放浪者の元傭兵   作:nobu0412

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ねむいのでとくにないです


逸れ人形

長い長い国道を歩きようやくS08地区が見えてきた

もう一息でまともに休める、S09地区を出発して役5日、長い旅路であった

物資も持っているものは食料品が消耗しているため早く補充したかったため助かったと他ならない

アスファルトで舗装された道路を踏みしめてS08地区へと向かって歩き出した

 

 

 

 

 

 

様子がおかしい

放棄されている市街地のゲートをくぐった時思った事だ

 

劣勢になると居住区などは避難のため縮小されたりするが妙だった

 

安全化されているとはいえ危険なことが起きないわけではない、鉄血だろうがE.L.I.Dに攻め込まれれば当然戦闘になる

 

ここの市街区は戦闘があったにしては荒廃しきれていない

様々な様子の放棄された地区を見てきたがここは比較的にもまだマシ、つまり縮小したのはつい最近のように感じた

 

本当に荒廃したところは何もない、閑散とした状態になる

 

見ればグリフィン、鉄血問わず人形の成れの果てが転がっている

人間の死体もちらほら転がっている

逃げ遅れた住民が戦闘に巻き込まれ殺されていたのだろう

 

子を庇うように死んでいるもの、何が起きたかわからない表情で死んでいるもの、逃げていたのか背中を撃たれて死んでいるもの

 

数日前に訪れた死んだ街とはまた違う状況だった

戦闘が起きていてもおかしくないが銃声は聞こえない

 

前回、S09付近の戦闘地域のように人形で編成されたパトロール部隊がいてもおかしくないため慎重な行動が必要だった

 

しばらく歩いていると道行く道にバリケードがあるため安易に通ることはできなかった

 

しかし違和感を覚える、まるで誘導されているような地形だった

 

すると進行方向から足音が聞こえる

足音の感覚は短く走っているそうだった

近くの建物、かつては飲食店だった場所に入り身を潜めた

 

扉は入ってこられないようにあり合わせのバリケードがあったが店内が見えるほどの大きなガラスは割れているため割れたガラスに刺さらないように跨いですぐにカウンターへ身を潜めた

 

すると足音が近くまで迫り店内にまできたと思えば身を投げるように人型の何かが飛び込んできた

 

一見すれば金髪の女性が怪我まみれで至る所から血を流し制服のような衣装を血で汚している

 

それは手が届く位置に飛び込んできたと思えば目があっててしまった

驚愕の表情を浮かべて騒ぎそうだったが口と向けてきそうだった銃を押さえた

 

「むぐぅ!?」

 

「静かに、敵ではない」

 

静かに、小声で行った後に手を離し耳をすませた

直ぐにバタバタと聞こえる足音と話し声が聞こえる

様子から察するに複数いるようだ

 

「クソっ、あの女どこに行きやがった」

 

「落ち着け、この辺なのは間違いねぇ。 探すぞ」

 

声は2人組の男の声だった

どうやらやってきたこの人物を探しているらしい

 

どうやら状況は思った以上に面倒な状況だったらしい

男たちが立ち去るのを身を潜めて待っていた

 

「…行ったか」

 

「あの、ありがとうございます」

 

掠れていて今にも気を失いそうな声で女性は言った

どうやら敵ではないと認識してもらったのだろう

安直ではあるが

 

「私は、S08地区…所属の、M1ガーランドです」

 

「そうか…私は唯の浮浪者だ。 物資を求めて遠くからやってきた」

 

「そう、なのですね…」

 

「とにかくここを離れよう。 歩けるか?」

 

「大丈夫です…歩けます」

 

バックヤードへ向かい奥に身を潜めた

落ち着いたのか大きく「…ふぅ」とため息をつき座り込んでしまった

 

「状況は見てわかるが、何があったんだ?」

 

「…えぇ、それは---」

 

M1ガーランドと名乗る人形は状況を説明し始めた

 

つい3日前、鉄血人形の襲撃があったそうだ

それならば日常茶飯事のようだが同時にE.L.I.Dもやってきたらしい

 

瞬く間に舞台は混乱、暴徒も現れ始め壊滅状態に陥り指揮官の撤退の命令を最後に通信が途絶えたようだ

 

鉄血も時折見るが今では暴徒が暴れまわって人形狩りをしているらしく実際にさっきまで彼女は追われの身だったため実際に人間に襲われると言うのを実感しただろう

 

話が進むにつれ声が弱々しくなって行く

居た堪れない話だろう

人間を守るために作られた結果、自分勝手な理由で守るべき人間に襲われるなど気分のいい話ではない

 

タチが悪いことに、人形は指揮官の許可が降りなければ人間に対して応戦することができない

先制攻撃など以ての外だ

 

指揮官はおそらく死亡したか退避してしまい彼女は逸れ人形と化したのだろう

それの弊害によりセーフティシステムなるものが解除できず逃げ惑っていたわけだ

 

やつらが人形狩りをする理由など単純だ

武器も手に入り、人形だが性欲の捌け口になるのだ

人形は人間の体と遜色なく作りが精巧なためそう言うことも出来てしまうのだ

 

グリフィンの使うI.O.P社の人形は民生から派生したものがほとんどの為、それの影響もあるのだろう

 

そんな話を聞きここでの活動は単純だが簡単には行かなくなってしまった

おそらくS08地区は壊滅しただろう

ここに居座る理由などない

さっさと出て行き、次の安全地帯に行くだけだ

 

「あの、申し上げにくいことなのですが…私も、連れて行ってもらえませんか…?」

 

M1ガーランドはすがる思いで目の前の放浪者を頼ることにした

確かに戦術人形は鉄血やE.L.I.Dには有効だが今の主軸の敵は彼女を狙う強盗団だろう

故に、共に行くのは危険すぎる

 

「すまないが、同行はしたくない」

 

「…」

 

男は拒否を選択した

誰が好き好んで危険に飛び込む真似をするのか

現時点での目標は生き残ることでありリスキーな行動は避けるべきであった

 

「君を助けて指揮官殿から御礼の品でも貰えれば話は別だがね」

 

「…お礼が出来ないわけではなさそうです」

 

「…ん?」

 

M1ガーランドが言うには司令部まで辿り着ければ物資を回収できるかもしれないと言うことだった

大量に備蓄があったため数日では使い切れない量ではあったと言う

 

これはこれで考えものだった

危険だが物資を確保するチャンスではある

先程までは利がなかったが今度は違う

危険が伴うが物資が手に入る

そうなれば話は別だ、その司令部にお邪魔することにした

 

もとより選択肢などない

無ければ集めるか奪うかの違いだ

こればかりは金や時間が解決するものではない、やるしかないのだ

 

「…仕方がない。 賭けだがやるとする」

 

「ありがとう…ございます…!」

 

拳銃をホルスターから抜き薬室を確認した

弾は多くは持っていない

戦闘は絶対に避けるべき試練だった




これ結構続くかも…です

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