仮面ライダーW / IとSを繋ぐ者   作:あんじ

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なんか書きたいんで書きました。気まぐれです。多分月末から更新が多くなると思います。それまでは亀更新かと


Jとの出会い/この街の探偵

身長178cmと平均以上の身長ながら大きく太っている訳でもなくて、むしろ細身を思わせるような縦に長い男がいた。白いスーツに黒のジャケットを着て、頭には目元まで深く被る白い帽子と特徴的な格好をしている。そんな彼はこじんまりとした事務所で自分専用のイスに座りタイプライターを打つ。

 

「それで、アンタの依頼聞かせてくれるか?」

 

机を挟み向こうには応接用のソファに座る美女がいた。手前には大切そうにされているアタッシュケース。だが、それとは対照的に彼女自身の服は所々焼けたり破けたりと目も当てられない姿となっていた。

 

「探偵である貴方にコレを」

 

そう言って彼女はアタッシュケースを彼のほうへ向けて開ける。すると中には左右非対称の何かと、最近依頼でよく見るヘンテコなUSB型のものだった。

 

「……コレと言われても、な。そりゃあ最近出回ってる(ヤク)と同じ形をしているが?」

「名をガイアメモリ、次世代の物で毒素は極限まで除いてあります。そしてこれがロストドライバー。このメモリを効率よく使う為の道具です」

 

話が噛み合わない中、簡単に説明を終えると彼女は見せていたアタッシュケースを閉めると、それを置いて事務所を出ていこうとする。

彼はそれを止めることなく、来る者拒まず去るもの追わずといった様子で眺めていた。だが扉に手をかけたその時、帽子のつばを人差し指で持ち上げて彼女を見据える。

 

「報酬は?」

「私の運命……それとこの街の平和」

「あぁ、確かに受け取った。俺が引き継ごう、君の運命(さだめ)もこの街の平和も」

 

扉から一迅の風が吹き抜ける。その風が止んだ時、彼女の姿はもう無かった。"ありがとう"という残響だけを遺して、1人の戦士が風となった。

 

 

▼▼▼

 

 

「それで、依頼とは?」

「はい…それがですね、最近息子の様子が少しおかしくて。どうにも悪い事をしてるんじゃないかと思いまして。何せ今までは門限までには帰ってきた子が夜に抜け出したり、帰ってこなかったり……」

「でも確か20歳、でしたよね。その年になったら大学の友達と夜遊びだってしてもおかしく無いのでは?」

「うちの子に限ってそんな事は有り得ません!ですから、どうにか調べて頂きたいんです。報酬もそれなりに用意させていただきますので!」

「え、あっ、はい。それは構わないですけど」

 

こじんまりとした事務所、その応接用ソファに対面するよう座るのはまだ幼さを残した学生服を着た中学生と、高そうな服や装飾品で身を包んだまるでザマスと言わん様な貴婦人。

提示された金額は前金で10万、報酬として20万の計30万という大きな仕事。

 

「それではお願い致します。息子の事で何かあればメールをください、基本家に居ますので」

「分かりました。息子さんの事はこの鳴海翔太郎(なるみしょうたろう)にお任せ下さい」

 

依頼の話を聞き終えて依頼主をお見送りする。事務所に戻り所長専用のイスに座り大きくため息を吐く。これまでの経験に基づくならあの女性は息子の悪事を見つけないと納得はしないだろう。どんなに彼が真っ当な理由で出ていてもそれを否定する事は目に見えている。

しかし依頼は依頼、解決する事を望んでいるのであればそれを解決するのが探偵の仕事。

まずは情報の整理を開始する。依頼主によると、息子の名前は高橋直樹(たかはしなおき)20歳、大学生。小中高と模範的な生徒でありクラス委員長を務めていた。進学校を経て名前のある大学へ進学、サークル・クラブは未所属。バイトの経歴も無しと大事に大事に育てられてきた。そんな彼が怪しい動きを見せたのは去年の夏頃から。門限の10時までに帰らず、次の日の朝に帰ってきた。それからというものの今に続くまで夜に窓から抜けて家から出たり、一夜二夜帰ってこない事がよくあると言った感じだ。母曰く、何かに取り憑かれた様に次第に目が虚ろになって行ったという。

現状考えられうるのは3通り。

 

・1つ、大学で出来た友人と夜な夜な遊びに出ている。

・2つ、何かしら負い目があり外で秘密裏に働いている。

・3つ、()()()()()()に手を染めている。

 

