鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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序章は一番難しい……


夢幻の如く

切り結び、打ち払う。

矢を射り、駆ける。

戦い始めてから数分。

気付いた。この守護者の戦い方は、俺に似ている。

多数の武器をそれなりに修め、状況に合わせて切り替える。

実によく似ている技術だ。

 

だが、

戦場とは、技術だけて生き残れるものではない。

 

槍を回転させ、砂を巻き上げる。

それに気を取られた瞬間左から抜いた打刀を振るう。

かすり傷で避けられたが距離は詰まった。

そのまま足を蹴りつけ体制を崩すと組みながら投げ落とす。

組み打ちは武士の嗜みってね。頭から落としたがまだ元気の有る守護者。

丈夫だねぇ。良い事だ。

力いっぱい踏み付ける。

 

「ぐぁは!?ッ……!!!」

 

おお、よく返した。偉いぞ。

 

だが、まだまだ。

さっき組み付いた時に引っ掛けといた紐を引き、引き寄せつつ切り付け、刺し穿つ。

浅いな。ハハッ。

紐を巻き取りながら振るい、マグロの一本釣りのように叩きつける。

フィーッシュ!!!

 

「が!?あ゙ぐげば!?グッ!」

 

おお、これも何とか凌ぐか。

いいねぇ。楽しくなってきたよ。

 

これがサーヴァント。これが狂戦士か。

さっきの狙撃。俺と所長ちゃんを狙ったものだった。

それならまだいい。避けられたしね。

問題はだよ、それを俺の家族に向ける可能性があったって事だよな?

 

ハハハハハ。それだけで万死に値する。そう思える。

成程。ぶっ飛んでんな。これが狂戦士か。

だが、それがいい。

 

「構えろ守護者。お前の全力でな。」

 

柄じゃないが、真正面からぶち抜いてやるよ。

 

 

 

守護者の詠唱が終わる。世界が書き換えられて行く。

 

草一つ生えない寂しい砂漠に、無数の剣が刺さっている。

成程。こいつがお前の力か。面白れぇ。

大量の剣が、剣が迫ってくる。

そんな状況においても俺は笑い続けた。

上等だよ。

 

「我が進むは鬼の道。血濡れて怨嗟の積もる果て、神仏さえ斬り喰らい。」

 

さらに剣が迫る。

 

「かくして鬼は憎悪に灼け、掠れた彼方を夢想する。」

 

そして、身体に刃が突き立てられる瞬間、

 

「たといその場に至りて我が身滅べども、我が王が為の道を拓こう。…『王が為、覇道進め夜叉』。」

 

全ての剣を、否、その世界(固有結界)さえ斬り捨てたのだった。

 

「何だと!?ッァガ!?!?」

 

驚愕に目を見開く守護者を全身全霊の右ストレートで殴り倒す。

これはもう起き上がれんだろ。

 

お前は強かったよ、坊主。

だがな?何を守るのか、その為に自分の全てを捨てられるのか。

お前には覚悟が足りなかったな。

守ると決めたら、全部捨てる覚悟くらい見せてみろっての。

 

()()俺の勝ちだな。

 

 

 

 

 

よう!マスターちゃん!そっちも終わったか?

ん?何だそのオッサン。

 

「いや―――いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!

 だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!

 どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!?

 誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!

 やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない!

 生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」

 

………ふむ、中々に切羽詰まった状況と見た。

さて、と。

 

マスターちゃん、俺はどうすりゃいい?

奴を殺すか?それとも所長ちゃんを救うことを優先するか?

どっちもってのは多分無理だ、時間が無ぇ。

 

……だろうねぇ。そういうマスターちゃんの甘いとこ嫌いじゃないぜ。

 

鋼矢・神縫。ダッセェにも程があるが、ま、名は体を表すってね。

さぁさ、神様(神性持ち)はご退場くだせぇ。

 

レフ教授……長いな、おっさんを狙撃して身体ごと縫い合わせる。

 

「ぐぉ!?」

 

ヘイヘイヘイ、若い子に手を出すのは頂けないなぁ。

通報されちゃうよ?ま、その前に俺が潰すけどね。

 

「成程、この先はブラックホールもとい太陽か。そりゃ、いい事を聞いた。」

 

いやぁ、日頃から人々の救済お疲れ様ですカミサマ様。

 

 

 

 

身体をお休めになるのに少し旅行でも如何か?

