ダンジョンで混じり子が戦うのは間違っているだろうか?   作:にわかDRPGプレイヤー

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本日二話目です
前話は若干説明回だったのと日曜ということで二話投稿です


第5話

「ウィズたーん! 打ち上げいくでー!」

 

 バーン! と、ウィズの自室のドアを大きな音を立てて開いたのは主神であるロキその人だった。

 机に向かって筆を走らせていたウィズは少々眉をひそめながら振り返り言った。

 

「先の遠征に自分は関係ないはずですが」

 

 打ち上げ、つまりロキファミリアが誇る上位冒険者たちで深層まで探索した遠征――その成功を祝ってのものだ。

 遠征への参加は最低でもレベル3からというのがロキファミリアのルールであるため、ついこの間まで冒険者の底辺であるレベル1だったウィズには無関係の行事である。

 

「そーやけど折角レベルアップしたんやしみんなでお祝いしたいやん? どーせみんなバカ騒ぎしたいだけなんやし話題性のあるウィズたんの参加を渋る奴なんておらんやろ」

 

 ウィズは直感した。これは強制イベントだ。と。

 たがそろそろウィズもロキに対して空気抜きを行う必要があると考えていたため、今回でそれをこなせるならそれでいいやと考えることにした。

 というのも、入団して2ヶ月ほどの頃、今よりも他人との接点を薄めて生活していた頃、もともとロキに気に入られて入団したという経緯を持つウィズを構えなかったロキが暴走しおよそ三日間ベッタリ張り付かれるという事件があったからだ。

 ウィズは他者との肉体的接触を特に避けている節があり、その事件からは適度に発散させることで二度とそうはならないように気を使っているのだ。

 

 ここで勘違いして欲しくないのはウィズが他者を嫌っているわけでもその関わりを煩わしく思っている訳でもないという事だ。

 寧ろ普段から構ってくれるロキのことは有難く思っているし、ロキに張り付かれた三日間は泣くほど嬉しく思っていたりもする。

 

 だが、ウィズ・イルミナル・ドリーという存在は他者との触れ合ってはいけないのだ。

 少なくともウィズ本人はそう思っているし、他者の温もりを求める心を押しつぶし、それによって発生するストレスをモンスターを殺すことで発散しているのだった。

 

「分かりました。正門に行けばいいですか?」

 

 ウィズは先程まで筆を走らせていた紙を折りたたみ、机に備え付けられた棚にしまうと立ち上がってロキに問いかけた。

 

「お、やけに乗り気やん。ウチの長年の思いが身を結んだってところやな? ほな一緒に行くで」

 

 ニンマリと笑って手を差し出してくるロキだったが、ウィズはその手を無視して部屋を出ると、ロキは待いやー! と、ウィズの横につき、手を握ろうとするのだった。

 

◆◇◆

 

「遠征の成功とウィズたんのレベルアップを祝って――乾杯!」

 

 豊饒の女主人、その一角を貸切った打ち上げはロキの音頭によって開始された。

 ウィズはロキの隣に座らせられており、同席するのはフィン、リヴェリア、ガレスに加えて若手頭のアイズ、ベート、ティオネ、ティオナと、錚々たるメンバーだった。

 

「ミノタウロスを倒してレベルが上がったんでしょ? どうやって勝ったの?」

 

 最初にウィズに話しかけたのは胸がない方のアマゾネス、ティオナだった。

 円卓の隣合う席だったためにティオナはウィズに体を寄せて聞く形になったが、ウィズとしては冷や汗ものであった。

 賑やかな酒場、和気藹々とした空気に自分に興味を持つ美少女。

 あまりにも暖かな空気すぎてウィズは人生において最初に抱いた決意が崩れそうになるのを自覚していた。

 

「別に。ただ全力で戦っただけです。腕をはね飛ばされての勝利だったようなので実質相打ちですね。ベートさんに助けられていなければ死んでいました」

 

 淡白に答えるウィズになにか違和感を感じながらもティオナは話を展開する。

 どんな戦闘スタイルなのか、普段はどこを探索しているのか、スキルや魔法を持っているのか。

 

 ウィズが長年の経験から身につけた()()()()()()()()受け答えをしていると、元気溌剌と言った感じのティオナもだんだんしょんぼりとしてくる。

 ウィズがそれに罪悪感を感じていると、ティオナの頭に拳骨が落とされた。

 

「同じ派閥とは言っても初対面なんだからそうそう話してくれるわけないでしょうに。そもそも自己紹介はしたわけ?」

 

