新訳・とある時王のハイスクール   作:海神アグル

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episode#4

一誠side

 

 

リアスと再び再会した俺は、戦兎や冬麻共々ここで何があったのか根掘り葉掘り訊かれたが、もう時間も時間なので明日話すという事で納得してもらい、現在は駒王町の片隅にある喫茶店『nascita』に来ていた。

 

理由は簡単。

 

戦兎達にもフィアンマの事を聞くため。

 

まぁあんまり期待はしてないけどな。

 

「好きな席に座ってよ」

 

と言う戦兎の言葉で、俺と冬麻と雷花はカウンター席に、万丈は適当な席に座った。

 

そういや、水穂とか操祈はここで働いてんだっけな?

 

姿が見えないって事は、今日は休みか?

 

そう思って周りを見てると、コーヒーを作ってる戦兎が訊ねてきた。

 

「それで?話があるんでしょ?」

 

おお、そうだったそうだった。

 

戦兎に話を振られて用件を思い出した俺は、単刀直入に言った。

 

「右方のフィアンマ……知ってるか?」

 

訊ねると万丈が戸惑い気味に訊ね返してきた。

 

「う、ウホッ……なんだよそれ?」

 

「バカは黙ってなさい」

 

「筋肉つけろよ!!」

 

相変わらずこの2人は仲良いな。

 

そんな2人にジト目を向けて見ていた雷花が俺に訊いてくる。

 

「その右方のフィアンマって何よ?」

 

「あー……いや、知らなきゃいいんだ」

 

説明しても現実味が無いだろうしな。

 

しかし負けん気が強く、姉御肌な雷花はどうしても気になるようで、俺に食ってかかってくる。

 

「ちょっと!そこまで言っといてそれは無いでしょ!? ちゃんと説明して!!」

 

「いや、ホントにいいから」

 

「イッセー!!」

 

はぁー……流石は果南さんの娘だ。

 

気になる事はとことん首を突っ込みたがる。

 

そこが雷花のいい所で、悪い所でもある。

 

するとここで今まで黙っていた冬麻が口を開いた。

 

「イッセー、俺はフィアンマの事を覚えてる。この時間が巻き戻された事も」

 

………は?

 

俺は一瞬、思考停止した。

 

だけどすぐにその現実に追い付き、顔が綻びそうになった。

 

なんせ俺やドライグ以外にも覚えてる奴がいて、そんなやつを漸く見つけたのだから。

 

嬉しくない訳がない!

 

しかしこれに話の追い付かない雷花と戦兎が訊ねてきた。

 

「ちょ、ちょっと!2人だけで進めないでよ!!」

 

「そうね。事情を話して貰えない?」

 

それに冬麻が「分かった」と頷き、俺達2人で三人に事情を話す。

 

この時間が1度巻き戻された時間である事。

 

それをやったのが右方のフィアンマである事。

 

そして俺達全員が1度、フィアンマに敗れ去った事。

 

それらを聞いて、万丈は「マジかよ……」と呆然、雷花も呆気に取られていた。

 

まぁいきなりこんな事言われても納得できないし、信じられないよな。

 

でも全部本当の事だ。

 

しかし意外にもフォローしてくれる者がいた。

 

「その話、信憑性あるかもね」

 

戦兎だ。

 

顎に指を当てて思考していた戦兎は、おもむろに懐から『フルフルラビットタンクボトル』や『ジーニアスフルボトル』をカウンターに置いた。

 

「私はこの2つを作った覚えが無いの。にも関わらず私はこれを持っていた。万丈だってクローズマグマになれるアイテムを持ってたし、カズミもグリスブリザードになれるアイテムを持ってた。だから私は緋村一誠の話を信じる」

 

そう言って戦兎はクシャッと笑った。

 

……やっぱ虎亜さんの弟子だな。

 

こんな突拍子も無い話を信じてくれるんだから。

 

戦兎が賛同した事で、万丈と雷花も答えを出す。

 

「よく分かんねぇけど、俺も信じるぜ!!」

 

「正直右方のフィアンマって言われてもピンと来ないわ。だから話の真偽はともかく、私はあんた達自身を信じるわ」

 

そう言って中学生の少女らしい笑顔を浮かべる雷花。

 

『相棒……いい友を持ったな』

 

ああ、全くだぜ。

 

あ、そうだ。

 

「冬麻」

 

「あん?何でせう?」

 

「お前は何でフィアンマの事を覚えてたんだ?」

 

これはこれで気になってた事だ。

 

父さんや母さん達が覚えてないなら、俺と同世代の鎧や雲雀、蒼輔達も覚えてない筈。

 

なのに冬麻は覚えていた。

 

何故冬麻は覚えていたのか?

