探偵見習いの物語   作:海人

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3話 Mの日常/明らかにする為に

地球の本棚(ほしのほんだな)

 

地球の記憶の全てが存在するアカシックレコードのような精神世界。

果てしなく広がる真っ白な空間に無数の本棚が並んでおり、それら一冊一冊が地球の記憶のデータベースとなっている。使用者が検索をかける(キーワードを唱える)と自動的に本が選抜されていき、任意の情報が入った本を絞り込むことができる。ただし万能ではなく、情報が無ければ本を絞れず、個人に関する本でもその感情に関する情報はない上に、中身が全て破かれたように削除されていたり、何かしらの都合で施錠されて閲覧できないものもある。この世界に入っている人間は一種のトランス状態となっている(会話は可能)。

 

 

漫画『風都探偵』では、あくまでも本棚で検索できるのは通常の世界の情報だけで、裏風都のような別世界の情報は入手できないことが言及されている。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………………………」

 

これは如何するべきかと悩む僕の耳に事務所の扉が開く音が聞こえた。

 

「遅くなって悪かっ……なんだ、この状況?」

「真昼、どうしたの?」

「いや、リュウくんが連れて来てから黙り混んでるよ」

 

帰ってきた翔太郎とときめの2人に亜樹ちゃんが事務所の椅子の1つを占拠しナニカを堪えている真昼について説明しある程度察してくれたようだ。

 

「真昼」

「…なんだよ」

「経験者として言ってやる、1人で抱え込んだら危ないぞ」

「翔兄の勘違いだ」

 

翔太郎は今の真昼を見てあの時の僕達とダブって見えたようだ。

まあ、僕も同意見だけどね。

 

「アホ、そんな表情()で言っても説得力ゼロだからな」

「そんなに酷い?」

「ああ、千聖嬢に会う前のお前と同じだ。相談ならいつでも聞いてやる」

「ありがと」

 

そして真昼は今日の出来事の全てを僕達に話してくれた。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「…なるほどな」

「『ミラーワールド』か、興味深い」

「問題は真昼が閉じた『ミラーワールド』を誰がどうやって開いたかだね」

 

真昼の話した内容は真昼自身の『ビギンズナイト(過去の出来事)』に繋がるモノだった。

真昼と真昼に託した仮面ライダーたちによって閉じられた筈のミラーワールドから襲撃してきたミラーモンスター。

そして『現在(いま)』に存在しない筈のカードが現れた事。

 

 

「俺は【SEAL】のカードも気になってる」

「どう言う事?」

「【SEAL】のカードはミラーモンスターを封印出来る効果があるんだ、そしてミラーモンスターは鏡や窓ガラスみたいな『姿を映すナニか』がないと此方側に干渉出来ない」

「つまり殺された犠牲者は真昼が言った知識を持っていた?」

「そうなるし、現場に凶器が無いのも『ミラーワールド』で刺されてから此方側に逃げたのならある程度納得出来る」

「してないよね」

 

真昼はときめの問いに頷いてから自身の予測を語る。

 

「それなら【SEAL】のカードを肌身離さず持っていないと可笑しいから。なら俺が考えた可能性は1つ、『犠牲者は【SEAL】のカードを万が一の保険として手元に置かなかった』になる」

「それ可笑しくない?」

 

亜樹子の言葉に思わず頷いていた俺は真昼の反論を聞き何を危惧しているのかを知った。

 

「逆に納得出来るから。つまり被害者は【SEAL】のカード以上のモノ……例えば『仮面ライダー』に変身する『カードデッキ』を所持していた、とか考えられない?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

「検索を始めよう」

 

早速本棚に入り情報収集を開始する。

 

「知りたい項目は『ミラーワールド解放の手段』。キーワードは、『ミラーワールド』、『ミラーモンスター』、『カードデッキ』…………駄目だ、絞りきれない」

 

ある程度のキーワードを入れて見たが本棚の数に変化はない。

 

「『羽柴 寧々』……被害者の名前は?」

「了解、『羽柴 寧々』……先程よりほんの僅かだが減った、が時間が係る」

「なら後回しで」

 

真昼の追加ワードでも特定には及ばないと告げると言うと驚くべき答えが返ってきた。聞き返すと申し訳なさそうな顔でこう言われてしまった。

 

「良いのかい?」

「実は他にも厄介な事が」

 

 

◇◇◇

 

 

「真昼、お前の『巻き込まれ体質』酷くなってないか?」

「言わないで」

 

真昼から話を聞いてこう言ってしまった俺は決して悪くはない。ってか学校で依頼を受けてその途中でミラーモンスターの奇襲受けるって……『大気圏突入事件』や『鬼ヶ島の鬼退治』も気付いたら巻き込まれていたパターンだしよ。

 

「それでは改めて検索を始めよう」

「知りたい項目はメモリの『名前』、キーワードは『記憶の改竄』、『2年A組』、『羽柴旭』……他には無いかい?」

「フィー兄、『母子家庭』を追加で」

「先程よりかなり減って82件残った」

 

『母子家庭』で減ったってことは……このワードも当てはまるか?

