白燐に煌めく光の下で   作:柏コア

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第14話 見せる顔

 

 

 

 

 

 

「なんだか楽しかったな」

 

何も伝えずに学校をサボった私たちは当たり前のごとく怒られた。

本当なら一緒になんて怒られるはずなかったのに、和士君の担任の先生がもしやと思って病院に電話したところ病院側は「屋上で彼女さんとお話ししてましたよ」なんて言ったらしい。

怒られてる時にそう言われて恥ずかしすぎて逃げたくなった。

でも不思議と嫌な気持ちにはならなかったな。

 

 

「今なら、また誘っても大丈夫だよね」

 

季節も7月に入ろうとしている中で別のことを考えて集中していない私なんかが目立つはずもなく、暑さに負けてぐったりしている他の人の方がよっぽど目立っているので助かった。

その後も時間だけが淡々と過ぎていって、気づいた頃にはもう放課後になっていた。

目的の人を探すべく、B組に着いたのはいいのだけど……。

私が探していた彼は、クラスのみんなが帰っていった今でも一人机に突っ伏している。

悪い気もしなかったから、起きるまでドアの横で待ってることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー和士サイド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子は決意を固めて俺に話してくれた。守ってくれる、支えてあげると。

でも結局は周りに頼っちゃ今の俺は変われないし、そうでなきゃ失ったものは取り戻せない

 

そんなことを考えていたら、不思議な事が起こった

 

 

「品崎さん!こっちですよ!」

 

何故か氷川さんが手招きをしながら呼んでいる。全く悪い気はしなかったので着いていってみる。すると

 

 

「和士!こっちよ!」

 

次は母さんが手招きをしながら呼んでいる。何か引っかかる気もするが、忘れるってことはそこまで大事なことでは無いのだろう。

 

その後、氷川さんや母さんとひたすらに追いかけあって楽しく過ごした。でも何故か疑問に思う事が一つあって、なぜこの二人がいるのだろうか。接点も無いのに

その時、俺は気付いてしまった。この二人の共通点は一つ。そうだ、俺が失ってしまった人物。

 

 

「おい!お前らはいったい……」

 

そういった途端、俺と楽しく時を過ごしていた二人はたちまち黒い影となりこっちを指差して笑ってきた

 

 

「なんなんだ……なんなんだよ!!やめろ!!」

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

凄い勢いで顔を上げた。周りを見渡すと一瞬で状況が読める。

もうとっくに授業は終わっていて、皆は帰った。つまり6時間目から寝過ごしていたことになる。

なんで誰も起こしてくれなかったんだろう。前にもこんな事があった気がする。

 

 

「そうか……あの時は氷川さんが……」

 

心の中で呟いた

あんな夢を見た後だから嫌でも彼女のことなんてすぐ頭に浮かぶ。

結局こう思ってる時点で周りに頼ってる俺はやっぱり口だけでしか言えない弱い男だ。

自分のことを考えるたびに嫌になる。

守るとか周りに頼らないとか口走ってるくせに結局は周りに任せっきり。そんな人が何も失わないはずがない。

いつかは燐子だって……

 

 

「和士……君?」

 

振り返らなくても分かる。そこに燐子がいる

 

 

「ん?どうかしたか?」

 

もちろん気にしてる本人にそんなことを言えないので平然を装って返事をする

 

 

「今……なにか悩んでなかった?」

 

なんな流石だな。と思いつつも甘えないと決めた以上は突き通していく。

 

 

「そんなことないぜ、寝起きでボーっとしてただけ。第一なんかあったら燐子に教えるって約束だろ?」

 

「それはそうだけど……そっか、大丈夫だよね」

 

燐子は心配そうな表情をしながらそう言葉を紡いだ。

これ以上守りたいと思った人に心配をかけたくないので話を逸らす

 

 

「そういや燐子、わざわざB組まで来てなんかあったのか?」

 

「あっ……それは、その……」

 

「どうした燐子……そんなに言いたくないならいいけど……」

 

「別にそんなことじゃないけど……」

 

「じゃあどうしたんだよー、言ってくれないと分かんないぞ?」

 

「あのね……今日一緒にゲームしない?」

 

「え、あぁ……いいけど」

 

燐子さえ普通でいてくれたら戸惑いなんてせずに答えられたはずなのに。

ゲームの誘いをしてくる燐子は少し怯えていて、それでいて身長差故に上目遣いをしてきて、頰を朱色に染めている。

流石に俺も男だから、平然を装ってるのは無理があった。

 

 

「ありがとうね、……どうかした?」

 

目の前に話す対象がいるのに目線をあちこちに逸らせている俺の様子は、誰が見ても違和感を感じるものだった。

 

 

「いやその……可愛いなって……」

 

