荒ぶる神は勇者と共に   作:シロマダラ

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第三話 勇者たちの初陣

「チッ!攻撃が通りにくい!この時代のバーテックスにシステムが適応してないのか」

 

黎はヴァルゴの周りを飛び回りながら舌打ちをする。

300年前の勇者システムより遥かに強化されているものの、最新型の勇者システムより劣っているためヴァルゴになかなか大きなダメージを与えられないでいた。

 

「やっぱり勇者部を待つしかないか」

 

そういいながら撃退から時間稼ぎに変更しようとすると

 

「黎!」

「黎先輩!」

 

勇者に変身した風と樹が到着した。

 

「ちょっと、大丈夫?!怪我してない?!」

 

「まだ大丈夫ですよ。友奈と東郷は?」

 

「二人には隠れてもらってる。それより、黎はどうして」

 

「それより、俺の攻撃は通りにくいらしいので、攻撃をお願いします。援護しますので」

 

「援護するって...あれが何なのかわかってるの?!」

 

「わかってますよ、バーテックスでしょ。人類を滅ぼそうとしてる」

 

「あんた、やっぱり知ってて...」

 

「話はあとです、今はバーテックスをどうにかしましょう」

 

「お姉ちゃん!バーテックスが!」

 

樹の声に反応してヴァルゴに顔を向けると、ヴァルゴから射出された卵のようなものが飛んできていた。

 

「まずい...!」

 

風が大剣を盾にして構えるよりも先に黎が前に出て、

 

「二人は俺の後ろに!来い!『神屋楯比売』!!」

 

そう叫ぶと、黎の装束の山吹色のラインが橙色になり、背中の金盞花のマークが姫百合に変わる。そして左腕に楯のようなものが現れる。

 

卵は黎に当たり、爆発の衝撃が風と樹を襲う

 

「黎!」

「黎先輩!」

 

爆発が収まると煙の中からヴァルゴに向けて何かが飛び出した

 

「切り裂け!『生太刀』!」

 

黎の姿はまた変化していた。ラインは青くなり、背中は桔梗に変わり、武器は一本の太刀に変化していた。

そこから繰り出した攻撃はヴァルゴの表面に傷をつけるが、すぐに修復されてしまう。

 

「やっぱりダメか...風先輩!樹!はやくバーテックスを!」

 

黎がそう叫ぶと別の方向から

 

「うぉぉぉぉ!!勇者-----パァァァァァンチッ!」

 

何かがヴァルゴの体の一部を吹き飛ばした。

 

「ッ!友奈?!」

「友奈先輩!」

「ユウ?!来たのか?!」

 

勇者に変身した友奈は高々に叫ぶ

 

「讃州中学二年、結城友奈。私は、勇者になる!」

 

 

 

 

 

 

「ユウ、東郷は?」

 

「大丈夫だよ!東郷さんは隠れてもらってるし、私たちで東郷さんの方に行かせなければいいんだよ!」

 

「しかたないか...風先輩!」

 

「バーテックスは「封印の儀式」っていう特別な手順を踏まないと倒せないの!説明するから避けながら聞いて!」

 

「ふえぇぇ?!それはハードだよぉ...!!」

 

説明を聞くために、回避に徹する三人。

 

説明を聞いた三人は各自、行動を起こす。

 

「それなら俺があいつの動きを止める。みんなは封印の儀式を」

 

「うん!」「ええ!」「はい!」

 

黎はヴァルゴの周りと飛び回りながら武器を変更する

 

「来い!『金弓箭』!」

 

ラインが薄紫に変わり、背中が紫羅欄花に変わる。武器はボウガンに変化していた。

 

金弓箭でしながら牽制しながら三人が祝辞を唱えるのを待つ。

 

「おとなしくしろぉ、コンニャロー!」

 

「「ええ!それでいいの!?」」

 

「ようは魂がこもってればなんでもいいのよ」」

 

「いや、先に行ってくださいよ...」

 

すると、ヴァルゴの下に魔法陣のようなものが現れ、ヴァルゴから四角推のようなものが出てきた。

 

「あれが「御霊」。封印すれば御霊が出てくるから、それを破壊すればバーテックスを倒せる!」

 

「だったら、私が!」

 

友奈が飛び出し、御霊の上から勢いよく拳を振りぬく。

 

しかし、大きな音が鳴るだけでビクともしなかった。

 

「かったぁぁぁあい!?硬すぎるよ!?」

 

「ねぇ、お姉ちゃん。数字が減ってきてるんだけど...」

 

樹の言う通り、陣に描かれている数字が減っていっている。

 

「それは、あたし達のパワー残量!それが0になるとコイツを二度と倒せなくなる!」

 

「ええ!そんな!?」

 

すると、樹海に張り巡らされた巨大な根が枯れ始めてきた

 

「枯れてる...?」

 

「まずい、始まった!封印してる時間が長いと樹海が枯れて、現実世界に影響が出てくるの!」

 

「それなら!『天ノ逆手』!」

 

黎は再び武装を切り替える。

 

「ハァァ!勇者、パンチ!!」

 

友奈と同じようにパンチを繰り出すも、やはり傷つかない

 

「ダメ!やっぱり傷つかない!」

 

「まだ!一発でダメなら、十でも、百でも、千でも!」

 

そのまま、黎は自分の切り札を使用する。

 

「宿れ!『一目連』!」

 

『一目連』。暴風を具現化した精霊。その力が黎に宿り、力を与えた。

 

竜巻の如き勢いを得た黎の拳が、連続して御霊にたたきつけられる。

 

撃ち込まれた拳の数が八〇〇を超えたあたりで御霊に亀裂が入り、九〇〇で亀裂が全体的に広がり始めた。

 

「ユウ!併せろ!」

 

「うん!」

 

友奈が先ほどと同じように、御霊の上から勢いよく拳を振りぬく。

 

「千回連続・・・・・」

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

「「勇者-----パァァァァァンチッ!」」

 

二人の拳が御霊に直撃し、とうとう御霊が砕け散る。

 

砕け散った御霊から光が溢れ、ヴァルゴが砂のように崩れ去った。

 

「よし!」

 

「やったぁぁぁ!!」

 

「よくやったわ!黎!友奈!」

 

「お疲れ様です!黎先輩!友奈先輩!」

 

勝利に喜んでいると、周囲が光に溢れ、黎たちを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「ここって...」

 

「学校の屋上、だな」

 

光が治まると、周囲が樹海から学校の屋上に変わり、黎たちの姿も制服に戻っていた。

 

「終わったんですよね...?」

 

「ええ、この世界を守れたのよ!」

 

「そっか、よかった...」

 

「東郷、大丈夫か?怪我とかしなかったか?」

 

「っ!えぇ、大丈夫よ」

 

「?そうか、ならよかった」

 

「でも、現実の世界の時間は止まったままだったから、今は授業中よ」

 

「えぇ...」

 

「それ、大丈夫なんですか?!」

 

「大丈夫よ。大赦が後でフォローしてくれるわ」

 

勇者部の初陣は勝利で終わった。

 

しかし、その中で浮かない顔をしている者が一人だけいた


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