雷霆の孫   作:Fice

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忙しいと仕事したくない気持ちが芽生え、忙しくないと仕事したいと言う気持ちが芽生える。つまり今は仕事したくない気持ちで一杯だ。


第58話 精霊の血

 

 

「はぁ……」

 

やってしまった。

リリがピンチだったからつい全力で『インファント・ドラゴン』を倒してしまった。あの後、同フロアにいた冒険者の視線に耐えきれず、僕はリリとヴェルフさんを連れてそそくさとダンジョン探索を切り上げた。

 

全身から疲労感を感じる。【英雄功業(アルケイデス)】のチャージ実行権後の疲労感とは違う、嫌な汗という奴だ。

 

ホームに帰宅後、嫌な汗を拭うべくシャワーを浴び、部屋着に着替えた僕はシャワー室を開けると紫色のソファーの上には既に着替えを終えている神様がいた。

 

「ベル君、疲れてるんだったら休んでいいよ?夕飯の支度はボクがするから」

「いえ、僕が作りますよ?」

「ふふっ、それなら一緒にやろうか。」

 

神様が妥協案として2人で作ることを提案された僕はそれを了承し、神様と2人で夕食の支度をする。

ホームでの家事諸々は基本的に2人でこなしていた。本当は神様の手を(わずら)わせまいと、1人でやろうとしたのだが、「水臭いこと言うなよ、ベル君」と言って結局2人で分担することとなった。その時他にも何か言っていた気がするが小声すぎて聞き取れなかった。

 

「なぁ、ベル君? ちょっと聞いてもいいかい?」

「何ですか?」

 

狭い流し台で野菜を洗っていると、隣でお肉を切っていた神様が質問される。

何だろうか。僕は作業を止めず神様に返答した。

 

「フレイヤ……あーいやっ、銀髪の女神と面識があったりなんか、するかい?」

「銀髪の女神、フレイヤ……様ですか? いえ、会ったことはないと思いますが……それが?」

 

最近の記憶を辿る。

最近になってよく声をかけられる女神様に銀髪の方がいたか考えるも、該当する人物がいなかった。

 

「うん、そうだよね、そうだよなぁ……」

 

その僕の回答に神様はうーん、と手を顎に当てて考え始める。どうしたのだろうか。

最近神会(デナトゥス)が終わった辺りから何か考え込んでる神様をよく見かけており、心配で尋ねても、「何でもないよ」と神様は苦笑しながらそう答える。

 

フレイヤ様……確かこのオラリオ最強のファミリアがフレイヤ・ファミリアだった筈。その神様と何か関係があるのかな?

 

少し気になりはするが、その後は夕飯の支度に集中し、やがて神様と食卓を囲い、雑談を始める。

 

「へ〜、じゃぁその鍛治師(スミス)君はいい子そうじゃないか」

「ええ。凄く気さくで信用出来そうな人です。まぁ、リリとは相性が悪いといか、良いというかですが……」

「はははっ、まぁそんなに人が良くて、男の子、だったら何も問題ないな。ボクも諸手(もろて)を上げて歓迎するよ。ベル君、その子を逃がしちゃダメだぜ?」

 

あれ、なんか性別の部分がやたらと力強かった気がするが……まあ気のせいか。

 

「はい、ヴェルフさんは鍛治師(スミス)ですし、今後とも長く付き合うことになると思いますので。まぁ、パーティとしてはヴェルフさんがLv.2になるまでなのですが……」

「いや、何としてでも捕まえておくんだ。君とサポーター君が2人きりの状態は、非常に危険だからねっ‼︎」

「え、ええ。そうですね?」

 

僕とリリが2人きりだと何か問題があるのだろうか。まぁ、実質単独(ソロ)なのを神様は危惧してるのだろう。

 

「それにしても、ヘファイストスのところの子とパーティを組むなんて……ふふっ、これも君が僕の【ファミリア】に入った何かの縁かな?」

 

神様はそう言ってくすくすと笑う。

確か神様はヘファイストス様と天界にいる時からとても仲が良かったんだっけ。下界では【ファミリア】の主神という手前、以前のように気軽に接することはできにくくなってしまったとか……。まぁ、神様だしそこまで気にしてないと思うが。

 

……そういえば今、神様ってヘファイストス様の【ファミリア】で働いていたんだっけ。それならヴェルフさんについてわかるかな?

 

「神様、聞きたいことがあるのですが、ヴェルフさんの家名である『クロッゾ』について何か情報ってありますか?」

 

リリの話を聞いてから妙に気になっていたそれを神様に尋ねてみた。

何か、【始源の英雄(アルゴノゥト)】に登場する『クロッゾ』という人物と切っては話せないような気がしてならなく、僕は好奇心を抑えきれなかった。

 

「『クロッゾの魔剣』か……。ボクもそれくらいの話なら小耳に挟んだことはあるけど……」

「そうですか……」

 

神様は天界から降りてきて日が浅いと聞くし、無理もないだろう。

結局詳しい情報は聞けなかったか……。

 

「あ、でも『クロッゾ』のことはわからないけど、その鍛治師(スミス)君、ヴェルフ君個人の評判ならわかるよ?」

「流石です、神様!」

「えっへん、どんなもんだいっ!」

 

