妖気依代。   作:ぺけすけ

22 / 34
20.5話 パチュリー先生の能力講座。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この紅魔館で俺の業務は、特別な事がない限りは大体夕食後の片付け終了と共に終わる。そこからは入浴後軽い自由時間なのだが今日は珍しく私服で図書館に訪れていた。

 

「来たわね、そこ空いてるわ」

 

そう言って眠そうに反対側の椅子を指差されたので大人しく座る事にはしたが、ここに呼ばれた理由がまだ分からず疑問を残したままは気持ち悪いとパチュリーさんに質問してみると。

 

「昨日言ったじゃない。信の能力よ、使い方知りたいんでしょ」

 

ああ、そういや倒れてから体調とかも考えて明日にするとか言われてたっけ。うーん、確かに気にはなるけど。

 

「そりゃまぁ……でもなんでパチュリーさんがわかるのさ?」

 

「貴方の能力って事?簡単よ」

 

そう言って説明されつつ渡されたのはいつかの霊夢のお札に似た文字が書かれている契約書のみたいな紙で俺には読めないが、何処か見覚えのある文字で考えてみればよくパチュリーさんが読んでいる本の文字そっくりだ。

 

「貴方が最初能力を調べたのってあの紅白の所でしょ。アレは能力の名前が分かるだけで使い方までは分からないものね」

 

それに比べてこっちは大雑把だけど分かるわと少しドヤ顔で教えてくれるけど、魔法の事になると結構強気で嬉しそうに話すよねパッチェさん。

 

「誰がパッチェさんよ?」

 

「お気にせず」

 

「貴方も段々とここに馴染んで来たわね……少し痛い目に合わせた方がいいのかしら」

 

物騒なことを呟いている気がしなくもないけど取り敢えずスルーしつつ、受け取った紙を見回すけど、どうやって使うんだこれ?

 

(霊力は?)

 

回してみたけど特に変化しないかな。

 

「……あ、使い方を教えてなかったわね。血を一滴程度でいいからその中央の点に垂らしなさい。あとは文字が浮かんで来たら読んであげるわ」

 

読めないでしょ?と言われ納得しつつ、紙に血を一滴垂らそうとしたのだが口で噛み切るとかした事もない平穏な日常にいた者としてはどうしたものかと考える。

 

(わたし!わたし!)

 

それだ。

 

「……っ」

 

あいも変わらず良い切れ味……ってまぁ俺のさじ加減らしいけどちょうど皮一枚ぐらい切れば少しだけ血が流れ出す。そのまま紙を目の前のテーブルに置いて一滴分の血が落ちるまでじっとしている。

 

「少しすれば浮き上がってくるからそれまで適当にしてなさい。……ふぁ」

 

そう言ってまた欠伸をするパチュリーさんにふと疑問。いつもこの時間帯でも悠々に読書してる筈なのだが今日は随分とお眠のご様子。

 

「いつもと違って随分と眠そうだね?」

 

「最近ちょっと……色々してるのよ。その原因は呑気に安眠を貪ってるみたいだけどね」

 

「へー、大変だね」

 

「………………ええ、とてもね」

 

ニッコリと黒いオーラを纏いながら言われるとまるで俺が原因みたいじゃないか?

そんなこんな素敵に楽しく?パチュリーさんと会話しているとコンコンとノックの音がする。

 

「入っていいわ」

 

「失礼します!呼びました?」

 

そう言って入って来たのは美鈴さんでこの場所(図書館)では珍しい顔だった。というより今の会話的にパチュリーさんに呼ばれたみたいだけど何か大事な話なら俺は席を外した方がいいのかな?

 

「貴方関連の事だから平気よ、大人しく座ってなさい」

 

「お、おす」

 

「従順な所は褒めてあげるわ。夜遅くに悪いわね」

 

「いえいえ、まだ寝るには早いので大丈夫ですよ。それでどの様なご用事で?」

 

「少し信の事で協力して欲しいのよ。多分美鈴の能力が一番適してる筈でしょうし」

 

そう言っていつの間にやら俺の前にあった紙を自分の手元に持っていき読み始める。

 

「能力名はそのままね。"対象の性質や本質を受け継ぎ、汲み取る"……らしいわよ?」

 

どうやら使い方やその能力の解説のようだ。

 

ふむ、成る程。

 

「成る程、分からん」

 

「でしょうね、間抜けな顔してるわ貴方」

 

「凄いドヤ顔ですね」

 

煩いやい。

 

「そ、それよりその俺の能力となんで美鈴さんが必要なのさ?まだ脈絡見えないけど」

 

「ここからは私の憶測もあるんだけれどね、貴方のこの能力って所謂コピー能力でしょう」

 

「はい?」

 

「本質的には違うものでしょうけど、使い方の一つとしてはそれで良いはずよ。さて、それじゃ始めましょうか」

 

 

そう言って立ち上がったパチュリーさんに教えてもらったのは自身の力の正しい使い方。

 

それは俺自身を核として、相手の力や能力を視るもしくは理解する事とそのコピーしたい力を自身に転写する事(これは俺自身がその能力に耐えうるかどうか)が出来るかどうかによって発動するらしく、パチュリーさんの見た感じ俺はまだマトモに意識して使った事が無いから余計に使えなくなってしまっているらしいんだけど、依代になるという言葉を読み解けば、それは安易に想像はついた事であるんだけど、俺は実際に試して出来なかったんだよね。

 

「そこで美鈴よ。貴女の能力を教えてあげて」

 

「は、はい。"気を使う程度の能力"です」

 

気配りとか空気を読む的な?

