ゴッドイーター2~転生者で空気な神機使い~   作:ねこめ

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 はい、どうも平均睡眠時間は三時間、ねこめでこざいます。いやね、寝る時間がないんですよほんとに・・・。

 そんなことはどうでもよくて、今回はほぼオリジナルというわけで、あのお嬢様が出てくるお話にしてみました。百合分は弱いですがその代わりにバトルシーンを多めにしてみました。

 それではどうぞ。



24 ひとりじゃできませんし!

 任務場所は贖罪の街。

 ここにはアラガミ出現直後にたくさんの人間がこの街に集まっていたらしくてバリケードもそのままになっている。いわるゆ当時はシェルターになっていた場所がここ。おそらくアラガミの進化も進んで、そのバリケードも意味のないものになって街は崩壊、ゴーストタウンになってしまったというわけ。都会の象徴である高層ビルにはアラガミに食い破られ、大きな風穴がぽっかりと開いてしまっている。夜にでもなればどこぞのゾンビホラーゲームのような街並み、もしくはそれ以上に酷い風景だろう。

 今の私にはアラガミなんかじゃなくて、動きも遅くて大きさも人並みのゾンビのほうがまだマシなのかもしれない・・・。その場合は私たちはゴッドイーターではなく、○ウイルスを支配した新生物になってるわけで。まあ厳密に言えばゴッドイーターもオラクル細胞を打ち込まれた半アラガミの新生物という解釈もできるけどね。

 話がそれたけど、このフィールドの名前が『贖罪』の街というのもなかなか皮肉が効いているね。

 というわけで討伐対象はオウガテイルが二体、コクーメイデンが四体とのこと。

 そうそうまた別の話になるけど、前にコクーンメイデンは直訳でと『サナギの少女』と訳したね。この前ノルンでいろいろ調べてたんだけど、アイアン・メイデンっていう人が一人入る棺桶型の形の中に針がいっぱいある拷問器具を見つけたんだよ。どうもそれとコクーン、つまりサナギを掛け合わせたのが由来のアラガミっぽいね。それがどうしたって話だけど、このことを気づいた時に「自分、なに直訳でドヤ顔解説してんのさ・・・」ってなって一人で顔面真っ赤になったから話させて。ただこの世界でキャラの由来とか設定とかその他もろもろ話すとメタ発言でしかないんだけどね。まあ私は外から来た存在だし多少の発言は許してください、ネタバレはしませんので・・・。

 さて話を戻して、この程度の敵は一体ずつ倒していけばなんなく倒せるはず。神機ももだいぶ強化されてきたし。でもやっぱり、

「今日もお仕事だよ・・・」

 いつも通りの私ですよっと・・・。

「・・・あなたもうちょっとやる気ってものはないわけ?」

 と、隣で言うのは制服とベレー帽がよく似合う緑髪の女の子。

「すいません、エリナさん・・・」

 エリナさんです。人出不足ということで今回、ペアを組むことになった。隊長さんだけは一人でもいけるということでペアはなし。私の場合はソロ任務だと、まあお察しの通りだからついてきてもらったというわけ。原作だと別の任務をこなしたあとから一緒に任務に行けるようになるんだけど、相変わらずこの世界はそれを無視してる様子・・・。それでもめちゃくちゃすぎだよ、この世界。

