Fate/IronAvenger   作:デイガボルバー

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Episode19:ガリアスタ・マンション

2004年 1月下旬 夜

 

冬木市 新都 ガリアスタ・マンション

 

管制室

 

 

 

 

 

 

俺達は、速やかに管制室へと移動した。

何故って、サーヴァントや武闘派魔術師の戦いに直接介入するコトが、己の役割ではないという事実を理解しているからだ。

この工房に詰める人間のすべての、当然の共通認識である。

総員では十人にも満たない精鋭が、己の仕事を真っ当に(こな)す。

キャスターの召喚当初と比べると、大分人員の数も減ったそうだ。

…しかしそれでもガリアスタ陣営は、その総力によって“神殿”に手が届くか否か、という髙レベルの驚異的な陣地を形成していた。

これは恐るべき事実である。

神殿とは即ち、文字通りの神域。

侵されざる場、結界の最高峰。

それに迫る守護陣を、近代の英霊と人間数名が築いていたのだから。

 

「よう、現代魔術ッ子(エルメロイ・キッズ)

無事に辿り着けた様だな。」

 

管制室で俺達を出迎えたのは、一人の大男だった。

遊牧民風の衣装に身を包んだ、ガリアスタ氏と同じ中近東人種(アラブ)の髭男。

氏が擁する精鋭術士、その一人である。

 

「一括りに呼ぶのは止めてくれって言っただろう、フリューガー。」

 

「それを言うなら、俺のコトも“フリュー”と呼んでくれって言った筈だぜ、フォルヴェッジの坊や。

本名の響きは、どうにも気に入らねェんだ。」

 

フリューガーの隣に、俺とサジョウは並び立つ。

目の前の巨大なモニターには、工房内のあらゆる状況が映し出されていた。

 

「状況は、どうなってますか?」

 

「どうもこうも…一目瞭然だぜ。

見な、しっちゃかめっちゃかのハリウッド・ムービーみてぇな様相だ。

これが神秘による仕業じゃ無ぇッてンだから、サーヴァントが齎す叡知ってやつはおっかねェ。」

 

肩を竦めてモニターを見つめるフリューガーに、俺達は倣った。

 

ナノ・テクの採用によって瞬時に実体化する無数のアイアンマン・アーマーが、二人の侵入者に襲い掛かっていた。

以前に見せてもらった、ギルガメッシュ戦の録画映像と比べるとアーマー軍団は比較すべくもなく強化されている。

撃墜もそうそうされないが、しかし侵入者は中々どうして強かった。

サーヴァントの美しい槍術もさることながら、マスターの拳闘術(ボクシング・スタイル)を研ぎ澄ました魔術闘法も凄まじい。

あのマスターが相手では、俺やサジョウは勿論…

“獣性魔術”を操る級友でさえ、恐らく敵うまいと感じさせられた。

 

「…凄い。」

 

サジョウが、目を見開いたまま陶然と呟く。

見惚れる気持ちも解るというものだ。

何せ、あんなものは既に人間の動きじゃない。

何気なく繰り出される拳打の全てが、文字通り()()()()()()()()のだ。

それでいて勢いに振り回されず、無駄な挙動が一切無い。

 

アイアンマン・アーマーは、その全てがサーヴァントとの戦闘を想定して作成されている。

キャスターの設計したあらゆるアーマーが持つ機能を再現可能な、流体する機動兵器。

縦横無尽に飛び回り、ミサイル、ビーム、レーザーメス…数えきれない兵装を使いこなして戦う姿は、まさしく映画の中のロボットアーミーそのものだ。

恐らくだが…あれ一機で、我らが師の義妹君であるライネス・エルメロイ・アーチゾルテが所有する“水銀”の魔術礼装に匹敵する性能だろう。

…あれは、天才と名高い先代のロード・エルメロイが残した特級の礼装だったと聞いている。

それに比肩する代物が、無機質に量産される武器として存在するのだ。

頼もしいが…やはり、恐ろしい話ではある。

 

だのに、あのマスターはそれと互角以上に渡り合っていたのだ。

何なら、既に何機か撃墜してしまっていた。

拳ひとつで、だ。

魔術によって強化された四肢は、常に殺意を秘めながら躍る。

ナノ・マシンによる修繕が絶えず行われるアーマーの、その速度を上回る鋭い破壊。

魔術による身体強化と、従える英霊とのチームワークの賜物であろうが、彼女の体には殆どダメージらしいダメージが見受けられない。

神話に謳われる槍兵と並び立ち、たった二人で戦線を押し上げる姿は…恐ろしくも、寒気がする程に美しいと言えた。

 

「ああ、敵さん側のマスターか?

