忙しくて投稿できませんでした<(_ _)>
僕の感はよく当たる。
転生してからのことだが、その直感は僕自身が求めるものについて、そして僕自身にとって不利益が起こる場合に事前に知らせる。
だからこそ、防衛任務も終えたので帰ろうとした入口までの最短ルートを取り消して別の道で行こうと─────
「よう輝耀。ぼんち揚げ食う?」
───したその道を先回りした男がニヤついた笑みを隠せないで菓子の袋を差し出していた。
「………………何の用ですか迅さん」
「いつにも増して間が空いてるなぁ。そんなに俺と会うのが嫌?」
「…僕のサイドエフェクトが言ってます。絶対に面倒事に巻き込まれる、と」
「俺は面倒事ほいほいじゃねーよ」
うっそだー。
迅悠一
ボーダー初期から所属している古参の隊員で、貴重なブラックトリガーを使用するS級だ。
自称エリートだが、それは間違いなどでは微塵もない。
迅さんのサイドエフェクトは『未来予知』という、詳しくは知らないが、漫画などで最強部類のキャラが持ちそうな能力だ。
戦闘面では味方であることが頼りになるが、普段なら話は別。
本人は首を横に振るが、この人は残業を好まない僕に面倒事を毎度持ってくるのだ。
「…僕は帰ってだらけたいんですが」
「おっと、それはもう無理な話だぜ輝耀。何故なら俺が30秒お前を足止めしたからな」
ドヤ顔を見せる迅さん。
いつもの如く言葉巧みに僕を乗せて厄介事に突っ込ませるのに。
そこで僕は考え事をしてはいけなかったのだ。
「───…っ!?まさか………!」
厄介事に突っ込むのではなく、厄介事がやって来ると気づいた時には既に遅かった。
直感が警報を鳴らし、聴覚が遠くから小走りで駆け寄ってくる足音を捉え、視覚が曲がり角から出てきた人物をスローモーションの如く認知し、嗅覚が女子特有の良いにおいを──と、最後のは不必要か。痴漢と同じようになってしまう。
まぁ、嗅覚と触覚を除く感覚だけでも、これから起こるだろう状況は悠々と判断できる。
「あっ!そこにいたの輝耀くん!ずっと探してたんだよっ!」
「…要件があったのか?綾辻」
僅かに頬を上気させ、近寄ってくるのはボーダーのオペレーター、綾辻遥だった。
大規模侵攻の際に知り合って早二年。
「まさかもう帰るつもりだったの?言ったじゃん!今日は私が書類書き終わるまで待っていてって」
「…いや、別に────」
「晩御飯作らないよ?」
「──食堂で寝てます」
基本的にずぼらな一人暮らしを行っている僕は、食生活は即席麺かレトルトで終わらせる。
少し前にそれがバレて、なんと綾辻が料理を作るとなったのだ。
前世で女性に全くと言っていいほど関わりがなかった僕が女性を自分の部屋に入れることに抵抗は、前まであった。
だが、最近思う。料理してくれるならいっか、と。
怠惰が色欲に完全に勝り切った瞬間だった。
故に、楽するために料理を作って貰えるなら、少しばかり待つことにする。
……未だにニヤついている迅さんには解せないが。
「…何ですか迅さん。言いたいことがあるなら言ってくださいよ」
「いやー青春だなーって思ってな。お前の未来はいつ見ても面白い。尻に敷かれてしかないけど」
しかもなんか失礼なこと言われた。
これ以上追及しても状況が更に悪くなると直感が諭すので無視をする。
綾辻は迅さんの話を聞いてなかったのか、別の話題を話し始めていた。
「食堂だと邪魔になるからうちの隊室来たら?」
「…唯のB級隊員が居座っていいのかい?」
「いやいや。輝耀くんが普通のB級ならA級部隊もB級になるからね?」
えー、そう?
神様のおかげで身体能力が上昇している僕を普通に切ったり撃ったりする人達の方がヤバいでしょ。
確かに食堂に居座っては邪魔なだけなので、今回は綾辻が属するA級部隊の嵐山隊の作戦室にお邪魔することになった。
「輝耀くんはA級に上がりたいなーって思わないの?」
「…固定給料に目を惹かれたけど仕事量増えるのは嫌だ」
「だからって隊に属してないのも流石にやめた方がいいぞ?忍田さんも上司命令使う直前だったからな」
「…ナチュラルに着いてこないでください迅さん」
「えー。いいじゃんか別に。お前の戦闘見るくらい」
綾辻の質問だが、僕はチームランク戦なる残業をしたくないため部隊を作っていない。
既存の部隊に入るとしても、完成しているチームワークを崩しそうなので、結局僕はどの部隊にも属していない。
フリーなのである。
そんな話に乗ってきた迅さん。綾辻も苦笑いしているが文句を言わないため、付いてくることが確定らしい。
しかし、なんで戦闘?
