白燐に煌めく光の下で   作:柏コア

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前書き、後書きは無しでいきます!









第15話 自分への罰

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、そこは移動速度減少魔法をかけてその後これを使って麻痺させて……そしたら和士くんはそっちで攻撃で、あっそっちじゃなくてボスの裏側で……」

 

約束通りネットカフェに行って燐子と二人でゲームをしている。俺のイメージなら二人で話しながらワイワイ楽しくやっているはずだったのだが……。

楽しいことには変わらないが、燐子の口が止まることは全くなくそれに呆気にとられながらひたすら指示に従っている俺がいる。

普段優しい人が起こると怖いように普段消極的な人がここまでしゃべり続けていると、本当に驚いてしまう。

 

 

「あっクエストクリアだね、このアイテムがあと二つでこの装備が最大強化できるからあと5回ぐらい周回すれば大丈夫だね。あと、周回効率を考えると和士くんの装備はこれよりこれの方がいいと思うよ。ん?ボーっとして、どうかした?」

 

「いや、なんかさ俺の気のせいじゃ無かったら……今日の燐子めちゃめちゃ喋るなって……」

 

「えっそう?多分いつも通りだと思うけど……」

 

「いやどう転んでも今日の燐子はいつも通りには全く見えないぜ」

 

「嫌だった……?もしそうならごめんね」

 

「いやいや全然嫌じゃ無いから!逆に話してくれた方が俺もやりやすいし……頼むから落ち込むのだけはやめてくれ!」

 

今日という時間だけで燐子の福笑いのように何枚もの顔を見てきた。それにかろうじて対応できている自分を褒めたいぐらいだ。

 

 

「なら良かった……!じゃあ早速次のクエストに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから大体何時間ぐらいやっただろうか、燐子があくびをしたことでお開きにすることになった。

 

 

「お疲れ様和士君……疲れたね……」

 

「あぁ、お陰様でもう腕動かねー……」

 

そこで時計を確認する

あぁ9時か……

9時!?おいおいどいうことだ。この時計が狂ってないなら3時間半もぶっ続けてゲームしてたことになる。

それを知った途端、どっと3時間半分の疲れが降りかかってきた

 

 

「ぐはぁ……」

 

「大丈夫!?和士君!」

 

俺は疲れから来た眩暈のようなものが原因でそれを燐子が受け止めようとするが人並みの体重よりもある俺の体を支えられるはずもなくて二人して床に倒れこんだ

 

 

「すまん燐子!大丈夫か?」

 

すぐに振り返って燐子の様子を確認する。流石に俺の体重だと怪我をしていない保証なんて全くないからだ。

 

 

「うん、大丈夫だよ……和士くんは?」

 

「あぁ……俺は大丈夫だけど……」

 

振り返ると間もなく、俺の目には芸術作品のような物を見た。ライトグレーの床の上に散乱している艶のある綺麗な黒髪と、その上にある肌の純白、その一部がほんのり桃色に染まっている。

それぞれがそれぞれを引き立てる色となって、人という存在が織り成す芸術。

今の彼女は、今まで見た物の中で一番美しく思える。

 

 

「和士……君?」

 

俺は言わずとも気づいていたが、彼女に見惚れてしまっている。俺が見つめる先は彼女の目。これもまた綺麗すぎる白の上にアメジストの宝石が乗っかっている。その純白とアメジストはうるうると揺れていて、今にも壊れてしまいそうだ。

この宝石を守れるなら、他に幸せなんかいらない。いまの俺ならそうとでも思える。

 

 

「もう時間も時間だから……帰るぞ」

 

見つめたいものを散々見つめて、自分の感情を表に出すことなく平然を装って行動する。そんな自分には散々呆れていたが、彼女を守るためになら今変われる気がする」

 

 

「う、うん、帰ろっか……」

 

いまいち流れが掴めてなさそうな彼女は戸惑いながらも、返事をした。無理もないだろう。よくも分からないのにずっと見つめられて、ようやく出た言葉が帰ろうだなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ燐子」

 

店を出てから歩き続けてずっと続いていたもどかしい静寂を俺の方から破った

左右はブロック塀に囲まれているので俺の声はしっかりと透き通る

 

「うん?どうしたの?」

 

「燐子は……急にいなくなったりしないよな?」

 