対抗の言葉も無くなって、ついに本音が出てしまった。

こんな時はどんな反応をするのだろうか。経験もないし、そこまで異性の事を気にした事ない俺からしたらもう未知数の世界に踏み込んでいた。

 

 

「それは……えっと、ど、どういう……?」

 

こう返されちゃ一番困る。燐子の戸惑い方からして自分に向けての言葉ただ気づき切っているはずなのに、こう聞いてくるのは何かの挑戦なのか。

 

 

「お、俺は……燐子が可愛いなって……思っただけで、その」

 

もうまともに喋れる気がしない。顔が暑すぎる、今にも爆発しそうだ。

 

 

「……っ!?ば、馬鹿なこと言ってないで……帰るよ」

 

そう言って燐子は俺に背を向けて教室のドアに向かって歩き出した。これが俗に言うツンデレなのだろうか。和士から聞いた感じだとこんな感じだった気がする。

俺も慌てて燐子の背中を追いかける。燐子がドアの窪みに手をかけた時「ガチャン」という音がした。

勿論、俺もこの音の原因は分かっていて、鍵が閉まった状態でドアを開けようとするとこんな音が鳴るのだ。

そんな音がなったまま、燐子は全く動かない。そして後ろから見ると分かりやすいほどに耳が真っ赤に染まっている。

 

 

「ぷっ……ぶふっ、あはははは!」

 

面白いほど恥ずかしがっている燐子に、つい吹き出してしまった。これは流石に耐えられない。

 

 

「ちょっ、ちょっと……笑わないでよぉ」

 

頰をもう真っ赤に染めた燐子が、詰め寄ってきて上目遣いで訴えかけてくる。まさか燐子が追い詰めるとツンデレ族になるなんて知らなかったから、余計面白い。

 

 

「悪い悪い、つい面白く……て……あ」

 

俺らがそんなやりとりをしている最中、ふとドアの向こうに目を向けると俺の担任がニヤニヤしながら立っていた。

とりあえずドアを開けみた途端、担任が爆弾を落としやがった。

 

 

「品崎お前なぁ、病院でイチャイチャすんのは分からなくも無いけどよぉ……ここ学校だぞ?」

 

「イヤイヤイヤ!先生!朝も言いましたけどそんなんじゃ無いですし!」

 

「そうか、そうなのかよく分かった。末永くお幸せにな。俺は応援してるぞ」

 

「それ全然わかってないやん!ほら燐子からもなんか言って……」

 

「……!?」

 

「なんでお前はそんなに照れてんだよ…」

 

「じゃっ、そういうことだから結婚式ぐらい呼んでくれなー白金さん」

 

「えっ!?あっその……ありがとうございます?」

 

「もう全然話なんか聞いてないやん!!あーもう燐子行くぞ!」

 

このままでは燐子がショートしてしまうのも時間の問題なので腕を掴んで教室を出て行く

 

 

「気をつけて帰れよー」

 

最後にようやく先生っぽいことを言った先生の言葉を背に、俺たちは学校を出た

 

 

 

 

 

 

「はぁ……酷い目にあった……」

 

先生には死ぬほど茶化されるし、燐子はもう気が気じゃないし、ツッコミ役なんて全くやったことないから非常に疲れた

 

 

「燐子?大丈夫か?」

 

今でもどこか意識が上の空の燐子はボーっとしていて反応がない

 

 

「燐子!」

 

「えっ!?あぁごめんね……ちょっと動揺してて」

 

「流石に動揺しすぎだったな……あはは」

 

「和士君は嫌だった?」

 

急に変な質問をしてくるから、こっちも反応に困ってしまう

 

 

「何が?」

 

「先生に……イロイロ言われたことについて……」

 

これだからこの少女には相変わらず慣れない。急に突拍子も無いことを言うもんだから、こっちも調子が狂ってしまう。

 

 

「別に……嫌じゃねぇよ……」

 

「そっか……なら良かった!」

 

もうなんなんだろうかこの少女は、時にツンデレになって、時に消極的になって、時に地味にSになる。

でもそんな彼女の虜になり始めている俺がいるのも事実だ。

 

 

「……馬鹿なこと言ってないで行くぞ、ゲームしたいんだろ?」

 

「うん!……あっ、待ってよ!」

 

照れてるのはバレてるけど、これ以上弱みなんて握られたく無いから置いていくように先を歩くが当たり前のようについてくる。

こんなにも可愛い彼女を守れる俺は幸せだ。だからこそ守ってやりたい。

意志のままに、気持ちのままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー???サイド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イチャイチャしやがって……しかもアイツ……」

「もしもし……白金燐子だ。覚えておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刺客が来る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






この場を借りて高評価をつけてくださった方をご紹介させていただきます!


評価9という高評価をつけてくださった阿久津@谷口学園高校さん!!


本当にありがとうございます!!!これからもよろしくお願いします!!





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