俺の彼女が120円だった件   作:守田野圭二

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末日(日) アルカス

「ふにゃーお?」

 

「ん……おいでアルカス」

 

「にゃおん」

 

「よしよし。良い子だ」

 

「…………」

 

「………………少し、ボクの話に付き合ってくれるかい?」

 

「にゃおん」

 

「ふふ、ありがとう。キミは優しいね」

 

「…………」

 

「まず最初に確認しておこう。ボクは別に櫻のことを好きでも何でもない」

 

「にゃーん」

 

「バスケの練習試合に付き合ったのは桃ちゃんがいなくなって梅君が心配だったからだし、夢野君と楽しそうに話す櫻を見ても別に何も感じなかったよ」

 

「にゃーん」

 

「強いて言うなら、彼が嫌われないか不安だったかな。別に放っておいても良かったけれど、ボクが思っていた以上に櫻が陶芸部へ顔を出すせいでやたら目についてね」

 

「…………」

 

「だから櫻の恋路が上手くいくよう、少しフォローするようになったんだ。夢野君についての話を聞いたり、たまには褒めて上げたりしてね」

 

「…………」

 

「ただまあ、窯の番は色々と失敗だったかな。飴と鞭の使い分けは難しいよ」

 

「…………」

 

「コスプレをした頃だったかな。櫻が夢野君を呼び捨てにするようになっていて、ひょっとしたら夢野君も櫻のことが好きなんじゃないかと感じ始めたんだ」

 

「にゃおん」

 

「櫻も少しはまともになってきていたし、それならボクがフォローする必要もない。手の掛かる幼馴染の面倒を見るのも終わりだと思っていたよ」

 

「…………」

 

「………………そう思っていた筈なのに、何でだろうね」

 

「ふにゃーお?」

 

「別にボクが追いかける必要はなかったのに、気付けば走っていたんだ」

 

「…………」

 

「確かに櫻は梅君に任せて、ボクは夢野君の方へ行くべきだったのかもしれない。でも知り合いの泣き顔を見て追いかけるのは、別におかしなことじゃないだろう?」

 

「にゃーん」

 

「それにボクの方が事情は把握していたからね。探りを入れて鎌を掛けたら、思っていた通り夢野君関連さ。せっかく参拝に来ていたのに、本当に世話が焼けるよ」

 

「…………」

 

「何より傍迷惑なのは櫻が夢野君の気持ちに応えず、未だにボクのことを気にかけていたことかな。まあ、相生君の件もあったようだけれどね」

 

「…………」

 

「だから下手に勘違いされないよう釘を刺して……刺したのに……親の件でイライラしていたからかな? ネズミースカイの帰りの電車で、ボクは……………」

 

「ふにゃーお?」

 

「…………ボクは、邪魔をしていたんだ。夢野君の寝顔に見惚れていた櫻へメールを送って、茶々を入れた。一体何をしているんだと後悔したよ」

 

「にゃーん」

 

「そうだね…………中途半端にフォローしたボクが間違っていたんだと思う。優しくなんてせずに、中学の頃と同じように接するべきだったんだ」

 

「…………」

 

「櫻と夢野君が付き合うまで、何もすべきじゃなかった……バイトを始めるなんて言うから、てっきりコンビニだと思って安心していたのにね……」

 

「…………」

 

「もう大丈夫だろうと思ってホワイトデーも渡したのに、失敗だったよ。こんなことになるくらいなら、キミが一緒だと知った時点で今日は断るべきだったかな……」

 

「にゃーん」

 

「……………………」

 

「ふにゃーお?」

 

「ボクが怖いのはキミだよ…………キミのせいで変わっていく自分が怖い……」

 

「にゃおん」

 

「…………ボクはキミが嫌いだよ…………」

 

「にゃーん」

 

 

 

 ――プルルルル……プルルルル――

 

 

 

「……もしもし?」

 

「夜にすまないね音穏。また相談したいことがあるんだけれど、少しいいかい?」




ここまで読んでくださりありがとうございます。
引き続き『俺の彼女が120円だった件』の6.5章を楽しんでいただければ幸いです!

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