最悪なのは3つ目だ。上2つは親の過干渉が原因のため息子と一緒に説明すれば直ぐにでも解決へ導ける。

ただ、3つ目のガイアメモリに手を出していた場合こちらも色々と手を講じなければいけない。何せ法律で禁止されている違法の物、更生させるなんて簡単な事では済まないのな確かだ。

 

「まずは足だ。探偵は足を使ってなんぼだしな。…っと、いけね学校に遅れちまう」

 

締まらない翔太郎は時計に携帯をカバンに投げ込むと駆け足で事務所を出ていく。この事務所を兼任している家は街の中心地からは少し離れて住宅街の端っこにある。

現在時刻は8時手前、授業前に予鈴までには間に合う。周りを見ればまだまだ生徒は登校している人が少ない。そんな中でも一際目立つ人達がいた。

 

「おっはよう、ちーちゃん!」

「あぁもう鬱陶しい!」

 

目の前に美少女が2人、同じ制服の女子版を着た生徒が登校している。後ろにいた可愛いの権化が綺麗の権化に飛びつく。この飛びついた方、篠ノ之束は人格破綻で天才という厄介極まりない存在。方や人間としてはまともな感性を持った織斑千冬。ただ、無愛想に加えて武人ならではの近寄り難さという者を持つ者でもある。

朝からわざわざ平和を壊すことは無い。俺は無辜な一般市民だと言い聞かせて、そんな2人を横目に知らぬ存ぜぬで通そうと足早に過ぎようとする。しかしそうは問屋が卸さなかった。

 

「おはよう、鳴海」

「あぁ、織斑おはよう」

 

我が校はは4クラス制、その中でこの2人は常に一緒のクラス。そして俺はそんな魔のクラスに放り込まれた1人でもあった。

役柄的に人をまとめる立場に立ってしまった俺は不幸にも会話が通じてしまうじゃじゃ馬なレディ達の相手を先生から遣わされた。

お陰様で少なくとも朝すれ違うと挨拶される程度には親交が出来てしまったのだ。

 

「今日もお疲れのようだな、どこかの篠ノ之束(バカ)のお陰で」

「あ?」

 

こう皮肉でも言ってやらないとやってられんのだ2人の相手など。

 

「オイ、なんて言ったよ今」

「バカだと言ったんだ。あの国語の小テストで書いた解読不能で絶望的な文章を読んだら誰だってそう思うさ」

「うるっさい!このハーフボイルド!」

「あぁん!?テメェ、誰がハーフボイルドだぁ?オ・レ・は!ハードボイルドだ!」

「ハードボイルドは適当な理由で女に喧嘩は売らねぇよ!」

 

思わず口が滑り喧嘩腰になる。おっと、これ以上はダメだ、もっとクールに行こう。感情に流されていてはまだ半人前、そう親父(オヤジ)も言っていた。

何だかんだ言っていがみ合いながらも予鈴前には学校に着く。俺も彼女達の後ろを一歩一歩重い足取りでクラスへ向かっていく。

悲しくも相手をするという事は俺は篠ノ之束の前の席に強制移動である。夏が過ぎ、既に2年目のクラスになるが悲しいかな俺は1度も特定の席から動いたことがない。それが窓際の後ろから2番目の席という俺専用の席だ。

秋とは思えない日差しが刺す中、爽やかな風が駆け抜ける。

 

「ったく、この街の風は何もかも忘れさせてくれるほど心地良いな。空まで飛べそうだ」

「風で空が飛べるのならそのまま宇宙(うえ)にまで行けそうだね」

 

驚きで身体がまるで石像の様に固まる。まさか独り言に返事が返ってくるとは思っても見なかったし、それ以上にまさか後ろの席から声が発せられるとは思ってもみなかった。ギギギギギと効果音がなりそうな油の足りない機械のように振り返る。

基本的に篠ノ之は1人だと俺と会話はしない。というか織斑千冬と必要最低限以外で先生との会話以外はまず有り得ない。織斑が居る時でも朝のように煽りでもしない限り返事が返ってくる事は無い。

 

「珍しい事もあるもんだな。まさかお前さんと会話するなんてな」

「……」

「チッ、無視かよ」

「…………」

「おい、これじゃあまるで俺が独り言で会話する変人じゃねぇか」

「………………」

「……ハァ」

 

一体なんだったのだろうか?

