これは平和な一幕。
カルデアのマスターは、サーヴァントとのコミュニケーションを取るため、そして単純に映画を楽しむため、サーヴァントたちと一緒に映画を見ることを決めた。

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 多くの時代、異なる大地を駆け抜けたカルデアの一行。
 彼らは世界を滅ぼしたクリプターたちに対抗するべく、この滅びを予測した魔術師シオンと共に、彷徨海バルトアンデルスにて次の戦いへ向けての英気を養っていた。
 これは彼らが第三の異聞帯での戦いを終えた後の、彷徨海カルデアベース内の一幕。


シネマルームinカルデア

「映画?」

 

「はい、ダヴィンチちゃん。先輩の部屋で一緒に映画を見ませんか?」

 

 ある日突然そんな事を言い出したマシュの前で、自他ともに認める天才であるダ・ヴィンチは束の間フリーズした。

 確かに今は危機的状況にあるわけではない。

 次の異聞帯(ロストベルト)での戦いに備えて気力と体力は万全の状態にしておくといい、と言った覚えもある。

 しかし何故「映画」なのか。それがさっぱりわからない。

 だがダ・ヴィンチは天才である。フリーズから回復するや否やその頭脳をフル回転させ、最近マシュが妙な『提案』をしてきていた事に結びつけた。

 

「もしかして、一昨日マシュが提案してきた事に関係あったりするのかい? 戦闘の際に盾を投げるのは可能か、とかの」

 

「あ、はい。そうなんです。実は――」

 

 それからマシュが話し始めたのは、数日前から藤丸立香の部屋で映画を見るようになったというものだった。

 案の定、マシュがしてきた提案もその映画から影響を受けたのだと言う。

 ちなみにどこからそんなデータがと聞けば、なんでもダ・ヴィンチちゃんから助言を受けた後、立香はエジソンやテスラを始めとする技術者系サーヴァントたちに協力を仰ぎ、収拾できるだけの現代の娯楽作品を詰め込んだデータボックスを作ってもらったのだとか。

 それを聞いたダ・ヴィンチちゃんが頼ってもらえなかったことにちょっぴりショックを覚えていると、申し訳なさそうな顔をしたマシュが話しかけてきた。

 

「あの、流石に気を抜き過ぎでしょうか?」

 

「え? いやいや、別に藤丸君やマシュが映画を見る事に反対はしないよ。今はそこまで切迫した状況じゃないからね。ただ、私が一緒に行ったらお邪魔なんじゃないかと思ったのさ」

 

「え? ……い、いえっ! そんな事はありません! それに昨日はジャンヌ・オルタさんも一緒でしたし!」

 

「あはは、冗談だよ冗談」

 

 顔を真っ赤にしてあたふたするマシュを愛でながら、ダ・ヴィンチは今の自分の仕事を確認する。

 彷徨海に来てからの彼女の仕事は、主に今後に備えたシャドウボーダーの改修やこれまでの異聞帯で得た情報の解析や研究など多岐に渡る。

 だが、あのマシュがせっかく誘ってくれているものを断るわけにはいかない。それに断れば今度は心配性の立香を伴ってやってくるのが見えている。

 だから、数時間くらいの休憩は問題はない。ダ・ヴィンチはそんな言い訳めいた考えを浮かべ、からかわれたことに頬を膨らませるマシュに笑顔を向けた。

 

「うん。思えばこの時代の娯楽作品にはそこまで触れていなかったからね。楽しませてもらうとも。準備をするから少し時間をもらってもいいかな?」

 

「はいっ! 先輩の部屋でお待ちしていますね!」

 

 よほど嬉しかったのか、満面の笑みと共にマシュは部屋から出ていった。

 きっとその笑顔のまま立香にお誘いが成功したことを告げるのだろう。その様を想像するだけでダ・ヴィンチもまた顔がにやけてしまう。

 そんなゆるんだ顔のまま、彼女は手をつけた仕事を更なるハイペースで終わらせにかかるのだった。

 

 

 

