S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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みなさんイベントはどうですか?
自分はE1-1を周回20回目にしてグローザさんを二体確保しました。
さあ次はPSG-1だ・・・


5-2 ―味方部隊隠密護衛任務―

今回の任務は"子守り"だ。

嬉しい事に、この度新入り数名が正式にこの基地に着任する事を決めてくれた。

 

そんな彼女(新入り)たちのファーストミッション遂行を護衛してやるのが、今回の任務だ。

 

USPコンパクト、ステアーTMP、M249、T65。彼女たち4人を纏めて第四部隊と呼称する。

第四部隊は新兵訓練(ブートキャンプ)を済ませてはいるが、まだまだ経験が足りてない。ましてや現場はS09地区だ。俺たちがこっそり助けてやろう。

 

俺たちがまず現場に先回りし、周辺を掃除。

彼女たちの安全を確保する。

 

そこからは状況次第だ。部隊に追従するか先回りするか、臨機応変に対応する必要がある。

 

いいか。今回の任務で一番大事なのは、「第四部隊に見付からない」事だ。現場で俺たちの存在がバレればややこしい事になる。

見付からず、悟らせずに。過度に助けず、しかし見捨てず。

俺たちはあくまで、彼女たちに自信を付けさせる一助をするだけだ。

 

困難な任務だが、必ずやり遂げよう。

 

 


 

ナビゲーターの指示の下、第四部隊は予定通りにポイントD-7に到着。乗ってきた装甲車から隊員4名は周囲を警戒しながら降りる。

 

見渡す限り、ここは廃墟の町だ。大戦の影響で数々のビルが元の形を失い崩れ、その巨大なコンクリートの破片が辺りに散らばっている。

大戦が無かった頃、今日のような快晴の日には多くの人間で溢れていたのだろう事を想像させる。

 

銃痕だらけになって放棄された一般車に、砲撃によりひしゃげてひっくり返った装甲車。

爆発によって抉れたアスファルトには、泥にまみれた空薬莢や空の弾倉が大量に転がっている。プラスチック製の弾倉に至っては、長時間雨風に曝された事で劣化し、中には割れて内部のバネが露出しているものもあった。

 

あれもこれもどれも。見える全てに大戦の傷痕が刻まれている。

 

メインストリートだった道のど真ん中に停車した、すっかり見慣れてしまったグリフィンの装甲車も、ボロボロに破壊され朽ち果てたゴーストタウンの中では違和感が芽生える程にその存在は浮いている。

 

そして、第四部隊隊長に抜擢されたUSPは気づく。装甲車と同等に浮いた存在に。

 

瓦礫に紛れて、数多の鉄血人形が機能を停止し倒れ伏している。それも、やけに真新しいものばかりだ。

 

損傷は大小様々だが、そのどれもが電脳とコアが破壊されている。中にはその二つのみを破壊した、些か綺麗すぎる壊され方をしたものまで。

 

USPは思案する。ここでの戦闘は確認されていない。それはナビゲーターから聞いている。

ではこれは?昨日以前のものだとしても、人形自体が新しすぎる。

 

まるで、ついさっきまで動いていたような。

 

「USP。どうするの?」

 

M249が気だるげに問う。面倒だから早く終わらせよう。彼女の顔にはそう書いてあった。

 

「えっと、一先ずここにある鉄血の残骸を回収しましょう。ちゃんと機能停止したか確認した上で回収してください」

 

「りょーかーい」

 

覇気の無い間延びした声で応え、M249は動き出す。

TMPもT65もせっせと鉄血人形を背負ったり引きずったりと、苦労しながらも装甲車の中へと放り込んでいく。

 

────その様子を、小高いビルの屋上から監視する4つの影がいる。

 

「ミスったね」

 

影の一つ、Vectorは抑揚のない声で言う。

 

「FAL、アンタが壊した人形を見てUSPが疑いを抱えちゃったよ」

 

「なんでよ。きっちり殺したじゃない」

 

Vectorの言にFALが不満げに返す。彼女は今、偶々捨てられていたブルーシートで作った即席の日除けの下に座っている。

 

「壊れかたが綺麗すぎ。もっと雑っぽくやらないと」

 

「雑にやるのは私の美徳(センス)に反するわ」

 

「そういう問題なの?」

 

「どっちみち、ガラクタが真新しいんだから綺麗に壊そうが雑に壊そうが、USPなら遅かれ早かれおかしいって気付く。それに彼女がどれだけ疑ったとしても、私達がいるという結論にはならないわよ」

 

そう締め括ったFALに言いたい事はあるが、これ以上は不毛だと判断し、Vectorは黙って新しい棒付き飴の包装を取っ払った。

 

やがて、周辺の目ぼしい物を回収し終えた第四部隊は移動を開始。装甲車を中心に4人纏まって周囲を捜索するようで、一先ずはメインストリートに沿って移動している。

 

『VIP移動中。追跡する』

 

無線にブリッツの声が届く。道を挟んだ反対のビルからブリッツとLWMMGが第四部隊を監視している。

 

「了解よ。ナビゲーター、周囲に敵影は?」

 

FALが空を見上げながら問いかける。

視線の先にはドローンが一機滞空している。

 

第四部隊が来る前にブリッツたちが飛ばした偵察用ドローンだ。戦術マップの形成にも使われる偵察用ドローンに搭載された高性能カメラは、例え100m先の人間の表情はおろか、その周辺の小石までもがハッキリと識別できる程の高い解像度を誇る。そのドローンをあと二機飛ばしている。