 それにしても、この子はちゃんと神機使いにおける使命感のある子だもんね、私みたいなのはイラつくだろうね。

「はあ・・・、なんでこんなのに私がついていかなきゃならないのよ」

 ため息を吐いて額を押さえるエリナさん。こんなので誠に申し訳ないです・・・。

「それで、 作戦とかはあるの?」

 ブラッドなんだからそれくらい考えてるんでしょ、と私を一瞥する。しかし、作戦ねぇ・・・。

「コクーンの包囲網の中に突っ込まない、ですかね・・・?」

 戦術理論もちゃんと勉強してない私のおつむじゃ大層な作戦は思いつかない。

 エリナさんは私の発言に「ふーん」と返す。あんまり信用されてないね、これは・・・。

「まあいいわ、さっさと終わらせるわよ」

 そう言うと待機場所の崖から一人で飛び降りてしまった。

「あっ、ちょっと待ってください!」

 私も急いでそれに続く。

「ま、まずは離れてるのを一体ずつ倒したほうが・・・」

 前を歩くエリナさんに一応申し訳程度の作戦を提案するも、

「じゃああなたはそうしてれば? 私が片付けるから」

 全然聞いてくれないよー・・・。

「広場のほうに四体もいる・・・」

 EとFエリアに四つの赤いアイコン、それが動かないからたぶんコクーンメイデンだよね。離れてるどころか一箇所に密集してるよ。つまりこの人は包囲網に突っ込もうとしていると。

「ダメです!」

 とっさにエリナさんの腕を掴む。すると睨まれた。

「なによ?」

「敵陣に突っ込むなんて自殺行為です!」

 何度そういう人を見てきたことか。

「それに一人だけで頑張っても勝てませんよ・・・」

 私の言葉はエリナさんには届かなかったようで、

「あっ・・・」

 手を振りほどかれた。

「舐めないでくれる?」

 そう言ったエリナさんの私を睨む目は本当に怒ってた。もしかして私、なにか逆鱗に触れるようなことを言った・・・?

「見てなさい!」

「え? あっ」

 エリナさんはコクーンの群れに向かって走り出して飛ぶと、

「やあっ!」

 コクーン目掛けてブリリアンスと呼ばれるチャージスピアを重力に任せて突き刺す。しかしこの程度じゃ怯まないコクーン。

「まだ!」

 まだじゃないですよ、エリナさん。あなたの後ろの別のコクーンがレーザーの発射準備してるんですよ、打ち方よーいしてるんですよ。・・・ああもう!

「こっち向いて!」

 弾丸を何発か撃ち込む。するとこっちに注意は来なくともダウンさせることはできた。次は奥のほうにいる二体。こちらもまさに発射準備の最中。

「動かないで!」

 二体に交互に弾を撃ち込む。とりあえず怯ませて隙を作ることには成功した。エリナさんのほうを見るとやっと一体コクーンを倒したようだった。

「やった!」

 一体だけなんだよなぁ・・・。それにそのまま戦ってたら的になってしまう。

「エリナさん一回戻って!」

 声をかけても、「このまま押し切る!」と言って聞いちゃあいない。

 私がそう思っている間にもエリナさんは私がダウンさせたコクーンに捕食攻撃を食らわせる。と、狙っていたのか否か、その捕食の隙に奥のコクーン二体がエリナさん目掛けてジャベリンを発射した。

「危ない!」

「え?」

 私はとっさに走り出して神機を剣形態に変形させると装甲を展開した。

「ぐうっ・・・」

 ジャストガードにはならなかったけど一応攻撃は防ぐ。

「頼んでないのに・・・」

 こんな時に憎まれ口を叩いてる場合じゃないと思うんですけどねぇ・・・。

「そんなことより、倒さないと!」

「わ、わかってるわよ!」

 私の声に返事をしてから目の前のコクーンに連続で突き攻撃を食らわせた。やがてコクーンはだらんと脱力する。どうやら倒したみたい。

「次はあれね!」

 エリナさんがまた一人で走り出す。なんで私と組むのは突っ込んで行く人が多いんだろう。

 エリナさんが片方を攻撃している間にもう片方に銃撃を浴びせてダウンさせる。それがダウンしても、さっさと倒すべく、捕食などせずに私はそのまま引き金を引き続けた。そこでうまくいかないのが私の人生というもので・・・。

 

「グワアアアア!」

 

 背後から咆哮が聞こえてくる。はっと後ろを見るとオウガテイルが二体合流してきてしまっていた。

 エリナさんを見るとコクーンの体から飛び出てくる針を避けつつ未だに倒せていないみたい。私もあとちょっとのところで目の前のコクーンを倒せる。というところで二体のオウガテイルが迫ってくる。私ではなくエリナさんに・・・。

