ダンジョンで混じり子が戦うのは間違っているだろうか?   作:にわかDRPGプレイヤー

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フィンの身長は低いと言っても140くらいあると思ってたんですが、120もないみたいですね
前話でフィンの服をウィズに着せたと言ってましたがさすがに無理。
ウィズの身長は160後半くらいですね


第7話

 窓から陽の光が差し込み、室内を明るく照らす。

 煩わしい太陽によって起床を促されたウィズは、()()()()()を感じていた。

 

 また寝坊したな、と早朝鍛錬を逃したことをぼんやりとした頭で悔いていると、十階層で風の魔法を使ったかのように霧が払われ、頭が覚醒する。

 

 ウィズの眼前。そこには――涎を垂らして寝ているティオナ・ヒリュテがいた。

 

 びいくーる。嘗て自分を守って死んだ少年の口癖を思い出してウィズは落ち着く。

 昨晩、自分は何をしていたか。

 

「打ち上げに参加して、酒を飲まされて――」

 

 しかしウィズはそれより先が思い出せなかった。

 然もありなん。ウィズはそこで気絶するように眠っているのだから。

 

 しかし、真実を知らぬウィズは思考を止めることは無い。

 

「酔っ払ってお持ち帰りルートか?」

 

 それは無いだろう。と自分で出した答えのひとつに苦笑する。

 そもそもの話ウィズの抑圧されていたそれが解放されたのなら一番に絡みにいくのはリヴェリアだろう。

 もしくはロキ、フィンといったところだ。

 有名人ではあるものの接点がなかったティオナを。ということはありえない。

 

 ちなみに、リヴェリア以下三人の名が上がったのはウィズが感じたことの無い家族の温かみを強く感じるからだったりするのだが、ウィズはそれを言う気は無いし、察せられるつもりもなかった。

 

「となると、暴れたとかか? それを鎮静させたのがティオナで、運んできてそのまま寝てしまった。とか?」

 

 そういうことにしておくか、と暫定的な答えを出したウィズは起き上がり、確定的な答えを得た。

 

 尻尾がティオナの脚から腰へかけて巻きついている。

 つまり、()()()()()()()()()

 

 ウィズは寝る時も寝巻きの中に尻尾を隠して眠っている。寝ている間には目立たなくするための腰への巻付きは緩むものの、掛け布団の上からそれを看破するには至らないレベルであるため、唐突な入室にも対応できるようにするための睡眠方法だ。

 

 それは寝相やらでどうにかなるものでは無い。

 つまり、()()()()()()()()()()()

 ここまで至ると話は簡単だった。

 

 打ち上げで何らかの理由からティオナに尻尾がバレた。そしてロキやらの自分の事情を知る者が説明のために尻尾を出して――と言った具合だろう。

 暴れた。という懸念事項は残ったが、少なくともお持ち帰りという爆弾は完全に処理――そもそも存在しないことが分かったウィズは、ティオナの躰から尻尾を退散させる。

 睡眠中の無意識のそれだったからか、締め付けはかなり弱かったようで肌の薄い腹部に僅かに鱗の痕が残るだけで済んでいた。

 

 ティオナの体温や柔らかさを手や舌にも勝る感覚器官である尻尾から確認しながら、ウィズはそのまま自分に巻き付けていき、服の下へと収納する。

 

「よし、ダンジョン行くか」

 

 目標は十八層――とはいえ目標は目標。ティオナからモンスターの実地的な特徴は聞いているが流石にそこまでは行けないだろうと考えながら、ウィズは寝ているティオナを放置して部屋を出た。

 

◆◇◆

 

 ウィズはちゃっちゃかと十二層まで降りてきた。

 ここまでにモンスターと戦った回数は三度程。準備運動にすらなっていなかった。

 ウィズが早朝訓練を行う理由の一つに、エンジンがかかるのが非常に遅いという理由がある。

 鍛錬では技量も向上しているはしているだろうが、一人で行うそれではたかが知れている。

 体に基礎を作るという意味でもステイタスがある冒険者にはほとんど無意味だ

 上層までならばともかく未知の中層に冷えた体で突入するのは心許ない。

 なにか準備運動になりそうな手頃なモンスターは居ないかと探し回りながら練り歩いていると――

 

「助かった。同業者だ!()()()()()()()()()!」

 

「でも一人しか居ないし時間稼ぎにもならないっすよ!!」

 

 と、全速力で走る冒険者パーティを発見した。

 おおよそ怪物進呈だろう。と、あたりを付けたウィズは先んじて刀を抜いておく。

 納刀状態から攻撃、防御へと移る抜刀術をウィズは扱うことは出来るが、それでも納刀状態と抜刀済みでは圧倒的に後者のほうが手札の枚数が多くなるからだ。

 

「一人で足りねぇなら二人にすりゃあ良いだろ!()()!」

 

「うぃっス!」

 

 リーダーの掛け声によって最後尾を走る大きなバックパックを持った小さなサポーターが転ばされる。

 足を引っ掛けられたのだ。そのついでに作業中に一時的に魔石を保管するための小袋を掠めとっているあたり、かなり手癖が悪い。

 

「サポーターは()()()()()のために死ねぇ!」

 

 ギャハハとウィズを追い越した者達は笑いながら去っていく。

 

