S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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今回のイベントで「オイ!文字が邪魔で次に進めねぇぞ!どうなってんだ!?」ってなった人、ワイ以外にもおる?おりゅ?

次に行けるまでは赤豆に怯えながらUMP40堀りの作業を繰り返す。まともな夜戦装備が少ないからすごいツラい・・・ツラくない?


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グリフィン&クルーガー社本部のモニタールーム。名称通り、広い空間の壁一面に大小様々なモニターが設置され、各地区各基地からリアルタイムで送られてくる様々な戦況を名称通りモニターする為に誂えられた部屋だ。

 

その中でも目を引くのが、このルームで一番大きなメインモニターだ。そこにはS11地区で進行中の鉄血工造の兵器生産工場制圧作戦の状況が映し出されている。S11基地の通信機材を使ってのライブ中継だ。

 

上空で待機している高精細カメラを搭載した複数のドローンが撮影した地上の映像や、展開している部隊の現在地や移動速度等が簡潔で分かりやすく表示されていた。現在は、生産工場に設置されたジュピターがガンシップによって破壊された様子を生中継している。

次いで、工場付近で森の中に身を隠していた強襲部隊が、今まさに工場へと踏み込もうとしていた。

 

「始まったか」

 

モニターを見て、一人の男が静かに呟いた。

大柄な男だ。グリフィン正式の黒い軍服に赤黒いコートを羽織、腕を組み仁王立ち。顔は見るからに厳つく、口元には髭を蓄え、右頬に傷痕が刻まれている。その風貌が。その立ち姿が。ただならぬ風格を身に纏わせている。

民間軍事会社グリフィン&クルーガー社創設者にして最高責任者。ベレゾウィッチ・クルーガーその人である。

 

彼の射抜くような鋭い目は、まっすぐ強襲部隊に注がれていた。特に、その先頭に立つ存在に。

強襲部隊の9割は戦術人形で構成されている。その残り1割。それがこの先頭に立っている男であった。

 

グリフィンでは人間の部隊から人形の部隊にすげ変わって久しい。戦場での死傷による人間の損失を抑えるための処置だ。

第二世代が登場してから随分経つ。今や戦場における歩兵とは戦術人形の事を指しているといっても過言ではない。

だというのに、今S11地区で作戦行動中の部隊の中に人間が混ざっている。

これはクルーガーが構築してきた「人間の指揮官+人形の部隊」という指揮システムに反した行動だ。

 

しかしクルーガーは何も言わない。前線の作戦行動に参加している人間に対し、警告も何も告げない。

 

それは、彼が持っているタブレット端末に理由があった。

端末のディスプレイには、作戦行動に参加している人間。つまりS10地区司令基地の指揮官ブリッツについての詳細な資料が表示されている。

グリフィンで指揮官をやる前のブリッツの経歴が。一指揮官が持つ程度の権限レベルでは見れないブリッツの詳細な情報が、今クルーガーの手元にはありありと表示されているのだ。

 

「第74特殊戦術機動実行中隊か。ギアーズ部隊出身の兵士が、まさかG&K(ウチ)にいるとはな」

 

クルーガーはロシア内務省系の元軍人である。正規軍にもある程度のパイプはある。

だから知っていた。第74特殊戦術機動実行中隊の存在を。

 

発足は2020年代後半。元々は「第74特殊戦術機動教導中隊」という名称で、正規軍の部隊や隊員を訓練、教導するための仮想敵(アドバーサリー)部隊。様々な銃火器や兵器、戦略や戦術に精通し、普通科連隊から特殊作戦郡(SFG)、対E.L.I.D殲滅部隊や対戦術人形制圧部隊に至るまで教導出来る。つまり、ありとあらゆる戦線に即座に適応出来る精鋭中の精鋭部隊。

だったのだが、第三次世界大戦をきっかけに部隊の性質が大きく変わる。

大戦の影響で抱える戦力が減少した事で他部隊の教導だけでなく、様々な作戦に実戦導入される事となり、名称も教導中隊から実行中隊に変わる。

 

主な任務は対テロ作戦に対戦術人形制圧戦闘、E.L.I.D討伐は勿論。紛争地帯に紛れ込み、一方の勢力もしくはどちらの勢力にも秘密裏に潜入、加担することで戦況を調整、もしくは終わらせる事で軍や国家に不都合な出来事を阻止。または不穏因子を密かに排除する事で、歴史をコントロールする歯車として利用していた。

大戦が停戦してからの10年の間にも、アドバーサリー部隊としての教導役と並行して歴史の裏で暗躍したとされている。

 

