ヤンこれ短編集   作:アルサヒム

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勇敢だった男

彼は勇敢『だった』。

 

『俺が直接戦場に出て指揮を執る!行くぞ!』

 

彼と仲間の艦娘は、勇敢だった。

 

『お前たちは最高の仲間だ勝てると信じている。』

 

彼らは常に自身にあふれていた。

そして実力もあり当時の大日本帝国の精鋭部隊の一つとまで言われていた。

 

 

 

「提督………。大丈夫よ、私達が守るから。」

陸奥が執行室の椅子に座る提督の肩に手を置く。

「それにここは特殊素材で作られた部屋だ。窓ガラスだって防弾仕様で危険はない。」

長門が執行室のカーテンを少し開け窓の外を確認する。

 

提督が勇敢だったのは数日前まで…今はそんな姿はなかった。

 

 

 

「ここの電気も止められるんでしょうか?」

「いやぁ~。それは無いんじゃないかな?深海棲艦に対抗できる私達の力をそぐような事はしないんじゃない?大井っち。」

 

北上と大井は、鎮守府の門や塀の上に有刺鉄線を付ける工事をしていた。

「よいっしょっと。」と言う言葉と共に北上は、地面に降り大井もそれに続いた。

 

「………よし、いいよ妖精さん!」

北上は、安全を確認して妖精に声をかけた。妖精はその声に反応し小さな体に持ったスイッチのボタンを押した。

 

ビリリッ

 

有刺鉄線に電撃の音がする。

 

「おぉ~、いいじゃん。いいじゃん。」

その光景に北上は喜び。

 

「北上さん!これで少しは安心できますね!」

大井は、安心していた。

 

「まぁ、万が一ここの電気が止められても妖精さん特製の発電機があれば安心だしなんの問題もないよ。」

「後は、警備の強化と食べ物ですね…一応今は、備蓄と大本営からの支給はありますがもし毒なんて入れられて――――」

 

 

 

「敵影は無し…。」

空母の加賀は、鎮守府の屋上で偵察機を飛ばしていた。がそれは海にでは無く鎮守府近くの町に飛ばしていた。

 

加賀は、表情を変えず近くの町を見渡す。

「………。」

 

その後自身の鎮守府を見渡す。

紋では高圧電流の流れた鉄線や鉄板などで補強された塀や門。鎮守府側には監視塔が立てれられ海と町側を監視する艦娘がいた。

 

「………提督私は貴方を逃がしはしません。もしその身に何かあった時は――――」

 

 

 

鎮守府は、強固な拠点になった。

 

補強された塀に高圧電流の流れる有刺鉄線に監視塔。

鎮守府の建物の窓ガラスは全て防弾ガラスに変わり鉄格子も付けれるという徹底ぶりだった。

 

工事は妖精と艦娘の手で行われ今や鎮守府は、要塞の様な建物になっていた。

更には、提督には24時間ずっと秘書艦と言う名の監視が付き時には、秘書艦の座を巡って『各地』で対立が起きていた。

 

 

 

そう、各地である。

ここの鎮守府と似たような現象は帝国各地で起きていた。

 

 

 

こうなる切っ掛けは数年前だった。

 

こことは別の鎮守府。××鎮守府とでも言おう。

そこの提督と艦娘達も精鋭部隊の一つだった。がある事件を境に帝国最強の名を欲しいがままにする。

 

それは、帝国に深海棲艦の大群が攻めてきたのだ。

 

少し前から帝国全体の旗色が悪かった。深海棲艦との戦争が少しづつ劣勢になり皆が不安と狂気を隠せなくなったころだった。

大本営は、ほとんどの鎮守府のすべての艦娘に特攻作戦の指示を出し始めていた。それほど帝国は追い詰められていた。史実の様な大本営の出世の為の特攻作戦ではない。生きるための作戦だった。

 

大日本帝国はその日震えた。

目の前に死が迫ってきたのだ。

とある海沿いの町に深海棲艦の大群が見える。

 

大本営に報告がくる。

○○鎮守府の艦娘特攻作戦行うも深海棲艦の勢い止まらず。

その日、大本営の大人たちは子供のように涙と失禁を垂らした。

 

そんな中、大本営に新たな報告が上がる。

××鎮守府の艦娘達が深海棲艦と交戦して止め居ていると。

 

