PSO2_epIF バタフライエフェクト 作:トロイトロール
レスレクシオンを構え、常に警戒しながら歩くペルソナと、緊張した様子であたりに銃を向けながら進むアフィン。先ほどの休憩から何度かダーカーの襲撃を受け、なかなか休む暇もない。そんな二人の後ろからおーい、と声がかけられた。
アフィンがびくりとして思わずそちらに銃を向け、ペルソナが振り向くと、赤い戦闘服を着たアークスが立っていた。
「なんだアークスか…脅かさないでくださいよ」
「いや悪い悪い。俺はゼノって言うんだ。お前さんたちは大丈夫か?」
「なんとか生きてますよ。自分はアフィンです。こっちは相棒のペルソナっていいます」
「そうか、よろしくな。まあ生きているだけでも上出来だ。いきなりこんな状況になって新人じゃ辛いだろうしな」
「ところで帰還はまだできないんですか?」
「いまエコーに頼んで手配をしてもらってるが、しばらくは無理だろうな」
ゼノとアフィンが言葉を交わす。アフィンは一刻も早く脱出したかったため、ゼノの返事に少し残念そうにした。
一方ペルソナはあたりに注意を払っていた。というのも、この後聞き逃してはならない重要な声が聞こえるからだ。マトイが助けを呼ぶ声と【仮面】がマトイを探す声。これらはすべての始まりとしてペルソナの中に未だに印象深く残っている。そして、ペルソナが待っていた言葉が頭の中に響いた。
(助けて)
(どこだ)
「話の途中で悪いが、どうやら要救助者がいるようだ」
ペルソナがマトイの声の聞こえた方向を指さして二人に伝える。
「マジか、相棒」
「ああ。助けるなら急いだほうがいい」
「ならお前さんたちはここに残って…いや、ばらけるよりは一緒にいた方がいいか、なるべく俺から離れずについてこいよ!」
そうして、3人は飛び出すようにそちらへと駆け出した。
走って着いた先には、アークスが着るような白い服装を身に着けた少女が倒れていた。彼女がマトイである。
ペルソナが急いで容態を確認すると、目立った傷はなく、生命活動にも問題はないようだった。
「特に命にかかわるようなことにはなっていないな」
「よ、よかったぁ」
「ならエコーを待とう。あいつにこの子の面倒を見てもらうのがいいだろうからな」
ゼノの提案に二人も頷き、3人はゼノの相棒を待つことにした。
そしてしばらくすると、ゼノと同じ色の戦闘服を着た女性、先ほどちらっと話に出たエコーが遅れて3人に追いついた。
「つ、疲れた」
「お疲れさんエコー」
「いきなり人の救助に向かうなんて連絡が来るからびっくりしちゃったじゃない」
「すまん、けど急ぐ必要があったんだ」
「それで、この子がそうなの?」
「ああ、そうだ。エコーに念のためこの子の容態をを見てもらいたかったんだ」
「分かったわ、任せなさいな」
エコーがマトイに近づき、念のためレスタをかけ体力を回復させていく。
「もう大丈夫みたいね。ああそれと、助けはしばらくしたらくるみたいよ」
「分かった、ありがとうな」
「どういたしまして」
慣れた様子で会話をするふたりの横では、アフィンがあたりを警戒し、ペルソナが悲痛な表情でその少女を見つめていた。
「どうしたんだ相棒?その子と前になにかあったのか?」
そんなペルソナが気になったアフィンは、周囲に気を配りながらそう尋ねた。
「いや、何もない」
彼女とはなにもないんだ、とペルソナは何事もないようにそう返した。
なにか触れられたくないという気持ちを感じ取ったアフィンはそれ以上何も聞かなかった。
ダーカーもしばらく現れず、少しばかり緊張が和らいでいたその時。ふと気配を感じ、ペルソナがそちらに顔を向けた。
つられて他もそちらを見ると、仮面をつけた黒いアークスのような人物が立っていた。
「お前は……」
くぐもった声でそう呟くと、背負っていた大剣を構え、殺すと呟いて走り出す。
「ッ!皆下がれ!」
ゼノが叫び、ソードを構える。仮面の人とゼノの剣がぶつかり、つばぜり合いになった。しかしギリギリとゼノは押し込まれていく。
その横からペルソナがレスレクシオンを突き出す。仮面はゼノの剣を跳ね上げ、後ろに飛んで躱した。
「助かったけど無理はするなよ」
「分かっている」
仮面の人は舌打ちをし、ペルソナに襲い掛かる。ペルソナは仮面の剣を受け止る。真正面からにらみ合う形となり、お互いの顔がよく見えた。
「なかなかいい目をしている。私よりもずっといい。覚悟の決まった目だ」
怪訝な顔をして一瞬気がそれた仮面を突き飛ばし、ペルソナは後ろに下がる。
「なんの話だ貴様」
「さて、何だろうか」
お互いに警戒しあい、一歩も動けない。そんな膠着した状況は、仮面の上から人が降ってくることで終わった。
