S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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UA6000越えました。うせやろ?(嬉)
ありがとう・・・!ありがとう・・・!



5-3

 

第四部隊(仮)は、順調にナビゲーターから指示されたルートを進行していた。

これといった戦闘は起こらず、着々と指定区域内に放置されている鉄血人形や、I.O.P社のダミー人形の残骸や武器を回収していった。

 

隊長のUSPコンパクトは警戒状態を解かないまま、なにも言わずに祈っていた。このまま敵が出てこないことを。何事もなくこの任務を終えて帰還することを。

 

右を向いても左を向いても、あるのはつい最近まで動いていたであろう敵味方共々の戦術人形たち。真新しい鉄血の残骸があれば、泥や瓦礫を被ったグリフィン人形の残骸もある。

遠くから聞こえる無数の銃声は一切鳴り止む事はなく、何処かで戦闘が繰り広げられているのだと否応なしに実感させられる。

 

つくづく思い知らされる。どれほど今が平穏であっても、ここは紛れもなくあの激戦区S09地区であり、ここは戦場に違いないのだと。

 

『注意。2ブロック先に鉄血兵確認』

 

サポートしてくれているナビゲーターからの注意喚起。こういう事前情報はありがたい。

 

「戦力は?」

 

『リッパーが5体。イェーガーが5体。このまま進行すると正面から鉢合わせます』

 

「わかりました。一旦隠れてやり過ごし、背後を取りましょう。M249さんは私と近くのビルに潜んで、高所から銃撃します。TMPさんとT65さんは反対側に隠れて挟撃しましょう」

 

「りょーかい」

 

「了解です」

 

「わかった!」

 

USPの指示に返答し、迅速にポジションへ移動する。

 

────このやり取りを密かに盗聴して(聞いて)いたブリッツは、感心したように頷いた。

 

「数的不利を埋めるために奇襲作戦を即座に立案、実行するか。やはり彼女に隊長を任せて正解だったな」

 

「感心するのは後にしてくれるかなぁ」

 

言って、LWMMGは打ち捨てられた車の影から身を乗り出し、バイポッドを展開したLWMMG(銃の方)を迫り来る鉄血兵に向けて銃撃を始めた。

 

重厚な銃声が連続で鳴り響き、迫り来る数多の敵を次々になぎ払う。

 

ブリッツとLWMMG。この両名は現在鉄血と交戦状態にあった。

敵の戦力はおよそ二個分隊相当。構成もヴェスピドを中心とした、よく見かけるものだ。

この程度なら、LWMMGの.338ノルマによる制圧射撃で瞬く間に皆殺しに出来る。

 

問題なのは、この規模の部隊が続々と襲来し波状攻撃を仕掛けてくる事だ。

 

何故鉄血はそのような行動に移り、襲撃してきたのか。攻撃に曝される中、ブリッツの脳内は冷静に、ある仮定を出力した。

 

もしかしたら、最初に片付けた鉄血は斥候で。その斥候が排除された事で敵。つまりブリッツらがいる事を察知。

攻勢に打って出た。

 

そこから更に発想を飛躍させる。

おそらく鉄血はこのゴーストタウンを拠点にしようと画策したのではなかろうか。

どういう意図があるのかは分からないし、そもそもこの仮定は確証の無い妄想の類いでしかない。

 

しかしここまでが正しかったとして、自分だったらこのゴーストタウンを拠点にする理由を考えると、おそらくは"餌場"の確保だろうか。

 

ゴーストタウンそのものをグリフィン人形部隊を誘き寄せ、刈り取る為の餌場にするとしたら、この波状攻撃にも一応の納得は出来る。

 

となると、このままではジリ貧確定だ。鉄血がどれほどにここが欲しいのかは分からないが、こうして続々と敵がやってくる辺り、"獲れるなら獲る"というスタンスなのだろう。

向こうは制圧する気だ。いずれ物量に押しきられる。

 

どうした物か。

頭を働かせ、現状打破の策はないかと思考を巡らせる。

 

その時だ。迫ってきていた前衛であるヴェスピドの群れの足元が爆ぜた。

 

その後ろも横も、次々に爆発していく。

突然の爆発に足並みが崩れ、陣形が乱れる。

 

「チャンスね」

 

