本作品のAR小隊は5人全員います。二次創作くらいは一緒でええやん?(ニッコリ)
そんなことよりLWMMGのスキンがでませんたすけて
現在時刻0545。雪とは違う白さが空に浮かび上がり始めた頃。
U02地区ポイントB2に到着したAR小隊は、ブリーフィングの通りに敵前線基地へと向かっていた。
本部のヘリアントスから地形情報と予想される敵の配置。そして、安全が確認されているルートが提供された。
AR小隊隊長であるM4A1は、それを元に索敵も行いながら山中を進む。確かに、想像していたよりも敵に出会す事なく、無駄な消耗は一切無かった。ただし、小隊の末っ子にあたるM4 SOPMODIIはつまらなそうに唇を尖らせていたが。
「目玉欲しかったのになー」なんて言葉は聞こえていない。きっと吹雪のせいだ。
そもそもこの任務自体、AR小隊としてはあまり乗り気ではなかった。
鉄血から支配領域を取り戻す。それはいい。だが、そうする目的がグリフィンのイメージ回復の為のものと言われては脱力してしまうのも仕方ないと思う。
確かにグリフィンの。正確にはS地区支局長の不祥事によってS地区全体が揺らいでいる。ヘリアンのおかげで、それも大分落ち着きを取り戻してきたが。
いつの間にか、グリフィンの広告塔というポジションに就いてしまっているのは些か不本意ではあるが、本部の命令と、何より敬愛するS09基地の指揮官に頼まれてしまっては断れない。
それが例え、箔を付けるためにグリフィンの支援を受けられない完全な自律作戦であったとしてもだ。
本部のためというよりS09指揮官のために、AR小隊としてはこのような任務は早々に片付けてしまいたかった。
しばらく提示されたルートを進むと、吹雪の向こう。白く霞む視界の先に黒い大きなシルエットが見えた。
ヘリアンから事前に渡されていた情報にあったジュピターだ。ジュピターの砲身は力なく項垂れているように下を向いている。待機モードだろうか。
マップ上にはチェックポイント1とマーキングされており、進行ルートは明らかにここを通れとある。
M4A1は小さくも舌打ちする。話が違う。何が安全なルートなのか。
「AR小隊よりHQへ。ヘリアンさん、聞こえますか?」
通信を飛ばす。定期的に状況を報告するよう本部からは言い渡されている。
どのように作戦を遂行したかを社内報はもちろん、グリフィンが提供するテレビのニュース番組で広く報道するために必要だからという。しょうもない理由だが、確認にはちょうどいい。
『こちらHQ。聞こえるぞM4A1、どうした』
幸い応答はすぐにあった。ヘリアンの生真面目で張りのある声が通信機に入る。
「前方にジュピターを発見。迂回路はないのですか」
『君たちの現在地はチェックポイント1だな。なら問題ない。そこにあるジュピターは機能を停止している』
「は?」
全くラグの無い即答に、素っ頓狂な声がM4A1の口から溢れ出た。
「M4。こいつを見てみろ」
M4が姉と慕い、そして小隊の纏め役であるM16A1が呼び掛ける。振り返れば、M16が雪に埋もれていた鉄血人形のリッパーを抱え上げていた。胴体のコアと頭部の電脳がピンポイントで破壊されているのが見受けられる。
無駄を省き、徹底的で的確な殺し。このリッパーを仕留めたのは明らかに手練れであることは、疑いようもない。
見れば、いつの間にかSOPIIも30メートルほど離れた位置で倒れているヴェスピドを、雪の中から掘り起こしている。こちらもリッパーと同様に電脳とコアが破壊されている。
それを見たSOPIIが「バラバラじゃない!」と驚愕とささやかな不満を織り混ぜた声を上げていた。彼女にとって、鉄血とは見つけ次第バラバラにする対象である。
動きの無いジュピターの様子を訝しげに思ったAR-15も、砲台の背面に回ってみた所で合点がいった。
「このジュピターも形こそ綺麗に残ってるけど、的確に動力炉を破壊されてるわね」
それにコレ、とAR-15が付け足すように手に持ったボール状のものを弄びながらM4に見せる。
「HPMグレネードよ。範囲内にあるあらゆる電子機器を無効化出来るDEW。グリフィンで制式採用されてるなんて話は聞いたことがないし、私も実物を見たのは初めて」
「それに変ですよ。ここら一帯、交戦の形跡がありません。鉄血が一方的に攻撃されてます」
AR小隊唯一のSMG人形であるRO635が便乗する形で意見を言う。
つまり纏めるとこうだ。何者かはリッパーとヴェスピドは一方的に攻撃し全滅させ、ジュピターの動力炉をピンポイントで破壊。目立った痕跡も残さずこの場から悠々と立ち去った。
気味が悪い。M4A1はそう思った。
ふと、M4A1はブーツに何か小さく硬いものが当たった事に気付いた。石とはまた違う感触。
それは空薬莢であった。それも、FCA研究所の協力を得てI.O.Pが開発した7.62mmAPHE弾。グリフィンが制式配備しているMk211徹甲榴弾だ。
その何者かが使った弾丸であることは間違いない。
「どうするんだ、M4?」
M16が尋ね、M4は思考を巡らせる。
少なくとも、この現状をヘリアンが知っているということは、今のところ敵ではないのは確かだろう。それに、得体が知れない何かが敵を倒したからと、作戦を中断する理由にはならない。
「変更はありません。予定通り、敵前線基地を目指します」
「了解だ。さて、さっさと行こうか」
撃てば響くとばかりに、M4の指示にM16はすぐに応答する。
他の3名も同様で異論はなさそうだ。全員己の半身を持ち直し、フォーメーションを組み直してから、再び前進を開始した。
