この作品も少しずつ人気が出てきているようで嬉しい(*´ω`*)
それだけに誤字が多くてすまぬ・・・すまぬ・・・!
「指揮官」
さあ行こう、という矢先にティスがブリッツを引き留めた。
ブリッツは踏み留まり、ウージーはガクリと躓く。
ティスは列をなしているサーバーの一つの近くに立っている。いつの間に移動したのか。
ふと気付けばさっきまでいたのに居なくなったり、逆に居なかったのにいつの間にかいたりと、ティスというの神出鬼没なキャラクターとして基地では知られている。
そんなティスが、何かを知らせてきた。彼女の近くに寄る。
「どうした」
「これ見て」
彼女が差し出したのは、手のひらに収まる程の大きさの黒い箱状の物。見た目の材質はアルミだろうか。そこそこ頑丈そうな印象だ。
箱からは配線が伸び、その先端にはサーバーに接続するためのコネクターになっている。
そして何より、一番の特徴は箱には鉄血工造のロゴマーク。
「Dr.ペルシカリア。これ、何かわかりますか」
それは質問というよりも、確認の意味合いが強い問いであった。
ペルシカも、それがわかったのだろう。ブリッツのスマートグラス越しに見た箱を見て、息を飲んだ。
『・・・ええ、分かるわ。つまりそういう事ね』
「嫌な事を知ってしまったな。ゲート、送ったデータの中にシェルター内の監視カメラ映像は入っているか」
『あります。解析してみますね』
「頼んだ。よし、さあ行くぞ」
この場を一言で言い表すとすれば、阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
S07地区司令基地所属のHGの戦術人形Mk23の電脳は、そう出力した。
指揮官の命令で、グリフィンが所有していたシェルターの奪還を命じられたMk23の部隊は、指示通りに進行。妨害電波の範囲内に侵入してしまい、司令部と連絡が取れなくなってしまった。
鉄血のジャミング装置があるなんて聞いていない。気付くのも遅かった。部隊は混迷する。
そこに駄目押しとばかりに鉄血人形が攻勢を掛けてきた。
迎撃態勢に入るよりも早く、二方向からなる
太い木や大きな岩を遮蔽物として使い、何とか耐えてはいる。が、やられるのは時間の問題であることは言うまでもない。
通信が繋がらない。指示もない。ダミーも壊滅しメインフレームにも損傷が出始めた。絶体絶命だ。
「Mk23!まだ通信は繋がらないの!?」
部隊のポイントマンであるSG人形、SPAS-12が悲鳴めいた声を上げて問いかける。彼女は身を呈して数少ない遮蔽物の一つとして、鉄血兵からの銃火に耐えていた。
多少の被弾程度なら物ともしないSGの装甲だが、ここまで集中砲火を浴び続ければ流石にダメージが入る。ダメージが入ればいずれ装甲は無力化され、やがて部隊は壊滅する。
「あーもう!鬱陶しいなあ!」
AR人形のXM8が怒声と共に岩影から身を乗りだし反撃する。が、XM8の1に対して敵は10で攻撃を返してくる。乗り出した身をすぐさま引っ込める。SIG-510も加勢しているが、焼け石に水といったような状況。明らかに数は敵の方が多い。
MG人形のMG34も応戦しているが、効果のほどは芳しくはない。どれほど弾丸を撒き散らしても、弾幕が薄くなることはない。
どう打開すればいいのか。その為にも指揮官には応答して、指示をしてほしい。もしくは、支援部隊の派遣でもいい。むしろ、現状を考えれば支援部隊を要請した方がいい。
「指揮官様!応答してください!」
懇願にも近いMk23の悲痛な呼び掛け。それに応えるように、ノイズにまみれていた通信機に反応があった。
『こちら司令部。Mk23、どうした』
どこか冷たさを覚えるような声色だが、応答したのは紛れもなく彼女たちの指揮官である男だった。
あれほど猛威を奮っていたジャミングが、突然消失した。理由はわからないが、今がチャンスだ。
「指揮官様!鉄血から十字放火を受けています!身動きがとれません!このままじゃ壊滅します!至急支援を!」
『ネガティブ。支援は出せない。自力で突破しろ』
「そんな・・・!」
『これはS地区
絶望感がMk23のメンタルモデルに去来する。同じく、ここまで必死に応戦していた部隊の皆にも。
自力で突破しろ?顔すら出せない現状で?弾薬もMREにも限りがある状況で?