その隙を見逃さず、LWMMGは手早く200連装ボックスマガジンを装填。トリガーを引いた。徹甲榴弾(APHE)による弾幕がヴェスピドとその後ろのイェーガーに襲い掛かる。

更に、ブリッツのHK417。そのアンダーバレルに装着されたM320グレネードランチャーも炸裂。取りこぼしは7.62mmAPHE弾で処理。

数が減っていき、敵からの弾幕も薄くなる。そうなればもうこちらの物だ。MGの瞬間火力に物を言わせて鉄血兵を機能停止に追い込む。

戦力が8割ほど減った辺りで鉄血は進行方向を180度転回。エネルギー弾を撒き散らしながら撤退を開始。引っ込んでいく。

 

押され気味の戦況から一転。瞬く間の形勢逆転による迎撃であった。

近くの5階建てビルを見上げながらブリッツは無線機を繋ぐ。

 

「援護感謝するぞ。FAL」

 

『ならお礼に、上等な紅茶とそれに合うチョコを所望するわ』

 

ブリッツが見上げた先には、ビルの屋上にてダネルMGL-140を持ったFALが二人を見下ろすように佇んでいた。

余裕を窺わせる軽口に、ブリッツは小さく笑みを溢す。

 

「次の資材搬入に期待しておけ」

 

『指揮官のセンスを拝見させてもらうわね。がっかりさせないでよ?』

 

それだけ言って、FALは通信を切ってブリッツの視界から消えた。第四部隊の近くへ戻るのだろう。

 

『指揮官。第四部隊が接敵。無事に撃破しました』

 

「流石だ。引き続きサポートしてやってくれ」

 

『了解しました─────指揮官。3時方向、また敵です』

 

「今度はなんだ?」

 

『武装した人間の集団です。数は10。全員が武装。武装車両(テクニカル)を持ち込んでいます。更にグリフィンのデータベースと一致する危険人物を確認。人類人権団体のダグラス・ウェールズ』

 

「人権団体の過激派にして武闘派。反グリフィン団体との繋がりも疑われている男だな」

 

『その通りです。過去には無抵抗の戦術人形部隊に無反動砲を撃ち込んだ記録もあります。どうしますか』

 

俺の部下(第四部隊)と鉢合わせるとマズイな。ゲート、第四部隊を敵から遠ざけるようそれとなく誘導してくれ。Vector、第四部隊はこちらで受け持つ。お前はノコノコとやってきた過激派を潰せ」

 

『いいの?相手人間だけど』

 

「良いことを教えてやる。この作戦に交戦規定(ROE)は無い。バレない程度に存分にやれ」

 

『了解。歓迎してくる』

 

若干喜色が見えた声色で、Vectorは通信を終了。ブリッツは「ああ、これは派手になるな」と、これから行うであろうVectorの独壇場を想像し、ため息を一つ溢した。彼女は敵を認識したら一切の容赦がなくなる。

 

ダグラスを確保しようとも一瞬考えたが、ヤツも団体全体で見れば都合のいい使いっ走り。大した情報も無いだろう。

それなら、見せしめも兼ねて排除しておいた方が都合が良い。

 

『指揮官!先ほど撤退した鉄血兵が増援を引き連れて戻ってきてます!数もかなり増えています!』

 

切羽詰まった様子のナビゲーターに対し、ブリッツとLWMMGはまたかとうんざりした風にため息を溢した。

しかし、やらねばならない。第四部隊を守らなくてはならない。

 

そうこうしている内に、件の増援を視認。確かに、先よりも数が増えている。

弾倉を新しい物に換え、銃を敵集団に向ける。

 

「ライト。片付けるぞ」

 

「了解。思い知らせてやる」

 

オプティカルサイトとホロサイトに敵を収め、トリガーを引く。

けたたましい轟音を唸らせて、二つの銃が火を吹いた。

 

────その時丁度、第四部隊は仕留めたばかりの鉄血兵を装甲車の中へと運び込んでいた。

装甲車の内部は、今回の任務に合わせて改装されている。改装と言っても、乗員スペースのシートを始めとした車内の内装を取っ払いスペースを作っただけなのだが。それでも、"荷物"だけならそこそこの数をキャリー出来る。

 

「そこそこ集まってきたね!」

 