 

 

数時間前。

「これはゴミだな。」

××鎮守府の提督が大本営からの命令書を破り捨てる。

 

提督の目の前には鎮守府の艦娘全員がいた。

そこの艦娘達は目を丸くする。二つの意味で。

 

一つは、大本営からの命令。特攻作戦と言う死刑宣告が自分達に下った事。

もう一つは自分たちの提督がその命令書をゴミとして捨てたこと。

 

「提督!?何のまねですか!?」

艦娘の一人が声を上げる。

「…君は特攻作戦で死にたいのか?建前はいらん。」

提督は、真顔で艦娘に質問する。

「めっ、…命令ですから。それに私達は兵器で『建前はいらないと言ったはずだ。』っ!」

艦娘は言葉に詰まる。

「………ならどうするっていうのよ!?このままだと敵にアンタも皆も死ぬのよ!?」

「そうです!確かに…死ぬのは怖い…でもあなたが死ぬ事はもっと嫌なんです!!!」

それを切っ掛けに艦娘達から感情できな言葉が飛び出す。

「そーよ!死ぬなんて嫌よ!けどここまで来たら引けないじゃない!」

「特攻なんて怖いよぉお!!!」

 

「私は―――」

 

提督の言葉に皆が黙る。

 

「私は…いや…俺だって皆と離れたくないんだよ!」

提督も感情的になる。

「だったらどうすんだよぉ!?」

艦娘も感情的になる。

「迎え撃つ!そして戦闘は俺も現場に出て直接指揮を執る!だから―――」

 

 

 

『だから死ぬな!勝つぞ!』

その言葉の元××鎮守府は、深海棲艦の大軍を迎え撃った。

提督が直接戦場にでて更に、鎮守府ほぼすべての艦娘が深海棲艦を迎え撃つ。最初は××鎮守府のみの戦いだったが特攻作戦に応じた別の鎮守府の艦娘達が戦う仲間を見て自信を囮に援護し散っていったり。またある者は、戦う仲間に勇気づけられ特攻のための爆薬を積んだドラム缶を敵にぶつけ援護したり鎮守府に艦装を取りに行ったりし××鎮守府の奮戦を聞いた提督が自身も同じように援軍に駆け付けたりし皆必死に戦った。

 

結果は勝利。

 

沢山の犠牲を出した戦いは勝利に終わり××鎮守府は、大金星を挙げた事が切っ掛けで英雄や最強の艦隊として国民にもてはやされた。

 

―――――大本営を除いて。

 

 

 

提督の頭が吹き飛ぶ。

 

××鎮守府の提督の頭が吹き飛ぶ。

 

深海棲艦との戦いの翌日。××鎮守府に勲章が送られた。海軍元帥が直接渡したいとの事で沢山の記者や要人などが××鎮守府に呼ばれ大々的に勲章が提督に授与された。

 

その時だった。

勲章が授与された時。提督の頭が吹き飛び赤い液があたりに散らばり元帥の服を赤く染める。

提督の艦娘達が絶叫し提督のそばに駆け付ける。が、提督は誰が見ても助かるような状況ではなかった。

 

翌日、大本営により何処から狙撃されたか調査が行われ犯人は深海棲艦とされた。そして狙撃ポイントは海沿いだと断定された。

提督の艦娘達は、絶望と失意で何も考える事が出来ず調査結果に何の疑問も抱かなかった。それどころか全員が提督の後を追い自殺をしようとして大本営から派遣された艦娘や人間に止めれていた。

 

そんな状態から1年後。

 

「今戻ったぞ提督。」

かつて提督が死んだ鎮守府に艦娘達はいた。

彼女達は誰一人轟沈も自殺もせず生きていた。

「あぁお帰り、長門。」

執行室には新しい提督がいた。彼は元帥の息子で死んだ前提督に変わりここの鎮守府の提督をしていた。

「………なぁ、長門。」

提督は、机から小さな小箱を取り出すが長門がそれを制止する。

「提督それは受け取れない。」

「…前の提督を忘れる事が出来ないのか?」

「…あぁそうだ。私はあの人の物だ。…それは今でも変わらない。」

艦娘達は、提督が死んだ直後はストレスと絶望や悲しみなどによって発狂や精神病を発症し自殺をしようとするものが多発した。

大本営は、英雄の艦娘を失いたくないのでカウンセリングや自殺防止の為の監視を付けたりしていた。

 

