どうも!
切り所がなかったので、少し短くなってしまいました。
文字数のわりに進行しません。
今回は俗に言う伏線回ですので、いっぱいキーワードが入ってます。
推理が好きな方は、怪しい単語を探してみてください!
では、始めましょう!
ギイィィィィ……パタン
トットットットッ…
「ただいまー…」
分かっていたが、誰もいない。
最近の姉さんは、ずっと忙しそうだ。
そんなことを考える自分に、また嫌気が差す。この気持ちを誰かに癒してもらおうなんて。
昨日の一件、あれから一度も言葉を交わしていない。
お互いが避けていた訳では無い。お互いがお互いを全く意識していなかった。
…私は意識しないフリをした。
こんな喧嘩の仕方は初めてだな。喧嘩よりも低次元だ。
最初の頃は、一菜は何かにつけて、私に突っかかってきた。今思えば、トゲトゲしてた彼女なりの、私へのコミュニケーションだったんだろう。
別に最初からウマが合ったわけじゃない。そもそも私は"女"というものが怖かった。
神奈川に居たころ。女子生徒は、私を騙して、利用して、陰では気持ち悪いとまで言われてたっけ。
イジメではない。けど、確実に私の事を同格の存在として扱っていなかった。
でもこの学校に来て、パオラやパトリツィアと出会って、少しずつ、変われたんだと思う。
本当に感謝してる。今の私があるのは2人がスタート地点だったんだ。
自然に女子を避けてたから、必然、一菜と言葉を交わしたのも何日か経ってから。
しかもその第一声が
「"三浦いちゅっ……"」
「……」
これだった。
今思い出しても、恥ずかしい。けど、笑い話には最適だよね。
いつもピリピリしてた一菜は、その日もずっと仏頂面だった。
…けど、ちょっと口の端を上げてくれて、それが凄く可愛くて。今でも鮮明に思い出せる。
「"ん、んんっ!………みゅっ……"」
「"……ぷふっ!"」
1回目より酷いところで噛んだら、ついに噴き出した。
ごめんね、「んっ、んんっ!」とか仕切り直しといてそれだもん。
でも、私は凄く嬉しかった。一菜の笑顔を見た事が無かったから。
釣られて私も笑ったら、一菜は怒った。
「"な、何を笑うておる。目障りじゃ、用が無いなら消え去れ!"」
目が点になったよ。
タイムスリップしてきたみたいな喋り方。それで、他にも五か国語も話せるんだもんね。
伊・英・独・仏・羅。不思議だよ。
何で?って、日を重ねて、しつこく聞いたら
「"余計な首を突っ込むでない!たわけが!"」
って追い返された。
少し経って、会話をしてくれるようになったからって、調子に乗った私が付けたあだ名が"コンちゃん"。
キツい目と、ポニーテールがキツネの尻尾みたいで、金髪だったもん。
ブチ切れて…あ、そういえばこの時も口利いてくれなかったんだっけ!じゃあ2回目だ。
髪もダークブラウンに染めて来るし。あれって染めても黒くならなかったんだよね。
折角のあだ名は取り消されて、
人生で一番長い時間、土下座したっけなぁ――
本当に不思議ちゃん。でも放っておけなかったんだよ。
色々思い出してると、泣きそうになってきた。我ながら情けない。
~~♪
電話だ。誰だろう。……一菜かな?
