チイサナコイノウタ   作:pwpa
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こうして物語は始まった

「何でお姉ちゃんと同じように出来ないの!?」

 

「姉ちゃんは出来るのにどうしてお前は……」

 

双子だからといつでも結果は比べられていた

 

姉は優れていて、妹は劣っている

優劣がつけられていたことは小学校に上がる前の頃から二人ともわかっていたが、妹の方が少しはやくそれには気付いていた

 

 

遺伝子情報が99.99%同じといっても違いは出てくる

そんなことは自分達が一番わかってる

 

優劣をつけられていることについて、姉は嫌っていたが妹はそうでもなかった

 

姉から妹へ「大丈夫」と声をかけても「平気だよ」と返事が返ってくるだけ

慣れてしまったのかどうかは分からないが、それ以上何か言うようなことはしなかった

 

 

 

ある日、家族で出掛けた帰り道

 

逆走をしてきたトラックと家族を乗せた車が正面衝突し、二人の子どもは骨折程度で済んでいた

 

 

病室のベッドの上で先に目を覚ましたのは姉だった

 

姉が辺りを見渡しても見慣れない部屋と隣のベッドで眠っている妹だけ

立ち上がろうとしても片足を骨折していた為すぐに転んでしまった

 

幸いにもすぐに看護師が気付きすぐにベッドへと戻され、その後すぐに妹も目を覚ました

 

 

 

しばらくの間、両親は別の部屋にいると説明をされ

精密検査を繰り返し受け続けた

 

松葉杖も必要なくなり、包帯も殆ど取れてきた頃、姉は傷1つ残ることも無かったのだが、妹の方は肩から胸の中央へ伸びる傷が残った

 

 

さらにしばらくすると姉は医者や妹に「はやくおかーさんちに会いたいね」と言うようになってきた

 

年齢としてまだ10歳にも満たない子どもであれば当然の言葉でもあった

 

 

 

「白音(しろね)、黒音(くろね)」

 

名前を呼ばれた二人が一緒に振り返ると祖父母と見慣れない人、そして医者がそこにいた

祖父母といってもまだまだ若く、父親と母親と言っても過言ではない見た目をしている

 

「おじーちゃんとおばーちゃんだよ!黒音!」

 

「なんでおじーちゃんとおばーちゃんが?それとこの人はだれ?」

 

白音から先に祖父母の元へ駆け寄り、その後ろを黒音が追った

 

「おかーさんちは?」

 

白音の一言で祖母は泣き崩れてしまい、祖父は二人を強く抱き締めた

 

「お母さんとお父さんはな、帰ってこれなくなったんだよ

けど心配することはなんにもねぇ」

 

「おじーちゃん?」

 

 

まだ何も理解できていない二人に知らない人が土下座をした

 

「本当に申し訳ありません!!」

 

「謝ったところで今なにが出来る訳ではないのですが、今後私たちに出来ることなら何でも……」

 

「何かしたところでこの子達のお母さんやお父さんは帰ってこないんだ、出来るならもう顔も見せないでくれ」

 

白音は祖父の腕を潜り抜けて土下座した人の頭をぽんぽんとした

 

「どこか痛いの?おいしゃさんいるよ?

おばーちゃんもどっか痛いの?」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

「白音に黒音、おじーちゃんちに行こうか

退院祝いに美味しいものおばーちゃんにつくってもらおうな」

 

無理矢理作ったような笑顔でそう言われて、祖父に手を引かれながら病院を後にした

車に乗せられて少し待っていてと言われた二人は歌を歌いながら二人を待っていた

 

 

 

二人が事故で両親とも亡くなったと知ったのは

退院してから1ヶ月ほど先だった

 

「黒音」

 

「なに?」

 

「おかーさんちにあいたい?」

 

「あいたくない」

 

「どうして?」

 

「おじーちゃんもおばーちゃんもやさしいから」

 

「そうだけど、あたしはあいたいよ……」

 

祖父母の前では泣かないようにしていたのに黒音の前、子ども部屋では白音はボロボロに泣いていた

 

泣き声は祖父母のまで届いていたのだと思う

祖父母は二人を色々なところに連れていってくれた

寂しさを埋めるかのように

 

 

ほとんど完全に気持ちの落ち着きを取り戻したのは二人が中学に上がってからだったが

二人の進む道は極端なまでに違っていた

 

「そこ、スカートの丈が短いわ」

「シャツを出して歩かない」

「ボタンはしっかりとしなさい」

 

校門前に立って歩く生徒一人一人に注意をする

 

「黙ってりゃ白音さん美人なのにね」

 

「黙ってるっつーより笑っていてくれてる方が良いと思うけどな」

 

「そりゃ無理だろうよ、テスト結果で学年1位になっても当然みたいな顔してんだし」

 

陰口は白音の耳にも届いていたが、心の乱れがきっと不幸を起こすと信じ、自分自身を曲げることが出来なかった

 

 

それとは逆に黒音は常習的に遅刻を繰り返し、制服も崩している

 

ただ黒音はなにを言われても「つまらない」と言って白音の話など聞こうともしなかった

 

ただ1つだけ同じだと言えることは友達がいないということ

 

 

こんな2人でも祖父母はどちらかを叱ることなく同じように接してくれた

 

中学3年にまでなると白音は祖父母に入りたい高校を頼むようになった

白音は交友関係がほとんど無かったものの、教師からの評価は非常に良く、三者面談でも期待されているのはしっかりと伝わっていたくらいに

 

「白音が入りたいところに行けばいい

学費のことは心配しなくても大丈夫だ」

 

「ありがと、おじいちゃん」

 

「黒音はどこか入りたい高校あるのか?」

 

ダメになるクッションに寝転がりながら黒音は言った

 

「あー、まぁ高校くらいは卒業しておきたいし

姉さんと同じところでいいよ

それにそこって姉妹で入学したりすると安くなるんでしょ?なら双子だし問題ないと思うし」

 

「黒音の内申点で入れるわけないでしょ?」

 

呆れたように口を開いた白音に黒音は言い返した

 

「内申点なんてギリギリ手の届かない人がすがる最後の手段でしょ?