 ロキファミリアが健全なだけで冒険者って基本的にクソだわ。と改めて認識したウィズは押し付けられた敵――インファントドラゴンを睨みつける。

 このままではサポーターは轢き殺されるだろう。と理解したところで温まり切ってない体ではあるもののレベル2としてのステイタスを発揮し、転んだサポーターを回収する。

 

 ()()()()()()()が今この状況が不幸の真っ最中なのだから関係ないだろうと投げやりになりながらサポーターを地面におろす。

 

「一人で帰れるか?」

 

 頷くサポーターを見て実は下手な冒険者より強いんじゃないだろうかとウィズは思った。

 

「じゃあさっさと帰ってくれ。巻き込まれたいなら話は別だが」

 

 そう言ってウィズはインファントドラゴンに突撃した。

 

「<カティノ>」

 

 生成した気体を吸い込ませることで瞬間的な無防備状態にするための第一位階魔法を唱え、インファントドラゴンへ吸引させる。

 巨体故か効き始めが遅かったものの、見事にインファントドラゴンへ効果を与えた魔法により、インファントドラゴンが減速する。

 

 攻撃すれば直ぐに覚醒するが、逆をいえば放置しておけば数秒はこの状態が続く。

 その数秒で戦闘区域外へとサポーターが退避したのを確認すると、覚醒する直前のインファントドラゴンの右前脚の腱を切りつけた。

 

 ゼリーにスプーンを入れるように、とまでは柔らかくなかったものの、随分とあっさり刃が通り、足首からは血が吹き出す。

 

「ミノタウロスより百倍柔らかいな」

 

 百倍とは、すっごく。という意味である。実際の硬度が1/100という訳では無い。

 そもそも、レベルアップ前のステイタス、かつ得物も普通の刀だった時と比べて今のウィズはレベル2であるし、使っている刀だって前まで使っていたそれと比べれば雲泥の差である。

 2等級ほどの性能はあるのではないかとウィズは考えていた。

 故に、インファントドラゴンとミノタウロスでは比較にすらなってなかったりする。

 

 痛みによって意識を覚醒させたインファントドラゴンが暴れる。

 レベル2となったウィズでもあそこまでの質量が直撃したらダメージは免れないため、安全地帯――インファントドラゴン背中へと退避し、そこを足場にして跳躍、距離を取った。

 背中に留まっていたとしてもしがみつくのが精一杯で攻撃に転じることは出来なかっただろう。

 

 スタミナ切れか、冷静になったのか。それとも痛みから暴れられなくなったのかは定かではないが、静止したインファントドラゴンへと再びウィズは接近した。

 長い首を用いた噛みつき攻撃がウィズを襲うが、左にステップすることで回避。

 そのまま首で薙ぎ払うような攻撃はさらに懐に潜り込むことで胸の下まで移動し、回避する。

 動かない胴体――ではなく、左前脚の腱を狙ってウィズは刀を振るうが、直前にインファントドラゴンの左前脚が地面から離れ、刀は硬質化した踵を撫でるに留まる。

 そして、体重を載せた左前脚が床へと叩きつけられる。

 懐にいてはじゃが丸くん(材料は人肉)になってしまうため、再びバックステップで回避する。

 

 再び攻撃のためにインファントドラゴンに接近したウィズに、今度は尻尾が襲いかかった。

 速度をそのままに、前に、上に跳躍することで尻尾の薙ぎ払いを回避したウィズは、そのままインファントドラゴンの背中へと飛び乗り、駆ける。

 速度の乗ったウィズの斬撃は、インファントドラゴンの太い首に大きな傷をつけた。

 

 そのまま背中から飛び降りて、そのついでに軽く刀を振るって頭へと攻撃すると、運が良かったのか瞳を斬りつけることまで成功したウィズはニンマリと笑った。

 

 インファントドラゴンは激痛のあまり咆哮するが、ウィズを強制停止(リストレイト)させることは出来ず、そして声量に比例するかのように大量の血が首の傷から吹き出す。

 

「実戦だとエンジンのかかり方も違うな」

 

 準備運動が終わったことを認識したウィズは、この戦闘をおわらせることにした。

 

「<モリト>」

 

 呟いたウィズの前方から放射状に雷が発射された。

 第三位階のこの魔法は、オークを相手にした検証によると範囲が広い分単体へのダメージは位階にしては低い。しかし、それは体の大きくないオークをあいてに試したからだ。

 モリトの雷はインファントドラゴンの全身へと突き刺さり、表面を焦がした。

 筋肉が収縮し、インファントドラゴンの傷口からはさらに血が吹き出し、それとは逆に雷は体内からもインファントドラゴンを焼き始める。

 五秒にも満たない放射の後残ったのはぐったりと脱力し、物言わぬ躯となったインファントドラゴンと無傷のウィズだけだった。

 

「さて、魔石はどこだったっけな」

 

 初めてインファントドラゴンと遭遇したウィズは、インファントドラゴンの魔石の位置を記憶しておらず、頭や胸といったそれっぽい位置を切り刻むことになった。

 

「折角血を浴びずに倒したのにこれじゃあ意味が無いな」

 

 およそ十分後、そこに残っていたのは魔石を抜かれて灰となったインファントドラゴンと、血塗れのウィズだった。




モリト

敵全体に攻撃する雷属性の魔法。
同レベルの1グループを対象にしたマハリト(炎の魔法)よりひと周りほど威力で劣る

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