 ウィズが顔を上げるとそこには一部以外は自分に話しかけてきていたアマゾネス、ティオナと似ている女性がたっていた。

 

「ごめんなさいね。この子、英雄譚に目がなくって。特にミノタウロスが出てくる……なんだったかしら、それがかなりお気に入りみたいなのよ」

 

 ティオナと名乗った女性が代わりに謝罪する。

 二人は姉妹のようだった。

 

「アルゴノゥト! 英雄が牛の魔物を倒してお姫さまを救い出すお話。あ、私はティオナ・ヒュリテよろしくね」

 

「ウィズ・イルミナル・ドリー。好きに呼んでください」

 

 流石のウィズも自己紹介を連続でされた後に目を向けられては自己紹介を返さないわけにはいかなかった。

 自身の中途半端さに呆れつつも今度は逆にこちらから話題を振り、適正レベルが2とされる中層の話を聞く。

 既にモンスターの知識と地図から読み取れる地形は頭に叩き込んでいるが、それでも実際体験したことのある先輩からの知識を得られるのは有難かった。

 

「ウィズたーん! そんな堅苦しい話してないでお酒飲もうやー!」

 

 と、立場的にウィズの隣にずっと座っている訳にも行かず、遠征メンバーが座っている机を回って酒を飲んできただろうロキが戻ってきた。

 ジョッキを押し付けられ、飲むように促されたウィズは仕方なしとそれを煽り――意識を暗転させた。

 

◆◇◆

 

「ウィズたーん!」

 

 空になったジョッキを落とし、崩れ落ちるように倒れたウィズを見てロキは叫んだ。

 

「息はあるし気絶してるだけっぽい。多分すっごい下戸?」

 

「そか、なら良かったわ……。それにしてもウィズたんがここまでとは……アイズたんもそうやし酒飲ませちゃイカン子が増えたなあ」

 

 平坦な胸にウィズを抱えたティオナがウィズの呼気を確認し、命に別状はなさそうなことをロキに伝えると、ロキは額を抑えて項垂れた。

 

「ウィズたんのこと任せてもええか? ティオナも気に入ったみたいやし」

 

「任せといてー! ……寝かせてあげるだけで大丈夫だよね?」

 

「怪我してる訳でもないんだしそれでいいんじゃないかしら?」

 

◆◇◆

 

 酔っ払ったベートが先日アイズに助けられた冒険者を馬鹿にした結果、店内にいた本人が店を飛び出していってしまったり、ベートの反省を促すためにロープで雁字搦めにして逆さ吊りにしたりと多少の問題はあったもの大きな事件はなく無事に宴会が終わり、食欲を満たした一部の男性冒険者は色街へと消えていった。

 豊饒の女主人も営業を終え、閉店の準備に取り掛かっている。

 あとは酔いつぶれた者をホームに運搬すればロキファミリアの営業も終わりだ。

 

 数時間の間ウィズを膝枕していたティオナだが、高レベル冒険者であるためか特に足が痺れるということもなく、ロキに任されたようにウィズをホームまで送るために背負おうとした所で違和感に気づいた。

 

「ちょ、あーと。ロ、ロキー!」

 

「んー? どしたん?」

 

 高レベル冒険者たちと飲み比べをしていたくせにほとんどシラフに見えるロキがティオナに呼ばれてやってきた。

 

「その……ウィズのことなんだけど……」

 

「もしかしてこれか?」

 

 ロキが人差し指と中指の間から親指を突き出してからかうように聞いた。

 

「違くてその……ね? ロキなら知ってるんじゃないの?」

 

 言葉に出さずにロキに何かを伝えようとするティオナに、ロキもようやく何かを察したようだった。

 

「あー。スマン。ちょっとだけ待っとってくれんか?」

 

 ロキはそう言ってティオナの元を離れ、リヴェリアに一枚の紙を渡して戻ってくると言った。

 

「ホームに帰ったら話すわ。ソレのこと知ってるのは片手で足りる程度やから内緒にしとってな?」

 

「わ、わかった」

 

 今晩のティオナは最初の一杯以来酒を飲んでいなかったものの、店内にはアルコールが漂っていたためかちょっぴり思考に靄がかかっていた。

 それに加えて現在不思議を体験していて、ロキからはなにやらヒミツを話されるらしい。

 お目目をぐるぐるさせたティオナは吃りながらも頷いた。




次回、僅かにウィズの秘密が明かされる?

個人的にティオナ好きなんですけどあんま詳しく知らんので指摘があったらばしばし飛ばしてください

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