ここは、ミュージアムのガイアメモリ研究所。今日も悪の科学者たちが、恐怖のメモリ実験を繰り広げている。
「出来たぞ、
白衣を着たお笑い芸人にいそうな顔つきの男性――『
「本当ですか、博士!」
同じく白衣を着ており、激しく感心をしている男性は、彼の助手である
ちなみに、風都でガイアメモリ犯罪の解決に勤しんでいる『超常犯罪捜査課』に彼らと同じ顔と名前の刑事がいるが、彼らとは全くの別人である。
別人である。
「そうだ。しかもこれを使えば、あのウェザードーパントに勝てるかもしれないのだ!」
「ええっ!?そんなに強力なメモリなんですか!?」
「その通り!それがこれだ!」
そう言うと刃野は、袋からメモリを取り出して真倉に見せた。
色は赤で全体に化石の骨の様な装飾があり、内部には三角形の穴が林檎になっている『A』が描かれている。
「これぞ、私が開発した『アップル』メモリだ!」
「『アップル』ッ!?それでどうやって勝つんですか?」
真倉がこう聞いたのも無理はなかった。どう見ても、雑魚っぽい感じがするメモリだったからだ。
それを聞いた刃野は、得意気にこんなことを聞き始めた。
「真倉くん、『一日一個のリンゴは医者を遠ざける』という言葉は知っているな?」
「え?あ、はい。知ってますけど……。」
「『アップル』は日本語で何という意味かな?」
「『リンゴ』ですけど。」
「ウェザードーパントに変身する『
「『医者』ですけど。」
「つまりそういうことだ。」
「なるほど!」
何が『なるほど』なのだろうか。謎の納得の後、テンションが上がった真倉は刃野に言った。
「じゃあ早速、変身してみましょうか!」
「よし、来~い!」
「『レッツメモリトライ』!」
「アップル!」
真倉はメモリを起動すると、刃野の右腕に挿した。
これが彼らの悪い癖である。メモリが出来上がるとすぐに自分や他人の体に挿し、効果を試したがるのだ。しかも生体コネクタを打ちこまずに。
普通ならば、挿した部位がメモリの毒素に直に汚染され爛れた痕が残り、その痛みに苦しむことになるのだ。にも関わらず、何故か誰もその様な状態に陥っていない。
直挿しダメ、ゼッタイ。
メモリを挿された刃野は光に包まれた。
数秒後、刃野は『アップルドーパント』へと変身していた。
といっても、その姿は怪人というより『全身黒タイツを着て、リンゴの被り物した刃野』以外に言い表せない姿であった。ご丁寧に顔面まで、リンゴと同じ赤で塗り潰されている。
正直言って、ライアードーパントをおびき寄せるために翔太郎が着た『電波塔の道化師』コスチュームよりも質が劣っている。
ハッキリ言って、弱そう。
にも関わらず、真倉が持ってきた鏡を見た刃野は
「おおっ、これは中々強そうな姿だね~!」
とコメントした。ガイアメモリに精通している者の感性は、常人とは異なるのだろうか。
「博士!早速、ウェザーのところに行ってコテンパンにしちゃいましょうよ!」
「よ~し、真倉君!いざ、『井坂内科医院』へReady go!」
やたらとやる気満々で、二人は研究所を出ていった。
しかし、彼らは知らなかった。いや、知らなすぎた。
『井坂深紅郎』という男が、どれほど恐ろしい人間なのかを……
風都にある『井坂内科医院』。
ここは表向きは人間の体を診る施設だが、裏ではなんとドーパントの診察を行っているのだ。
そこで働くのは、医者である『井坂深紅郎』。
シルバーメモリの『ウェザー』の持ち主であり、仮面ライダーアクセルこと照井竜にとっては家族の仇でもある。
「次の方、どうぞ。」
彼がこう呼ぶと、診察室の扉が開いた。
次の瞬間、
「さあ、覚悟しろ!井坂深紅郎!」
刃野が変身したアップルドーパントと、付き添いの真倉が入ってきた。
「な、何ということだ……。」
井坂は恐怖のあまりか、刃野の姿を見て体を震わせている。
「フッフッフッ、驚いたかね?医者であるお前が最も苦手とする『リンゴ』の力を俺は手にしたのだ!これでお前をなぎ倒してやる!」
「降参するなら、今の内だぞー!」
得意満面に言う刃野と、煽る真倉。
そんな彼らを見る井坂の体は、まだ震えが止まっていなかった。
それを見て二人は勝利を確信した。
だが、
「素晴らしいっ!!」
「「……へ?」」
なんと井坂は満面の笑みで、刃野の下へと駆け寄ってきたのだ。
「なんて、珍しいフォルムなんだ!特にこのリンゴの皮の艶やかな赤!まさに『禁断の果実』だ!」
「は、え、ちょっと?」
彼は刃野の頭部のリンゴの被り物を撫でたり、頬ずりをし続ける。
その姿に、二人は戸惑いを隠せなかった。
言い忘れていたが、彼はドーパントの肉体に目がない変態である。
どうやら先程体が震えていたのは、恐怖ではなく感激のためだったようだ。
「貴方の様なドーパントは、見たことがありませんねぇ。実に興味深い。その体にはどんな秘密が隠されているのか
是非とも、私が診察してあげましょう。」
ヂィロリッと高速で舌舐めずりをし、刃野に
それを見た二人の背筋に悪寒が走る。
「ま、真倉君。これは、結構マズいんじゃないか?」
「そ、そうですね、博士。逃げましょうわああああっ!!」
慌てて彼らは逃げ出そうとするが、動揺していたのか、つんのめって転んでしまう。
「さあ……おいで。大丈夫……痛くしないから……。」
ジリジリと迫ってくる井坂を見て、後ずさることしか出来ない刃野と真倉。
「ああ~!やめてやめてやめてやめてやめてやめて!」
「
「
ここは、ミュージアムのガイアメモリ研究所。今日も悪の科学者たちが、恐怖のメモリ実験を繰り広げている。
「暴れるな!暴れるなって!」
「離せ、コラッ!離せええええええっ、コラーーーーーーッ!」
「博士えええええええええっ!!」
『今日のガイアメモリ』
・アップル (APPLE)
文字デザイン:三角の穴がリンゴになっている『A』
詳細:霧彦が持っていたスーツケースの中に入っていたメモリの一本。後にコンセレで商品化された。
『今日のドーパント』
・アップルドーパント
外見:全身黒タイツを着て、リンゴの被り物した刃野。
能力:医者に対して深刻なダメージを与える(はずだった)