そんなのに頼らなくてもその高校が欲しがる生徒を演じれば良い」

 

「絶対に無理よ!」

 

「姉さん、絶対なんて言葉はこの世に存在しないんだ

絶対なんて言葉があったらそこで全てが終わっちゃうから」

 

「あっそ!!なら好きにすれば!?

浪人になって笑われるようなまねだけはしないでよね」

 

足音を強くたててその場を後にした白音に対して黒音はクッションから離れずにその場にとどまった

 

「姉さんはもっとリラックスしないとダメだね」

 

「そうだな、黒音ほどとは言わないがもう少し肩の力を抜いても良いと思うんだが」

 

祖父はチラッと黒音の方を見たが黒音はすぐに目をそらした

 

「あたしだって姉さんには前みたいに笑って欲しいけどね

姉さんのあの壁を壊すのは今のあたしじゃダメだよ」

 

黒音はそれだけ言って自室へと足を運んだ

 

 

 

それから月日が経ち高校入試のテストも終わり、面接の予定日が二人のもとへ届いた

 

白音と黒音の面接日が1日ずれていたのは少しだけ疑問に思ったのだが、時間的に白音が初日最後の時間、次の日の最初の時間に黒音なのだろうと解決に至った

 

 

 

 

黒音の面接日、黒音以外誰もいないことに気付いた

異様な感じはしたものの名前を呼ばれて面接室へと入った

 

「東雲(しののめ) 黒音くんだね」

 

「はい」

 

「まずは私が理事長の竜胆だ」

 

少し間を空けて黒音は答えた

 

「お久しぶりですね、なんとか記憶の片隅に残っていました

まーく……真咲くんは元気ですか?」

 

「真咲から元気をとったらなにも残らないくらいに元気だな」

 

「そうですか、それで?

いったい何故あたしが1人理事長に呼ばれたのですか?」

 

「君自身が分かっているのではないか?」

 

少し後ろにいた教師が入試の時のテストをあたしに差し出した

 

「何故半分埋めていない?」

 

「はぁ、難しかったからではないですか?

多分悩んだ結果分からなかったから空欄なんだと思いますよ」

 

「東雲!理事長の前でなんて口の利き方をするんだ!!」

 

「静かにしたまえ、今は私と黒音くんが話しているんだ」

 

睨み付けるようにそう言うと教師は苦虫を噛んだような顔をして黙りこんだ

 

「少しだけ不思議に思ったんだ

この問題には中学生では絶対に解くことが出来ない問題が含まれていてね

もちろん君の姉、白音さんですら間違えていたよ

でも君はその問題を消しゴムを使用することなく解いている」

 

「それは姉さんが分からなかっただけでしょ?」

 

「いいや、君以外誰1人として解けていないんだ」

 

お互いの間に沈黙が流れ、先に黒音が口を開いた

 

「あーあ、確かになんでこんな問題が最初の方にあるんだろうって思ってたんだけどな

これっておじさんが作ったの?」

 

「そうだ、ただ解かせる為に組み込んだんじゃない

解こうとする努力が見れれば良いと思ったんだ」

 

「それで?この100点満点中丁度50点で合わせてあるテストを突き出してどうするの?」

 

「国数英を各20分

残りを全部埋めてみてほしい、手を抜いていると分かればその時点でアウトだ」

 

「なるほど?だから机まで用意されていてあたし以外誰もいないわけね」

 

3科目合計の一時間はあっという間に過ぎて採点を待った

 

 

「やはりな」

 

「終わった?」

 

「あぁ、非の打ち所がないほどの満点だ」

 

「そ、なら合格ってことでいい?」

 

「その前に最後に1つだけ大丈夫かや?」

 

こくりと黒音は頷いた

 

「幼少の頃の君をみて何か隠しているような気はしていてね、ここへ入学することがわかって今のようなことをしてみた

何故出来ないふりをしているんだ?」

 

「簡単なことでしょ

あたしは姉さんの影でいいの、姉さんが輝く為に影が必要になる」

 

「確かに光があれば影も出来るが

強く光れば光るほど影は薄くなり、やがて消えて無くなる」

 

「最も輝く時があればあたしは消えてかまわないと思ってる」

 

「なるほどな、だがうちの高校ではそれは許さん

新入生代表は黒音くん君がやるんだ」

 

「それは入学の条件?」

 

「それもあるが基本実力主義でな、劣っている人間の言葉では人を動かすことは出来ない

ならこのテストでトップである君が代表の挨拶をするべきなんだよ」

 

「分かりました

落とされたらもとも子もないし、やります

ただあたしはこれからも自分から光るつもりはない

それだけは覚えておいて」

 

「自分から光りたくなるよう工夫するさ

人生でたった1度の青春を楽しめるように」

 

 

 

数日後二人のもとへ合格通知が届いた


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