そんな中次の提督として彼が来たのだった。

最初は、艦娘達は前提督以外何の興味もなくいう事をほとんど聞かなかったがそれでも提督は艦娘達と仲良くしようと話しかけていた。

 

そんな中ある事を口に出す。

『深海棲艦に復讐したくないのか?』

その言葉に提督を失った艦娘達に火をつける。

 

『深海棲艦は皆殺しだ!』

復讐心が彼女達を一致団結させた。

『提督の敵をとれ!』

彼女達は、容赦なく深海棲艦を攻めた。

『奴らの首を!命を!死を!』

新しい提督は困惑した。

 

が艦娘達が凄まじい戦果を挙げ続け新しい提督はどんどん出世した。

新しい提督は、父である元帥の後を継ぎ元帥になる。と噂も立つほどの戦果だった。

 

ある日提督は、酒を飲んでいた。

「長門も誰も指輪を受け取ってくれねぇ~。」

鳳翔のお店で提督は、酒を煽り酔っぱらっていた。

「仕方ないですよ。(…私達の提督は、あの人だけですから。)」

鳳翔は、苦笑いしながら提督の相手をする。

「今の提督は俺だぞぉ~。元帥の息子だぞぉ~。」

周りにたまたま来ていた艦娘達は、前の提督を思い出したのか少しくらい顔になった。

 

「せっかく父上に頼んであの男を暗殺してもらったのにぃ~。」

『 『 『 『 『 は? 』 』 』 』 』

 

翌日××鎮守府ではクーデターが起きた。

 

その日すべての鎮守府に衝撃が走った。

××鎮守府のクーデター。そしてその理由に。

××鎮守府の艦娘達は、マスコミを呼び提督に証言させた。

大本営は、前提督を嫌っていた。何故なら前提督は、元々一般人で妖精が見えるだけで海軍に入れさせられた人間だった。大本営は、所詮元一般人の提督なので期待はしていなかった。

現に他の鎮守府にかなりの支援を行い遠征など必要のないくらい潤っていた。その理由は、提督が正式な軍人で大本営とズブズブの関係だった為彼らが戦果を上げれば大本営の人間の出世につながる為だ。

 

そんな中元々一般人の提督が戦果を上げ最終的には英雄や最強と言われる鎮守府になった。

 

そんな期待していなかった鎮守府に彼らは困っていたのだ。

自分の出世につながらない!元々一般人の癖に調子に乗るな!何とか艦娘を引き抜くか提督を首か拘束できないか?大本営でそんな話題で持ち切りだった時、深海棲艦の大群が攻めてきた。

 

大本営は恐怖した。今までにない数の深海棲艦が攻めてくる。その量は今までに例のないものでそれが帝国にたどり着けば国が終わるほどの数だった。死を覚悟するものまで出たときある妙案を思いつくものが出た。

『一般人から提督になった者達に特攻作戦の命令を出しては?』と。

 

その妙案に大本営は、喜んだ。

一般人の提督達の戦力を削った上で深海棲艦の戦力を削る。その上で軍人出身の提督達に深海棲艦の大軍を倒させればいい。

そうすれば自分(達)の部下の功績で出世できる。お金や女に酒…もっと手に入る。それに特攻作戦で深海棲艦を止めれなかったことを理由に邪魔な一般人出身の提督を処刑すればいい。なんと素晴らしい作戦か。そんな考えで大本営は、満場一致で特攻作戦を認可した。

 

そんな中××鎮守府はその命令に従わなかった。それどころか戦いに勝利した。大勝利である。

その情報が大日本帝国流れ国民は湧きあがり××鎮守府の提督と艦娘を国を救った英雄や最強と褒めたたえ。海外にもその情報が流れ海外からも××鎮守府の提督と艦娘を最強の艦隊と褒めたたえる声が聞こえた。

 

大本営は激怒した。

 

これほどの功績を一般人が持っていくなど嘆かわしい!これでは、軍人の肩身が狭くなるではないか!あの若造に首輪をつけておけばよかった…。そんな反応の中元帥の息子息子としてその場に居た後の新しい提督になる男は言った。

 

「父上、僕××鎮守府が欲しい。」

 