 

 

▼▼▼

 

時は流れて放課後、俺は早々に街へでて歩き回っていた。いわゆる聞き込み捜査というやつだ。今朝方の依頼にあった高橋直樹の友人やよく行く店の店員などに話を聞く為に街を駆け回る。

まずは同じ大学の講義に出席する者に聞く。

 

「最近の直樹?あー確かにイライラしてる事多いかも」

「と言うと?」

「春休みの前くらいかな?今まで怒ったところなんて見たこと無かったんだけど、突然ブチ切れて。そこから時々イライラしてる事が出てきたかも」

「なるほど……ありがとうございます」

 

次はよく夕食を食べているという定食屋のおばちゃん。せっかくなので俺も夕飯を注文してみる。

 

「直樹くんね、昔からよく来てくれてたのよ。それが最近ガラの悪い子達と来るようになってね。お母さんに迷惑かけないようにって言ったんだけどね、逆ギレされちゃった」

「あー、なるほど。もしかしてその中の誰かがガイアメモリとか持ってたりしなかった?」

「いやー、見なかったね。でも最近この辺じゃ見ない格好した人が居たから、もしかしたらあるのかもしれないわね」

「ふーん、ありがとうおばさん、助かったよ。ご飯美味しかったよ!」

 

放課後、自由になってから3時間ほど街を歩いて分かった事がある。高橋直樹はここ最近ガイアメモリのバイヤーらしき人物と接触したという事、そして夜の繁華街によく出没しているという事が分かった。

そうなると早々に動くことが求められる。彼がまだ怪物(ドーパント)になっていなければ助けられる。そう思った俺は夜の街を目的地を定めずに歩く。

すると奇妙な事に電気屋から出てきた篠ノ之と織斑を見つける。篠ノ之と視線が合うと一瞬鋭くなり、そして思いっきり顔ごと逸らされた。さすがにそれには織斑も疑問に思い、篠ノ之の見た方へ振り返って俺を見つける。

 

「こんなところで鳴海に会うなんて奇遇だな」

「いや、俺もこんな場所で織斑に会うなんて思ってもみなかったさ」

「は?束さんも居るんだけど?」

「いや、俺には見えてないから知らん」

 

昼間のお返しとでも言わんばかりにガン無視を決めると、人でも射殺せるのではと思えるほどの眼光で睨んできたが我慢して無視をする。

織斑と他愛もない話をしていると何か付近が騒がしい事に気付く。

耳をすませば遠くで爆発音と、暗闇に紛れて黒煙が上がっていた。そして俺は気付いてしまう。高橋直樹の出没地点と時間が今騒ぎの中心地と合致する事に。

さすがにこの騒ぎにもなると織斑も篠ノ之も何が起きているかは理解したようだった。

 

「クソったれが!織斑、篠ノ之お前らは早く逃げろ!」

「鳴海はどうするんだ?」

「俺にはこの街を守るって使命があるんでな!警察が来るまで怪物(ドーパント)の相手をしてくるさ。だからちゃんと逃げるんだぞ!」

 

そう強く言い聞かすと俺は迷わず駆け出す。カバンの中にから折りたたみ型の携帯を出すと、それにメモリを入れる。

 

『スタッグ!』

 

そしてもう1つ取り出したメモリを次は時計に差し込む。

 

『スパイダー!』

 

折りたたみの携帯は2本の角が生えてきてクワガタのフォルムをして、ドーパントに向かって一目散に飛んでいく。

俺の腕から放たれた時計は音声と共に足を生やし、軽快にジャンプしてドーパントに向かっていく。そして暴走するように道行くもの全てを攻撃するドーパントを糸で絡めて動きを封殺する。

 

「警察が来ても交番程度の戦力じゃあどうにもならない。追加で応援が来るまで30分って所か。それまでスタッグとスパイダーで持つか?」

 

そんな悠長な思考をしていると背後でも爆発音と悲鳴が上がった。それは織斑や篠ノ之を逃がした方向で間違いない。しかし今ここを離れる訳にはも行かない。目を離した時に襲われる人がいては元も子もなくなる。

だが、何よりもピンチだったのは俺自身だった。スパイダーの拘束も解けて、スタッグのダメージを押してでもドーパントはこちらに向かってくる。

人を限りなく超えた拳が自分の顔を守る様にクロスした腕を薙ぎ払う。昆虫の持つ爪の部分で殴られた腕は引き裂かれて血が滲み出る。

 