参るよなァ。

流石は封印指定執行者っつーか何つーか。

あんな化けモンと殺り合うなんざ、いくら金を積まれたって割に合わんぜ。

おたくらのお守りに回されて、心底ホッとしてるよ。」

 

フリューガーは、へらりと笑った。

戦況には見合わない、脱力した雰囲気を持つのがこの男である。

 

「私のウィッチ・クラフトと、貴方の占星術による“絶対安地”の設定。

これを、カウレス君の電流強化で補助しつつ管制室にてキャスター陣営をアシストする。

これがあって初めて、この管制室は十全以上に機能する。

重要な仕事です。

お守りだって、楽な仕事ではないと自覚していただかないと困りますよ。」

 

緊張しているのか、厳しく言葉尻を指摘するサジョウ。

 

「モチロン承知してるさ。

他のエリアを担当している連中だって、そいつは同じ。

いくら雇われの傭兵とはいえ、ガリアスタ一族にゃ世話になってるからな。

得意先がツブされないよう、せいぜい精一杯やらせてもらう。

俺は占星術師(アストロロジャー)だ。

星を読み違えたりはせんよ。」

 

表情は変わらず、しかしフリューガーの瞳に鋭い光が見てとれる。

 

「だが、肩の力は常に抜いておかにゃベストな働きは出来んモンだぜ?」

 

弛緩した雰囲気に見えるが、しかし気は抜いていない。

数多の戦場を渡り歩いた、歴戦なる“魔術使い”の傭兵。

それがこの男なのだと実感した。

 

笑うフリューガーを一瞥したあと、サジョウは溜め息混じりにモニターに視線を戻した。

 

「F.R.I.D.A.Yさん、作戦の準備は整っていますか?」

 

『はい。

戦力消費量も想定の範囲内、問題はありません。

即座に実行に移せます。』

 

F.R.I.D.A.Yの肯定を聞いたあと、サジョウは目を瞑って深呼吸した。

俺に恐怖心を確認した彼女だが、やはり自分も同じく心落ち着かない状態ではあったのだろう。

それを振り切る様に、俺に視線を向ける。

 

「ここからは、私も魔術操作に専念します。

補助は頼みますよ、カウレス君。」

 

ゆっくりとした確認を、俺は頷いて肯定した。

 

「任せろ。

全員が全員、役割を全うする。

ガリアスタ陣営が整っての初戦だ。

やれることを確実にやろう。」

 

そうだ…やるべきことを、やる。

俺はやれるってコトを、証明するんだ。

フォルヴェッジ家の当主として…()()()の“スペア”扱いだった自分を脱却する為にも。

結果を残す。

これは、その為の一歩…!

 

俺の言葉に、サジョウはしっかり頷いて答えた。

 

「では…侵入魔術師への対応を開始します。」

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

冬木市 新都 ガリアスタ・マンション

 

非常階段 下層部~中層部

 

 

 

 

私達は、順当に階段を見つけ出し上層へと駆け上がる。

あからさまに罠でも仕掛けられていそうな屈折階段通路。

しかし、密閉空間である上に運用機構を相手方に握られている昇降機を利用するよりは、確実性のあるルート。

他に滞り無く歩みを進める手段が見つからない以上、敢えて此処を進むコトが正しい選択であると感じられた。

 

門を破壊した時と同様、ランサーの宝具で手当たり次第に破壊し、相手を炙り出すコトも可能ではある。

が、その横着は消費魔力に見合った成果を生み出すとは思えない。

私もランサーも、共に継戦能力に特化している。

私は魔力効率の良い“強化魔術”と“ルーン魔術”を操り、ランサーは高ランクの“戦闘続行”スキルを有している。

シラミでも潰すような要領で、このガリアスタの巣穴を蹂躙する作業には適していると言えた。

 

そういう自負こそがあるが、しかし…

 