 

一つは第四部隊の直上。残りの二機はポイントD-7全体およびその周辺を飛んでおり、敵の有無を常に監視している。ドローンから得られた状況をナビゲーターが整理し、正確な情報としてブリッツたちに提供される。

 

『今のところ、居ないようです』

 

そのナビゲーターから返答。了解と短く返してからFALは立ち上がる。

 

「私たちも移動しましょう」

 

「了解。あたしは下に降りるけど、アンタはどうする?」

 

「上から見てるわ。いざとなったら援護する」

 

「わかった。よろしく」

 

言って、Vectorはバックパックから棒付きキャンディーを一つ取りだし、FALに投げ渡す。

難なく受け取ったFALは、ポップなデザインの包装にあった飴の味を見て顔をしかめた。

 

「タコ焼き味って・・・なにこの微妙なチョイス、ってもういないし」

 

文句を言いたい相手はすでに屋上から姿を消していた。

さては押し付けたな。そう理解するのに時間は掛からなかった。

 

屋上から第四部隊を見下ろしながら、飴の包装を解いて、口に放り込む。

 

「・・・味まで微妙じゃない」

 

不味くはないが旨くもない。良くも悪くも口内に広がる複雑な味を、的確に言語化出来ないもどかしさに、FALは小さく唸った。

 

ともかく、移動する。胸元程の高さのある安全柵を踏み越え、今いるビルより少し低い隣のビルの屋上に飛び移る。

 

メインストリートを進行する第四部隊を見る。周囲を警戒しながら移動していた。USPは部隊を率いる隊長としてしっかりやっているようだと感心する。

 

しかしそれだけに、思いきった移動がしにくい。

 

今日は天気が良い。燦々と降り注ぐ太陽光で非常に明るい。

明るいという事は影が出来る。影が動けば目立つ。

 

ましてや、移動の際には隣のビルに飛び移る必要性があるだけに動きが大きくなりがちだ。調子に乗って移動し続ければ呆気なく見つかってしまう。

 

おまけに向かうにはいざとなれば火力制圧が出来るM249(ミニミ)がいる。敵認定されて撃たれでもすれば厄介だ。すばしっこいの(TMP)もいるから、撃たれて頭を抑えられている内に回り込まれる。なんて事だって有り得る。

 

幸い太陽光の向きからして、自身の影が第四部隊に被る事はないが、細心の注意は払うに越したことはない。

もしもこれが第四部隊ではなく敵であったなら、見つかった瞬間ヘッドショット一発で解決するのに。

 

「ホント、困難(面倒)な任務ね」

 

そんな任務を自分に割り振った上官を思い浮かべながら、FALはポツリと内心を吐露しつつも、また隣のビルへと飛び移った。

 

一方、ブリッツ、LWMMGの二人。FALと同様にビルの屋上経由で移動。第四部隊を追跡していた。

 

とはいえ、こちらはビルの高さがまちまちで時折ビルの中を突っ切る必要がある。ビルとビルの間隔はそう広くはないため、屋上から窓へ、窓から屋上へと移動できなくはない。

ただしこちらは生身の人間なのと、中機関銃という大きいものを抱えてるコンビだ。単独且つ突撃銃持ちであるFALよりも、どうしても移動速度は遅くなる。それでも、第四部隊に引き離されてはいない。

 

「それにしても、敵が最初のアレだけでよかったね」

 

LWMMGが声をかける。沈黙が続く時間が長いことで、口が寂しくなったのだ。

最初のアレとは勿論、第四部隊が展開した時にあった鉄血人形の残骸のことである。

 

「もっといると思ったんだがな。運がいいのか悪いのか」

 

「え?運が良いんじゃないの?」

 

「どうにも他に理由があるような気がしてな」

 

「他の理由って?」

 

「そうだな、例えば・・・・・・全体的にバラけている。もしくは別の場所に集中している」

 

LWMMGは足を止めぬままに首をかしげる。

 

「つまりどういうこと?」

 

「さてな。ただ、あまりいい予感はしないのは確かだ」

 

ブリッツにもはっきりとした確証はないようで、そこでこの話は終わってしまう。

しかし彼の胸中には重い何かを抱え、どこかスッキリしない気持ちがあった。指揮官としてではなく、戦場に身を置く兵士としての、ドス黒い嫌な予感。

 

今にも崩れ落ちそうな損傷の激しいビルの中を慎重に突っ切り、隣のビルの屋上に飛び移る。それと同時にナビゲーターから通信が入る。

 

『指揮官。問題発生です』

 

明らかに不穏な発言に、ブリッツとLWMMGはその場に足を止めて聴覚に意識を集中させる。

 

『9時方向より鉄血の集団を確認。こちらに接近中です』

 

嫌な予感が的中した瞬間であった。

 




単語解説。"子守り"
新入り達の任務を密かにサポートする事をさすS10基地内で使われる隠語。
戦術人形の中にはプライドの高い人形もいるため、援護そのものが自尊心を傷付ける恐れがあるとして考案された。
あくまで新入り達の経験と自信を付けさせる事がメインなので、直接援護する事はない。
S10基地内だけでなく、他の基地の要請で"子守り"をすることもある。


といった感じで今回は短めです。寧ろ今までが長すぎた・・・?

そういった所の意見も含めて感想ください
要望とか評価とかもお願いしますor2

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