一休みしていくだけで?
***
「輝耀先輩。模擬戦してください」
B級以上の部隊に与えられる完全個人空間の隊室でゆっくりさせてもらおうとした矢先、これである。
既にトリガーを起動させて、真剣な表情で見てくるのは木虎藍。
嵐山隊のエースだ。
そして、よく僕を模擬戦に誘う一人である。
「…いや、今日は────」
「《先輩、今日こそ模擬戦してください》《…いや、今日は色々と予定に予定が、ね?》《じゃあ次、絶対にお願いします》《…あー、わかったよ。次だね、次》───これを聞いて何かご感想は?」
悲報。後輩が会話を録音していたことについて。
前世で死ぬ前、パワハラやセクハラが職場で問題視されていたため、何かあった時のために携帯が許可されていたのだが……。
信頼されてなかったのね。残念、僕。
「…それを、どうするつもりだ木虎」
「双葉ちゃんや緑川くん辺りに聞かせましょうか。後輩との約束を簡単に破る先輩の姿を」
膝から崩れる僕を得意げに見下す木虎。
やめて、これ以上僕を慕ってくれる後輩の数を減らさないで!
そういうことで、嵐山隊の仮訓練場を用意されたのだが……。
木虎はずっと真面目に戦ってくださいと言うんだが、別に、僕は仕事は最後までこなす。
それは社畜云々関係なく、仕事をする身として当然である。
残業は除くけど。
『先輩。もし手を抜いたら……分かってますよね?』
「…木虎よ。僕が先輩だから下手に言えないが、最近辛辣すぎやしないか?いくら黒江に塩対応されるのに傷ついているからと──」
『傷ついてません』
「…いや、ショックでフリーズして──」
『ません。お話はもう結構です。首を切られる準備、していてください』
先輩への逆パワハラを飛び越えて殺人予告とは……。まぁ、ボーダーなら事実首が飛ばされることが多々あるので問題発言にはならないけど。
冷たい言葉を受けて若干ショックを受けた僕は通信をオペレーターに変える。
「…綾辻、今日の木虎、不機嫌?」
『うーん。喜んでるんじゃないかな?』
しかし、質問に対する綾辻の回答に更に頭を悩ませる。
えぇ、あれの何処が喜んでるんですか……最近の子はやっぱ違いますね。歳は同じだが人生経験でいえばおじさんの僕にはわかりません。
これがジェネレーションギャップかと一人頷いていると、設備の操作が完了したようだ。
トリガーを起動させてトリオン体に変換させ、転送完了まで目を閉じる。
綾辻の転送完了の合図を聞いて目を開けると、そこは市街地Aの街並みだった。
『それじゃあ、二人とも戦闘開始!』
綾辻の号令と共に、遠くから強く地面を蹴った音が聞こえた。
相手は木虎一人。
直感と聴覚から伝わる情報を頼りに木虎が動く方向を随時目で追いながら、考え事を始めよう。
現在、僕のトリガーは『
壮大なエフェクトが必要な宝具の展開真似などできない。
本来なら流れ的に『
だから今回はパスにして、アルトリア顔で誰か良さげな人いないかと、罠を設置しまくっている木虎を眺めながら考えていた。
『何だ輝耀。お前から動かないのか?』
「…まだ居たんですか迅さん」
『こふっ!他人には平気で言うのかよ』
当たり前じゃないですか。貴方は先輩でも厄介事を僕に与えたんだし。
吐血を吐くように苦渋を洩らす迅さんは───ん?吐血?
