というより、オリジナル要素をあまり入れられなかったので早くなりました。
精進が足りないですね。
では、お楽しみください。
そのまま寝ようとした達也だが、なにやら見られているような感じがしてうっすら目を開いた。
横を見ると、先ほどの女子生徒がこちらを見ていた。
別に肘は当たっていないし、文句を言われるようなことはしていないはずなのだが‥‥‥。
「あの、私、
なんて事はない。彼女はただ自己紹介をしようとしていただけなのだ。人を見た目で判断するのは危険かもしれないが、気弱そうな見た目と声だった。
「司波達也です。こちらこそよろしく」
美月は、今では珍しくなった眼鏡を掛けている。無難な返事をした達也は、それを見て一つの仮説を立てた。
今の時代、よほどの先天性視力異常でもない限り視力矯正は必要ない。おしゃれとするならば、彼女の丸眼鏡は不釣り合いだ。
よく見ると、そのレンズには度が入っていないことが分かる。もし眼鏡がおしゃれではないとすると、
霊子放射光過敏症とは、見えすぎ症とも呼ばれる一種の知覚制御不全症だ。とは言っても病気ではなく、
そもそも霊子とは何なのか、詳しく説明すると長くなるので端的に言うと――
魔法に関係する粒子として、
――ということだ。残念ながらいまだ仮説段階ではあるが。
霊子放射光は要するに霊子そのものなので、それを見ている者の情動に影響を及ぼす。そのため、霊子放射光過敏症者は精神の均衡を崩しやすい傾向にある。
これを予防する最も簡単な手段が、特殊加工レンズを使った眼鏡を掛けることなのだ。
彼女の前では注意した方がいいかもしれない。色々と秘密にしなければいけない事がある達也は、そう簡単に見破られるはずがないと思いながらも心に留めておくことにした。
「あたし、
「こちらこそ」
美月の向こう側に座っていた女子生徒に声を掛けられて、達也は思考を一旦中止した。
タイミングはちょうどいい所だったといえるだろう。
達也の無意識な視線に、美月が羞恥心でそろそろ限界に近づいてきていたからだ。
「それにしても、面白い偶然って感じかな?」
どうやら彼女は活発な女の子らしい。達也はそう思いながら聞き流す。
「面白いって、どこがだ?」
「だって、シバにシバタにチバでしょ?なんだか語呂合わせみたいで面白くない?ちょっと違うかもしれないけどさ」
「‥‥‥なるほど」
言いたいことは分からなくもないが、達也が気になっていたのは別の事だった。
彼女の名字、
達也の記憶では、数字付きの千葉家にエリカという娘はいなかったはずなのだ。もちろん、傍系という可能性も否定できないが。
「ん?司波君、ジッと見つめられると照れるんだけど」
「別に他意はないんだが、すまないな」
美月ほどではないにしても、達也に見つめられたらエリカのような女の子でも恥ずかしいだろう。
「ほら、
「‥‥‥‥
「よろしく」
エリカの向こう側に座っていた五人組で唯一の男子生徒が、エリカに促されるようにして口を開いた。
どことなく達也に似た雰囲気を持っている龍に、達也は疑問を覚えつつ、またも名字のことが気になってしまった。
百済家。数字付きの中でも異端とされており、数年前のある事件で瓦解したはずの家。
‥‥‥‥まさかな。深く考えすぎるのは自分の悪いくせだ、と達也は割り切ることにした。そういう事は、ここで生活していればいずれ気が付くだろう。
「ところで、五人は同じ中学だったのか?」
残りの二人が自己紹介を終えたところで、達也はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。入学早々友達ができたというわけでもないだろうし、それ以外に五人で行動を共にしている理由が思いつかなかったのだ。
「違うよ。確かに龍はそうだけど、それ以外は全員さっきが初対面」
「初対面?」
「案内板の前でにらめっこしていたら、美月が声を掛けてくれたんだ」
「‥‥‥端末はどうした?地図くらいならそれで分かると思うが」
入学式に関するデータは会場の場所を含め、全て入学者全員に配信されている。それがあれば仮に式の案内を読んでいなくても、何も覚えてなくとも迷うはずはない。
「あたしたち、端末を持ってなくて‥‥‥」
「だって仮想型は禁止だって入学案内に書いてあったし」
「せっかく滑り込んだのに、入学早々目をつけられたくないもの」
「あたしは単純に持ってくるのを忘れたんだけどね‥‥‥」
「そういう事か‥‥‥」
本当は納得したわけではない。自分の入学式なのだから、会場の場所くらい把握しておくべきだというのが達也の偽らざる本音だった。
しかし、むやみに波風を立てる必要もないだろう。特に同じ二科生同士、これから色々とあるだろうからと、達也は自重したのだった。