仮面は転がって難なく回避するが、いまだにペルソナから目を離さなかった。
「なんだなんだ、甘ちゃんのゼノにうまそうなやつが2匹もいやがって面白そうじゃねえか。俺も混ぜろよ」
「ゲッテムハルト……!」
「おいシーナァ!こいつらはどこのどいつだ?とっとと調べろ!」
「はい」
シーナと呼ばれた少女は空中のホログラムキーボードに指を滑らせ、ペルソナと仮面の人のデータを検索する。しかし、仮面のデータはどこにもなかった。
「ゲッテムハルト様、そちらの方のデータがどこにもありません」
「なに?おいお前、お前は誰だ?」
仮面はそれには答えない。そしてペルソナをひと睨みすると撤退した。
「ちっ逃げたか。あーやめだやめ、しらけちまった」
「次から次へとなんなんだあ!?」
ゲッテムハルトは先ほどまでの雰囲気が霧散し、アフィンはめまぐるしく変わる状況についていけていない。
「おいそこのお前」
ゲッテムハルトがペルソナとアフィンの方を向いて呼びかける。
「はいぃ!」
ゲッテムハルトの厳つい顔と剣呑な雰囲気に呑まれたアフィンは情けない返事をした。
「お前じゃねえ、隅っこでガタガタ震えてろ!そっちのお前だ」
そんなアフィンに嫌悪感を出しながら、ゲッテムハルトはペルソナを呼びつける。
「なんだ?」
ペルソナは面倒そうに返した。
「お前、あいつと何か話していたよな?あいつは誰だ?ナニモンだ?」
「昔の知り合いに似ていたが知らないやつだ。あいつとは初対面だよ」
ゲッテムハルトの問いかけに、ペルソナはしらを切る。
「本当か?嘘をついても得にはならないぜ?」
「知らないものは知らない」
しばらく互いににらみ合っていたが、一向に話す気配のないペルソナにゲッテムハルトはつまらなそうにフンと鼻を鳴らし、不愉快そうにすると、今度はゼノの方を向く。
「よお、相変わらず甘ちゃんやってるみてえじゃねえか。弱い者同士で傷の舐めあいをして楽しいか?」
「ゲッテムハルトテメェ!」
「やめなさいゼノ!」
ゲッテムハルトがゼノを煽り、ゼノが怒り、エコーがそれを止める。
そんな光景を見て、ゲッテムハルトはお前にお似合いの光景だなと更に煽り、激昂したゼノを止めるのに今度はペルソナも加わるはめになった。
ゲッテムハルトはそれを一瞥し、ある程度留飲をさげたのか、「おいシーナァ!とっとと帰るぞ、グズグズするな」と言い帰還していった。
「それでは失礼いたします」
そう言ってシーナもゲッテムハルトの後を追うように帰還した。
「クソッ!ゲッテムハルトのやつ!」
「やめなさいってゼノ、後輩たちが見てるのよ!」
ゲッテムハルトに詰られ、気分がささくれ立っているゼノをエコーが諫めると、ゼノはペルソナとアフィンを見てすまんと一言謝った。
「その、先輩はあの人と何かあったんですか?」
「昔ちょっとな」
苦虫を噛み潰したような顔をしてゼノがそう呟く。
アフィンは地雷を踏んだことに対してなんかすみませんと謝ると、それ以上は聞こうとしなかった。ゼノは気を遣わせたことに悪いともう一度謝ると、黙り込んでしまった。
「ほら、そんなに暗い顔しないの。もうすぐ救助が来るから一度帰還しましょ」
「そう、だな。よしお前ら、帰還の準備を済ませておけよ。忘れ物はないな?」
そんなゼノを見かねたエコーの出した明るい声に乗っかる形で、ゼノも雰囲気を無理やり変えると、アフィンとペルソナに帰還の準備を促した。
「俺は大丈夫です」
「私もいつでも帰還できる、問題ない」
二人はすぐにでも帰還できるようだ。その二人の返事に応えるように、上空にはキャンプシップが到着していた。
「それじゃあ何かあったらまた頼ってくれ。これも何かの縁だ」
「はい、先輩、ありがとうございました!」
「じゃあまたね」
「またの機会に」
キャンプシップでアークスシップに戻り、ロビーに到着すると、4人はそのまま別れた。
「はあ、なんだか今日は疲れたな、相棒」
「初日からこれとは先が思いやられるな」
「流石に毎日こうなるとは思わないけど、これからどうなるんだろうな。俺たちの修了試験の扱いも気になるし」
「それは問題なく合格するだろう。あれだけのダーカー相手に生き残ったならな」
「だといいけど。まあとにかく今日はもう休むわ。じゃあまたな、相棒!」
「ああ」
そういって、ペルソナはアフィンとも別れた。
アフィンは休むといっていたが、ペルソナはそうはいかない。この後、二つのことをこなさなければならないからだ。保護した少女、マトイの件と、シオンに会うこと。この二つは重要な案件であるので、ペルソナはよしと改めて気合を入れてまずはマトイに会いに行くのだった。
遅くなり申し訳ありませんでした。
投稿後、ミスを発見したため修正しました。