ボクに褒められた神様は手を腰に当て、その大き過ぎる胸を張る。その姿に可愛らしいなと思いつつも話の続きを(うなが)した。

 

鍛治師(スミス)としての腕前はいいみたいだね。まだ芽が出ていないみたいだけど、ヘファイストスの話の中でよく名前が出てくるから、気に入られていると思うよ?」

「へぇ、ヘファイストス様がヴェルフさんを?」

「うんっ、飲みに行って酔ったはずみにこぼすんだけどね? 誰それは才能がある、この子はすごくもったいなーい、とか」

 

へぇ、そんな話の中でヴェルフさんはよく名前が出るってことは、将来有望なのではないか?

 

「ヘファイストスは目をかけていたよ。評価もしてる、光るものがあるって……ただ、有り余るくらい残念な子って言ってた。感性的に」

 

……あー、うん。ピョンキチか。

まぁ、その……うん。

 

「それで、だ。【ファミリア】の中になると、ヘファイストスの評価とは打って変わって厳しいものになるんだ」

「へぇ、そうなんですか?」

 

ああ、確かにヴェルフさんが自分はハブられているとか言っていたな?何か原因でもあるのかな。感性以外で。

 

「まず結論から言っちゃうと、彼は『魔剣』を打てるらしい」

「えと、さっき話しに出た『クロッゾの魔剣』をですか?」

「そう、彼は正真正銘『クロッゾの魔剣』を作成することができ、その出来は【ファミリア】にある既存の魔剣作品をも(しの)ぐらしい」

 

へぇ、クロッゾさんそんな凄いのを打てるのか。

 

「あれ、でも確か『魔剣』を作るには『鍛治』の発展アビリティが必要なのでは?」

「その辺りのことはボクにもわからないんだけど、とにかく彼は『魔剣』が打てるそうなんだ。ヘファイストスも認めてた」

「……となると」

「ああ、その家名は本物さ。彼には正統の『クロッゾ』の血が流れてる」

 

リリの話だと没落し、『クロッゾの魔剣』は打てなくなった、と言っていたが、何故ヴェルフさんは打てるようになったんだ? 先祖返り? それとも……『スキル』?

……んー。『スキル』の一言で終わらせるのは何か違う気がする。だってそしたら過去の『クロッゾ』の皆が同じ『スキル』を持ってたってこと?……もしかして物語の『クロッゾ』に出てくる『精霊の血』の影響ってことか? ……その結論が正しいなら精霊の子孫は全員同じスキルを持つ、ということになるけど……。

 

うーん、と考え込む僕に神様は話を続ける。

 

「でも、彼は『魔剣』を作らないんだ」

「……作れるのに、ですか?」

「作製しようとしないんだよ、何故か。1度作ってしまえば富と確約されている筈なのに、彼は『魔剣』を打たない。(かたく)なにね」

 

……何か理由があるのかな?

ヴェルフさんが言ってた家名が嫌い、という言葉が脳裏をよぎる。何かその辺り関連しているようだ。

 

「ボクの働いてるお店の中じゃあ『宝の持ち腐れ』なんて嘆かれてる。【ファミリア】の中では『出来損ないのクロッゾ』、なんて誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)されてるらしいんだ」

 

それは恐らく妬み、なのだろう。

容易く上級鍛治師(ハイ・スミス)になれる才能があるのに、あくまで自分の腕で上級鍛治師(ハイ・スミス)になろうとしているクロッゾさんに対して。

 

「腕は確か、だけど訳あり……ってとこかな、君が契約を結んだ鍛治師(スミス)君は」

「……そうですか」

 

訳ありねぇ。

隠している、というよりバツが悪そうな顔を見るからに隠してはいないのだろう。今度それとなく聞いてみようかな……。

 

「まぁ、君のことだ。隠し事の1つや2つ、笑って受け入れるんだろう? ボクは君のそういうところが大好きなんだぜ?」

「ふふっ、ありがとうございます、神様」

 

どこか優しげに、そして頬を染めて言う神様にホッコリしながら感謝を述べる。

 

何故かその後神様が少し不機嫌になった。






ベル・クラネル
 Lv.3
 力 :I0→I15
 耐久:I0→I10
 器用:I0→I16
 俊敏:I0→I22
 魔力:I0→I35

幸運:H
耐異常:I

≪魔法≫
雷霆(ケラヴノス)

付与魔法(エンチャント)
・雷属性。
詠唱式:【目覚めよ(アウェイクン)

竃の聖火(ウェスタ・フローガ)

・持続回復魔法。
・浄化魔法。
・対象指定可能。

詠唱式:【闇を打ち消す篝火よ、魂の炉を灯せ】
解呪式:【決意は満たされた】

≪スキル≫
英雄功業(アルケイデス)
・早熟する。
懸思(おもい)が続く限り効果持続。
懸思(おもい)が続く限り効果向上。
能動的行動(アクティブアクション)に対するチャージ実行権。

闘牛本能(オックス・スレイヤー)
・猛牛系との戦闘時における、全能力の超高補正。

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