 急いで剣形態に切り替えるとダウンしているコクーンに鉄乙女剣を突き刺した。剣はコクーンを貫通し、絶命させる。それを確認するとすぐに銃に戻してオウガテイルに銃口を向けた。

「避けないで!」

 真っ直ぐに動く的なんて簡単に撃ち抜ける。

「ギャア!?」

「ゴオア!?」

 二体のオウガテイルにそれぞれ一個ずつ氷味の弾丸をごちそうしてあげた。こんな言い回しになるほどに、私も染まってきてしまったのかも・・・。

 ひるんだ二体はこりずにまたエリナさんへと走っていく。

「そっちがその気なら・・・」

 私はエリナさんが戦う背後に陣取ると、

「来ないで!」

 一回のトリガーで二発出てくるバレッドをマシンガンのように連射した。これにはオウガテイルもたちまち穴だらけ。残弾はすっからかん。

「こっちは終わった、よ?」

 エリナさんが振り返ったときには、

「全部終わりました・・・!」

 私がオウガテイルを二体、肉片に料理したあとだった。もちろんのことそれ以外にも周りにはコクーンの亡骸だらけ。すぐに霧散したけど。

「ご、ご苦労様・・・」

 エリナさんがうろたえている。まあ知らないうちに敵が全部死んでたらなんじゃこりゃってなるよね・・・。

「か、帰るわよ」

 エリナさんはちょっと居心地悪そうに言ってヘリの降下地点に歩き出す。

「は、はい!」

 私もすぐにエリナさんのあとをついていった。

 

 

 

「・・・」

 気まずい、話すことない・・・。

「ねえ」

「はいっ!?」

 急に話しかけられて、私は緊張もあってつい驚いてしまう。

「・・・あなた、そのヘタレどうにかなんないの?」 

 エリナさんにその反応を見て呆れられた・・・。

「善処します・・・」

 性格だもん、仕方ないもん・・・。

 そんなところに突然無線が入った。

『緊急事態発生!』

 なんか今、無線からすごく嫌な単語が聞こえてきたような。

『想定外の中型アラガミが、作戦エリアに向かっています!』

 それを聞いたときの私は死んだ目でエリナさんを見ていたと思う。

「な、なによ・・・」

「これって倒さなきゃいけないやつですよね・・・?」

 対するエリナさんは蔑んだ目で私に「当たり前でしょ」と返した。デスヨネー。

 種別はコンゴウ。レーダーを確認すると出現エリアはD。向こうが高台から降りてしばらく歩いてくれれば奇襲を仕掛けられるかな。とか思ってるとエリナさんが勝手に走り出した。ああもうまただよ!

「なっ、なによ!」

 また持前の瞬発力でエリナさんの腕をつかんで引き止めた。

「まだ行っちゃダメ、です・・・」

 勢いは動作だけで、やっぱり私の声はたどたどしいまま。

「どうしてよ」

 聞いてくれるならちゃんと言わないとね。

「奇襲を、仕掛けるんです」

「奇襲?」

 エリナさんが首を傾げて、そんな作戦成功するの、と怪訝な目で返してくる。コンゴウは耳がよくて索敵能力が高いからそう思うのもわかる。でもね、

「私に任せてください、私ならできます」

 いやこう言うよりは・・・よし、

「私とあなたならできます!」

 今の私の神機の火力じゃ絶対に仕留め切れないけど二人掛かりならギリギリでゴリ押せるはず。それに今の私だけじゃスキルである『ハイドアタック』もついてないし明らかに火力不足。ハイドアタックっていうのは相手に気づかれていなければ攻撃力が三倍に跳ね上がるスキルのこと。そのスキルに色々なステータス上昇系のスキルを組み合わせると化け物レベルのダメージを叩き出すことができるけど、あいにくそれすら持ってない。だけど、二人掛かりなら。

