戦姫絶唱シンフォギア 三本角の英雄   作:タロ芋

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2話目デーす。



02

 ある昼下がりの午後、2人の少女が綺麗に整った庭園を歩いていく。

 その奥に見えるのは大きな西洋風の舘が見えるが、彼女たちはそこには向かわずにそのすぐ側にぽつんとある小さなガラスドームの扉を開ける。

 

「おっ邪魔しま〜す!」

 

「お邪魔します天道さん」

 

「…… "響" "未来" 幾らなんでも年頃の少女が何処の馬の骨ともしれない男の家に入り浸るのはどうかと思うぞ?」

 

 彼女たちを迎えるのは様々な植物に囲まれた空間にいた平坦だが、呆れ混じりの声色で呟く "天道" と呼ばれた青年だった。

 

「いやあ、近場でお出かけ出来てそれなりに楽しめそうな場所がココしか思いつかなっくて〜」

 

「この前一緒に植えたお花の状態が気になったんです」

 

 2人のセリフに天道は少しだけ空を仰ぎ、2人に視線を戻した。

 

「…… いま水をやろうとしていたところだ。いるのなら手伝え」

 

「「はーい」」

 

 なぜこんなことになったのだろうか? 

 天道総司こと、仮面ライダーコーカサスは感情の見せない瞳で2人の少女を見ながらぼんやりと思う。

 

『それはお主がなんだかんだ言いながらあの娘たちを拒絶していないからではないか?』

 

 すると、天道の頭の中に壮年の渋い男の声が聞こえた。

 

「喧しいぞコーカサス」

 

 2人には見えないよう隠れている彼の背後の木の幹にはコーカサスゼクターが止まっており、相棒の声に天道は不機嫌そうに答えながら同じことを思う。

 

 なぜこんなことになった? ……と

 

 〇

 

 立花響が "彼" 天道総司と出会ったのは些細なきっかけだった。

 いや、彼やほかの人からしたら些細なことではあるが響にとってはとても大きく大切な思い出だった。

 

「ほーら、怖くないよ〜。おいで〜」

 

「んにぃ……」

 

 中学生の頃から立花響は度を越したお人好しであり、その日も響は木の枝に登り降りれなくなった子猫をスカートだと言うのに気にせず慣れた様子でよじ登り子猫を助けようとしていのだ。

 なお、既に時間は親友のモーニングコール虚しく急いでも遅刻確定であり半ば悟りの境地である。

 

「よーし、もう少しもうすこーし」

 

「にゃあ〜……」

 

 子猫を抱き上げようとしたところで、もともとそれほど太くもなかった枝がついに限界を迎えたのかミシミシと嫌な音が鳴る。

 

「あ、やば……」

 

 そう呟いた瞬間、子猫諸共響は落下していた。

 

「わひゃぁぁぁあ!!?」

 

「うむ?」

 

 響は目を瞑り、やってくるであろう衝撃を身構えたがやってきたのはほんのちょびっとの衝撃だけで精々おしりが少し痛んだ程度だった。

 

「あ、あれ?」

 

「にゃー」

 

 恐る恐る目を開け自分の体を確認する。骨折すると思う落下の仕方だったはずなのに自分は地面に座り込むような感じになっており、子猫も無事で奇跡が怒ったのかと思ったが

 

「おい、平気か? 一応衝撃を受け流して座らせたが……」

 

 そんな声が頭の上から聞こえ、見上げてみる訝しげな視線を向けてる和服のような服を着た何故か豆腐の入ったボールを持ったイケメンのお兄さんがいた。

 

「うぇぇえ!? す、すみません! ありがとうございます!!」

 

「ああ、礼には及ばんさ。それくらい元気なら平気そうだな。 ……見たところ近くの中学校の生徒だが学校はどうしたんだ?」

 

 青年は響の姿を見て言うと、彼女はその言葉に自分がやばい状況ということに思い出した。

 だが、子猫を助けられたから満足ではある。

 

「あ! そう言えば遅刻しそうだったんだ! すいませんえっと……」

 

 目の前の青年が響の詰まった声に察したのか、軽く微笑んで(響からしたら無表情)名乗った。

 

「総司。天道総司だ。天の道をゆき総てを司る…… そんな男に憧れる凡夫さ」

 

 軽く皮肉げな自己紹介に、響は

 

「助けてくれてありがとうございます総司さん! 私、立花響っていいます。13歳です!」

 

 そう言ってその場をあとにしようとした響を天道が引き止める。

 

「ちょっと待った、今から走っても間に合わない。 ここであったのも何かの縁だ。俺がバイク送っておこう」

 

