しかも(少なくとも、今の所は)赤色!!まだまだ一マスですが、ようやく「チョッピリでも世間に認められ始めた」感がして、ヤバいくらい嬉しいです。
ありがとう読者諸氏
本当に…本当に…
「ありがとう」…
それしか言う言葉がみつからない…
姫神と別れて数分。夕焼けの中、帰り道を一人黙々と歩いていると…
とうるるるるるるるるるん、るるるん。
買ったばかりの携帯が鳴った。
何の気なしに、コレの番号が分かるヤツは一人しかいないから姫神だろうか?と思って、あだ名で自分を呼ぶ「彼女」の声を予想しつつ出たのだが…
「ハーイJOJO。ちょっと仕事を頼まれてくれるかしら?」
「…これだから暗部に片足突っ込んでるヤツは。どーやって買ったばっかの番号調べたんだよ…」
「彼女」と同じようにあだ名で呼ばれはしたが、当然テンションはダダ下がりだ。
デート(自覚無し)の余韻を吹っ飛ばす無粋な輩——結標に対して、気だるげに一言。
「で、今度は何だよ」
「話が早くて助かるわ。…今回の用件は二つ。一つ目は、まずは会って欲しい子がいるのよ。——私の『仲間』の一人でね。ま、それについては追々…二つ目はちょっと面倒な話だから、直接会ってから話しましょう。例の装備は必ず持ってきなさい。」
「言われなくても。武装もせずにテメーらのアジトに入り込んだりしねーっつーの。」
言いつつ、城島は眉をひそめる。「装備」というのは勿論例の手甲とマフラーのことだが、必ず持ってこいとは今まで言われなかったからだ。
「場所は?」
「第七学区にある雑居ビルの密集地域…俗称としては『蜂の巣』だとか呼ばれているわね。位置情報はメールで送るからよろしく。」
「メールアドレスまで…」
言い切る前にプツリと切られる。
コレは今までとは違う、相当に厄介な仕事になるかもしれない。何となくそう考えながら、暗くなり始めた黄昏時の街の中で歩を進めるのだった。
『蜂の巣』。
一言で表すならば、結標が言った通り「第七学区の一角を占める雑居ビルの密集地域」で間違いないのだが…最たる特徴として、商用施設として貸し出されている割にはとにかく賃貸経営が杜撰である事が挙げられる。
言ってしまえばその審査はザルも良いところで、もはや誰が何の為に借りているのかも不透明な魔窟と化しているのだ。
家出した少年少女の当面の住処とかならまだ良いほうで、 危険な大型ペットの檻や盗聴器等の作成場所、宗教法人として認められていないような者達の根城にまでなっているらしい。
呼び出された場所として多少引っかかる点があるとすれば、その特性上、
(にも関わらずここを選んだってこたぁ、長期滞在用のアジトとしてじゃあねーな。精々二、三回使えれば良い程度の『止まり木』ってトコか?)
静々と考えを巡らせつつ、連絡にあった番号の部屋の門戸を叩くと…
「は……?」
「………。」
ショタが出てきた。
感情の起伏が乏しいように見える無表情とかなり整った容姿が目につくが、他にはこれといって特徴もない物静かな少年だ。見たところギリギリ小学校高学年くらいか?この子どもが例の「会って欲しい子」とやらだろうか。
(なんだこの
ボロ屋を訪ねると子供が出てきた…この滅多にないレアな状況に対して、あくまで城島は冷静に対応できた。
そう、玄関の扉を開けたらロリ(年上)が出てきたというレアすぎる体験を既に経ていた城島にとって、この後の展開を読むのはそう難しいことでは無かったからだ…!