 そんな理由を知らないエリナさんはなにかを思ったのか、じっと私の目を見つめた。

「・・・わけわかんないけど。その作戦、乗った」

 そう言うとそっぽを向く。

「だからもう離してよ・・・」

「あっ! ごめんなさい!」

 私は慌てて手を離した。そんな私を見てエリナさんは少し笑ってくれた。なんでかよくわかんないけどなんとなく嬉しい。保育所のとき、小生意気な年中組の子に感じたのと同じような嬉しさだった。

「それで奇襲って?」

「あ、それでですね」

 

 

      ◆◆◆

 

 

「ほんとにうまく行くの?」

「大丈夫です。私を信じてください」

 エリアのI、教会に続く道に潜む私たち。音を立てないようにしゃがんでじっとしていると咆哮が聞こえてきた。チラと少しだけ顔を出してうかがうと、エリアDの壊れたビルの隙間から降りてくる巨大な猿の姿が見えた。コンゴウはアラガミ特有ののしのし歩きで段差を降りていく。

 さあここからどこに向かうのか。こっちに歩いてくるルートだったら一度教会を抜けて反対側に遠回りして背後を取るしかないかな。

 果たしてあれが取ったルートは私たちの向かいにある建物、エリアLに向かうルート。私たちはコンゴウが建物に入り切ったところで忍び足で追跡する。建物に入ってすぐ右には素材の回収場所、彼らにとっての捕食場所がある。もしもそこで捕食を始めてくれればもっと奇襲を仕掛けやすくなるんだけど。そう思っていたら本当に捕食行動を始めた。これはついてる!

 私はエリナさんに建物の上に登るように指示する。エリナさんはうなずくと、指示通りジャンプしてなんとか建物に手をかけるとその上に飛び乗った。彼女が私に手を振って準備OKの合図をするのを確認してから私も建物に入る。そして悠々とお食事中のコンゴウの背後に忍び寄った。

 深呼吸をして銃口をコンゴウの背中へ向ける。銃口と目標の距離は数センチ。ここまで距離を詰められるのも自動空気スキル様々だよね。こういうことができるから気配を悟られないっていうのはやっぱり大きい。特にこういう第六感の働く野生生物相手には。

 使用するバレッドは二種類。

 一つは一発当たれば、敵に張り付く球が発生し数秒後、その球の自然消滅とともに爆発する(爆発モジュール二つ重ね)バイ○ハザードにも出てくるマインスロアーのような、絶対もうすでに誰か作っていてもおかしくない自作弾。それにGEBのときによろず屋さんがブラスト用のバレッドとして同じようなものを普通に売っていたような気がする・・・。一応バレッド名はそのまま『マインスロアー』という名前にしてみた。『徹甲榴弾』って名前も考えてみたけど、別に徹甲弾みたいに弾頭が尖ってるわけでもないし、装甲をぶち破ることができるわけでもないからやめておいた。

 もう一つは単純に連射弾に弾丸を追加、連射弾は単発で、弾丸のほうは連射弾が当たったらすぐにその弾丸が発生して追加ダメージを与えるというマシンガン戦法用のバレッド『ただの連射弾』。これも絶対誰か作ってるけど、別になにがで調べたわけじゃないし、ネーミングセンスも含めて多めに見てくださいませ・・・。さてこれらをどう使うかというと、まあ実演したほうが早いということで。ようし。

「当たって!」

 こんな至近距離で外れるわけはないんだけど、それでも言わなきゃいけない使命感と共にまずはマインスロアーを発射。すかさず弾をリロード、というよりはOP補充。

「ギャア!?」

 音と痛みに反応してコンゴウが振り向くと同時に、

「いち・・・」

 後退しながら連射弾を乱射する。その弾幕をコンゴウは無理やり強行突破しようと弾丸に当たりながらも、後ろに走りつつ弾幕を展開する私を追いかけてくる。だんだんとコンゴウとの距離が短くなっていく。