回収したリッパーを載せたT65が、達成感を思わせる口ぶりで言う。

彼女の言う通り、現地入りしてすぐに見つけた残骸も含めれば、かなりの鉄血人形を回収できた。

任務は順調だ。USPはそう思っている。

しかし同時に、生真面目なUSPは考える。この任務の目的は、鉄血製戦術人形を解析するためのサンプル回収だ。サンプルは多ければ多いほど良いはず。

それに、回収した鉄血兵のほとんどはリッパーとヴェスピド、イェーガーだ。サンプルにするのであれば、もっと色々な種類の人形があった方が良いはずだ。

まだ時間はある。手持ちの弾薬とMREもまだ余裕があるし、装甲車の中にも予備がある。時間が許す限りは探索し回収作業を続けたい。もしかしたら、新しい発見もあるかもしれない。

 

「この調子で探索していきましょう。皆さん、引き続きよろしくお願いします」

 

部隊員からそれぞれ、様々な返事が聞こえた。

M249は相変わらず声に覇気が無くやる気が感じられないが、何だかんだで仕事はしっかりしてくれている。

MG人形は少女らしい華奢な見た目とは裏腹に、大きく重い機関銃を振り回せる程の出力を誇る。

 

こういった回収作業はどうしても力仕事になるため、MG人形の存在はありがたい。

 

ともかく、効率的な回収作業をするために一度、全員が装甲車に乗り込み移動する。

移動中は上空のドローンを通じてナビゲーターが監視、偵察を行う。

 

仮に敵と遭遇しても、装甲車に備え付けられた25mm機関砲で蹴散らせられる。鉄血のガードはおろか、アイギスやマンティコアの装甲すらも容易く貫き破壊する威力を誇る。

先制攻撃出来れば一方的に殲滅でき、ナビゲーターの協力があればそう難しいことでは無い。

 

とはいえ、気は抜けない。そう遠くない所から響いてくる銃声が、USPの警戒心を強めている。

敵か味方かはわからないが、二つの陣営が戦っているのはわかる。それも、かなり激しい。7.62mm口径の小銃と8.60mm口径の機関銃による合唱が聞こえる。奇しくも、自分の指揮官とその副官が使う口径と同じだ。

 

「もしかして、来てくれてるのかな・・・?そんなわけないよね」

 

今ごろ基地で仕事をしているであろう二人の姿を思い浮かべながら、USPを小さく息をついた。

 

一方でその、基地で仕事をしているであろう二人は

 

「ああもうまた敵が来た!」

 

「とにかく撃て!撃ち続けろ!」

 

鉄血からの猛攻に見舞われていた。二人の周辺には様々な鉄血製戦術人形やひっくり返ったプラウラー。

一部が欠損したアイギスにニーマムといった様々な残骸がそこら中に転がっている。

すでに一個小隊規模は優に越える数を屠っているが、鉄血が攻撃の手を緩める気配はない。

 

『指揮官。武装集団は殲滅した(黙らせた)けど、増援呼ばれたみたい。テクニカルが2、3台接近してるのが見える』

 

心底面倒だと言いたげなVectorからの通信。と、このような連絡を寄越されてもブリッツの命令は変わらない。

 

「Vector。命令は変わらない。引き続き静かにさせろ」

 

『了解。せめて一瞬で殺してあげる』

 

ブツリと通信が切れたところで、LWMMGは接近中の敵集団を見て驚愕と嫌悪に顔をしかめた。

 

「ブリッツ!マンティコアを2体確認!こちらへ急速接近中!随伴兵(ヴェスピド)もいる!」

 

「次から次へと・・・!先に随伴兵を片付けろ!デカブツはその後だ!絶対にこの先へは行かせるなよ!」

 

耳障りな駆動音をかき鳴らし、重量感ある足音を踏み鳴らす巨大な四脚型無人歩行戦車2体とその随伴兵たちに、二人は銃口を向けて応戦を開始した。

 

 




この温度差よ。まあブリッツたちが頑張らないと第四部隊(仮)はすぐに物量に押し潰されちゃうから仕方ない。
ちなみにブリッツたちがいなかったら第四部隊は鉄血に壊されるか武装集団に拉致されて色々酷いことになります。

それにしても大陸のライトちゃんの新しいクリスマススキン可愛い・・・かわいくない?
じゃけん日本版の実装は大体2年後とか聞いて涙がで、出ますよ・・・。
ついでにライトちゃんが出てくる作品少なすぎんよ~。皆もっと出して、どうぞ

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