S10地区司令基地作戦記録   作:[SPEC]

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再就職して忙しかったり創作のモチベーション下がってたから時間掛かっちゃったぜ!ごめんなさい


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その生産工場は所々には老朽化が進んでいるように見られたが、それは表面上だけで基礎構造自体はまだ頑健であった。

 

三階建て相当の高さと大型の体育館を彷彿とさせる規模の、鉄筋コンクリートで建設された工場には冷たさと、日中であるにも関わらず独特な薄暗さからの不気味さを併せ持っていた。森林地帯の奥深くというシチュエーションもあわさって、鉄血の工場として使われていなかったら、きっとちょっとした心霊スポットとして根も葉もない噂を立てられていたに違いない。

 

元々は大戦時か、それ以降に建設された軍事施設だったのだろう。必要無しと下され、放棄されるその直前までここで武器や弾薬を製造し、人類同士による戦争を支えていた。

そんな、鉄と火薬とほんのちょっとの血生臭さがこの工場全体に行き渡り、寒気を覚えるくらいにはおぞましい空気を醸し出している。

 

そんな施設内部に侵入したS10基地強襲部隊は、まず3つのチームに分散した。

Uzi、AR70、CZ-805の三名は発電装置、もしくは変電所の探索、破壊を担当。

 

これだけの規模の大きい工場ともなれば、全体に不足なく電力を行き渡らせるために発電装置か、変電所の一つはあるハズ。

 

電力が無ければ生産ラインは動かない。生産ラインが動かなければ、出荷してすぐの鉄血人形は稼働しない。襲撃を察知した外部からの増援にのみ対応すればいい。

 

FAL、RFB、一〇〇式は、施設内部の探索だ。

内部で待ち構えている鉄血人形を掃討しつつ、破壊の為の要所を探し、爆薬を設置するのが目的だ。

Uziたちの班と連携して行動する。

 

最後、ブリッツ、LWMMG、Vectorは工場の貯蔵庫を探す。

工場ならば大抵、製造し出荷する前の製品を置くための貯蔵倉庫(ストックヤード)がある

 

そしてここは鉄血の生産工場。大量生産されたであろう鉄血製戦術人形を保管するためのストックヤードがどこかにある可能性は十分にある。

 

作戦前に見た航空写真では、ストックヤードらしき建造物は確認出来なかった。

 

であれば、考えられる可能性は自ずと限られてくる。

そもそも存在しないか。もしくは地下にあるかだ。

無いなら無いでいい。手間が省ける。あったとするならば諸共木っ端微塵に吹っ飛ばす必要がある。どちらにせよ、この工場の存在そのものを潰すのだから、そこまで手間は変わらないのだが。

 

ともかく、2つのチームと別れたブリッツは自分を先頭に地下空間へと繋がる通路の探索開始。

メインであるHK417を背中に収め、サイドアームのMP7へと切り替える。

スマートグラスの視覚機能をマグネティックに切り替えて、クリアリングをしながら通路を進む。

そのすぐ後ろをVectorが追随し、二人の背後を護るようにLWMMGが後方の警戒を引き受ける。

 

『・・・相変わらず、貴方がポイントマンなのですね』

 

通信機からジェリコの呆れた声が聞こえる。ブリッツのスマートグラスからの映像を基地の機材で確認したのだろう。

壁の向こうを透視出来るマグネティックを装備しているのは現状ブリッツのみだ。

アンブッシュしている敵を真っ先に見つけられるのは自分である以上、先頭に立つのは当然自分である。というのがブリッツの意見であるが、人形と違い声に出さなくては応答出来ないブリッツは無言を貫いた。うっかり声でも聞かれでもすれば、たちまち見付かって包囲される可能性もある。迂闊な発言は可能な限り控えるのが得策だ。

 

彼に出来たのは、抗議の意を込めた溜め息を小さくつくだけだった。

 

進む通路は狭くはないが広くもない。人間がすれ違う程度なら苦もない程度の広さだが、とにかく暗く、埃っぽい。窓がない為に日中であっても陽の光が入らず、まるで深夜の時間帯を思い起こさせる。

工場として稼働している以上、照明に回せるだけの電力はあるはずだがそれをしないのは、鉄血の人形には明かりの必要がないからか。

 

足音を立てず、かつ足元の警戒も怠らず。しかし進行スピードは素早く。

あくまでマグネティックはクリアリングの補助として使い、肉眼と皮膚感覚をメインに索敵する。

T字路をマグネティックで透過しながらも、カッティングパイで確認を怠らない。

 

敵影無し。再度前進を開始。

 

────その瞬間であった。

前衛のブリッツとVector、後衛のLWMMGの間に何かが降りてきた。

 

何処から誰が。

そんな思考を置き去りにしてブリッツは脊髄反射で素早く振り返る。その正体と目があった。ブルートだ。

 