「にぃ・・・」

 建物の出口に差し掛かる。私はそこからバックステップで一気に後ろへ下がって距離を開けた。私を追ってコンゴウもその入口から飛び出してくる。そして次の瞬間、

「さんッ!」

「ギャアアアアッ!?」

 コンゴウに張り付いていた弾が消滅すると同時に、奴の背中から派手に爆発が起きた。

「やった!」

 連射弾で稼いだダメージに加えてこの爆発の威力、ひるまずにはいられまい。

「エリナさん!」

「了解!」

 そこですぐに建物の上で待機していたエリナさんに声をかける。

 ゲームだと『スカイフォール』っていうブラッドアーツでも取得しない限り下突きアクションはできない。でもこの世界は私にとってはプログラムが支配する世界じゃない、多少は融通が利く現実・・・。だったらめちゃくちゃやってやろうじゃない!

「くらえええええ!!」

 エリナさんはブリリアンスを真下に突き出してコンゴウの体を串刺しにした。落下による加速も相まって大ダメージになる。ブリリアンスはコンゴウの体を完全に貫通し、地面に突き刺さっているようだった。いわゆるでかい釘で軽く貼り付けになっている状態。コンゴウは必死に抵抗するけど、エリナさんも負けじとロデオ状態になりながらもコンゴウを押さえつける。なんか別の狩りゲーでこんなの見たことあるな・・・。あとこれ、いまさらだけど私も前にやったことあったわ・・・。

「こっからどうすんの!?」

「そのまま貼り付けにしていてください!」

 エリナさんにそう言って、私は暴れるコンゴウの顔に鉄乙女剣を振り下ろして地面にコンゴウの顔がつくようにする。そしてまた銃形態の尾弩イバラキに神機を戻すとコンゴウに銃口を咥えさせる。残虐だけどそこに、

「おらああああああああああああ!!」

「ゴオオオオオオッッッ!!」

 激辛の飴玉、すなわち炎属性の弾丸を出血大サービスとばかりにこれでもかとごちそうしてやった。弾が切れればリロードして、

「おかわりだよ!」

 さらにトリガーを引く。またなくなればリロードしてさらにさらに弾丸をぶち込む。

「そろそろお腹いっぱいでパンパンかな?」

 コンゴウの抵抗が目に見えてきた。ここまでくれば、

「エリナさん、トドメです!」

「えっ、あ・・・はい!」

 下がってから、なんだか若干恐怖が見えるエリナさんにそう叫ぶとエリナさんは一度コンゴウの背中からブリリアンスを抜いて、

「落ちろ・・・、落ちろ・・・!」

 コンゴウの背中に陣取り、その背中を何度も突き刺した。最後の一突きは高く飛んで、

「落ちろおおおオオオオオオオオ!!」

 落下に任せてコンゴウの背中にブッ刺した。それと同時にコンゴウの背中から飛んで地面に着地するとブリリアンスを一振りした。これにはさすがのコンゴウも落ちたようで、体を大きく跳ね上げ、バッタリと地面に倒れた。