「えー、ゴホン。おたくの娘さんに呼び出された城島ですけども、結標の親御さんで間違いありませんか?」
そう。察するに、この少年が結標の父親なのだろう。
恐らく彼は学園都市の非道な人体実験とかで、体を縮められたりしてしまったのだ。なぜ結標が
父親がこんな姿になったという事実に、彼女が性癖を拗らせてしまった理由が垣間見える気がするが…そこは触れないどいてやるのが優しさだろう。
ともかく…今までは嫌々従っていたに過ぎないのだが、こんな事情を知ってしまったとあればそうもいかない。
何という悲劇だろうか!親としての尊厳を、人としての自由を踏みにじられながら生かされているというのだ。意外なことだが、結標には仲間が沢山いる。それが意味することは、彼女と似た境遇の者が多くいるということ…つまり、犠牲者の数はそれだけ多いということでもある。
悪魔の所業だ、こんな残虐なことをする恥知らずは生かしておけない。と、城島の胸の内には燃え滾るような義憤の心が湧き上がっていた。
「………。」
しかし、どうした事だろうか?困った事に、さっきからこの子ども、一言も喋ってないのだ。
自身の圧倒的推理力に感心していたのも束の間、膠着してしまった状況に対して早くも閉塞感を感じ始めてきた城島だが…何事かといった様子で部屋の奥から出てきた結標に気づいてホッとした。
「結標…こんな事情があったってんなら、先に言ってくれりゃあ良かっただろ。…しかしだ。そうと分かれば、オレも黙っちゃいられねえ。喜んで手を貸すぜ!」
「アンタ何言ってんの?」
城島のバカ丸出しな推理を聞いて、結標は腹を抱えて爆笑していた。
一応擁護しておくと、この学園都市の非常識性、及び非人道性の両方を体験しているのに加えて、小萌先生という年齢詐欺師に出くわしてしまったのだから、こんなぶっ飛んだ考えに至ってしまうのも無理はないとも言える。
むしろ「相手の裏をかく」ことが肝要な戦闘においては、「一本筋が通った情報からいかに突飛な発想を生み出すか」というスキルは重要なのだが…今回はそれが裏目に出てしまった。
「あっ、あの子が、ぷぷっ…あの子が私の何ですって!?ひーっ、お腹痛い!」
「うるせえぇぇぇぇ!!さっさと用を言えっつってんだろダボがあああああ!!」
さっき(かれこれ五分以上前)から必死に話を逸らそうとしているのだが、なおも結標は思いっきりバカにしてくる。
五分前までは「しゃーねぇ。一肌脱いでやるか…!」くらいのやる気はあったものだが、もはや何もやる気が起きない。そろそろ帰りたいと思い始めていた。
「わ、分かったわ。ええっと、何だっけ…ぷぷっ」
「お前ホントいい加減にしろよ…?」
「ああっ、そうそう。会って欲しい子がいるって言ってたわね、それがこの子——
そう言って先程玄関に出てきた少年を指し示す結標。
一見なんて事のないただの子供だが…学園都市において、外見は信頼できるステータスではないという事を城島は十分すぎるほど学んでいた。特に高位能力者は下手な大人よりも恐ろしいものだ。
「で?ソイツとオレを会わせてどーしようってんだ?」
「それは実際に——そう、
「………。」
そう言うなり、結標は少ししゃがんでからカクンと冴木少年の方に首を傾け…何かを待つようにその姿勢を維持した。
一体何をしているのか城島には皆目見当もつかなかったが、結標の「繋いでから」という言葉が耳に残っていた。
「え…な、何やってるの、ケンくん?」
「は?」
「………。」
それを見やった冴木は…何を思ったか、部屋の隅に積まれてあった布団を敷き始める。
どうやら冴木の行動は結標にとっても不可解だったらしく、結標も困惑している。
そうこうしているうちに布団が敷かれ終わると…本当にどうした事だろうか、おもむろに布団へ結標を仰向けに押し倒し、そのまま馬乗りになった!
「ふ……え…?ケン、くん?」
「………。」
真っ赤に顔を上気させている結標の様子は…なんか満更でもなさそうだ。それでいいのか。…いいんだろうなあ。
その間にも冴木は結標の頭を両腕で掴み、そのまま顔を近づけていき——コツン、と額同士をくっ付け、そのままワシャワシャと手を動かし始めた!
「わ、わひゃあああぁぁぁ!?!?」
「………。」
「…オレは何を見せられてんだ……?」
呆然としながらその様子を眺め、「ああ、『繋いでから』ってそういう…」なんてバカなことを考えている城島が、このままでは用件を聞く前に(主に結標が)
ハアハアと荒く息を吐きながら片腕で目を覆っている結標の姿は——その『いつもの』服装も相まって——完全に「アウト」だが、そんな彼女の様子を気にも止めずに、冴木少年は近くの壁に背を預けて、腕を組みながら目を閉じてしまった。この少年、結標の扱いが若干雑に見えるのは気のせいだろうか。
冴木少年は黙して語らず、結標は『事後』状態。先程の喧騒から一転して静かになったこの場で、城島はただ立ち尽くすことしか出来ないのだった。
公判に続く〜。