「クロ様!?今どちらですの!?」
「えっ…?」
パトリツィアの妹さんの声だ。明らかに焦っている。
走り回った後なのか、荒い呼吸も聞こえるな。
しかも周囲の音から、学校の外みたいだ、車の音が聞こえる。
「…今は部屋にいますが」
「お姉さまが――パトリツィアお姉さまが!」
嫌な予感がする…。嫌な事ってのは大概、続くものだ。
「パトリツィアさんが、どうしたんですか?」
きっと、これも。確変中の確定ボーナス演出に違いない。
「パトリツィアお姉さまが、
ほらやっぱり。確変はまだ、継続するみたいだ。
―――――――――――――――――――――――――
「最後にパトリツィアさんを見たのは?」
「本日は探偵科の授業をお休みになられていたみたいで…」
「つまり私たちと一緒に受けた授業が、最後の目撃地点という事ですか」
私は急いで学校に戻り、大した準備も出来なかった装備で
彼女はおそらく企業間抗争に巻き込まれたのだろうと言うが、私はその線は微妙だと思う。
パトリツィアの実家、フォンターナ家は有力企業であり、男子は生まれず、彼女は3姉妹の長女だ。
狙われる可能性は十分高
最も有力な跡継ぎの立場であり、また優秀で、実績も併せ持っている。
眉目秀麗、才色兼備。そんな彼女が最も得意としていたのが、戦闘技術だった。
元々は私と同じ強襲科の生徒だったらしい。
任務に忠実で、武偵は殺しがタブーだが、人を容赦なく撃てる、そういう裏世界を見た事がある人間。
おそらく入学前からやっていた口で、親が関わっていないとは考えにくい。
だがその実力も、企業間抗争に巻き込まれ、利き手側の左肩を撃たれたことでほとんどを失った。
その後は探偵科に転科しており、性格も今のような感じに変わったと聞いている。
その上、末妹が生まれ、その妹というのも全ての面に対して高い実力があるらしい。
パトリツィアは、すでに跡継ぎは末妹に決まっている、とまで言っていた。
だから、彼女を狙うのはお門違いじゃないだろうか。
「何か心当たりはあるんですか?」
「ワタクシは、あの事件がまだ続いていると思いますの」
「ですが、もう彼女を狙う理由もないでしょう?」
「お姉さまの影響力は未だに残されておりますわ。まだ実権を握ることが可能な存在なのです」
「跡継ぎは末妹で確定だと聞いていましたが」
「お姉さまがその気でなくとも、周囲が勝手に祭り上げます。妹は……少し壊れているの。昔のお姉さまより…」
「その復権が原因…と」
「はい、おそらくは」
何も証拠がない。帰ってしまった生徒が大半の中で、今足りないのは足だ。
人を集めよう。時間が経つと、余計に捜査は厳しくなる。
電話を掛けようとして、手が止まった。
「…アリーシャさん、他には誰に声を掛けているんですか?」
「クロ様の他には、情報科のエマ様と通信科のクラーラ様、車輛科のダンテ様と衛生科のミラ様、諜報科のヒナ様と探偵科のルーカ様です」
さすがに豪華なメンバーだ、中学1年から高校1年まで。優秀な人材を、しかもこの状況に理想的な技能を持つ者を選んでいる。
尖ったメンツなのはアレだが、任務の成功に貪欲なメンバーだ、信頼できるな。
クラーラに連絡が行けばガイアにも繋がるように、自身が縦の軸となることで、横の軸でも追加人員を期待できる。
そのガイアが苦手とする空の運転を、ダンテ先輩が担うように、徐々に網目状の枠を作り出していく。
(さすがにこういうのには慣れてるな)
「では、私の助手も呼んでしまいますね」
「お願いしますわ。イチナ様の体力は、頼りになりますもの」
「……」
電話を、かける……
カチャ
「も」
「もしもしを縮めないで下さい、
「
「何でもありません、仕事です。来られそうなら
「?分かったー」
ガチャン
――私は腰抜けだ
でも、今大事なのは早期解決。チーム内で衝突しかねない相手は避けなければならない。
そうだ、セオリー通りだ。
「それで、強襲科の私を呼んだのは、如何な理由で?」
「それは、クロ様が一番お姉さまの事を理解していらっしゃるからですわ」
「買い被りです。現に今、私は何の情報も持っていませんから」
「たまには
「
良いことを思い出した。
経緯は夢のように曖昧だが、私には
表向きは違うんだけど、相互協力のような関係だと思えばいい。
昨日手紙をもらって、夜に会いに行きますとだけ書いてあったけど、正直それどころじゃなくて、向こうが現れるまで忘れてた。
エサとなる情報が圧倒的に欠如した状況で、特定の情報を釣り上げる任務。
初めての仕事っぷりを、見せてもらうとしよう。
~~~♪
~~~♪
あれ?出ないな?
~♪ カチャ
「お待たせしました、遠山さん。今、雑務を片付けていましたので。どうしましたか?」
出た。ヴィオラだ。
「少し情報収集を手伝ってもらいたくて」
「私はあなた方の戦妹です。敬語は不要ですよ」
「他人行儀は癖みたいなものですから」
「…そうですか。それならば、構いません。それで、仕事内容を」
「行方不明者の捜索です」
「名前を」
「報酬の話は後でいいんですか?」
「はい、時間がある時に」
「ありがとう。…名前はパトリツィア・フォンターナ。ローマ武…」
「大丈夫です。次に発生時間を」
「今日の15:00以降から。探偵科の授業に出席をしていなかったそうです」
ガサゴソ…ピーッ、ピピッ!…(チッ
……なんだ?電話の向こうが騒がしくなってきたぞ?