 

そこだけがどうしても気になった。

 

「なぁイッセー。俺の母さん、氷城 善子は何のライダーだっけ?」

 

「えっ?善子さんは確か電王……あっ!!」

 

そうだ思い出した!

 

善子さんは時の運行を守る仮面ライダー、電王!

 

電王になれる者は時間の流れに左右されない特異点でなければならない。

 

そんな善子さんは当然、電王になれる時点で特異点が決定。

 

そしてそんな善子さんの息子である冬麻もその血を引いてるから特異点である。

 

だから冬麻は覚えていた。

 

俺もジオウだから覚えてたのだろう。

 

「分かったか?」

 

ニタリと笑う冬麻に俺は「ああ!」と頷く。

 

これでこの時間の異常を覚えてる者が、少なくとも2人出来た。

 

それだけでこうやって話せた結果があるものだ!

 

後はゆっくりフィアンマ対策をしていくのみ。

 

そう結論付けると時間もかなり差し迫っていたので、俺と冬麻と雷花は、戦兎達の拠点を後にした。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

家に帰ってきた俺は「ただいま~」と言いながらドアを開けて靴を脱ぐ。

 

ふと下を見ると、誰か客が来ているのか、女性物の靴があった。

 

母さんか美月の友達かな?

 

そう考えてると、

 

「ニャ~」

 

そんな鳴き声と共に、玄関にいた俺に近づいてくるのは、一匹の黒猫。

 

「黒歌、ただいま」

 

前世では、小猫ちゃんの姉だったあいつと同じ名前の黒猫。

 

再会は早々に偶然で、俺が夜中にインスタントラーメンを食べようと下に降りた時に、人の姿でスルメ食べてたのを発見した。

 

最初見た時は、誰だこの中年みたいな奴はと思ったのは記憶に新しい。

 

しかも父さんと母さんに助けられ、拾われた経緯は一緒なのか、特に警戒される事もなく、むしろ目が合うと酔っぱらいみたいな絡まれ方をされた。

 

と言うかその時のこいつ、めっちゃ酒臭かった。

 

そんな黒歌だが、時折、夜中にこっそりと家を出て行ってるみたいだ。

 

多分、夜な夜な家を飛び出してるのは、小猫ちゃんを探してるんだろうな。

 

でも、小猫ちゃんはきっと大丈夫だ。

 

俺の脳裏には、今日再会した、優しく微笑む紅髪の少女が映った。

 

が、その思い出は一瞬で、フィアンマの野郎に殺された時の顔に切り替わった。

 

………クソッ、振り切った筈なんだがな……。

 

俺は頭を振って、部屋に戻る。

 

そうだ、今度こそ守る。

 

そしてフィアンマの野郎を倒す。

 

そう誓っただろ。

 

今の俺はただただ……皆を守れる最高最善の魔王になるだけだ。

 

 

一誠sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

黒歌は部屋に戻る一誠の後ろ姿をじっと見つめ、完全に一誠の姿が消えると、猫とは思えない程の溜め息を吐いた。

 

「茜、希……あなた達の息子君、堕天使と悪魔の2種族と会ったみたいだにゃ……」

 

黒歌は悪魔が嫌いだ。

 

自分の大事な妹に危険な力を強要させた挙げ句、自分勝手に己をはぐれ悪魔に仕立てた悪魔が嫌いだ。

 

だからこそ、黒歌は黒歌なりに、一誠の事が心配だった。

 

自分を救ってくれた緋村夫妻に恩を返すためにも。

 

そんな黒歌に、大黒柱である茜がいない間、この家の事を切り盛りしている希が声をかける。

 

「黒歌~、一誠帰ってきたん?」

 

「ニャ!」

 

元気に頷いた黒歌は希の足元に行って頭を擦り付け、そんな黒歌を希は抱え上げる。

 

そして黒歌はそのタイミングで、一誠が本物の堕天使と悪魔に会ったことを口頭で告げた。

 

それに希はハッと目を見開く。

 

別に黒歌が喋った事に驚いた訳じゃない。

 

黒歌の正体が何なのかは既に知ってるし、何なら堕天使とか悪魔の存在も知っている。

 

希が目を見開いた理由は、一誠の今後についてだ。

 

異形の存在に出会ったということは、少なからず一誠の人生は変な方向に向かっていく。

 

希はそれを危惧していた。

 

おもむろに懐から希はタロットカードを1枚取ると、その絵を見る。

 

内容は『Change』だった。

 

神妙な顔をする希に黒歌が心配そうな目を向けていると、リビングの方から客と思われる女性の声が希にかかった。

 

「希さん、どうしました?」

 

「ああ、ごめんごめん。そうや、ちょっとお願いがあるんやけどええかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子ちゃん…………」

 

 

 

 

 

 

 


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