ブルートはブリッツ目掛けて巨大なナイフを横薙ぎに振るう。狙いは首。咄嗟に上半身を後ろへ反らす。

間一髪、ブルートの凶刃はブリッツに当たる事は無かったがその代わり、右手に持っていたMP7のレシーバー前方が気持ちいいくらいに綺麗に切られた。

 

ちょっとした装甲板程度なら難なく切断出来てしまうブルートのナイフだ。人間が喰らえばタダでは済まない。

 

追撃とばかりにブルートは仰け反ったブリッツに向けて今度は突きを繰り出す。

それをブリッツは切断されたMP7をブルートの顔面に投げつけて、すぐに手首を掴んで軌道を逸らし回避。間髪入れず、肘関節へ力任せに振り上げた膝を打ち込む。肘の関節部はへし折れ破壊され、腕があらぬ方向へと折れ曲がる。

 

予期せぬ損傷に動きが止まり、ナイフが床に落ちる。その隙を見逃さず、ブリッツはブルートを背後から担ぎ上げ杭打ちよろしく脳天から地面に叩き付けた。

 

単純な強度ならアスファルトを優に上回るコンクリートが、衝撃でクモの巣状にヒビが走り、ブルートの頭部が僅かだがメリ込んでいる。

まともに喰らったのだ。電脳にダメージが入り機能が停止している。人間で言えば脳挫傷といった具合か。

しかしすかさず、ブリッツはブルートを蹴飛ばし仰向けにさせ、もう一丁のMP7でコアへ5発撃ち込み、確実に仕留めた。

辺りに部品の欠片と人工血液とオイルが撒き散らされる。

 

「うっわ。容赦無いね」

 

「今日は持ち合わせて無い」

 

Vectorの台詞に平然と返しながら、ブリッツは近くに落ちている切断されたMP7を拾い上げる。

 

何度見ても、レシーバー前方が綺麗に斬られている。使い物にならないだろう。落胆の溜め息が溢し、弾薬の詰まったマガジンを抜いて回収し、本体は放り捨てた。

 

「お気に入りの一つだったのに」

 

「御愁傷様。それにしても、気付かなかったなんて珍しい」

 

LWMMGが周囲を警戒しながら意外そうに言った。

ブリッツと共に数々の任務を遂行してきた彼女からしてみれば、鉄血の奇襲を易々と受けてしまうというのは、些からしくないように思えたのだ。

 

「ああ、マグネティックにも映らなかった。本当に巧妙になってるな。・・・・・いや、それを差し引いても鈍っているな。無意識にテクノロジーに頼りすぎていた」

 

「・・・鈍ってる?」

 

Vectorが懐疑的な視線をブリッツと、機能停止したブルートを交互に向けながらに呟く。

トドメこそ銃であったが、実質素手で奇襲を仕掛けた鉄血人形一体を返り討ちで破壊している。鈍っているという言葉は正しくないように思えた。

 

それに、スマートグラスのマグネティックといったツールは、作戦行動をサポートするためのテクノロジーだ。

グリフィンの指揮官が戦術人形を使役するように、ツールは有効に使ってこそ価値があり、頼らないというのは宝の持ち腐れだ。

 

しかしそれも、ストイックな彼からすれば思うところも幾らかあるのだろう。LWMMGはもちろん、Vectorも敢えて言及はしなかった。

 

そんな時、遠くから銃声が聞こえてきた。8mmと45口径。一〇〇式の機関短銃とMicro Uziの銃声だ。

 

やがて銃声が止み、続いて通信が入る。

 

『指揮官、Uziよ。管制室を発見、制圧。ナビゲーターにシステムを奪ってもらってるわ』

 

「よくやった。情報はあるだけ持っていけ」

 

『もちろんよ。・・・今完了したわ。工場の見取り図も手に入った。データリンクで確認して』

 

PDAを取り出し、戦術データリンクを参照。確かに工場全体の見取り図があった。ブリッツのスマートグラス上にミニマップが表示される。LWMMGもVectorも同様のようで、すぐに自分の電脳に反映させた。

見取り図には発電装置の場所や柱の位置。探しているストックヤードまで全て載っていた。

 

ここからストックヤードまでそう遠くはない。

 

「確認した。引き続き頼むぞ」

 

『了解よ。アウト』

 

「さあ、先を急ぐぞ。早いところ、この工場を破壊してしまおう。面倒な事になる前にな」

 

「了解」

 

銃を構え直し、三人はストックヤードへ向かう。

 

 




前書きでも言いましたが、自分去年の夏から少し前まで気儘なフリーターやってたんですけど、愛車の維持や改造の為に再就職いたしまして。
そのせいで更新が遅れます。
あと感想もらえないからモチベーションも維持仕切れなかった( ´・ω・`)

感想とか評価とかなんか他に色々お願いします!


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