 

「あ、ほぃーっと!」

 

「ナ!?あ、グァァァァァァァ………!?」

 

行ってらっしゃーい。

 

 

よし、悪は去った。(大本営発表)

でもまだ問題がある感じだろ?

 

「所長の身体が……カクカクシカジカ」

 

シカクイムーブ ……成程ね。

 

そりゃ不味い。どうやっても生きて帰れないじゃねえか。

ん~……所長ちゃん。

 

「何よ!笑うなら、笑いなさいよ!う、うぅぅ…」

 

泣くな、泣くなって。よーしよしよし。ほら、落ち着いたか?

………生きたいか?

 

「へ?」

 

この先、生きていた方が辛いことがあるかもしんないが、それでも生きたいか?

 

「……私は…」

 

……本当に生きたいなら、生きたいと言ってみろ。

 

「……わ…たし……は………」

 

言えッ!

 

「わたし、もっと色んな事を知りたい!皆に認めて欲しい!だから、だからッ…」

 

「わたし、いきたいよ!たすけてよ!」

 

 

 

…よく言った!なら俺も覚悟を決めないとね。

マスターちゃん。その令呪全部で俺に命じろ、

『所長ちゃんを救え』ってな。

ん?どうやるのかって?ま、それは後々。

良いからやれ!

 

「令呪を持って命ずる!バーサーカー!所長を救って!」

 

ハハッ。了解ィ!!!

じゃ、所長ちゃん。ちょっと失礼。

 

「ふぇ?」

 

ズキュゥゥゥン!!!

 

「!?!?!?」////

 

所長ちゃんの魔力を少し貰い、令呪のバックアップで無理矢理発動する。

所長ちゃんの身体が一瞬輝き___

 

『!?どういう事なんだ!?所長の身体だ!傷一つ無い!』

 

やったぜ。所長ちゃんの身体を離す。

 

「ッ~!!!ッ~!!!」ペシペシ

……痛い痛い、そんなに叩くなっての。仕方ないだろ?

死ぬよりマシだって割り切ってくれ。

これで全員揃って戻れるな。うんうん。大団円が一番だな。

 

足先から灰のように消えて行く。

成程ね。所長ちゃんは燃え尽きて死んだのか。

辛かったな。よしよし。

 

「え…どういう事……?」

 

俺自身の意思、対象の魔力、令呪三画の行使。

 

この三つを重ねて初めて可能な俺の能力。

ま、カッコ良く言ってるが名前さえ無いタダの身代わり自爆宝具さ。

所長ちゃんが焼け死んだ、という事実を俺に上書きした。

 

「そんな……そんなのって……」

 

おいおい泣くなよ。せっかく顔に恵まれたのに台無しだぜ?

ほら笑え!笑ってられるのが一番だからな。ハハッ!

お、お前らも退去が始まったか。

…じゃ、俺の孫の孫の幾つか先の子孫よ。

お前の旅はこれからもっと激しくなるだろうが、

 

そこまで言うと長政は顔を綻ばせ…

()()()。お前ら生者にはその権利と義務があるんだからな。

満面の笑みを浮かべながら言った。

 

皆の身体が粒子になりかけ、俺の身体は灰のように霧散しつつある中、

 

「……うん、ありがとう、長政さん。私、頑張るよ!」

 

…ほう、良い目だ。正直俺に似ているとこが残ってるのは嬉しいやら悲しいやら。

ま、いいか。

 

「困ったら呼んでくれよ?何時でも駆け付けてやるさ。ハハハハ!」

そう言って三人を纏めて抱きしめる。まぁ、消えかけで多少不恰好だったが。

 

そうして俺の身体は散って行った。

英雄扱いってのはむつかしいが…

ま、俺達の生きた跡を見れた。

いやぁ、いい子達だったな。

 

ハハ…頑張れよ。

 




所長が救われた……!?

一方そのころ別世界にて。

「何か静かですねぇ~」

「そうだn!?ゴァア!?」団長withファイヤー

「何やってんだよ団長!」

「止まるんじゃねぇぞ…」キボウノハナー

狂化EX…彼は狂化の存在を感じさせない程には理性的だ。
だがつまり,それは生前からして狂っていたに過ぎず、
彼と親しくなればこそ、その異常性に気が付くだろう。
それは血と煙の中で確かに思い続けた唯一の感情。
家族への愛こそが彼の狂気そのもの。
故に彼と親しくなり、彼に家族と認められれば____


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