 そして一時間後。

 カルデアのマスターである藤丸立香に与えられたそれなりに広い部屋の中は、映画を上映するために照明が落とされていた。

 スクリーンの前のソファには、マシュ、ダ・ヴィンチ、立香の三人が並んで座り、映像を映し始めたスクリーンをじっと見つめていた。

 ちなみにその手にはカルデアキッチン製のポップコーンがあった。どうせならダ・ヴィンチに雰囲気まで楽しんでもらいたいという立香の計らいである。

 彼女がそれに手を付けるのを横目で確認した立香はほっこり笑顔を浮かべ、自身も映画に集中することにした。

 

 映画のタイトルは『アベンジャーズ』

 連続した痛快極まるアクションシーンや、登場するヒーローの魅力が溢れる作品として有名な映画である。

 ただこの作品、単一の作品としてみると説明不足な部分も多い。

 それが何故かというと、時系列においてこの作品の前における作品が幾つもあるからだ。

 藤丸たちはこれをダ・ヴィンチに見せる事はできなかった。常に幾つもの仕事を抱える彼女に前作を確認しろなんてことは言えるはずもないのだ。

 だから解説が必要そうな部分については、両隣の二人が息の合った連係プレーで補っていくことになった。

 ちなみにそもそも他の作品にしようなんて考えは浮かばなかった。今のダ・ヴィンチちゃんが適度に興味を持ってくれる、単純なストーリーで気楽に楽しめる作品が一番だと立香は思ったのだ。

 下手に『ダ・ヴィンチコード』なんて見せた日には、何が起きるかわかったものではない。

 そしてそんな立香の考えが当たっていた事は、コロコロ変わるダ・ヴィンチの横顔を見れば明らかだった。

 

「なるほど! このキャプテン・アメリカくんにマシュは影響を受けたわけだね。でも盾の大きさが違うからそこまで参考にはならないかな」

 

「このパワードスーツを着たのがアイアンマン? 立香くんもこういうのを着てみたいのかな? え? 別にいい? 遠慮しなくてもいいんだよ? もしかしたらそんな事態が来るかもしれないんだから」

 

「ソーにロキ、北欧神話の神々だね。とすると彼のハンマーはミョルニルかな? 高潔な心の持ち主でないと持てないハンマー? それは興味深いね」

 

 ただ、立香の考える楽しみ方とは若干違ってはいたが、そこはそれ。娯楽作品である映画をどう楽しむかは人それぞれである。

 結局最後まで割と楽しみ切ってくれたダ・ヴィンチの様子を見て、立香はほっと胸をなでおろした。

 

「楽しんでくれたみたいで良かったよ。その、こういうヒーロー映画を実際の英霊に見せるのはちょっと賭けみたいなとこがあったから」

 

「え? そうだったんですか?」

 

「うん。創作物として作られたヒーローなわけだから、多少はね」

 

 つまりダ・ヴィンチは他の英霊に見せる前の試金石的な部分もあったわけだが、それを彼女は気にすることはなかった。

 実際楽しんでもらえるようにマシュと立香が頑張っているのは伝わってきていたし、何より彼女は『芸術家』だ。

 作品は真摯に楽しむべきである事は知っている。そこにツッコミを入れるほど野暮ではないのだ。

 

「安心してよ。ちゃんと心から楽しんださ。マシュが影響を受けるのも納得だとも思えるくらいにはね」

 

「ダ・ヴィンチちゃん……良かったですね、先輩!」

 

「あぁ。本当によかった」

 

「それに」

 

「「?」」

 

「物語に描かれた存在が実際にサーヴァントとして存在している以上、ただの作り物だと笑うつもりはないよ。もしかしたら本当にそんな世界があるかも……なんてね」

 

 

 

 

 

 

 

「すごく壮大なフラグ建築な気がする……ん? なにこ、れぇっ!?」

 

 ゴトンという音と共に、四角い形状の何かがマイルームの中に現れた。

 そのキューブの正体を、彼らはまだ知らない。

そのキューブを追いかけて、クリプターたちよりも恐ろしい紫ゴリラがやってくることなど、彼らは知るよしもなかったのだ……

 

 

 

 




というエイプリルフール企画でした。

時間がないから雑な内容ですまねぇ! 本当はもっと内容について話す予定だったんだ……!
設定ガバってても気にしねぇ!
ちなみに次回予定だったもの


「ハムナプトラ」withファラオ's




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