ブリッツは、その部隊に所属していた兵士であった。ギアーズ部隊に配属になったのも、大戦での多大な戦果を上げたことが主な理由である。

 

推定で7才の頃から小さなPMCに少年兵として所属し数々の戦場を渡り歩き、第三次大戦ではティーンでありながら正規軍に徴兵され最前線に投入。開戦から停戦までの約6年の間銃火を掻い潜り、通算800人以上の敵兵士を殺傷。複数の敵前線基地を壊滅。後に戦場に投入された第一世代型戦術人形を500体以上撃破する。などなど(エトセトラ)

 

そんな大戦果を引っ提げて、大戦休戦後に彼は16歳で正規軍に正式入隊。過酷な訓練期間を経て件のギアーズ部隊に配属される。

それからの10年間。どのような作戦任務を遂行してきたかは全くの不明であるが、先のギアーズ部隊の特色からして様々な機密作戦(ブラックオプス)に従事していた可能性は十分にある。

 

そんな彼が、グリフィンで指揮官をやっている。中には、ブリッツ単独で作戦を遂行したものも幾つかあるし、にわかには信じがたい戦果を上げているのもある。

 

この資料に書かれている事のどれか半分でも本当ならば、この程度の作戦任務。彼ならば造作もなく終わらせる事が出来る。

 

「見せてもらおう。名無しの災害(ブランクディザスター)とまで呼ばれた兵士の実力を」

 

 

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ジュピターが破壊された事で、工場を防衛していた鉄血機械兵、人形兵がわらわらと建物から湧いてくる。

 

プログラム通りに正面の広場に陣形を取り、迎撃の態勢を整える。効率重視の設定であるが故、一体一体の動きが素早く瞬く間に陣形を形成していく。

 

─────そこに、7.62mmと.338ノルママグナムのAPHE弾が襲い掛かった。ブリッツのHK21EとLWMMGによる制圧射撃だ。

重々しい銃声と共に間断無く飛来する無数の弾丸は、情け容赦無く、反撃も出来ず鉄血兵のボディを撃ち抜き破壊する。それでも、工場内には大量の鉄血兵がいるのだろう。破壊しても破壊しても、湯水のごとく沸いて出てくる。

 

しかし沸き出た鉄血兵が密集しているポイントにはVectorとUziによる焼夷手榴弾。FALのMGL-140による範囲攻撃が襲いかかる。

40mmグレネードは足元、もしくは直撃し頑丈と言われる鉄血人形のボディを木っ端微塵に吹き飛ばし、焼夷手榴弾の火炎を浴びた人形はその近くの人形の生体部品に燃え移り、少しずつその加害範囲を広げていく。

 

応戦すればブリッツとLWMMGによる弾丸を喰らい、隠れれば遮蔽物を越えて手榴弾とグレネード弾が飛んでくる。運良く銃火からも火炎からも逃れた人形も、RFBが目敏く見付け出し狙い撃ちにする。

ブリッツとLWMMGがリロードしている間は、AR70とCZ-805による援護射撃で隙を与えない。

 

少しずつ押し上げていく。

陣形なんて組ませない。反撃なんて許さない。

 

「弾切れだ」

 

ブリッツがHK21Eをその場に捨てる。もうこの銃に使える弾倉は全て使い果たした。撃てない銃などただの重りだ。

即座にHK417に切り替える。

 

「バレルを換える。カバー」

 

LWMMGもその場に片膝をついてしゃがみ、バレルの交換作業に入る。その間、ブリッツとAR70、CZ-805が彼女をカバーする。

ハンドルを持ってバレルを銃本体から外して投げ捨てる。新しいバレルを装着し、しっかり固定されていることを確認して戦闘再開。リフレッシュした中機関銃は獰猛な声を上げて敵撃破のスコアを更に増やしていく。

 

すると、今までは撃破数よりも敵の増援の方が多かったのが、少しずつ逆転をし始めた。打ち止めが近いのだろう。

頃合いと見たブリッツが指示を飛ばす。

 

「一〇〇式!Vector!切り込め!」

 

「待ってました!」

 

「了解。いくよ」

 

意気揚々と、二人のSMGが敵の集団に突っ込んでいく。真っ直ぐ、放たれた矢の如く真っ直ぐに。

それを、他の全員が援護する。全速力で突っ込む二人は仲間を信じて目前に迫る敵を屠る事に電脳のリソースを集中。培ってきた訓練と積み重ねてきた実戦経験が、四肢を残酷なほど効率的に動かす。

