頑張って、ついて来て下さい。
え?タグがおかしい?
……気のせいです
「…………ん……」
「……」
「…………かんさん」
「……ん?」
「司令官さん!」
私は目を覚ますとゆっくりと上体を起こす。
「お早う御座います、司令官さん」
「……しれい……かん?」
私は寝起きのまま、周囲を見渡す。
うん。私の部屋だ。
場違いなのは、この娘の様だ。
……ん?でも、この娘、何処かで見た記憶も?
「君は?」
「第6駆逐艦【電】です。忘れちゃいましたか?」
「……ふぇ?いなずまって、あの電?」
「そうなのです。司令官さんが積みゲーしている艦これ改で最初のパートナーになった電なのです」
……あ。このパターンは知っている。
私ーー陰猫(改)が異世界に転移するパターンだ。
そして、その話は基本的に不定期更新になると言うお決まりのパターンでもある。
「司令官さんが遊んでくれなくなってから、鎮守府に変なのが来る様になったのです。
お願いなのです。力を貸して下さい」
「いや、D○Mは知らないけど、P○v○taの艦これでしょ?
私がやらない限り、深海棲艦とか言うのも来ないよね?」
私がそう尋ねると電ちゃんが首を横に振る。
「え!?深海棲艦って放置してると進軍して来るの!?」
「いえ、そんな事はありません。司令官さんが進めてくれないので、鎮守府は逆に平和なのです」
ガクッ
電ちゃんの言葉に私はずっこけそうになる。
とりあえず、最悪の事態ではないらしい。
「違うんなら、なんだい?」
「口では説明出来ないのです。ともかく、一緒に来て下さい」
「いや、その言葉に何度踊らされた事か……私は絶対行かないよ」
「こんなにお願いしてもですか?」
電ちゃんはそう言うと上目遣いで瞳を潤ませて私を見詰める。
くそ。可愛いな。
しかし、なろうで異世界転移した話ーー異世界梱包譚ではロクな目に合ってない上に話が途中だ。
陰猫(改)、紅魔館へ短期バイトをしますはなろうでは完結済みだし、色恋もしたから転移して良かったとは思うが……。
うん。とりあえず、どちらとも言えないかな?
なので、条件を出そう。
「とりあえず、条件次第だね」
「条件、ですか?」
「うん。それさえ、飲んでくれれば、やるよ」
「司令官さんが望むなら電はどんな事でもするのです」
「そう?なら、良いけど……」
「あ、でも、R-18指定じゃないので、Hな事は駄目なのです」
「勿論、そんな事しないよ。私が条件で出すのはもっとコアな部分の事だよ」
「ーーと言うと?」
「一つ、私が戦うとかそんなのは無し。
一つ、私が無理そうだと判断したら、即終了。
一つ、この話は短編扱い」
「え?短編扱いなのですか?」
「だって、私、レベル5もいかない内に辞めちゃったから、深く書けないもん」
「ああ。難易度一番低くしてたの辞めちゃいましたもんね?……それでは仕方ないのです」
グサッ!
電ちゃんの言葉が心を抉って来る。
そりゃあ、確かに至らない提督だとは思うけど。
電ちゃんは無自覚なんだろうけど、これは相当、根に持たれているな。
「それじゃあ、司令官さん。
早速、私達の世界に行くのです」
「はい。それじゃあ、提督が鎮守府に着任しますよっと」
「あ、それは私の台詞なのです!」
そんな事を言いつつ、電ちゃんは手にした巨大な錨を握り絞め直すと私に振り上げる。
「ーーって、うおっと!あぶなっ!」
私は振り下ろされる錨をスレスレのところで避けると電ちゃんから逃げ出す。
ーーが、1Kの部屋に逃げ場など、外へと続く玄関しかない。
「電の本気を見るのです」
「いや、転生じゃなくて転移でしょ!?
本気と書いて、殺る気とか勘弁だかーーぎゃあああああぁぁぁーーっっ!!」
私は電ちゃんが投げ付けた錨の直撃を受け、失神する。
こうして、私はまた異世界転移するのだった。
それにしても、異世界転移とかする度に女の子が鈍器持って主人公を失神させようとするとか、なんてテンプレ?