『あ・・・アラガミ、沈黙、です・・・」

 あ、ヒバリさんがドン引きしてる。いくらアラガミとはいえ残酷すぎたかね・・・。

「あの、お疲れさまでした」

 肩で息をするエリナさんに声をかけても無反応。なんだかちょっと手が震えてるみたいだった。もう一度「あの」と声をかけてみると今度はちゃんと反応してくれた。

「・・・なっ、なによ」

「いや、あの・・・大丈夫ですか?」

「な、なにがよ」

「手が・・・」

 手どころか声も震えてる。

「こっ、これは勝利の喜びの印だから!」

 いやどう見ても恐怖の震えですよね、って言いたかったけどまた怒られそうだからやめておいた。

「なんかすいません・・・」

 気づいたら私は本能的に謝っていた。当たり前だけど、なんで謝るの、と言葉が返ってくる。自分でも理由がうまく出てこなくて迷った挙句こう言ってみた。

「なんか、怖い思いをさせちゃったみたいで・・・」

「はあ? 怖かったわけ、な、ないでしょ!?」

 おー、震えてる震えてる・・・。でも怖かったのはたぶん私のあの所業だよね。でもね、私みたいな雑魚が勝つためには多少はああいう悪知恵が必要なのよ・・・。

「そりゃ、アラガミの背中に乗らされてあんな目に遭わされるとは思わなかったけど、それとは話が違うんだから!」

 あれ、私じゃないの・・・? 神様見習いいわく、私がガチ戦闘モードに入ったらヤバいって聞いたから気になったんだけど、違うならまあいいか。

「そんなことはいいから! 今度こそ任務が終わったんだから帰るわよ」

「そ、そうですね! 帰りましょう!」

 コンゴウのコアを回収すると、ブリリアンスを肩に担いでヘリの降下地点に歩き出すエリナさん。その横を私は歩いた。静かになった道中でエリナさんは神機の柄を撫でながら「今日は大変だったね、オスカー・・・」と呟いた。そういえばエリナさんって神機に名前をつけてるんだよね。私もつけてみようかな・・・いや、弾の名前の時点でネーミングセンスが酷いしやめとこ。ん? ネーミングセンス、神様見習い・・・。あっ・・・、いや深く考えないほうがよさそうだね。

「ねえ・・・」

「はい?」

 そこまでお互いに全く会話がなかったところに、ふとエリナさんに話しかけられる。

「あなたってさ、ブラッドっていう特殊部隊から来たんでしょ」

 その質問に私は特に付け加えるわけでもなくうなずいた。

「特殊部隊ってことは強いんだよね、しかもあなたはその中でも強いほうなんだよね・・・」

「いや全然強くないですよ・・・! だってほらこんなドジでヘタレで臆病な私ですよ!?」

 あまりに思い違いな言葉がきて全力否定する。なのにエリナさんは、

「ふうん・・・、あれがヘタレで臆病ねぇ」

 ジトッとした目でこちらを見てくる。さっき私のことを臆病なんだとか言ってきたのに・・・。あのときは戦闘がうまく進んでたからノリに乗ってただけなのに・・・。その旨を話してもエリナさんはジト目をやめてくれない。でもね、嘘じゃあないんだよぉ嘘じゃぁ・・・。

「・・・まあいいよ」

 それで会話は終わったのか私から目を離す。嫌われてるのか、好かれてはいなくとも能力は認めてもらえてるのか、よくわからない関係になっちゃったね・・・。

「あなたさ・・・」

 そこでやっぱり会話は終わってなかったみたいで呟くように言った。

「やるじゃん・・・」

「えっ・・・?」

 反応してから気づいた。これは原作でいうキャラクターエピソードのムービーに入ってるってやつか。でもタイミングがおかしいしここから先の会話はないはずなんだけど。

「私、無傷で任務成功させたのこれが初めてなんだ・・・」

 普通に先の会話がある。しかも原作よりやけに弱気・・・。それは置いといて、無傷なのは私がコクーンの攻撃から庇ったのもあったしね。

「それに中型種にトドメさせたのもこれが最初だし・・・。いっつも最後は隊長やエミールが刺すの」 

 あれは槍のほうが火力出るから、あと自分の仕事減らすためでも任せただけなんだけど・・・。

「ブラッドってさ、私みたいなのと組んでも完璧に仕事をこなすんだね・・・」

「いやエリナさんがちゃんと指示に従ってくれたからですよ!」

 なにせ私の戦法は一人じゃ絶対できないから。自動空気スキルはただ気配が限りなく0に近くなるだけで、単独での直接戦闘にはなんの役にも立たない。仲間がいればただ固定砲台になってればいいだけになるけど。それにこの前にも後にも、簡単には指示通りに動いてくれなさそうな人がいるんだよね。御曹司とか誤射姫とか借金ボーイとか。

「今日使った戦法だって、ひとりじゃできませんし!」

 ですからエリナさんもすごいんです、となるべく元気づけるように笑顔で言ってみる。実際、私とエリナさんの戦力差ってガードが使えるか使えないかの違いでしかないだろうし。ちゃんと周りを見るようにすればブラッドアーツも近接攻撃も使えない私なんかよりもっと強くなるはずだし。