『そもそも、その状況に陥った原因は貴様らにある。責任をもって事態を打開しろ』
更に追加。ダメ押しの一言だ。これで確信してしまった。
『私たちの指揮官は、私たちを見捨てたのだ』と。
きっと司令部ではすでに、サーバーに残してきたバックアップ用データを使い、損失した人形を補填する準備に入っているのだろう。
「なんだよ!私たちを捨て駒にするのか!どうなんだよ指揮官!」
悲痛なXM8の呼び掛けに司令部は応答しない。ただただノイズが虚しく流れるのみ。それはつまり、彼女たちの進退が決まった事を意味していた。
─────グリフィンの人形に自殺は出来ない。だが、万が一敵に生きたまま鹵獲されて機密を抜き取られでもすれば、グリフィンに甚大なダメージが及ぶ。そうでなくとも、『傘』ウイルスが仕込まれて基地に戻るような事になれば、それこそ目も当てられない。
それを避けるため、彼女達が選んだのは、互いが互いを破壊すること。ブラックボックスでもある電脳を破壊すれば、機密を抜き取られることも、『傘』ウイルスを仕込まれることもない。
選択の余地はなかった。
それぞれがそれぞれの頭部。電脳に銃口を向け、引き金に指をかける。
と、その時だった。鉄血の指向性エネルギー兵器特有の射撃音が減った。そして、一方の弾幕が鳴りを潜めた。
あれほど頭を悩ませていた十字放火が、突如として一方向からのみの銃撃に。
やがて、その残った一方向からの銃撃もなくなった。
それまでの喧騒が嘘のように、周辺は静寂に支配される。
何が起こったのか。S07部隊の全員が怪訝に、しかし警戒しながら様子を見る。すると、暗闇の向こうから5つの人影が姿を現す。人影に向けて、全員が銃口を向ける。
すると、5つの人影の内の一人が、両手を上げながら近づいてきた。
大柄な男だった。180cmを超える身長に服越しでもわかるほどに鍛え込まれた肉体を、黒を基調としたBDUに身を包んだ、完全武装の男だ。
その男の後ろを、4体の戦術人形が周囲を警戒しながら追随している。
「S07地区の人形だな」
男は静かに告げた。誰も返事をしようとはしなかった。
敵か味方かも分からない。
「グリフィンのS10地区司令基地。指揮官のブリッツだ。本部からの救援要請で、君たちを助けにきた」
「指揮官?指揮官がなぜここにいるんだ」
食って掛かったのはXM8だった。つい先程その指揮官という存在に切り捨てられただけに、彼女の中で指揮官という存在は憎く思えるのだろう。口調からもどこか棘があるように思える。
しかし、ブリッツはどこ吹く風と言わんばかりにペースを乱さない。
ブリッツにとって、彼女たちはただの作戦目標。それ以上でも以下でもなく、憎かろうが何だろうが関係無いのだ。
「そういう性分なんだと理解してくれ。今から君たちを保護する。ランディングゾーンまで誘導するから着いてきてくれ」
「て、敵はどうしたの・・・?」
Mk23は岩影から顔を出し、おずおずとブリッツに尋ねる。少しでも情報が欲しいのだろう。
「始末した。だが、増援がくる。生き延びたければ着いてきてくれ」
そうブリッツが告げた、次の瞬間であった。
ブリッツの第六感とも言うべき器官が危険を感知。長きに渡って戦場で培った経験と歪に発達した皮膚感覚は、思考という段階を飛び越えて即座に判断、行動させた。
「────伏せろッ!」
反射的に声を張り上げた。その刹那、さながら横殴りの暴風雨よろしく青緑色のエネルギー弾が大量に飛来した。
間一髪、ブリッツの声に反応してS10の人形たちはその場に伏せて難を逃れた。S07も、遮蔽物にしていた岩のおかげで被弾する事は無かった。
「
「
伏せたままブリッツは銃撃開始。エネルギー弾が飛んできた方向に7.62mm弾をお返しとばかりに撃ち続ける。
反撃しながらも暗視モードに切り替えたスマートグラスで索敵する。
見付けた。
「前方50メートル。イェーガーだ。数は15」
「なら
WA2000が
グシャリ、と。何かが潰される。もしくは弾けるような音が暗闇の向こうから聞こえる。
更に一発。また同じ音が虚しく響く。一発。また一発と、撃つ毎に何かの破壊音が。そして少しずつ飛来するエネルギー弾の数が着実に減っていく。
何が起きているのか。それを正しく理解しているのはS10のブリッツと部下の人形。そして、夜戦能力に秀でたHGのMk23のみであった。
WA2000がやっていることは至極単純である。敵の射撃時に出る僅かな閃光を確認し、そこに照準を合わせる。これだけである。
これだけならば、別にRFの戦術人形でなくとも真似は出来る。WA2000が驚異的なのは、閃光を確認してエイムするまでの時間の短さだ。WA2000の場合、閃光が出た瞬間にイェーガーの頭部に照準を合わせ、精確に狙撃している。
銃の弾倉が空になるのと同時に、RFBがカバーに入る。カテゴリーこそAR人形だが、銃そのものはセミオートライフル。WA2000と同じように狙撃も出来る。