「クロさん、くされタンクの残り容量が少ないので、少しお借りしますね?」
ん?今なんか、変な事言わなかった?
…まあいいか、借りるって何をだろ。
「借りるって何のことでしょうか?」
「少しだけ算数のお手伝いを。大丈夫です無理はさせませんから」
(算数?)
算数は得意だ。なんたって30窓あるからね、どんと来いや!
カッコいい所を見せようとスイッチをONにする。これで、どんな問題だって即答できるはずだ。
「開始しますよ?初めてはちょっとだけ、痛いかもしれません」
「えっ?痛い?」
「少しだけ、倦怠感を伴います。戦闘に入る際は事前にお知らせください」
「えっ?えっ?倦怠感?」
言っていることが分からないが、質問は終了なのだろうか?
名前と発生時間しか説明してないんだけど。
バチィッ!
ほんとに一瞬、頭に刺激があった。瞬間的にちょっとだけ仰け反ってしまった。
さらに続けて、左頬がだんだん熱くなってくる。その熱が顔中に、次に体に広がって、厚化粧と着物を着付けた様な重さを感じる。
(何が起こっているんだろう…)
算数の問題とやらは来ないし、すっかり黙ってしまった電話先は、さっきからずっと騒々しい。
一体どこにいるんだ?何してるんだ?
カタカタカタカタって音が聞こえる。―これはキーボードの打鍵音。
パラパラ、シャッ!―これは紙をめくる音。
イタリア語で会話している人、フランス語で会話している人、英語で会話している人。
どこかのスタジオにでもいるのだろうか?
大体、彼女が何科なのかも知らない。勝手に情報科だと思っていたが。
今は情報科棟にいるのかもしれないな、雑務とやらで。
パチッ!パチッ!
(なんだ?)
頭の片隅に、妙なイメージが流れ込んでいる。チラチラして鬱陶しい。
映っているものを確認しようと窓枠の1枚に近づくが…
(ま、窓枠が…1枚丸々占領されてる…!)
流れ込む、怒涛の2進数ラッシュ。それが指し示す所は分からない。
あまりにも早い切り替わりに、見ていると目が回る…。とても人間が意識して処理できそうな代物ではないな。
これは彼女の仕業なのか?
とりあえず、今は時間が惜しい。電話はつないだまま、チュラと合流しておこう。
「アリーシャ。私はチュラと合流後、作戦を開始します。
「っ!当て…ですね、分かりましたわ。どうか、お姉さまをよろしくお願い致します!」
私を見る目が変わった。スイッチのON/OFFって分かり易いのかな?
中庭で戦妹の到着を待つ。
突然な電話にもかかわらず、一言で引き受けてくれた。
私は人間関係に恵まれているな、と改めて思う。変人が多いけど。
ぴょいーん、ぴょいーん
そんな効果音が似合いそうな、独特な走り方でチュラが走ってくる。
やっぱり変人だ。
その格好はローマ武偵中の制服に足首までのレギンス、パオラから購入した黒い手袋を着用している。
ベージュ掛かったオレンジゴールドの髪と、暗黄色の瞳は日が沈み始めた屋外でも、すぐに見つけられた。
「
「突然の呼び出し、すみません。緊急事態です」
「でも表なんでしょー?」
「はい、多くの協力者がいますので。チュラの電話をお借りしますよ?」
「?いいよー」
チュラから電話を借り、クラーラに連絡を入れる。
彼女はワンコールで出て、
「通信機をお届けします」
それだけ言って電話を切ってしまった。
「"クロ殿、クラーラ殿からお届け物でござる"」
突然後ろに気配が!
…とでも言うと思いましたか?
