……一手遅かったらしい。
船に乗っていたヘクトールが黒髭を裏切り、聖杯を簒奪。
ヘクトールには女神さまを攫われ逃げられたと。
やられたね。
黒髭が何やらカッコイイ事を言ってるが俺にはそんなヒマは無い。
ヴァイキングの海図とヘクトールの向かった方向を計算して目的地を定める。
…海賊船?煩い、こっちは忙しいんだよ。
無造作に矢を放ち船体を吹き飛ばす。
幸いというか…航行力はこっちの方が高い。
直線で追うしかねぇか。
ドレーク船長の提案に乗り、嵐を突き進む。
ワイルドハントって奴か、悪かない。
この後幽霊船に出会い、攫われて石化されたテトラ船長…もといゼ〇ダ姫を救出し…あれ?
間違えた。
夢幻の砂時計は名作だと思います。
「アナタ随分と余裕ね!」
だってねぇ。この辺単調でさ。
ドレーク船長の乙女ボイスくらいしか見所さんが居ないんだもん。
幽霊船にビビる乙女ドレーク船長を鼓舞しながら嵐を超えた。
予想の五割増くらい反応生娘だった。ドレーク船長やっぱり彼氏いない歴=年…
ながまさ は めのまえが まっくらに なった!
閑話休題。
まぁさ。ヘクトールに追いついたんだよ?
追いついた。
だがさ、
ヘラクレスが居るのは流石に予想外だわ。
「■▪■▪▪▪▪ーーーッ!!!」
「勝てないさ!勝てるものか!このヘラクレスはあらゆる場所であらゆる化け物と戦った。
敗北などなく、最後には神にまで至った男!それがヘラクレスだ!」
知ってるよ!十二の試練に射殺す百頭!
話せば話す程馬鹿らしい、
ぼくのかんがえたさいきょうのえいゆう様だよな!イアソーン!!!
しかも竜牙兵邪魔!ああもう。
一度武器をしまい、どこかの大学を彷彿とさせるタックルで船から叩き落とす。
面妖な変態
女神さま奪還したんだからさっさと逃げるぞ!
ここが正念場だ!押し返せ!
……とは言えだ。
「■▪▪■▪▪▪▪▪!!!」
コイツをどう処理したものか。
今のとこはギリギリ捌けてる。だが、正直もたないな。
…ッ!しまった!エウリュアレ!
突然ターゲットを変えたヘラクレス。
エウリュアレをその斧剣で叩き潰そうとする。
それを止めたのは、一人の
アステリオスはその剛力でヘラクレスの命を一度奪った。
しかし、未だに張り付いて動かない。
驚いた。筋力でアレに張り合うか。
「ころ、した、ころした、ころした、ころした!なにもしらない、こどもを、ころした!
ちちうえが、そうしろって。ちちうえが、おまえはかいぶつだからって!
でもぜんぶ、じぶんのせい、だ。きっとはじめから、ぼくのこころは、かいぶつだった
でも、なまえを、よんでくれた。みんながわすれた、ぼくの、なまえ…!
なら、もどらなくっ、ちゃ。ゆるされなくても、みにくいままでも、ぼくは、にんげんに、もどらなくちゃ…!」
アステリオス…お前……
「ますたぁ、も、なまえ、よんでくれた。みんな、かいぶつだと、きらわなかった!
うまれて、はじめて!うまれて、はじめて、たのしかった…!
ぼくは、うまれて、うれしかった!
えうりゅあれを、よろし、く…!ぜんぶ、えうりゅあれの、おかげ、で――」
ぼくは、えうりゅあれが、だいすき、だ!
次の瞬間、アステリオスはヘラクレス諸共ヘクトールの不毀の極剣に貫かれる。
不毀の極剣のランクはA。つまりヘラクレスをも殺しうる。
これで漸く二度命を奪った。
しかしだ。
アステリオスを犠牲にして漸く二回。
大英雄にはまだ十一の命がある。
そして
………アステリオス。
良い男だよ、お前は。
ホント、残念だ。
だが、安心しろよ。
お前の心意気はしっかりと受け取った。
市ちゃん。悪いが、所長達を頼む。
ん?まさかぁ、死んだりしないよ。
もしかして俺が負けると思ってる?残念だな、ハハッ。
信用してくれよ。必ず戻って来る。
だから錆びないように武器は預かっといてくれよ。
所長ちゃん、そんな顔すんなよ。
「!」
「……別に奴らを倒してしまっても良いんだろ?な?」
そして俺は不毀の極剣を拾い上げ、ヘラクレスに向き直ると。
「お前には水底がお似合いだぜ!」
そう言ってヘラクレスを海に叩き落とした。
これだけじゃ時間稼ぎにならんからな。
槍を持ったままアルゴノーツに逆に乗り込む。
『悉く簒奪せし塵魔』、んーいい武器だね。
ヘクトールの宝具 不毀の極剣を俺の宝具として上書きする。
ちょうどその頃黄金の鹿号が撤退を始めた。
良いねぇ、退路の無い戦いってのも悪くない。
「はぁ!?何なんだお前は!?こんな事をして何になるんだ!?」
分かんないか、ま、分からなくてもいいさ。
俺に変更はない。
安っぽい言い方だけどさ、アンタらには消えて貰わないとならない。
……ま、やるんなら本気でやろうぜ!その方が楽しいだろ!?ハハッ!!!