ブリッツがPDAの画面をタップ。ジュピターの背面に仕掛けられたHNIWが爆発し、動力炉は木っ端微塵に破壊される。
爆発音を聞き付けた近くの鉄血兵が確認のために近付いて、待ち伏せていたLWMMGとM249による弾幕を浴びせられる。
機械の流れ作業のように行われる敵兵器と部隊の排除は行われていた。
敵前線基地まで残り200メートルの地点。
破壊したジュピターは3機。これでAR小隊の作戦目標である敵前線基地までのルートは確保出来た。
後はAR小隊が基地を制圧しシステムを掌握してくれれば任務終了だ。
「これだけ頑張っても、記録に私たちの名前は無いのよね」
ため息混じりにFALがぼやく。
本作戦のメインはあくまでAR小隊にある。S10の部隊は
主役よりも目立ってはいけない。
「そうぼやくな。その分報酬は貰う。それでキミ好みの茶葉とチョコレートでも取り寄せてやるさ」
ブリッツの言に、FALは小さく唸って考え込む。
「それなら、久しぶりに
「なら今度みんなで行こう。奢ってやる」
「言ったわね?言質とったわよ?」
「安心しろ。二言はない」
断言して見せたブリッツに、人形たちから感嘆の声が上がる。
任務が終わった後の楽しみが出来たことで、「さっさと任務を終わらせて帰ろう」という空気が部隊の中で流れ始める。
確かに、現状でこれ以上こちらに出来ることはない。強いてあるとすれば、AR小隊が敵基地を制圧するまでの間、敵の妨害が無いように見張るくらいのものだ。
────それから十数分後。AR小隊はブリッツたちが破壊したジュピターの横を通過。
吹雪という視界不良を利用して木の陰や雪の中に潜んでやり過ごし、警戒しながらも一直線に敵基地へと目指すAR小隊の後ろ姿を見送る。
彼女たちは最後まで、ブリッツたちの姿を見ることはなかった。
あとは敵拠点制圧の報告を本部にいるヘリアンから通達されるのを待つばかりだ。
────だが、木の陰に隠れていたブリッツには、一つだけ気掛かりな事があった。
ここへ至るまでに遭遇した敵が、あまりにも少なすぎる。
鉄血は基本的に質より量を重視する戦法だ。そして、ここは鉄血の前線基地。いくらジュピターという強力な兵器があるからといって、それで敵の侵入を防げるかと問われれば否である。
現にこうして、ブリッツ達は前線基地の一歩手前の所まで食い込んでいる。そのせいでAR小隊までも。
そもそも、敵拠点に一番近いジュピターが落とされたというのに、ちょっとした部隊が確認に来ただけで何も起きないのは、よく考えてみれば不自然だ。
ジュピターは前線基地と繋がっている。であるならば、ジュピターが機能停止したことも把握していなければならないはずだ。
慌てるなり警戒するなり、クリアリングを掛けるなりする。
そうしないのは?敵はここをそこまで重要視していない?ならジュピターなんてコストのかかる物を設置したりなんてしない。
『常に最悪を想定しろ』
かつての隊長が言った台詞だ。
では現状で言う最悪とは?
ブリッツは脳内でイメージを膨らませていく。
『AR小隊。敵基地を制圧。システムの掌握作業に入りました』
ナビゲーターの報告がブリッツの脳内に飛び込む。その情報が、さながら起爆剤よろしく爆発的にイメージが広がっていく。
「まさか────」
衝動的に、ブリッツは木の陰から飛び出し、走り出した。
人形たちの驚きと困惑も置き去りにして、スマートグラスのミニマップを参照にしながら白銀の大地を駆ける。
向かう先は、機能停止していないジュピター。予想される設置場所は見当がついていた。
その予想通り、走った先にジュピターはあった。この地域に設置されたジュピターは全て、上空に砲口が向けられており、対空砲の役目を果たしていた。先に破壊した3機も、その例に漏れず明後日の方向を向いていた。
だが今見つけたジュピターは上空ではなく、
「ゲート!今すぐAR小隊に回線繋げろ!」
『少し待ってください!』
滅多に見せない切羽詰まったブリッツの態度にナビゲーターも気圧された様子だが、スマートグラスのカメラ越しに状況を把握。すぐに通信回線の接続を図る。
そうしている間に、ジュピターは唸り声のような駆動音を響かせる。主砲であるコイルガンに電力を供給しているのだろう。
ここでこのジュピターに向けてHPMグレネードを使っても意味はないだろう。なぜなら他のジュピターも同様にコイルガンの発射準備が進んでいるのだろうから。
一秒一秒が異様に長く感じる。
『繋がりました!』
ここまでほんの数秒足らず。なのにブリッツにとっては果てしなく長い時間に思えた。
「AR小隊!こちらグリフィンS10地区司令基地指揮官のブリッツだ!応答しろ!」
ヘッドセットのマイクに向かって怒鳴り付けるようにブリッツは声を上げた。
幸い、応答はすぐに来た。
『こちらAR小隊、隊長のM4A1です。ブリッツ指揮官、どうしましたか』
やや怪訝な様子で応答するM4A1。いきなり怒鳴り付けるような声色で通信が飛び込んできた事を快くは思わない。
しかし今はそんな印象など気にしている場合ではない。
「至急そこから離れろ!ジュピターに砲撃される!」
『え、いきなり何を』
───瞬間。轟音と衝撃波を伴って、ジュピターの砲口が火を吹いた。そして、放たれた砲弾はAR小隊のいる基地へと着弾。爆発した。
上手く行ってるときほど警戒しろってそれ一番言われてるからね、しょうがないね。
果たして、ブリッツたちとAR小隊はこの先生きのこれるのか?
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