PSO2 黒き光、進化の可能性   作:ヒイラギP

4 / 4
落ちたら拾う。当たり前だよなぁ!


拾われてナベリウス

落下の衝撃は、ヒイラギの想定を遥かに絶するものだった。ブースターによる地面方向への加速が計算外だったからだ。

機体状況を軽いスキャンにかけると「断界」「斬世」以外の武装は使い物にならなくなっている。更に関節部に修復不可能のダメージを受けていしまい、動くことすらままならない。

「断界」「斬世」を構えたヒイラギはそれ以上動くこともできずに上空から迫る無数の赤黒を見据えた。

その時。一瞬時が止まった。クロノヘルツと黒き光を持つヒイラギは時間への絶対的な権限と耐性を持つ。だからこそ、その中で術者を除けば唯一、静止世界を知覚する事ができた。

術者の姿は見えない。なのでヒイラギはひとまず術者を見つけることは後回しにして、「断界」「斬世」にありったけの黒き光を注ぎ込んだ。

辺りの時空が歪みきって、外から見えなくなるほどの膨大なエネルギーが竜巻のように荒れ狂う。掲げられた「断界」「斬世」の間を中心として対象の時間を無かったことにする。という能力を付与した黒の極光が静止したままの赤黒に狙いを定めた。

それを放つ瞬間に時間停止は解除され、まるで宇宙の闇を切り取ったかのような暗黒の柱が他の惑星からでも観測できるほどに大きく立ち登ると、その後にはアレほどいた赤黒は一欠片も残ってはいなかった。

それもそのはずだ。「断界」「斬世」。そしてヒイラギが果たしたのは対象の時間の消滅であり、死や生ではなく存在そのものが世界という記録媒体から無くなる。肉片など残るはずがないのだ。

 

瞬間。ヒイラギの視界が明滅する。限界を超えて動作した腕の関節が火花を挙げているのがわかった。ヒイラギは黒き光を使い、意識を強く保とうとするが、一つの生命として確立したものの、機械として作られたヒイラギにとってプログラムとは、生物で言うところの生体機能。本能のようなものであって、万全ならまだしも傷つき意識の朦朧とした今の状況では抗うことはできなかった。

徐々に力を失い地面に倒れ臥すヒイラギ。赤黒を全滅させたヒイラギを待っていたのは、ダメージ過多から来る緊急メンテナンスによる機能停止だった。

 

 

一方その頃。緊急事態といって過言ではないほど大量のダーカーの反応が一瞬にして消滅した。更には比較的安全とされていた惑星ナベリウスから未知のエネルギー反応を示す黒い柱が登った事を確認した為に、オラクル全体が混乱に陥っていた。

 

 

「新人アークスはここに残れ!俺たちはナベリウスに行き、調査をするぞ!」

「わかりました!聞いたか!我らが隊は今からナベリウスへと向かう!各員キャンプシップに乗り込め!」

即座に対応する熟練の者もいれば

「おい、聞いたか?安全だったはずのナベリウスに大量のダーカーが出たって、10年前に生活区域にダークファルスが襲来した時もそうだが、情報と発生する事が噛み合ってない!上層部は何か隠してるに違いないぜ」

「おいおい、そんなこと言って暗部に消されちまっても知らないぜ?まぁ、本当にお前が殺されちまったらその聞き飽きた陰謀論も信憑性を持つってもんだぜ」

陰謀論を語る者。事態を軽視し、軽口を叩く者。

「・・・これは未知?不確定の揺らぎが、可能性を際限なく拡張させている・・・ならば、彼女を・・・だが・・・」

新たなる可能性を感じ、期待する者。

「なんだ、この反応は……?誰の眷属でもないダーカーが大量にいることもそうだが、一瞬で消滅?まだまだ僕でもわからない事だらけだな。あぁ、早く全知存在へと至らなくては!!」

未知を前に全知への憧れを強める者。

「よし!武器もユニットも完璧。メイト系アイテムも買っておこう」

「なぁ!危ないからやめとけって相棒!ナベリウスがやばいって放送聞いただろ?俺たち新人はカフェにでも行って事が終わるまで待つべきなんだって!」

「おい、アフィン!引っ張るなよ!わかったから、わかったてばー!」

世界の中心で世界を変える者。とシップ内は様々な人で溢れていた。

 

 

出動したナベリウス調査隊は、異常な事象が起きたと言うのに、いつもと何も変わらない環境のナベリウスにある種の薄気味悪さを感じながらも調査を進める。

「あんなにダーカーが出たのにいつもと変わらないなんて、なんか不自然ですよね隊長」

「ああ、ダーカー因子もなんならいつもより薄いくらいだ。ここは逆に気を引き締める場面だな・・・。おい!何もないからって気を抜くなよ!」

隊長の激励でだらけ始めていた隊に喝が入る。最後尾あたりで私語をしていた隊員が副隊長に頭を引っ叩かれた。

それからしばらくして、隊員の一人が何かに気づく。

「何か音がします。パチパチってフォトンを込めすぎたコンデンサーみたいに・・・」

隊長はそれを聞くとすぐさま隊を音の聞こえたという向きに方向転換させると慎重に進んで行く。

草木をかき分け、たまに襲ってくるロックベアやアニギスなどの原生生物を撃退しながらたどり着いた先では、見慣れた、それでいてこの場において無視できない違和感を放つものがあった。

「アレは・・・キャストか?だが、我が隊より先にナベリウスへ向かったアークスはいないはずだが・・・とにかく保護だ!気を失っているから一旦連れて帰ろう!」

隊長の判断で、調査隊をキャンプシップへと戻す時、副隊長が耳打ちする。

「いいのですか?我が隊の命令はナベリウスの調査であり、まだ終わっていないはずです」

副隊長の言葉に隊長はニヤリと笑って言う。

「これは俺の勘だが、あのキャストはダーカーとやりあって気絶まで追い込まれたのではないかと思っていてね。つまりは重要参考人であり、あのキャストから聞いた話をそのまま報告してしまえば俺たちの仕事はそれでおしまいだ」

その堂々とした職務怠慢に副隊長はため息をこぼすと、無言で隊長の肩を拳で殴ってキャンプシップに戻っていった。

 

キャンプシップはヒイラギを乗せてアークスシップに向かう。そこでは確かに何かが始まろうとしていた。




やべぇな・・・「断界」「斬世」のこと強くしすぎたかな?
時間停止を使ったのは全知君ではありません!繰り返します時間停止を使ったのは全知君ではありません!早く正体を明かしてーなぁ!
設定のガバは無いはず。キャラのブレは仕方ないよね・・・シオンとか再現できるわけないだろ!勘弁してくれ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。