鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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ちょっと休憩。
幕間書こう。

ぐだぐだファイナルやった方のカルデアだと思って下さい。


幕間・鬼夜叉 思ひ出すとは

「あれ?ここは?」

 

カルデアのマスターが目を覚ますと知らない場所に立っていた。

やけに陰険で暗い場所。

尤も、今更この程度で驚く程の事でも無いのだが。

 

「……何故ここに居る。」

 

「長政さん!」

 

「………その名で呼ぶな。それはオレじゃない。それにそんな奴の事は()()()()()

どういうワケか、お前はこの世界に入り込んだワケか。

……ここはオレの心象風景。まぁ、有り体に言えば夢の中だな。」

 

足元さえ危ういほどに、どこまでも続くような深い闇。

 

「ハァ…来ちまったならしょうがない。そのうちカルデアからどうにか迎えがくるだろ。だから…」

 

そこまで言った所で辺りの雰囲気が一変した。

カチャリ、カチャリと鎧を戦慄かせ、

復讐という正義の元、屍たちは動き出す。

それは怨みの化身。

浅井長政…もとい鬼夜叉という個人への激しい憎悪。

その具現がなす虚像である。

 

「そうら、来たぞ…自分の身を守れるならよし、出来ないなら後ろに隠れていろ。」

 

そう言い放ち、夜叉は構える。

それを見たマスターは夜叉の後ろに隠れながらも引かない。

どうやらマスターとして指示を出す気の様だ。

 

「…いい度胸だマスター…死ぬなよ。」

 

戦闘が始まった。

 


 

刀で斬り殺す。

拳で叩き殺す。

脚で踏み殺す。

 

数多の亡霊をものともせずに夜叉は蹂躙する。

 

頭蓋が砕け散る。

臓物を引き千切る。

脳漿をブチ撒ける。

 

何時しか辺りは静かになっていた。

 

 


 

『あ?もう一人の俺か…?なんだって俺に…いやまぁ、俺が一番詳しそうだし是非もないよネ!!!

まぁ、冗談は置いといて。………アイツは夜叉(オレ)であって長政()じゃない。

分からないって?そうだな…アイツは間違い無く夜叉では有るが、長政じゃない。長政が足りない。………()()()()()なんだよ。長政に戻れず、戻る姿も忘れちまった。馬鹿だろう?俺もそう思うぜ……ただ、馬鹿じゃなきゃ出来なかったのさ。』

 

…スター……マスター……!

 

「!」

 

気が付いた時には戦闘は終わっていた。

「戦ってる最中に居眠りか。随分な胆力だ。

流石人理救済のマスターと言うべきか、それともただの馬鹿なのか…?」

 

やれやれ。と言ったような苦笑いで問い掛けてくる。

その顔はまるでいつもの長政のようで…どこか懐かしげだった。

 

 


 

「……!誰か外から入ってきた。行くぞマスター。」

 

「わっ!ちょっと待ってよー!」

 

時折現れる亡霊を薙ぎ倒しながら闇を進む。

夜叉も無傷では無かったが構わない、どうせ傷は増え続ける。

そして出会った。

 

 

 

「……織田信長、長尾景虎か。成程、アンタらが迎えに来たわけか。」

 

吉法師でも、吉でも無く、織田信長と。

姉さんでは無く長尾景虎と。

自分はあくまでも浅井長政では無い。

故に、そう呼ぶのは俺に相応しくない。

 

「……迎えに来てくれてありがと…!」

「ッ!下がれマスター!!!」

 

え__そう考える前に槍の穂先と銃口はこちらを向いていた。

 

 

しかし、それらが立香に届く事は無く。

二つの殺意はマスターを庇った夜叉を穿った。

 

「ッ!夜叉さん!二人共、どうして!」

 

「どうしてじゃと?」信長が言う。

「当たり前じゃないですか。」景虎が続ける。

 

「その男は、わしを裏切って謀殺し、あまつさえ目の前で見捨てたのじゃぞ?」

「彼は、私を疎んで消そうとしたんです。恨むのは当然では?」

 

そんなことはない。そう言おうとしたマスターは言葉を続けられなかった。

 

「……まぁ、そういう事だ。ソイツは自らの私欲の為に友を、家族を謀殺したってわけ。」

翠色の髪。戦いに適した大柄な体躯。

「酷い話だよなぁ?ハハハハッ。」

過剰なまでに搭載した武装と薄ら笑い。

 

()()()()

鬼夜叉と呼ばれた目の前の男の本体。

それがこちらを射殺さんとばかりに身構えていた。

 

「あ~マスターちゃんに嫌われたく無いから先にネタバレするね?