 

一〇〇式の銃剣がリッパーの首を撥ね飛ばし、Vectorの銃はヴェスピドの電脳とコアを的確かつ完膚無く破壊する。

 

敵からすれば異様な光景であっただろう。手を伸ばせば届きそうなほどの近距離にいるのに、仕留めることはおろか触れることさえ儘ならない。逆に仕留められる始末だ。

視線が合った途端に銃剣に切り裂かれるか、至近距離から銃弾を浴びせられる。

 

更に鉄血側にとって厄介なのが、一定の距離を保ったまま二人の援護をしている存在だ。

トリッキーな動きで敵を翻弄する一〇〇式とVectorに惑わされず、的確に二人の死角。もしくは離れた敵を撃ち抜いていく。

 

特に、RFBとブリッツ、そしてLWMMGが二人の動きを観察し次の動きを予測。庭木の剪定よろしくSMG二名の行動を阻害しない。もしくは阻害となる要因になりそうな敵を即座に判別し狙撃。ヘッドショットかハートショットで仕留める。場合によっては膝を撃ち抜き動きを止めて、トドメを二人に任せる。

残りの四名が、榴弾等を駆使して集団の外側から削るように排除していく。

 

少数の精鋭が個々の実力をもってして多数の有象無象を圧倒し、蹂躙し、押し潰していく。

 

戦闘開始から2分ほどで工場正面の広場には、のべ100体以上の鉄血兵だった鉄屑の山が築かれ、動くものはいなくなった。

意匠の一切ない、グラウンドを彷彿とさせるようなただ広い空間に、大量の鉄血製戦術人形の残骸や榴弾によって出来上がった幾つものクレーターがアクセントとなって殺伐とした空間へと様変わりした。

 

『すごい・・・』

 

通信機からS11基地で指揮を執っているダニエルの感嘆の声が聞こえる。上空を飛んでいるドローンのカメラから、今しがたまで繰り広げられていた一方的な銃殺劇。もしくは斬殺劇を観ていたのだろう。

 

敵影無し(クリア)

「クリア」

「クリア」

「クリア」

 

ブリッツの声を合図に、強襲部隊各員から声が上がる。その声色からは油断は一切無く、不気味なほど静かな声であった。

 

「コントロール。正面の広場を確保した。これより施設内部に侵入。掃討を開始する」

 

『こちらコントロール、了解。内部の情報は全くの不明です。何があるか分かりません、ご注意を』

 

ジェリコがすぐに応答する。

 

「当然だ。それと、弾薬のデリバリーを頼む。施設破壊用に爆薬も準備しておいてくれ」

 

『わかりました。ですが弾薬に関しては、すぐに届きます』

 

すると、遠くからヘリの駆動音が聞こえてきた。音はみるみると大きくなっていき、やがてその姿が見える。

S08基地が物資輸送用に持ってきたヘリが、人一人は楽に入れそうなサイズの長方形のボックスをワイヤーでぶら下げながらやってきた。

 

ヘリはボックスを切り離して投下させ、そのままフライパス。旋回して、基地へと戻っていった。

投下されたボックスはすぐにパラシュートが展開。ゆらゆらと揺れながらゆっくりと降りてくる。

 

『既に手配済みです』

 

「流石だ」

 

どこか自慢げなジェリコの声に、ブリッツはつい笑みを溢した。

 

やがてパラシュートはボックスから切り離され、風に流されながら綿のように勢い良く燃焼、跡形もなく消えた。一方でボックスは地上一メートルの位置から落ち、ドスンと重々しい音を立てながら着地。

 

ロックを外して蓋を開ければ、それぞれの銃にあった弾倉や各種手榴弾にグレネード弾。少量ながらC-4爆薬も中に入っている。工場を破壊するには足りないが、ちょっとした壁くらいなら簡単に吹き飛ばせるだろう。

 

各々が消費した分の弾薬を補充し、バックパックに詰め込んでいく。

全部は取らず、少しだけ弾薬を残した状態でボックスの蓋を閉めた。

 

「さて、壊しに行こうか」

 

周囲を警戒しながら、部隊は工場のエントランスへと進行。

いよいよ、工場の破壊作業に取りかかる。

 

 





最近、描写というかシチュエーションが似たり寄ったりになってるから、マンネリになってないか不安なので感想ください(隙あらば感想ねだり)
具体的には100件くらいほしいです。というか毎秒ほしい。

あと、次回から更新ペースが落ちます。気長に待っててくだしあ。


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