私の嗅覚は、結構優秀なんです。ヘリの音も聞こえてますしね。
(匂いが空から来たってことは…乗ってきたのか、あれに)
上空には一機のヘリコプターがホバリング飛行をしている。
"ベル206Lロングレンジャー"。民間向けの小型ヘリ…ダンテ先輩だ。
あれ以上、降下してこないってことは、すぐ次の目的地に移動を開始するつもりなのだろう。
(もう、動いてるのか。仕事人の集まりは進行が本当に早い。捜索と同時に協力者を探してるんだな)
協力者を募れば、その分だけ全体としての
既に通信科のクラーラ、車輛科のダンテ先輩、諜報科の陽菜が動いてしまっている。
それほど
「"ありがとうございます、陽菜。相変わらず気配を感じませんね、あなたは"」
「"お褒めに預かり、光栄にござる。…では、某はこれにて!"」
「"あ、でも書面ならまだしも口頭で"殿"は――"」
ボフンッ!という音と共に煙の中に消えていく。
……うん、視界からは消えた。たぶん今頃、上の方に吊られて行ってるんだろうな。
あまり話したことはないけど、一菜とは違った不思議ちゃんだよ。イタリア語も苦手みたいだし。英語もカンペ持ってギリギリ通じるレベル。
そういえば、あの子通信機付けて無かったよね?なんでだろ。
『クロさん、聞こえますか?』
クラーラの声が、通信機から聞こえてくる。
「はい、聞こえています」
『
「あ、はい」
これはクラーラのマニュアル説明だ。何度も聞いているが、最初に必ず説明を挟む。
敢えて聞く必要もないので、今の内にチュラにもマイクとイヤホンを渡しておいた。
『――以上になります』
説明が終わったみたいだな。
「了解しました。何か情報は入ってきましたか?」
『まだ、有力なものはありませんが、ダンテさんの班が怪しい動きをする車列を発見している模様です』
「怪しい動き?」
『5台ほどが隊列を組むように、ローマ市内から移動を開始しています。目的地は特定できませんが、その追跡をルーカさんの班が担当し、ダンテさんの班は引き続き上空捜査を行っています』
「車種なんかは特定できますか?」
『マセラティ3200GT。ですがパーツを弄っているようです。暗いため色の情報は曖昧ですが、黒や濃紺のような遅い時間に識別しにくい色、ですね』
足の特定はどうにかなりそうだ。……ちょっと聞きたいことがある。
「通信機は何名の方に渡っていますか?」
『現在、クロさん達も含めて、9名。予定では後5名ほどに繋がります』
「私の方に各班の情報をダイレクトに接続することは可能ですか?」
『……可能、ではありますが推奨はしません。いくらあなたでも、同時に10人近くの情報が錯綜するのは難しいでしょう?』
「出来るのであればお願いします。
(確実じゃないけど、この手が使えれば…)
『……分かりました。少し待ってください。設定は私の戦妹が担当します』
とりあえずは対応してくれそうだ。
そうなるとこちらも準備をしておかなければ。
ずっとカタカタパラパラ言っている、自分の電話の先に聞くことがある。
「ヴィオラ、聞こえてますか?」
「はい、聞こえています。どうしましたか?」
紙をめくる音は止まったな。ヴィオラは何かの資料を読んでいたのだろうか、いまだに後ろでは打鍵音と話し声が続いている。
「この二進数のようなものはあなたの仕業ですか?」
「――っ!」
言葉に詰まったな。
「――見えるんですか?私の……
「見えるのは二進数だけだけど、それは今はいい。あなたの力は相互的に情報共有できるんですか?」
「……この情報は安くないですよ?答えは可能です。ただし、今のように、文字や記号、絵や音楽といった簡易的な情報素子の遣り取りは可能ですが、複雑な記憶素子までは踏み込めません」
「つまり?」
「クロさんが今見ている光景を暗号化して受け取り、私が時間差で得ることは可能ですが、過去にあなたが見た景色は、そもそも脳から見つけ出すことも出来ません」
「思考を読み取ったりは…」
「人間が刺激として得るものは、その元となるものがあります。怪我をして痛いとか、夜景が綺麗とか、ケーキが甘いとか。しかし人間の思考は脳の中で生み出され、処理され、保管される。暗号化に重要なのは誰にでも容易に想像できること。人の考えることなど千差万別で、知り得ないものなのです」
「なーるほど」
これは大きな情報だ。かなり大きな見返りを要求されそうだよ?私!
「見返りは今度の
「楽しみにしていますね!それで何をさせるつもりですか?」
「これから私が受ける
「!」
「これから私の脳には、10人以上の様々な情報が入ってきます。私はそれを捌き、記憶し、思い出すことは出来るんですが、情報から情報を得ることが出来ません。得た情報の中から推理するしかないんです」
「私なら、その情報をエサに、延長線を釣り上げられると」
「そういう事です」
これは我ながら、名案だと思う。限られた情報から次々と情報を得られれば、捜査の進行は飛躍的に早くなるだろう。
後は彼女が応じてくれるかどうか…
「1.8倍」
「え?」
「クロさんの脳がトンでも性能なのは驚きですが、私は違います。通常の人間と変わりません。そんなに情報を与えられても、パンクしてしまいます」
「そ、そっか」
「なので、あなたの脳に
「そんなことも出来るの!?」
「ただし、常に情報を受け付ける分の容量と、再送信された情報を保管する容量、情報処理の容量も今より多く必要になります」
「ん?う、うん」
「クロさんが情報を扱うのに必要な容量は約1.8倍まで大きくなりますので、10人の情報は18人の情報を捌くのと同じ性能が必要と考えてください」
……とりあえず、頭疲れるよってことかな?