俺…もとい俺達はソイツの自責の念から引っ張り出された幻影だよ。

浅井長政は本来二人を殺していない。そんな筈はない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

程々にドラマチックで程々に正義感を満たせる程々の悪役。

それを無意識下に求める、そんな醜い人の性、その終着点がソイツなワケで。

実際、何度も経験あんだろ?オレ。」

 

「…まぁな。幾度と無く、本当に二人を殺める事になったが。」

 

ヘラヘラと嗤いながら長政は問う。

 

「折角だから見てもらえよ。()()()()と呼ばれたお前をさ。

ああ、俺は見物させてもらうからさ。

……あ、マスターちゃーん、これ使いなよ。」

 

そう言うと長政はどこからとも無く椅子を取り出し、マスターの直ぐ近くに設置した。

 

「…」

「…」

 

二人が銃を、槍を構える。

 

「……ああ、やろうか。それでアンタらが満足するなら。」

 

無表情に、夜叉は言い放った。

 


 

 

 

 

視界が霞む。

刻まれた疵が増える度に何かを忘れる。

名前を、記憶を、友を、家族を。

何の為に戦うのかさえ、思い出せない。

 

膝を付く、同時に顔を撃ち抜かれ、胴を断たれ。

既に人のカタチは残していない。

積もる怨嗟に焼かれた心は色を喪い、感じるはずも無い幻肢痛に苛まれる。

 

では何故、自分は立ち上がるのか。

自らの存在の証明?

馬鹿馬鹿しい。

過去との隔絶?

くだらない。

 

本当は分かっている。それは。

 

 

 

 

 

 

「開けろ!デトロイト市警だ!」

「ぶっへぇぇ!?」

 

………少しはシリアスに耐えられんのか、コイツは。

 

 

 

突然、偽長政の背後にドアが出現し、蹴破られる。

勿論長政は吹き飛び美しい弧を描いて顔から落下する。

 

「作者曰く『シリアス寄りはマジNG、幕間くらい楽しくやろうよ』だってさ。

後、急に思い出したからどうしても使いたかったらしい。」

 

「メタい!こっちの俺もそっちの俺もメタいにも程が有るよなァ!?」

 

 

 

 

 

 

………ああ、拍子抜けって奴だな。

だがまぁ、大分正気に戻れた。

まさか狙って…いや、有り得んか。

どうでもいいさ、んな事は。

 

「……ようやく思い出したよ、なんで負けられないのか。」

 

オレは、マスターのサーヴァントだからな。

どうせなら……カッコイイ所見せたいだろ?ハハッ。

 

____ああ、ようやく。漸く思い出したよ。

()()()()

 

そうだ。オレは二人を手にかけた。

きっとそうなんだろう、人々がそう信じるならば。

だから、オレが二人に恨まれるのは当たり前だ。

 

それでも、前に進む為。

マスターのサーヴァントとして恥じる事の無いように。

 

「悪いけど、()()討たせてもらうよ。吉、姉さん………そして長政。」

 

思い出した。お前はオレだ。お前はオレの…いや、俺はお前の影法師だ。

影法師が本物に至るには……本物を超えないとな。

 

「ええ!?俺も戦わなきゃ駄目!?んな無茶な,HAHAHA……………誤魔化し効かねぇか。成程。

………この際プライドは抜きだ!かかって来いよ。」

 


 

突き出される槍を踏み付け、自由を奪った景虎を盾に銃撃を防ぐ。

そして景虎を抱えつつ信長に突撃。圧切を景虎に突き刺し信長もろとも貫く。

 