「え、でもそんな悪いですよ。それに、バイクなんてどこにも……」

 

「ああ問題ない。ちょうど来た(・・・・・・)

 

「え?」

 

 天道の言葉に響は首をかしげると、鼓膜にバイク特有のエンジン音が聞こえてきた。

 

 音のしてきた方向に首を動かすと、そこには公園の入口のすぐ側には変わったデザインの金色のバイクが止まっていた。

 

「さて早く行くとしよう」

 

「えぇ!? どうやってバイクがあそこに!? というか総司さんボールどこにやったんですか!?」

 

「気にするな。それより早くヘルメットつけてくれ」

 

「んにゃー」

 

 いつの間にか総司はヘルメットを頭に装着し、服の胸元には先程の子猫が収まった状態で響にヘルメットを渡す。

 

「ええ〜……」

 

 何が何だか分からないことに響は苦笑いを浮かべるが、すぐにいつも通り満面の笑みを浮かべ、ヘルメットを頭にかぶせる。

 

「まっ、いっか! お願いします総司さん!」

 

 何気に適応能力が高いのが彼女のいいところである。

 

「ああ。きちんと掴まれよ」

 

「はい!」

 

 その後、響はどうにか朝のHRには間に合ったがバイクで校庭にダイナミック登校したお陰でクラスメイトや親友から総司のことを質問攻めにされ結局担任に怒られることになる。

 

 〇

 

「総司さ〜ん、今日の晩御飯ってなんですか?」

 

「あ、私も気になります天道さん」

 

「スーパーの特売で手に入れた野菜たっぷりの具沢山カレーだ」

 

「わーい! 総司さんのカレー大好きなんですよ私!」

 

「わかったわかった。 わかったからスカートでごろごろするな!」

 

 ガーデニング作業を終え、リビングのソファにねそべる響や机の上に食器を置いていく未来、台所で鍋をかき混ぜながら響を窘める総司。

 

「あ、そう言えば未来〜。 また "仮面ライダー" が活躍したんだって!」

 

「そう言えばココ最近良く話を聞くね。ノイズが増えてるのかな?」

 

「んー、警報がなる前に全部倒しちゃってるからわかんない。 けどやっぱりかっこいいなー! みんなお髭お髭いうけどそれが良くない!」

 

「響ってば本当に仮面ライダー好きだよね」

 

「そりゃあもちろん! 今は "ツヴァイウィング" と "仮面ライダー" がトレンドだからね! もしあったらサイン貰うんだ〜」

 

 雑誌を広げ、でかでかとプリントされたコーカサスの写真を見て特撮を見る子供のような声を上げ響は未来と話を咲かせる。

 

 総司は自分のことを話されているので、なんとも言えない顔(はたから見たら無表情)で鍋をかき混ぜソレを2人から見えない位置でコーカサスゼクターが茶々を入れる。

 

 これがココ最近の日常。

 もともと自分一人で暮らしていたこの館には荷物がほとんどなく、ほぼ空き家みたいな状態だったというのにこの2人がほぼ毎日来るために気がついた時には使わない収納スペースには彼女たちの私物で埋まっていたり、あちこちに女の子らしい小物が置かれていたりする。

 

 挙句にはお泊まりセットもある始末で、親御さんはどうなっているだと総司はいつも思う。(親公認である)

 

「さて、出来た。 2人とも運んでくれ」

 

「わーい、今日も美味しそ〜!」

 

「いい匂い♪」

 

 2人が目を輝かせ、自分と未来の分は普通盛りにし響ように多めにご飯とカレールーを皿に盛り各々自分の席へと運んでいく。

 

「「「いただきます」」」

 

 同時に手を合わせ、合掌して晩御飯を食べていく。

 育ち盛りなため、凄まじい速度で減っていく響のカレーを横目にマイペースに食べていく。

 

「美味ひい〜♪」

 

 響は幸せそうに食べてると、

 

「あ、響ほっぺにご飯粒ついてるよ」

 

「え、ほんと? 未来とって〜」

 

「も〜、仕方ないなぁ」

 

 響の頬に着いたご飯粒をとり、未来はそのまま口へと運ぶ。

 

 優しい日常。

 気がついたら自分の世界に彼女たちがおり、自分は1人じゃなくなっていく。

 だが、

 

「これも悪くないな」

 

「? 何か言いました総司さん」

 

「いいや、なんでもないさ」

 

 出来ることなら、彼女たちはこのまた陽だまりの世界にいて欲しい。

 化け物(こんな自分)でもそれくらいは祈るくらいは許してくれるだろうか、そんなことを思いつつ総司は時間を過ごしていく。




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