「18人は厳しいかなー…?」
「それなら人数を減らしてください。あとここからが重要です!」
「まだあるの!?」
「情報の送信容量の大きさです」
「う、うん」
「同時に送れる容量には限界があって、その間にクロさんの刺激が新鮮でなくなれば、当然私に送ることは出来なくなります」
「あー!それなら大丈夫です。
「アテ?……分かりました。今から増設します」
「お願いしますね」
「それに伴い、激痛と眩暈や失禁等の恐れがありますので、先に済ませておいてくださいね?」
「ええっ!!?激痛!?聞いてない!聞いてないよ!?」
返事がない、有無は言わせないようだ。
しかも、最後笑ってなかった?この子…Sっ気があるのかも……
「チュラ、私は行くところがあります。あなたにも頼みたいことが…」
「分かってるよ
「さすが!私のカワイイ戦妹です!あなたが最後の
「えっへーん!もっと頼ってもいーんだよー?」
音質の悪い音響記録媒体を用いるよりも彼女の方が確実に覚えてくれる、車のエンジン音まで。そのモノマネが驚く程にうまいのだ。
素の戦闘はからっきしだけど、多芸な子だよね。強襲科なのに。
「いつも頼りにしてますよ」
私と、
この3人、情報戦闘に強いぞ?
「
恥ずかしいからやめて!向こうのSッ子が見てるかもしれないから!笑う様子が思い浮かんじゃうから!
決まらないなぁ~、もうっ!
―――――――――――――――――――――――――
「カナ先輩、あの汚らわしい存在の潜伏先が分かりました。すでにフランスを離れ、ルーマニアへと向かっているようですね」
「元いた場所に帰った、ということかしら」
「それはおかしな話ですよ。あの地はそこまで産出量が多くなかったはず…バチカン教会の輸入先リストにも記録がないんです」
「無いわけではないのでしょう?」
「それはそうですが…それならフランスまで出て来た理由が説明できません」
「そうね……」
「そもそも、違う目的で来ていた。というのはどう?」
「あいつら害虫共は、コソコソ這い回るのが得意な、腐った脳みそを持つ腐敗物の様ですが、間抜けではありません」
「この移動も、罠。と言いたいのかしら」
「その可能性も大いにあるかと…」
「そもそも、なぜこのタイミングで動くのかも、理解に苦しみます」
「その話はやめましょう」
「カナ先輩……どうしても、なのですか?」
「……ええ」
「カナ先輩………私はカナ先輩は大切な方で、信じられる仲間だと思っています」
「ええ…ありがとう」
「でも、教会の仲間の事も信じています」
「分かってるわ」
「………カナ先輩は、誰に味方するつもりなんですか?」
「………そうね…」
「私の相棒は、あの子しかいない。私はあの子の味方よ」
「それならあの子も一緒に…」
「それを決めるのは私じゃない」
「――それぞれが賜物を受けているのですから、神のさまざまな恵みの良い管理者として、その賜物を用いて、互いに仕え合いなさい」
「新約聖書。ペテロ様のお言葉ですね…」
「あの子はきっとやり遂げられる。あの子はもう動き出したのよ、多くの宝に恵まれて。だから、あの子がどんな答えを出したとしても私の大義を持って支えると誓うわ」
「たとえ…それが箱庭の全てを敵に回す事になっても…ですか?」
「私は自分を信じている、義を通すとはそういう事。他の有象無象なんて関係ないの」
「…………」
「あなたも覚えておきなさい?自分を信じるというのは、他人を信じるよりもずっと難しいのよ」
クロガネノアミカ、読んでいただきありがとうございました。
事件発生!今回は違うチームで作戦実行です。
どうでしょうか、先の展開は読めてきましたか?
箱庭は何回か出てきていますが、重要な単語です。
”題名”すらも疑って掛かって頂けたのなら、こちらも参りましたと言わざるを得ません。
次回は少し遅れるかもしれません。遅れないかもしれません。