てしまった。
人形である彼女たちにとって、他の基地にいる同型人形と鉢合わせる、というのはさほど珍しくはない。
珍しくはないが、これに限って言えば珍しかった。それも、悪い意味で。
「あら。アナタ、
FN小隊のFALも彼女に気付き、ブリッツを褒めた。それに対しブリッツは「ああ、どうも」となんとも歯切れの悪い返答をしてしまった。
それどころではなかったのだ。
「あっ、FAL!そろそろ帰って来いって!」
FNCが声をあげる。どうやら本部の方から撤退するよう催促がきたようだ。
「もう、せっかちね。アナタ、ブリッツって言ったわね。機会があれば、また会いましょう?」
「ああ、その時は紅茶とチョコレートをご馳走しよう」
「流石ね。楽しみしてるわ」
言って、FALは踵を返して本部のヘリへと歩き始める。FNCもFN49もそれに合わせて足を進める。
「・・・・・・ねえ!」
Five-sevenが声を上げた。FN小隊のFALではなく、S10のFALに向かって。
彼女は口を開けてはすぐに閉じを繰り返す。言いたいことはあるが何を言ったらいいかわからない。そんな風だ。
「・・・・・・もういいから、行きなさい。置いてかれるわよ」
そんなFive-sevenの様子を見かねてか。FALが告げる。それによってFive-sevenは俯き、口を固く強く閉じた。
やがて彼女も仲間と同じように振り返り、ヘリへと搭乗した。
まもなくヘリは離陸し、基地から遠ざかっていく。
残された二人。事情を知る二人の間に沈黙が流れ始める。
空気を読んでか。ジルフォードは静かにその場を離れてくれた。
「・・・・・・どうだった。かつての部下は」
「・・・・・・別に。昔の話よ」
「そうか。そうだな。さあ、帰り道を探そう」
「銃弾は一回に一発、でしょ」
ブリッツがFALの頭をポンっと、優しく撫でた。労うように。励ますように。
それをたまたま見た一○○式が、「指揮官!一○○式にもしてください!」と返り血塗れなのも気にせず近付く。
CZ-805とAR70にRFBがそれに悪ノリしたり。
WA2000とSV-98が苦笑いを浮かべて見ていたり。
OTs-12がニヤ付きながらUziに「あんたはいかないの?」とあおったり。
あおられたUziは「い、いかないわよ!」と顔を赤くして否定したり。
Vectorは電池が切れたように既にヘリの中で眠っていたり。
皆を他所にLWMMGとM2HBが水筒を片手にお互いを労ったり。
そんな皆を見て、FALが笑顔を浮かべたり。
そんなFALを見たブリッツが、まとわりつく少女たちを適当にあしらいながらも満足げに一度頷いて
「よし、全員。帰還するぞ」
優秀な
今回一万文字越えました。長い(確信)
ゲームではS08地区って鉄血に落とされてますが、本作品ではそんなことはないです。
本作品のFALの姐さんは元FN小隊隊長を勤めていましたが、ある任務がキッカケで隊長格を剥奪。解体処分されるところをブリッツに拾われたという過去があります。
機会があれば、S10メンバーの過去話とかやりたいね。(需要があるかは不明)