 

「変なボケは要らないからね。貴方も少しくらい聞いたことあるでしょう、拳法における気くらい」

 

「多少は知識(漫画)としてありますけど、それ通りかどうかまでは分からないよ?」

 

「別にそれでいいわ、さてそれじゃ美鈴。信に接触して気を流して頂戴」

 

「そんな事でよろしいのであれば」

 

そう言って美鈴さんが右手を出してくる。握手?と手を出してみればそのまま握り返されて少しドッキリしつつもここからどうすれば良いのか分からず困惑していると、なにやらポカポカと美鈴さんの体温以外に不思議な暖かさが伝わってくる。

 

「………あったかい?」

 

「あれ、随分と早く認識できましたね。多分ですけどそれが気ですよ」

 

お、おお。なんか意識したら余計に感じれる様になって来た。何だろう生まれて初めて感じる感覚なんだけど、何処か懐かしい暖かさとふんわりと優しく包んでくれる感じと言うか?

 

「上出来よ、ならそれを美鈴から受け取らずに自分だけで練り上げてみなさい」

 

「離しますよ」

 

そう言って離されると同時にあの感覚は霧散し、美鈴さんの体温だけが手に残りなんとも言えない内心になるけどそんな煩悩は捨てて置いて、パチュリーさんに言われた通り先程の感覚を思い出しながら……心の内側にされた蓋を外す感覚を思い出しながら気を練ると言う作業を意識してみる。

 

「焦らずにゆっくりと深呼吸しながらやってみて下さい、そもそも気という物は誰にでもあるはずのものです。それを鍛えず何もしていないのが原因で、少しだけ錆びてしまっているだけなのですからゆっくりと回してあげて下さい」

 

「………………」

 

静かな夜の図書館の中で美鈴さんの声だけが響き、他に聞こえるのは微かな呼吸音くらいで生まれて初めてここまで集中しているなぁと何処か第三者目線で自分を俯瞰する。

 

(……へぇ)

 

「あら」

 

何やら驚く様な声が聞こえ目を開けてみれば珍しく目を見開くパチュリーさんと優しく笑う美鈴さんがいた。

 

「おめでとうございます。それが気ですよ!」

 

「お、おう……?特に変化した感じは無いんだけど」

 

「そう、なら」

 

はて?何して急にそんな分厚い本を片手に近付いてくるんですかパチュリーさんや。

………というか何で思い切り持ち上げてるんです?その先には俺の頭くらいしかありませんよ?

 

「えい」

 

「ぎゃふん!?」

 

お、思い切り振りかぶりやがったなこの魔女!?あんな分厚い本で叩かれたらめちゃくちゃ痛い……

 

「………あれ、痛くない……?」

 

「おお、もう体感の方も扱えてますねー」

 

「ええ、もうコツを掴んだみたいね。想像以上にいい出来の生徒だわ」

 

納得した様に話す2人に置いていかれる我。つまり……どういうことだってばよ?

 

(解説いる?)

 

流石は無名先生!お願いします。

 

(出来の悪い生徒だなぁ……)

 

 

よく分かる無名先生の能力講座"気"編。

 

美鈴さんの能力である"気を使う程度の能力"とはイメージ通りドラゴンな玉のアレに出てくる異星人のスーパーモードの原理をイメージするのが分かりやすく、感情の上下やらそこら辺で出力が変わったり物理的に身体が頑丈になったりするらしい。

ならば憧れの元祖レーザー砲も撃てるのでは?と考えたけど流石は俺、そんな物撃てる程気を練ることは出来ないとの事。戦闘力たったの5かゴミめってやつね、クソッタレ。

 

(まーそんなに落ち込まなくていいんじゃないかな。それにこの能力はキミが欲しがってた防御寄りの物だしね)

 

確かにそうなんだけど、それとこれとは話が別でさ……男は誰しもがあの砲撃を撃つのを夢見てるもんなの。

 

(それに私、今は撃てないって言っただけだよ。その力もちゃんと鍛えれば伸びるからサボらず鍛錬すればいつかは撃てるんじゃない?)

 

………マジ?

 

(大マジ)

 

お、おお!なら希望が見えてくるってもんだよ!こりゃ頑張るしかない!

 

(まぁ詳しい事は門番に聞いた方がいいんじゃないかな)

 

「美鈴さん美鈴さん!聞きたいことが!」

 

「はい、何でしょう?」

 

取り敢えず自分のイメージ通りのモノをなんとか美鈴さんに説明するとふむふむと考えてポンと手を置いた。もしかして結構早く出来たりとか!

 

「ええ、人間でもちゃんと修行すれば出来ると思いますよ」

 

「おお!マジですか!」

 

「ざっと60年くらいやれば」

 

「そんなこったろうと思ったよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……?

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。