はじめまして、柏コアと申します。普段からハーメルンの小説を読んでいて、燐子の小説を書いてみたいなと思いはじめました。拙い文章や、誤字脱字が多いと思いますがどうかよろしくお願いします
「そうだよね……やっぱり私に長所なんて」
なんでだ……
「これで最後だけど……私はピアノやめないから」
待ってくれ……俺はそんな……
「じゃあね、"品崎和士くん"……」
俺は、そんなつもりじゃ…
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「違うんだよ!」
「どうしたの和士?大丈夫?」
「何か悩み事でもあるのか?父さんが聞くぞ?」
またあの夢だった。何度だって繰り返す過去。未だに向き合えていない俺自身の記憶だ。
今俺は名古屋から東京に転勤になった父さんについて行って、その旅路の途中。周りの景色を見ると、どうやら高速道路を走っている途中のようだ。
引っ越しの疲れから気づかずに寝てしまったようで、"あの夢"に魘されて起きたみたいだ。
あの夢、とも一途に言えるほど他人事ではない。俺自身の後悔から掘り起こされた事実の過去だからだ。
母さんと父さんにも心配をかけてしまって、自分は本当に変わってないなと思った。
あの日から何度も変わろうと思った、だけど俺には決意する力なんて無かった。
「あぁ大丈夫……。いきなり大声出してごめんな」
「和士も疲れてるのよ。今のうちにゆっくり休んでね」
「ありがとう母さん。本当にごめんな」
「そこはありがとうだけでいいのよ」
こんな風に父さんも母さんも俺に優しい。だけど俺は甘えてばかりで変われずにいる自分が嫌だ。このままでいいのだろうか。
否、良いはずが無いだろう?
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引っ越しの荷物もある程度片付いてきた頃だ。そういえば明日からは編入で新しい学校に行く。花咲川学園。伝統ある学校で、最近共学になったそうだ。
そんなことを考えながら小さな荷物を整理していると、懐かしい箱が目に入った。
「宝物ボックス、かぁ……」
とても懐かしい。小学校くらいから何気に大事にしている箱である。中を見てみると綺麗な石や、友達からの手紙など、大事なものから何だこれ?ってものまで入っている箱だ。思い出の一部な気がして、ずっと捨てられずに結局持ってきてしまった。
その中の一つを見たとき、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
「燐子……元気にしてるかな」
白金燐子。小学校の頃、家が近くてよく遊んでいた親友だった。幼馴染と行ってた過言では無いほどの仲だった。でも、俺のせいで親友とは程遠い形のまま別れてしまった。
引っ越しを伝えられると、自然と涙が出そうになった。「東京に行く」このたった5文字分の言葉が。
そういえばここは東京だ。
でも、あんな酷い事をしたのに顔なんか合わせられるはずもないと思い小さい頃の笑顔の少年と少女が写ってる写真立てをしまった。
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ついにというほど待ち侘びてた訳でもないが、ついにこの日が来た。編入の日。昨日の事を考えながら決して軽くない足で学校まで向かった。
言われた教室に入ると、周りが拍手で迎えてくれた。
そんなさりげない行為にも、暖かさに似たものを覚えた。
「どうも、名古屋から来ました品崎和士です。よろしくお願いします」
軽い自己紹介を済ませたあと窓際の席に誘導されたので外を眺めていると、視界の隅にエメラルドグリーンの何かが見えたのでそっちを向くと前の席の人の髪の色だった事に気付いた。綺麗な色だと思い、ぼーっと見ていると、当の彼女は振り返って
「氷川紗夜と申します。一年間よろしくお願いします」
「うぇぇ!?は、はい!よろしくお願いします!」
やべぇ、完全にキョドった。と思い頭を抱えていると
「そんなに緊張する必要はありませんよ、花咲川学園の皆さんはいい人ですから」
と、言いつつもクスクスと笑っている氷川さんを疑問に思い
「な、なんか顔についてますか?」
「いえ、面白い方だなと思いまして」
「なんだそれ!」
「ふふっ、そういうとこですよ」
初日にしては良い人間関係の滑り出しだった。
新しい事が多いと、時間の経過が早く感じる事があると言うがまさに今その状態である。気づいたら昼休みになっていた
特にやりたいこともなく、校内を探検してみる事にした。
中庭でお弁当を食べている五人組の少女や、廊下でバク転をしている少女、校内を巡回して廊下を走っている人などを注意している少女、
ってそれは氷川さんじゃないか!
おい誰がロリコンじゃ。
しばらく歩いていると、一つ気になる教室が目に入った
「図書室……ねぇ」
子供の頃から読書をする習慣などほとんどなく、読む本と言ったらポ○モンの攻略本ぐらいだった
一度入ってみるかと思い、入ってみると、衝撃の光景が目に写った、一部の男子生徒たちが、黒髪ロングの女子生徒一人を囲んでなんかやっている。初日からヤバイもの見せられるのか……。
氷川さん…いい人ばかりじゃなかったよ
襲われている少女の顔を見ていると、どうも放っては置けないような気持ちに芽生えた。どう考えても彼女とは初対面なので、本能的な所なのだろうか。そうしているうちに、言葉より先に体が出た。自分は小さい頃から体は大きい方だった。なのでいざ喧嘩になっても、そこまで一方的にやられる事はないだろう。
「おい、こんな下らないことやめろよ」
と、一番近かった奴の肩を掴みながら言うと
「あぁ出た出た。正義のヒーロー気取りの偉そうな奴。なに?風紀委員かなんか?」
「嫌、そんなこと関係ねぇだろ」
何故か相手の態度にスイッチが入った。
「お前、なめてんだろ?殺されてぇか?」
相手も相手で、全員がやる気みたいなので、ここままやるかと思った最中
「風紀委員です!暴行はやめてください!」
と、先生を連れた氷川さんが現れた
「うわっ、来たわ風紀委員。覚えとけよ」
と、不良達は逃げ出した。それを追いかける先生。そんなやりとりを見ていると
「大丈夫でしたか?初日から内の生徒が心配かけてすみません」
走ってきてくれたのだろう。息を整えながら氷川さんはそう言ってくれた。
「俺は大丈夫だよ。それに、氷川さんが悪いわけじゃ無いし気にしないでよ。あと、助けてくれてありがとね」
と、言うとすこし頰を赤く染めて
「わ、私は当たり前の事をしただけですから。失礼します」
と言いながら、氷川さんは教室へ戻っていった。
しっかりしてるけど、素の部分は女子なんだな。と感じていると
「あの……助けてようとしていただいて……ありがとうございました……」
取り囲まれていた女子生徒に話しかけられた。
「大丈夫ですよ。助けようとはしましたが、実際には助けられなかったので」
と、返事を返したが、この女子生徒に違和感を感じた。
綺麗な黒髪、アメジストのように澄んだ瞳、この女子生徒の容姿にどこか心の奥で既視感を覚えたんだ。
普通の人なら放っておくのだが、自分の心はそうしようとはしなかった。
どうしても気になって名前を書いておくのも悪くないなと思い、聞いてみようとしたが
「あの、あなたの名前は……」
「私は……白金燐子です。」
「っ!?失礼します!」
「あっあの、ちょっと……!」
何かを言おうとしていた"白金燐子"という名前の少女を置いて、俺は走って図書室を後にした