「…ちょうどいい。アレなら孤月だけで十分だ」
動かない僕を囲うようにして張られたワイヤーのトリガーであるスパイダーがあることを無視して、ある一点のみに集中する。
必要なのは相手を翻弄させる速さと連続で孤月を振るう器用さだ。
出身は同じ日本。
神様からの身体とトリオン体である僕なら───可能だ。
孤月の刃先を目線と同じ方向に向け、両手で柄を握り、刀全体を右肩より上に、地面と平行になるように構える。
「──…一歩音超え」
最初の一歩で、遠くを見張るためにいた高めの建物から高速で降りる。
その際にコンクリートが抉れるが気にしない。
踏み出した足とは反対の足が地面に到達する。
「──…二歩無間」
大量に設置されたスパイダーだが、大掛かりな設置ゆえにでてしまった綻びを直感で見つけ、その中に突入する。
その近くにはタイミングを合わせたため、木虎が居た。
しかし、当の本人はいつの間にか僕が建物の屋上から消えていたことに驚き、僕との距離がもう埋められていることに気づいていない。
拳銃を戻して、スコーピオンを独自に改良した形態で手にした木虎に向けて口を開く。
「──…三歩絶刀!」
ギリギリで声を受け取った木虎の、反応できていない身体より先に、視線が交差する。
反射的にシールドを貼ろうと木虎は動くが、その時には既に僕が三歩目を踏み切っている時だ。
故に守る術は何もない。
そんな木虎に、気分が高揚して必要以上に声を張りながら、幕末にその名を轟かせた真選組一番隊隊長である沖田総司(女性だった)の宝具を叫んだ。
「──…『
僕が四歩目を地面に着けた時には、全てを斬っていた。
ほぼ同時に刻まれた斬撃は木虎のトリオン体を瞬く間に切り刻み、周囲のスパイダーすら無残に散り落ちてゆく。
防ぐ以前に、視覚出来なかったことに驚愕を隠せない表情の木虎は青白い光に包まれて
『いっ、1-0。阿宮 有利です』
たどたどしくカウントを報告する綾辻。
そっか、今回は十本勝負だった。めんどーだなー、結局綾辻がオペレーターするから書類も片付かないし。
ならせっかくだし、もう一個、『無明三段突き擬』が出来たんだからアレもできないかなぁ?
***
輝耀が次の宝具擬の再現をワクワクしながら考えている中、オペレーション室で二人の試合を見ていた綾辻と迅は未だに硬直したままだった。
「じ、迅さん……輝耀くんって今、グラスホッパーっていれてませんよね…?」
「あぁ。孤月とバイパー以外はテキトーに決めてるらしいが、今日は入れてないのは確認している」
「………明らかにグラスホッパーを使ってもできない動きでしたよね」
「………そうだな」
グラスホッパーは触れた物体を跳ね返すことが可能なオプショントリガーの一つだ。
A級隊員の攻撃手にもグラスホッパーを使った高速戦闘を行う猛者は多く居る。
A級部隊のオペレーターとして、何度もその使用を見てきた綾辻や、実力派エリートの迅。
しかし、その二人でも、先程の動きはグラスホッパーを使った、それ以上の動きに見えていた。
「いつの間にか消えてたら何回か見えて、そして何回も斬ってます、よね?」
「俺も見えなかったからわからないが、あの短時間で五回以上は斬っていたな」
玉狛支部の木崎レイジや、A級三位の風間隊の風間蒼也がよく身体能力の高さがトリオン体に影響すると論じていた。
つまり─────
「………強くて、かっこいい…!」
本人は思ってもいないが、
孤月の刃を指で沿って損傷を確かめる輝耀の様子を頬を赤く染めてガン見している綾辻。ボソッと声を漏らしたことに気づいていない彼女にあたたかい目を向けて、迅は改めて輝耀の異常性を確認した。
任務は片づけるが、本人が残業と言って中々行わない模擬戦等をしないことや、古参隊員なのに部隊を作らない入らない輝耀はある意味問題児だが、それを覆すような戦闘力がある。
実際、迅がブラックトリガーを使ってサイドエフェクトもフル活用して相手にしても、輝耀はその上を行った。
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B級
○
性別:男
年齢:17歲
サイドエフェクト:全感覚超強化
総合一位 オールラウンダー
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C級隊員にも伝わっている情報を思い返すが、まさにボーダー最強だと知らしめている。
……未だにB級なのと模擬戦を全くしないので、何も知らないC級隊員は悪い方向で噂を流しているため、綾辻が録画しているこの戦闘を見せれば黙るだろう。
──もし、C級隊員に出回っている輝耀についての噂が
そんな未来を阻止するのと、声を漏らしていたことを指摘して真っ赤になる綾辻を弄るのと、輝耀の戦闘を見るために手を回した迅にとっては大収穫である。
しかし、残り九試合ある。
「さぁて、木虎ちゃんは何処まで喰らいつくか、だな」
市街地Aに戻った木虎と、アイビスを取り出してまた消した輝耀を見て、迅は楽しそうに暗躍する。
今更ですが、オリ主の名前はFate/stay nightの主人公と母音は同じにしただけです(∵`)
ちゃんとしたプロフィールは、も少し進んだら書きます<(_ _)>
高評価を是非、お願いします<(_ _)>
リメイク予定ですがこっちの更新も必要?
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必要!
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いらない!