その言葉が暗殺につながる。

一般人出身の提督を消し元帥の息子が最強の艦隊を指揮する。そう言うことで大本営の物達は納得した。

 

 

 

そして冒頭の勇敢だった提督につながる。

元帥の息子の願い出大本営が提督を暗殺したというニュースが日本中に流れた。その内容に勇敢だった提督は、ショックを受けた。自身も元一般人だったからだ。もしかしたら自身が消されていたかも知れないという事に恐怖したのだ。

 

鎮守府では、大淀の所に大本営から××鎮守府で起きたクーデターを鎮圧せよと命令の連絡がきた。

が大淀はそのことを握りつぶすだろう。

大本営は、自身の提督を消すかもしれないのだ当然だろう。それに………

 

その時大淀に連絡が入る。それは他の鎮守府からだった。

『妖精さんから聞きました?今の大本営の状況。』

「いえ、各鎮守府で妖精さん達が連絡を取り合っていたのは知っていますが向こうはそんなに面白い事に?」

『えぇ、今回のニュースが切っ掛けで他の鎮守府でもクーデターが起きたり元一般人提督のいくつかのグループが出来たり、元一般人はもちろん正規の軍人ですら大本営に従わなくなっているそうよ。

クーデターを鎮圧しようにも戦力が集まらないそうな。』

 

大淀は笑う。『ざま見ろ大本営』と。

 

「にしても妖精さんからあんな提案があるとは…。」

『えぇ、まさか大本営へのクーデターを持ちかけられるなんてね。』

 

今回の騒動。本来は、他の鎮守府でクーデターが起きたのならどこかが何らかの対応をするだろう。

暗殺に関しても情報がでる前に何らかの初動があるはずである。が今までそれがない。

実は、提督が暗殺されてから妖精から艦娘に持ち掛けられた計画だからだ。

 

『艦娘さん達の提督に危険が迫っているよ!』

 

それは、××鎮守府以外の帝国中のほとんどの鎮守府に持ち掛けられた。そしてその理由を詳しく聞いた艦娘達は、恐怖した。

 

『司令が死ぬなんていやぁ!!!』

『私の提督がいなくなる何て考えたくないわ。』

『そうよ「ワタシの」提督を守らなきゃ!』

 

××鎮守府には、時が来たら知らせる。今彼女たちに知らせたら心が壊れる…。と言う前置きから妖精はこう続けた。

『皆には、食料の確保をしてほしい。それと鎮守府を補強してほしい。提督さんを守る為に!××鎮守府の提督さんは、すごく僕たちを大事にしてくれた…こんな悲劇はもう起こしたくないんだ!』

 

艦娘達に断る理由は無かった。

艦娘達は、この話を切っ掛けに提督への執着を爆発させることとなる。…今まで死ぬとしたら自分たちだけだと思っていたからだ。自分が死んでも大事な人は、無事だ。それは心のよりどころだった。が今回の件でその大前提が崩れたのだ、執着もしたくなる。

 

「ホント、妖精さんがいろんな物作ってくれて助かるよ。」

「そうですね。海の水を飲み水に変える装置に発電機に防弾ガラスに…食べ物は、ため込んでいたし…後は大本営を始末するだけですね北上さん。」

 

「お前たち遅いぞ!もう皆準備はできているんだぞ。」

鎮守府の門の前、長門や何人かの艦娘が艦装を装備して立っていた。

「あっ、すいません長門さん。」

「他の鎮守府は、大本営をつぶす為にもう出たころだ。我々が遅れるわけにはいかんぞ。」

「ごめんなさーい、提督に何かないかって心配でさー。」

「それは、問題…問題ない…。秘書艦達に守らせている。外には出ないよう提督に言っているし、秘書艦達に執行室はもちろんお風呂にトイレも提督から目を離さないよう言ってある。」

長門は一瞬不安に表情を曇らせた。

「なら安心…かな?まっ、とにかくさっさと大本営をつぶしに行こうよ。」

「そのついでに指輪も大量にいただいてきましょう!」

「そうだな。早く大本営を潰して早く帰って皆で提督とケッコンしよう。」

 

 

 

彼女達は、どんな手を使っても。どんな相手だろうと提督を守る。改めて決意をし出撃するのであった。

 




今のところこの作品含め3作品投稿予定。


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