俺が考えている間に真昼も何かを思いついたらしい、2人同時にその言葉を発していた。

 

「フィリップ、追加キーワードに『父親』を頼む」

「…それと『クラス担任』も加えて」

 

フィリップは笑みを浮かべ告げた。

 

「……ビンゴ。該当メモリは………。後、メモリの所持者も判明した」

「やっぱり」

 

フィリップが告げたメモリの所持者の名前を聞きそう呟く真昼。

 

「聞き覚えがあるみたいだね」

「改竄範囲が1クラスの生徒だけだから……って可能性も有りかな、と」

 

 

 

◇◇◇

 

 

「……柴田先生、ご結婚おめでとうございます」

 

学園内の教職員用の駐車場に車を停めた私の前にそう言って彼は現れた。

 

「君は…高等部の氷川君か、どこで聞いたんだい?」

「学校中の話題ですよ、イケメン教師が大企業のご令嬢をオトした、てね」

「いや、まだ婚約の段階さ」

 

まさか30歳過ぎてから結婚出来るなんて思わなかったからな……だからこのチャンスは逃がせない。

 

「なら一安心です」

「何故かね?」

「警察が先生に聞きたいそうですよ。……懐に入れている『ガイアメモリ』の入手経路についてね」

「………………」

 

『ガイアメモリ』について知っている?

だが次の言葉で私の疑問は消し飛ぶことになる。

 

 

 

 

 

 

 

「それともう1つ、羽柴旭の行方とその母親である羽柴寧々の殺害方法もね」

 

 

 

 

 

 

「……その2人は何者だい?」

「羽柴寧々は先生が14年前に別れた元恋人、羽柴旭は別れた後に元恋人が産んだ子供で貴方のクラスの生徒だ」

 

 

彼の言葉で悟ってしまった。

彼は全てを把握していると。

 

「……俺は悪くない…彼奴がいきなり現れたんだ!」

 

気付いたら叫んでいた。

 

「いきなり子供が居るのだとか籍をいれようとか訳分からないこと言いやがって!!」

「……14年も前の話ですよね?」

「そうさ、これが産まれた直後なら納得したし話し合おうと思った」

「話聞かなかったんですね」

「当たり前だろ!!」

 

なんか氷川が俺に同情してるぞ。

 

「それで口論に「違う」、なんですと?」

「彼奴はいきなり叫んで鏡から怪物(モンスター)を喚び出したんだ」

「……それって赤い鳥みたいな外見してました?」

 

ふざけてるのかと言われると思ったんだが・・・

 

「…知ってるのか?」

「俺も襲われました」

「よく生きてたな」

「先生もね、どうやって助かったんですか?」

「白服の男に助けられた、その時にこのガイアメモリを渡されたんだ」

 

この時、俺と氷川は分かり合えたと確信し懐のガイアメモリを取り出し見せる。

 

【TEACHER】

 

「【TEACHER】……『先生(教える者)』の記憶を宿したメモリ」

「ああ、実際使って便利な力だと分かったよ」

 

彼奴を返り討ちにした後で2回(・・)使用したがその効果に驚いたからな。

 

「Aクラスの生徒に『羽柴 朝日と言う名前の生徒は居ない』と『教えた』から使用時に居なかった刀藤 綺凛を除いたAクラスの生徒だけがメモリの影響下にあった」

「大正解だ」

 

元々、羽柴 朝日は人見知りで交友関係が狭いと事前に聞いていたから1回で終わると考えたんだ。

だがそれは誤りだったと今なら分かる。

 

「先生、今なら間に合いますよ」

「……どう言う事だい?」

「『死人に口無し』……上手くやれば正当防衛を勝ち取れます」

 

だからこそ彼の言葉に虚を突かれた。

 

「意外だな、普通なら罪を償えといいそうだが?」

「生憎俺は普通じゃない」

 

自嘲する彼には本当に……申し訳無いと思う。

 

「…無理、だな」

「何故ですか?」

「理由を話したら納得するだろう、が」

 

 

 

 

 

…キィィィィィン……キィィィィィン……

 

 

 

 

 

 

「悪いが話す気はない、君には消えてもらうよ」

 

 

 

 

俺にだけ(・・・・)聞こえるこの音が準備が整ったと知らせてくれたのだから。

 

 

 

To be continued……

 

 


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