「こふっ………夜叉君…女の子には優しくするように言いましたが……?」

言っとけ、本当に女として扱って欲しいなら二人とももっと淑やかさを身に付けるんだな。

「言って……くれるのう夜叉ァ……クハハ……」

 

______ありがとうよ。

そう言うと夜叉は突き立てた刀を横一文字に振り抜いた。

過度なダメージで二人は消滅するが…その顔に憎悪は無く、何処か満足気だった。

 

「夜叉さん!!!」

 

寄るなマスター。まだ終わっちゃいない。

「だな、そこで死んだフリしてやがるボンクラを始末しねぇとな。」

「…………あ、やっぱバレてる?」

「たりめーだ。意識下の幻影とは言え俺は俺だ。どーせ油断したとこを後ろからバッサリだろ?」

 

 

____長政。マスターを連れてけ。こっから先は巻き込みかねん。

 

「はいさりょーかい。ゴホン…『FBI open the door!!!』」

刹那、虚空より出現した扉が爆風と共に吹き飛ぶ。

その先に広がるは見慣れたマスターのマイルームだった。

 

「行くぞマスター。邪魔しちゃ悪い。」

「え!?でも、夜叉さんは!?」

「だから邪魔なんだって。男の矜恃があんのよ、俺にもさ。いいから。」

「もがふごめが!?」

 

マスターは長政によって外に引き摺り込まれる。

 

「………マスターが言ってんだ、しっかり帰ってこいよ?」

……当たり前だ。

 

言葉に出さず、されど思いは強く。

夜叉は目の前の敵(長政)と相対した。

 


 

その後、暫くして奴は帰ってきた。

お疲れーと気軽に声を掛けてもサクッと無視。

前となんも変わらんさ、見た目にはな。

まぁ、多少。多少は気が楽になったんじゃないか?

俺にとっての家族のように。アイツなりに守る物が見つかったなら。

元々、浅井長政って英霊は守る物がなきゃ本領発揮できないポンコツだからな。

守る物が自分にとって大きく、重くて。

自分に失うものがない時にこそ俺…俺たちは一番強くなれるからな。

ああ、俺?俺はそんな無茶出来ないよ。

勿論、家族の為なら命も何も惜しかないけど、あんまし簡単に死んで泣かせる訳にも行かないし。

俺だってずっと後悔してんだよ。

俺の力不足で吉と帰蝶さんを死なせて。

悲観した姉さんに後を追わせて。

市を独りで置いて行って。

 

で、話の内容だが……何をしたんだよ……

 

『夜叉さん!!!』

『…………マスターか……何だ。』

『えっと…その、夜叉さんは色んな事を覚えられないけど、

時々でいいから、私の事も思い出してくれると嬉しいな!』

 

…マジかよマスター。強いな。

で、なんて返された?

……………ん~成程。だから怒ってたのか。

あースマンね。俺には分からんよ。

学もない野武士みたいなもんだからさ、俺。

そうだな……紫式部あたりなら分かるんじゃないか?聞いてこいよ。

おうおう、良いって事よ。じゃーなー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハハッ。中々やるじゃないの。閑吟集か。

覚えてない割にゃ、よく勉強してやがるなぁ全く。

 


『思い出す、か……冗談キツイぜ。そうだな…

思ひ出すとは 忘るるか 思ひ出さずや 忘れねば……ってとこか。

意味?さぁ、()()()()()なぁマスター。ハハッ。』


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出すというのは、忘れていたということだ。

忘れないでいれば、思いだすこともない。




ほぼほぼ二話分!!!長い!疲れた!
書こうと思ってから毎日100~200字。
本当に長かった。

《スキル更新》

被虐体質A→幻肢痛EX

自身にターゲット集中状態(1ターン)を付与+NP獲得量up(1ターン)



自身にターゲット集中状態(1ターン)を付与+NP獲得量up(1ターン)⇧+自身に被ダメージの度に攻撃力アップの効果を付与(3ターン)⇧

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