「エリナさんがいたから私も無傷でいられるんですから!」

 すると弱気な感じに小さな怒りを含む。

「うそは言わないでよ」

「うそ?」

「私を庇ったときに手かすってるじゃない」

 自分の手を見ると赤い線が入っていた。ジャストガードじゃなかったからはじき切れなかったレーザーが手の甲に当たったのか。

「こんなの全然ケガでもなんでもないですよ」

「それでも私のせいでしょ・・・」

 そんなの気にしなくていいのに。でもねぇ、わからなくもないんだよねその気持ち。自分のせいで人にケガさせちゃったときの罪悪感。

「えっと、それじゃこうしましょう!」

 私はこんな提案をした。

「また一緒に任務に行ってください! それで借りは返してもらったことにします」

 きっとエリナさんは素直に言うこと聞いて動いてくれれば今までで一番戦いやすいペアのはずなんだ。だから任務に同行してくれるだけでも十分借りは返してもらったことになるはず。

「え、それじゃまた・・・!」

 その意見にエリナさんが眉を下げて抗議しようとするところに言葉をかぶせる。

「そのときはまた次のときに借りを返してください」

 まあ成長しない限りエンドレスなんだけど。結構鬼畜じゃないかって? まあダメだったらまた別なのを考えるよ・・・。

「・・・いいわ、次は庇われないようにしてやるわよ」

 黙って考えてからエリナさんはうなずいた。

 

 

 

 気づけば私たちはヘリの降下地点に到着していた。そこへちょうどヘリの音が聞こえてくる。ヘリに乗ってからというもののお互い一切会話をせず、ただ窓の外に広がるアラガミに食い荒らされた街を眺めているだけになる。少しだけエリナさんの様子をうかがうとやっぱり落ち込んでいるようだった。ときどきヘリの音に掻き消される小さなため息をつく。その様子を見て私までなんだか落ち込んでくる。こんなふうに自分の実力に落ち込んでる人って、どんな言葉をかけてあげればいいんだろうね・・・。それもそうだし、私も本当は自分の実力を見つめて、もっと頑張らなきゃって思わないとダメなんだよね・・・。

「あの、エリナさん」

「なに」

 こっちを見てはくれないものの、一応無視はされないことに安心する。

「・・・やっぱりなんでもないです」

「なによ、気になるじゃない」

「・・・怒りませんか?」

 私がびくびくして言うと「いいから言って」と急かされた。

「じゃ、じゃあ言いますね」

 怒られる・・・。

「誰にも負けたくないと思うの、すごいと、思います・・・」

 これ、私は負けてもいいと思ってるって言ってるのと同じだし・・・。

「・・・あなたにも負けませんから」

「は、はい!」

 私はなんか挑戦予告されてるみたいで慌てて返事をした。「すぐにエリナさんが私を追い抜きますよ・・・」とは言えずに。

 それからエリナさんは声をかけても一切反応してくれることはなかった。

 




 はい、というわけでクレハがエリナさんと任務に行くお話でした、と。
 いつも通りの主人公ちゃんのヘタレっぷり。そしてなぜか原作より当たりが強いエリナさん。まあ初期のエリナさんってこんな感じだったっけなー、と思いながら書いたらこうなりました・・・。
 そして自称自作バレッドの登場。こいつは実際にねこめがゲームのほうで使ってるバレッドですね。部位破壊したいときとかはなかなかに使えますよ! 作り方が知りたい方は聞いていただけたらツイッターかどこかに掲載致します。ただし、ねこめのツイッターは異常に闇があるので閲覧する際は自己責任で・・・!(@nekome0427)

 次の更新は一ヶ月以内にはしたいですね。その間にオリジナルのほうも読んでいただければ作者的には嬉しいです!

 それでは今回はこの辺で、ご精読ありがとうございました!

 

 あっ、そうだ(唐突) 容姿しばりが百合を書く上で異常に書きにくいことに気づいたので近々、設定の説明回を潰して、オリジナルな過去編のお話書きますゾ。

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