「…気に入らねェな。」

 

ランサーは、狭い空間であっても構わず襲いかかる鎧の軍勢を打ち払いながら呟く。

軍勢は確かに強力だが、此方の攻撃で問題無く魔力反応を停止させるコトが可能だった。

槍の一突き、拳の一打で確実に破壊できる。

得体は知れないが、それならば対処は容易かった。

 

「此処までの進撃が、上手く進み過ぎている事実が…ですか?」

 

頷き、ランサーは駆け上がった階下を一瞥する。

撃破した鎧の残骸が転がり、山積している。

それらの胸元の円盤は、機能を停止したコトを告げる様に光を失っていた。

 

「確かに、俺達は並み居る使い魔を撃退して進んじゃいるがな。

兵力にせよ、魔術による罠にせよ…どれも()()()()だ。

奴ら、本気で俺らを殺りに来てんのか?」

 

…それは我らの総合戦力の高さ故の感覚なのだと、誇り一蹴してしまうことも出来る。

実際、此処までの道のりをこうも速やかに進むコトが可能な存在などは限られるだろう。

高度な幻惑術をレジストしつつ、無数に湧く屈強な鎧の使い魔に足を止められず進まねばならないのだから。

しかし…それでもだ。

ガリアスタは兎も角、相手方のサーヴァントが見せた力の片鱗を考慮するに…

 

「確かに彼らの防戦は、些か……」

 

 

 

『真っ当すぎる。

そうだろう?』

 

 

 

声が響くや否や、先行するランサーが踊り場に足を掛けるや否や…

状況が、一変した。

 

足場が変動する。

ランサーの足元がせり上がり、私の足元は高度を下げる。

その行程には、少しの予兆も感じられなかった。

魔力反応も、些かの鳴動すらも我々に感知させず、一瞬で巻き起こる現象。

正体は不明だが、目的は明らかだ。

我々を、分断する策略…!

 

「野郎…っ!」

 

ランサーが動く。

素早く踵を返し、私に向かって手を伸ばす。

私もそれを掴もうと動くが…

 

「ぐっ…!?」

 

何かが、私の体に纏わり付いた。

腕に、脚に、胴体に。

それによって動きを制限され、伸ばした届かず手は空を切る。

 

「バゼットォ!」

 

苦虫を噛み潰した様な表情で私を見つめるランサー。

彼の状況を見て、私は自分に起こった事態も察するコトが出来た。

ランサーの体に、足元に転がっていた無数の残骸が絡み付いていた。

消えた筈の円盤の光は再び点り、しかし()()()()()()()()()

正体不明の力によって再起動したそれらが、砕けた筈の四肢を再生させて我らを阻んでいたのだ。

 

「ランサー!

くっ…この力は……ッ!」

 

足場に押し上げられ、階上に消え行くサーヴァントを見届けることしか出来ない。

それを阻止できないほど、残骸による拘束は強かった。

 

「……!」

 

 

ランサーが姿を消したのと同時に、私の足元の階段は平坦な足場を形成した。

長方形状の、窓一つ無い閉鎖空間。

 

「これは…。」

 

…念話を試みるが、通じない。

どうやら、今の一瞬でこの空間は強力な魔術結界としても成立してしまったらしい。

魔術師の工房という強大な領域の中に存在する、言わば二重結界として作用している。

打ち破るコトは、容易くはなかろう。

 

『不躾な対応で申し訳ないね。

バゼット・フラガ・マクレミッツ。

しかし、こうでもしなければ君とこうして一対一の構図は作り出せなかった。』

 

空間上部の壁面に、一つの穴が空いた。

拘束さえ無ければ一跳びに届く距離だが、今は見つめるより他に手段がない。

 

「…主従の分断に成功したというのに、どういうつもりですか?

アトラム・ガリアスタ。」

 

穴は閉じ、そこから彼は降り立った。

先程の映像と寸分違わぬ、自信に満ちた中東の男。

 

「私が、このまま水攻めでも仕掛けてあっさりコトを終わらせるとでも思ったかい?

まあ、他のマスターが相手ならばそれを考えたかもしれないが…。

貴女が相手と言うならば、そうもいかない。」

 

薄ら笑いを浮かべ、ガリアスタは自らが構築した空間を眺める。

 

「面白いだろう?

