カバル皇子の身柄奪還のため、グラ・バルカス帝国は日本へ大艦隊を派遣することを決定。日本とグラ・バルカスとの板挟みとなってしまったリーム王国はグラ・バルカス側に付いてしまう。
 その決断を下した理由とは?

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副題:消えた宰相を追え!


その時歴史がうごめいた リーム王国

 

 ──リーム王国 王都ヒルキガ セルコ城

 

 グラ・バルカス帝国の日本懲罰艦隊派遣。この計画において艦隊の補給地点としてリーム王国の飛び地が適当と判断された。飛び地には整備された港湾と、内陸部にはムーが使用している飛行場があった。

 グラ・バルカス帝国は使節団をリーム王国に派遣し、その土地の使用権を要求する。

 

 要求時にグラ・バルカス帝国の使節団ははっきりと『日本国を攻撃するため』と宣言した。

 この要求を受け入れたなら、リーム王国の統治には口を出さない、とも。

 

 仮にこれをリーム王国が受け入れると、列強第2位のムー国と国交を断絶するばかりでなく、パーパルディアをひねり潰した日本国と敵対する事になってしまう。

 

 しかし、グラ・バルカス帝国の強さも本物だ。

 周辺国家を瞬く間に制圧し、文明国パガンダ王国すらも短期間で落とし、列強レイフォルでさえ、グレードアトラスター単艦で滅した。

 伝説は留まる事を知らず、ついには世界最強の国家、神聖ミリシアル帝国に刃を向ける。

 

 怒りしミリシアル帝国は、世界連合艦隊を率いてグラ・バルカス帝国艦隊殲滅に乗りだし、古の魔法帝国の空中戦艦すらも投入した。

 しかし、結果は痛み分けだったようだ。

 古の魔法帝国製兵器は作れる物ではない。よって、実質的にグラ・バルカス帝国の勝利と言える。

 

 迫り来る脅威。国の舵取りは非常に難しい。

 

 

 

 リーム王国の国王、バンクスは傍に控えている宰相に問いかける。

 

「宰相よ、我が国はどうするべきであるか?」

 

「陛下。まずは日本国とグラ・バルカス帝国、それぞれと敵対するという観点から考えましょう」

 

 宰相は地図を指し示し、ロウリア王国とパーパルディア皇国、次いでパガンダ王国とレイフォル帝国の名を挙げた。

 

「日本国と敵対いたしましたロウリアとパーパルディアは敗北。しかし占領はされず独立を保ち、それどころかロウリアは発展しております」

 

「うむ。そうらしいな」

 

「一方のパガンダとレイフォルは占領され、国家首脳陣は軒並み処刑。国民は奴隷のような扱いを受け、搾取されているようです」

 

「うむ。第八帝国……グラ・バルカス帝国の支配は苛烈らしいのう」

 

「日本国は敵に対しても情けをかけ、戦が終われば復興の手助けすらします。翻ってグラ・バルカス帝国は、敵に情けなどかけず、敗者からは搾れるだけ搾り取ります」

 

 宰相は断言する。

 

「敵対し、敗北した場合を考えるならば日本国を敵に回すべきでございます」

 

 次に、宰相はそれぞれ味方につけたという観点で論じる。

 

「日本国を味方に付けたとして、彼の国は友好国へ援軍を送るにしても制約が多く、遅くなりがちです」

 

 トーパやムーを引き合いに出し、宰相は日本国の腰の重さを語る。

 

「日本国は実際に被害が出るまでは動きませんでしょう。我が国が日本国に付いたとして、日本国の軍が我が国を守るのは、我が国がグラ・バルカス帝国の攻撃を受けてからとなるのです」

 

「助けが来る前に我がリームは滅びるぞ」

 

「おそらくはそうなるでしょう」

 

 宰相の予測に、バンクスは絶句する。

 

「陛下、次にグラ・バルカス帝国に味方する……要求を飲んだ場合ですが、既に大艦隊派遣の準備中だということでありますから、この大艦隊との衝突を回避することにはなります」

 

「う、うむ」

 

「しかし、王国の統治に口出ししないという約束は守られないでしょう」

 

「な、なぜじゃ⁉︎」

 

「守る理由がありません。彼の国は世界征服を掲げております」

 

 

 宰相は結論を出す。

 

「日本国を敵に回し、かつ日本国に勝ってもらわない限り国民に甚大な被害が出て、最悪の場合は国が滅びます」

 

「か、勝つ側に付いて被害を抑える方策は無いのか」

 

「ございません」

 

 バンクスの問いを、宰相はバッサリ切り捨てた。

 

「……どうしてもと仰せなら、飛び地の領有権を放棄すればいいのですが」

 

「それはイヤじゃあ!」

 

「で、ございますよね」

 

 宰相はため息を吐くと、決心したような表情を浮かべる。

 

「陛下、これよりは日本国とグラ・バルカス帝国との外交には関わりになられませんようお願いいたします」

 

「う、うむ。しかし何故じゃ?」

 

「理由は申し上げられません」

 

 

 この後、リーム王国は宰相主導でグラ・バルカス帝国と盟を結ぶ。

 そして、戦後が訪れると宰相は売国奴として裁判にかけられ、戦犯として処刑された。

 全責任を負い絞首台へと登った宰相の名前と発言は全て公的記録から抹消され、罪人としての汚名だけが残っている。

 

 

 この文章は中央暦1652年にリーム国国王バンクスの侍従長が発表した手記に記載されていた文章から再構成されたものである。

 この文章が事実なら、リーム国民は忠臣に罪人の汚名を着せて国体を護持していることになる。

 一日も早く事実確認を行い、事実である場合は宰相の名誉が回復されることを切に願うものである。




国王や皇帝が皆んな「のじゃロリ」だったら世界は平和になるんじゃないかと思ったけど、逆に陛下のためなら喜んで命を捧げてしまう輩がゴロゴロ現れて戦いが余計に泥沼化しそうだって思いました。


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