牽制射撃を続けていると、あれほど撃ってきていたイェーガーも警戒し近くの木の影に隠れてしまった。
敵からの銃撃が一時的に止む。
すかさずブリッツは立ち上がると同時に、バックパックからお手製のパイプ爆弾を3本取り出し、イェーガーの隠れた場所に向かって投擲。3本とも50メートル先のポイントに落ち、そのどれもが敵の近くに転がった。
「
PDAを三回タップ。パイプ爆弾は正常に爆発。衝撃波と多量のボールベアリングを撒き散らし、隠れていたイェーガーに致命的損傷を与えた。
一先ず撃退は出来た。が、すぐに次がやってくる。
ブリッツは岩影に隠れているS07の人形たちに駆け寄る。
「次が来る前に移動するぞ」
その呼び掛けに、彼女たちは頷いて移動を開始。ウージーとブリッツを先頭に全速力で森の中を駆け抜ける。
側面をWA2000とRFBが。最後尾にはOTs-12がつき、周辺を警戒。
「正面!」
ウージーが声を張り上げる。3体のリッパーが進路を塞ぐように飛び出してきた。待ち伏せし、不意を突こうとしたのだろうが、それよりも早くウージーが2丁のMicroUziを連射し2体を蜂の巣に変貌させる。残りの一体も、素早く反応したブリッツがHK417で撃退。足を一切止めず、リッパーだった残骸を踏み越えて尚もランディングゾーンへと走り続ける。
「ゲート。ヘリは」
『待機中です。あと100メートルです。急いでください』
『ほら走って走って』
ペルシカリアの他人事のようにも思える声援も聞きながら、ペースを緩めず走る。
「8時方向!ドラグーンが来た!」
側面についていたRFBが声を上げる。
「仕留めなくていい。足止めしろ」
「りょーかい!」
任せてくれと言わんばかりに、RFBは走りながら向かってくるドラグーンに向かって銃撃を開始。体勢的にも不安定なのだが、RFBの放つ7.62mm弾は全てドラグーンの二足歩行兵器に命中し、動きを鈍らせる。
XM8もそこに協力し、ドラグーンに向かって榴弾を撃ち込む。歩行兵器の足元に着弾し、ドラグーンはその場で止まった。
「よくやった。もう少しだ」
足を止めぬまま走り続けた末、森を抜けて開けた場所に出る。そこにグリフィンのシンボルマークが入ったヘリがいた。
ヘリは地上スレスレにホバリングしており、いつでも離陸できる状態で待機していた。
「ブリッツ!」
そのヘリの搭乗口にはLWMMGがいた。ヘリには彼女と同じ名を冠する中機関銃がドアガンナーとして固定されている。
「全員乗り込め!」
ブリッツが周辺を警戒し、その間に全員がヘリに飛び込むようにして搭乗。最後にブリッツが乗り込み、ヘリは離陸。急速に高度を上げていく。
離脱させまいと追ってきた鉄血兵がヘリに向かって銃撃を開始。墜落させようとする。
LWMMGも、攻撃を仕掛けてくる鉄血兵に向かって.338ノルママグナムの雨を食らわせる。ブリッツも加わって反撃している。
反撃の甲斐もあって、機体にいくらか被弾はあったものの飛行自体に問題はなく、やがてエネルギー弾の有効射程からヘリは逃れた。それを確認し、ブリッツはヘリのハッチを閉めた。
「ゲート。目標を確保。任務完了だ。これより帰投する」
『了解。お疲れさまでした、指揮官』
『お疲れさまブリッツ指揮官。今度、使ってみた感想を聞かせてね。今夜は貴重な経験をさせてもらったわ。それじゃあね』
返答も待たず、ペルシカが通信を切った。が、どうせまた通信機について色々話すことがあるだろうと、すぐに切り替えた。
「お疲れ、ブリッツ」
LWMMGの労いに、ブリッツは息をつき、軽く右手を上げた。
ウージーもWA2000もRFBもOTs-12も。S07地区の人形も、無事に帰路へ着くことが出来た事に安堵した。
今回は色々あった。機密データの奪取。通信機の実地試験。追加のCSAR。
不安な要素が多かったが、無事に遂行出来てた。何より、16Labが開発した通信機が有効であることが確認できた。これがグリフィン全体に普及すれば、鉄血との戦闘も比較的優位に進められる。
与えられた任務は完了した。
だが
「いや、まだ終わっていない」
そう。まだ終わっていない。回収した機密データの解析。ヘリアンとブリッツを陥れようとする一部の幹部。
そして、バックパックに仕舞い込んだ、シェルターで回収したあの小型機器。
その全てを明らかにしない限り、終わることはない。
しかし今は、
「さあ、帰り道を探そう。銃弾は一回につき一発だ」
機内に、ささやかながら歓声が上がった。
誤字報告がいっぱいきて物凄い申し訳ない。それが評価にも影響してるようで更に申し訳ない。
確認はしてるんだけどね・・・。またあったら報告お願いします
今回は戦闘描写(と言っていいのか)がちょっと薄かったかなとか思ったり思わなかったり。
本当はMk23とかいうあざとい人形とブリッツを絡ませたかったけど断念。ワイには書けんかった・・・!いつか書けたら書きたいね
任務は終わったけどまだ終わらないんじゃ。
感想と評価、どうぞよろしくお願いします!