魔術を使わずとも、こういう芸当が出来てしまうのさ。

君達が景気よく破壊したと()()()()()()()、ナノ・マシンにかかればね。

そしてそれは、奇跡など神秘の手の内にしか存在しないと頑迷に信じ込んだモノ達ほど、容易く欺くコトが出来る。」

 

言いながら壁を軽く叩き、足元を爪先で鳴らす。

その音は、鈍い金属の反響音であった。

 

「……。」

 

「気付かなかっただろう?

踏みしめた感触は、通常の床材と大差無かった筈だ。

鉱石なんかの扱いには、それなりに明るいのでね。

こういう細工などは得手中の得手なのさ、私は。」

 

この屈折階段通路そのものが、鎧の軍勢と同じ材質で構成された罠だった。

そういう話なのだろう。

此処に足を踏み入れた時点で、我々はそれに掛かっていた。

 

「マンション内部に仕掛けた、どのトラップに掛かってくれたのでも構わなかったのだがね。

中でもコレは、お誂え向きだ。

よくぞ選びとってくれたと感謝しよう。」

 

そう言い、ガリアスタは右腕を上げる。

その手には、鉄の軍勢の光に似て輝く手甲が見てとれた。

感じ取れる魔力の質から考慮しても、それは戦闘用の魔術礼装である。

 

「…私との、魔術決闘がお望みだとでも?」

 

私の言葉に、ガリアスタは薄笑のままスナップで応じる。

パキン!という音の後、私を拘束する鎧たちは溶けるように消滅した。

 

「まあ、此方としても様々な思惑はある。

封印指定執行者を、手ずから打ち倒したとなれば箔も付く。

ましてや、神話の時代より連綿と続く伝承保菌者の魔術師相手ともなれば、尚更だ。」

 

そのまま、スナップしたガリアスタの掌は握られる。

魔力の奔流が感じられる。

 

「それに…この聖杯戦争を勝ち抜くに当たっては、君ぐらいが丁度良いのさ。

我が魔術兵器の()()()には、ね。」

 

奔流は、激しい稲光を帯びた。

 

 

 

『“猛れ(ガッシュアウト)”。』

 

 

 

雷光が爆発し、集束する。

 

『さて…軍勢による拘束が解けて直ぐ様、此方へ攻撃を仕掛けなかったのは、私を侮ってくれていた為…かな?

だとしたら、善意による忠告だ。

その認識は改めた方が良い。』

 

光が止んだ其処には、鉄身の巨人が立っていた。

鮮烈な赤と金色の、趣味の悪い色使いの巨躯。

私たちが打ち倒した…と、思っていた軍勢と共通した光の核を持つが、その意匠はいくらか異なる。

体格は二回りほど大きく、その頭部には日本のサムライを思わせる赤い角飾りのようなものが施されていた。

 

「…これは決闘なのでしょう?

ならば、名乗りも上げずに即座に終わらせてしまうのは、無作法であろうと判断しました。

例え…相手が“魔術使い”じみた、伝統無き輩であったとしても。」

 

私の挑発に、ガリアスタが纏う巨人の眼光が閃く。

 

『ハ、良く言った…ッ!

しかし、宣言した筈だがね…』

 

言葉の途中で、巨人の姿が消える。

バチン!という稲妻が弾ける音と共に、巨大な魔力の鼓動が私の傍らに出現した。

 

『これは、実験なのだよ。

古くさい決闘だ、などとは一言だって言っちゃいない。』

 

「……ッ!」

 

迎撃は間に合わない。

即座にルーンを併用した防御を…

 

『些か遅いな、フラガの継承者!』

 

瞬間、拳撃。

 

ダンプカーにでも追突されたが如き衝撃が、私の左半身を襲った。

 

「ぐっ……!?」

 

咄嗟に庇った左腕ごと、胴を貫くダメージ。

たまらず吹き飛ぶが、そのまま壁に打ちつけられるコトだけは避けようと壁を蹴る。

 

『ほう、流石だ。

並みの魔術師ならば、今の一撃で全身の骨がバラバラに砕けていただろうに。』

 

よろめきながらも、拳を放ったガリアスタを睨み反撃に転じようとしたが…顔を上げるより早く、再び閃光音が弾けた。

瞬間移動の様な、正真正銘の奇跡などでは勿論無いだろう。

電速だ。

文字通り稲妻が如き速度で、あの巨躯を駆動させ迫り来る。

しかし、させるか…!

