死を視る剣士と世界最強   作:遊霧 粋蓮
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開幕どうでもいいことその①。最近、「聖女の魔力は万能です」にはまりました。

開幕どうでもいいことその②。アニメ、もうちょっとさぁ。


第1章 絶望迷宮オルクス
第3節 異世界


 光が収まると、そこはさっきまでの教室ではなく白い石造りの巨大な広間だった。彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂と呼ばれてもおかしくない雰囲気の広間だった。

 オレ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだ。

 

「兄さん、苦しいです」

「あ、悪い」

 

 抱き締めていた天音を離して周囲を見渡すと、クラスメイト達がいた。どうやら、あの時教室にいた全員がこの状況に巻き込まれてしまったらしい。

 さらにその台座の前に三十人近い人々が、オレ達の乗っている台座の前に、まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好でいた。

 そして、その内で恐らくリーダーと思われる七十代くらいの老人が進み出て来ると、深みのある落ち着いた声音でオレ達に話しかけて来た。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せる。そして、こんな場所では落ち着くこともできないだろうと、いくつもの長テーブルと椅子が置かれた別の広間へとオレ達を案内する。

 この部屋も例に漏れず煌びやかな作りで、素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。晩餐会などをする場所なのだろうか。

 上座に近い方に愛子先生と天之河達が座り、後はその取り巻き順に適当に座っていく中、オレ、天音、ハジメ、香織という形で最後方に座る。

 イシュタルが事情を説明すると告げたことや、天之河が落ち着かせたからか、ここに来るまで誰も大して騒がなかった。

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながら美女・美少女のメイド達が入って来た。

 こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在なのか、クラス男子の大半がメイド達を凝視していた。そしてそれを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していた。

 ハジメもメイドを凝視しそうになるが、天音に左腕を、香織に右腕をそれぞれつねられ、視線を正面に固定した。

 そして、全員に飲み物が行き渡るのを確認したイシュタルが話し始める。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そう言って始まったイシュタルの話を要約するとこうだ。

 

・この世界はトータスと呼ばれていて、大きく分けて人間族、魔人族、亜人族の三種族がいる。人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きている。

・人間族と魔人族が何百年も戦争を続けており、魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしい。

・最近になって、魔人族が魔物を使役し始め、人間族側の“数”のアドバンテージが崩れた。このままでは、人間族は滅びを迎える危険性がある。

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。この世界よりも上位の世界の人間であるあなた方は、この世界の人間よりも優れた力を有しているのです」

 

 そこで一度言葉を切ったイシュタルは、「神託で伝えられた受け売りですがな」と表情を崩しながら言葉を続けた。

 

「あなた方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 イシュタルはどこか恍惚とした気持ち悪い表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 すると、愛子先生が突然立ち上がり猛然と抗議する。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がった。が、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々があの場にいたのは、単に勇者様方を出迎える為と、エヒト様に祈りを捧げるため。人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 パニックになる生徒達。

 そんな中オレは、イシュタルのいうエヒトがどうも信用ならない。異世界に干渉できる程の力があるなら、なぜその力をこの世界の救済に使わない。勇者そのものをこの世界に誕生させることもできたはずだ。

 誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。おおかた、「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのだろう。

 未だパニックが収まらない中、天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。天之河は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 ギュッと握り拳を作り、そう宣言する天之河。

 当然のように彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮し、絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めた。天之河を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 いつものメンバーが天之河に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生がオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが天之河が作った流れの前では無力だった。

 

「兄さんはどうするの?」

「情報が無さすぎて判断できない。色々と不安だが、今のオレ達にはこの国の加護が必要だ」

「そう……だね……」

 

 オレの答えに俯く天音。それを見て、ハジメと香織、それから雫が不安そうな表情をしていたが、天之河は気づくことはなかった。

 最終的に、全員で戦争に参加することになった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう。現実逃避からの判断だ、すぐに後悔することになるだろう。

天音をどうするか(今月中)

  • 奈落に落ちる
  • 奈落に落ちない


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