ここまで大切な人を失い続けてる現実にどうにも不安しか覚えない俺は不安になって、つい聞いてしまった。

あたりまえのように燐子は一度不思議そうな表情を見せたがすぐに切り替わって、微笑んでこう言ってくれた。

 

 

「うん……!私はいなくなったりしないよ」

 

「そっか……そうだよな。ありがとう、燐子」

 

こんなにも燐子が強い人間だってこと、他の人は知っているのだろうか。知っていて欲しいとは思うが、俺だけが知っているすがたがあって欲しいという少しの独占欲も湧いている。

 

 

「あっ、猫だ。かわいい……」

 

燐子が野良猫を見つけたらしく、猫に寄っていく。こんな風景にはいつも癒される。

屋上の時もそうだ。俺を安心させてくれる心の強さを見せてくれた後には必ずと言っていいほど子供のような可愛らしい一面を見せる。

そんな風に微笑んでいたのも最中、燐子の横の曲がり角から黒い影が出てきた。

燐子が危ない。そう分かっているのに体は動かない。自分に勇気が無いからじゃない、"何者か"に抑えられているのだ。

 

 

「作戦成功、だな」

 

「あぁ、こんなに上手くいくとは思ってなかったわ」

 

服装の乱れた。不良が二人、燐子を捕らえている。俺を抑えてるのも多分コイツらの仲間だ。

 

 

「ほ〜ら白金ちゃん、俺らと一緒に遊ぼうぜ?」

 

「ひっ……」

 

コイツらは今"白金"と口にした。なんでこんな奴らが燐子のこと知ってやがんだ

 

 

「やめろ!てめぇら誰だよ!」

 

燐子を守ると決めた以上、絶対に引かない。誰であろうと守り抜いてみせる。

 

 

「忘れられちゃ困るなぁ、お前のせいでこっちは散々なんだよ。テメェの正義感のせいでよ」

 

「そんなん知るかよ。おめぇらと関わった記憶なんてねぇよ」

 

「あははは、相変わらずの正義感だなぁ。流石転校初日から俺らの邪魔をしてくれた厄介者だな」

 

転校初日……?まさかコイツら!

 

 

「まさかお前ら……図書室の?」

 

「あぁそのまさかだよ。てめぇのせいでな、学校では噂になるわ風紀委員に目をつけられるわおまけにはプライベートまで目をつけられてしまいには停学だとよ。どう落とし前つけてくれんだ?」

 

「そんなん知るかよ。そんなん俺だけの問題だろ。なんで燐子まで巻き込むんだよ」

 

「そりゃあお前が気に食わねぇからだよ。女子のこと助けてその上イチャイチャしやがってよぉ、人生は青春アニメみたいに感じてんじゃねぇよ」

 

もうコイツらの言い訳なんてこれ以上聞いても意味がない。そう感じた途端、体が急に動き出した。

 

 

「ゴスッ、ゴスッ」

 

と、二つの鈍い音がする。

何が起きたかなんて分からないはずがない。この音を鳴らしたのは自分なのだから

 

 

「ふざけんな……そんな理由で燐子のこと巻き込みやがって!!」

 

俺は俺を抑えていた二人を殴り倒していた。燐子に乱暴だと思われるのは良くは感じないが、そんな感情なんかよりも何倍に燐子を守りたいという感情が溢れ出していた。

意外と弱いもので、すぐに気絶したように倒れた。

 

 

「次はお前らだよ……いますぐその手離しやがれ」

 

「大口叩きやがって、カッコつけるのも大概にしろよ?」

 

燐子を抑えていたうちの一人は、燐子をもう一人に託して殴りかかってきた。

顔に右ストレートを綺麗に決まってしまった。だがそんなものでは怯まない。

思い切りそいつの腹に蹴りを入れると、先程の威勢が嘘のように呻き出した。

 

 

「てめぇ!燐子を離せ!」

 

そう殴りかかろうとした途端、左足が千切られたような痛みに襲われた。声すらまともにでないほどの。

 

 

「あ、あがっ……お前ら……」

 

「後方不注意だよ〜?品崎く〜ん。俺らが1発殴っただけで倒れると思った?」

 

スタンガンだ。スタンガンで左足をやられた。俺が殴り倒したと思ってた奴らに。

 

 

「うるせぇ……俺が守るんだよ……」

 

「守る、ねぇ?未だに氷川さんのことほっといてる奴の口からそんな言葉が出るなんてなぁ?」

 

「は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでお前らが知ってんだ

 

 

 

 

 

 

 

 


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