硬化と探知のルーンを強く意識し、攻撃に合わせて拳によるガードを…!

 

激しい衝突音と共に、空間が鳴動したのを感じた。

眼前には、拳を突き合わせるアーマード・ガリアスタ。

 

『もう合わせたか…!

凄まじいな…前言撤回だ、恐ろしく迅い。

ならば…』

 

にらみ合うガリアスタの頭部装甲が、展開される。

鉄身の巨人の顔面全てが大きな一つの孔と成り、そこにはおぞましい程の電気魔力が蓄積されていた。

これは、不味い…っ!

離れようとするが、今度は突き合わせた拳が展開して腕を拘束する。

 

「……っ!」

 

『逃がさんさ、受けたまえ!

破壊者(デストロイヤー)”の焔をな!』

 

蓄積された魔力が、閃熱(ビーム)となって放射される…!

避けるには、拘束を解かねば…っ!

 

「ぐ…!

あぁぁぁぁぁぁぁぁアッ!!!!」

 

閃熱が、襲い来る。

ルーンの守りを貫いて、威力は私に確かに伝わっていた。

 

『ほう、この威力を耐えるか!

どこまで保つか見物だなッ!』

 

己の肌が、髪が焼ける匂いなど、久方ぶりに嗅いだ気がした。

嗚呼…しかし……

 

『…む!』

 

ガキン!という大きな金属音と共に、ビームが停止する。

奴は、己の腕をまじまじと見つめた。

そこには、変形した拳も私の姿も無い。

 

当然だ。

奴の拳は、私の足元に転がっている。

熱による痛みなら、耐えられる。

どうせ貫かれるならばと、ルーンによる強化魔力を拳に集約し、拘束を破壊した。

ルーンを除くと攻撃対策は素の身体強化だけだったので、かなりのダメージを負う結果となってしまったが…問題はない。

この仕事をこなしていれば、珍しくもない程度の負傷だ。

 

『重ねて言うが、流石だな。

だが、この段階でその体たらくでは先が思いやられると言わざるを得ん部分もある。』

 

…私が破壊した拳は、既に再生していた。

あれを、奴はあと何回行うコトが出来るのだろう。

ましてや、直感がある。

あの鎧も、あの光線も、あの速さも。

奴にとっては()()()()()()()

なぜなら…私の中の伝承が、その切っ先を向けるに値すると判断していないからだ。

つまり現状、奴は些かほども追い詰められていない状況なのである。

 

『ともあれ、実験を継続だ。

まだ体は問題無く動くだろう?

伝承保菌者。』

 

ならば…そう仕向けてやらねばならない。

 

「…無論です。

当然、貴方の実験台などとして踊り続けるつもりも無い。」

 

奴に()()()()()を突き付ける為の、状況へ。

 

『結構。

では続けよう。

我がアーマー…』

 

言葉を続けながら、奴の鎧は稲光を纏った。

 

『mk-44T.re。

“ソーバスター”の性能実験をね。』

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧、ありがとうございます!
ということで、分断回でした。
キャスター陣営スタッフは、当初呼ぶつもりだったメディア想定の人員とは大きく変動しています。
トニーがなんでもできちゃうので、必要最低限です。
そのスタッフも、極力オリキャラは一人も含ませない予定なので、こういう形に。
今回登場した占星術師・フリューガーは、ロード・エルメロイ2世の事件簿に登場した魔術師です。
同じ中東魔術師なので登場してもらいました。


それと、アトラムの装備であるソーバスターというアイアンマン・アーマーはMCUには登場していない、原作からの出典物です。
原作では、ロキが操っていたのでお馴染みな“デストロイヤー”という魔法の鎧をモデルに、トニー・スタークによって製作されています。
MCU版でも、ソー一作目で登場しましたね。
MCU版シビルウォーの時、ロス長官はハルクと共にソーも危険物として挙げていました。
なので製作こそされたかは不明ですが、ソーバスターもハルクバスターと同時に設計されていてもおかしくないのではないか…という妄想。

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