「お前は殺す。手始めだ、(むご)くいくぞ」

「生憎と素直に殺される性分じゃあなくてな!」

 

痛む腕をは次第に感覚が消えて、鈍痛はむしろ意識を保つ為の精神刺激薬に変わる。次第に目が慣れてきたのか拳が見える程度にはなってきた。相手の拳を流して、いなして、躱していくがどうにもジリ貧になっていく。

そして数回の攻防の後、怯えて逃げ遅れた少女が目に入ってしまう。そして奇しくもそれはドーパントも同じで、攻撃が彼女の方へ向く。

その瞬間思考が一気に加速していく。思考がグルグルと脳を駆け巡るが、それは何通りの過程を経ても全て1つの結論に至っていた。

 

──このまま見過ごすのか?

 

いいや、ダメだ。俺はこの街を守る探偵。少女1人守れなくて何が守れるというのか。

 

──じゃあどうすれば助けられる?

 

足を掴む?そんなんじゃ止まらない。タックルをする?俺はコイツを押し返せるほど強くない。矛として力が足りない?ならば俺自身が盾となるしか選択肢はない。

 

決意が固まると身体は思考を置いて動き出していた。少女を包む様に庇い、ドーパントに背を向けて全てを受け止める。

そのつもりで全身に力が入っていたが、幾ら待っても痛みが来ない。おかしくそっと目を開けると目の前にはおかしな事が起きていた。黒い帽子に黒いロングコート、黒いブーツで黒いサングラスをした顔面包帯な人が立ち、その手には拳銃が握られている。振り返ればドーパントはその弾を受けて怯んでいた。

そのうちに少女を騒ぎのない方へ逃がす。すると、黒ずくめの人物は女性の声で話しかけてきた。

 

「貴方が鳴海翔太郎ね。父親(ちちおや)鳴海壮一郎(なるみそういちろう)から届け物よ」

 

そう言って彼女は俺の目の前にアタッシュケースを落とす。"開きなさい"と言われ、恐る恐る開ければ中には手紙が一通入っていた。

 

『鳴海翔太郎殿へ

済まない、これがお前の手に渡っているという事は俺はもうこの世にいないという事になる。シュラウドという女性にコレを預けてある。コレはこの街を守る事においてお前の"切り札"となるだろう。済まない、本当は正式に探偵になってから渡すつもりだったものだが早いプレゼントとなってしまった事を許してくれ。切り札と共にこの街の平和はお前に託した。

P.S.俺はこの街の風と共にいつも傍にいる』

 

親父(オヤジ)の字で書かれた一通の手紙。このクセが酷い字は親父が生前に書いたものだと断定できる。去年の春、突如俺を置いて消えてしまった親父は1ヶ月後、遺体となって見つかり死因は交通事故と診断された。どう考えても交通事故とは思えなかったが、警察はそれ以上の捜査をしてくれなかった。親父はもしかしたらそうなる事を予知していたのかもしれない。だからこそ"切り札"なんて物を誰かに託したんだと思う。

 

「アンタがシュラウドさんか?」

「えぇ、そうよ。……坊や、貴方にこの街は守れるかしら?」

「──あぁ、守ってみせるさ。これ以上この街の風を泣かせはしない」

 

アタッシュケースに収められているガイアメモリと左右非対称のガジェットを取り出す。自然とコレは腰に付ける物だと理解出来た。

どこからベルトが表れて腰を1周するように巻き付くと、ガイアメモリを起動させる。

 

JOKER(ジョーカー)!』

 

起動したガイアメモリを腰にある左右非対称のガジェットに差し込む。そして刺さったメモリーごとレバーの様に内から外に押し出す。

 

「変身……ッ!」

JOKER(ジョーカー)!』

 

光り、風が集まり、そして黒塵(こくじん)が俺を包む。黒塵はやがて固まり、まるでパワードスーツの様になっていく。その黒く光る軽鎧装(けいがいそう)は月の明かりすら跳ね返すほどキレイで、そして頼もしかった。

 

「お前はなんなんだ?」

「俺か?……あぁ、そうだな。俺は仮面ライダー、仮面ライダージョーカーさ」

 

そう、この日、この夜、この変身で俺の運命が動き出す。これが後に言う始まりの夜(ビギンズナイト)となる。だがその事は今の俺には知る由もなかった。


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