僕とアンドロイドな彼女の奇妙な生活。 作:Firefly1122
次の日、真白を連れて学校へ向かう。彼女は何言っても離れてはくれないから。夜もずっと僕の背中にくっついていて、気が気でなかった。ロボットとは言え彼女は女の子の姿だし、肌身も人間と同じと言っても過言ではないほどしっかり作られていた。もちろん僕はロボット嫌いだ。ロボットに欲情するなんてありえない。あり得ないはずだ。
「マスター!あれなんですかあれ!」
僕の腕を引き美味しそうなケーキが並べられている製菓屋さんに興味を示す。その間、決して貧相とは言えない胸が俺の腕に当たる。興味を示すといった行為ももはや人間そのものだ。だんだんこの子はロボットではないのではないかと思えてくる。
と、そこで一つ僕は疑問を覚えた。今の技術でここまで人間のように作ることはできるのか?と。ロボットが人間のように受け答えをすることは今の技術で可能だ。人間そっくりのロボットを作ることも可能だ。だが、”興味を示す”というのは”感情”がある証拠で、これはいまだ未完成だ。授業を進めるロボットには感情というシステムは組み込まれている。それでも怒る、感心するという二つの感情だけだ。興味を示すという感情はない。そもそも興味を示すというのは学習するということで、ロボットにはすでにあらゆることを記録させていて、学習させる必要がないのだ。
「お前、本当にロボットなのか?」
「……ロボットじゃないのですか?」
質問を質問で返すというのもロボットではありえない。質問に対する答えは必ず一方通行。1+1という質問に対して2と答えるように。質問を質問で返すのは人間だけだ。
僕はますます彼女がロボットなのか分からなくなって、思考停止を起こした。まあ、考えても分からないものは分からない。ロボットに詳しい人に聞いてみよう。僕は考えを放棄してそう結論出したのだった。
放課後、部活に出た。一番活動が少なく、別に出ても出なくてもよいというロボット研究部だ。一応僕の学校は部活強制で、必ず何かしらの部活に入っていないといけない。僕みたいに部活なんかに入りたくないという生徒がこの部に入って幽霊部員と化す。
「こんにちはー」
「おや。珍しいな。確か鈴川拓実君だったな」
眼鏡をかけた背の高い上級生の
「あはは……。先輩、聞きたいことがあってきたのですが」
「聞きたい事?」
「はい。この子なんですが……」
部屋に入れ、真白を見せる。
「……ただの人間じゃないのか?」
「いえ、ロボットです」
先輩は作業中の手を止め真白に近づき観察する。頭を触り、ほっぺたを触り、胸を触ろうとして全力で払われる。
「本当にロボットか?これがロボットだというなら一体どんな材質でできているんだ」
「どういうことですか?」
「髪や肌の感触、目の形、口とすべてにおいて限りなく”人間”に近い。胸を触ろうとして払われた点においても”恥ずかしい”という感情、もしくは”嫌”という感情があるように思える。そんな感情はロボットには不要だ」
「そうです。僕もそこについて聞きに来たんです。彼女は登校時にケーキに興味を示しました。ロボットにそんな感情はあるんですか?」
「興味を示すというのは最近重視されつつある感情だ。自動で学習してくれるシステムとして組み込めるかもしれないと研究者の中で話が出ている。それと同時に自動で学習するシステムを組み込むと暴走するかもしれないという話も出ている。昔の人間が考えるようなAIが人間を侵略するということが起こるかもしれないと」
「学習したらそこからさらに考えを巡らせ、最終的に人間は不要だと考えるってことですね?」
「そうだ。もちろん仮説にすぎないが、あり得ない話ではないと結論が出て、今はまだ興味を示す感情は導入されていないのだ。そんなものがすでにこのロボットには導入されているのだとしたら、これは新時代のロボットだぞ」
先輩はパソコンに今までの真白の情報を打ち込む。授業でもよく見る設計図及び性能図だ。左にロボットの形及び素材、右にスペックを表す性能図だ。先輩は手際よく今までの情報を打ち込み、彼女のスペックや彼女を作っている素材を出す。僕にはまるで理解できない数式がいくつも並べられていく。そして先輩は腕を止め、一つの答えを出した。
「……彼女は、ロボットなんかではない」
「え?」
「アンドロイド。新時代……いや、未来のロボットだ」