こうして、謎の老人『ミゼーア』と市の義姉にあたる『濃姫(帰蝶)』。
そして家主の『ジギル』。
この三人と合流する事に成功したカルデア一行。
しかし長政とは以前はぐれたままだった。
「お茶のお代わりは?レディー。TWGのジャスミンなど……ああ失礼、コーヒーがお好みでしたな。」
……いや、結構。そうとしか言えなかった。
困惑していた。イギリスの食べ物がまさかマトモに食せるとは。
「結局の所、肝心なのは調理法なのですよ……」とはミゼーアの談。
にしても……他の二人はともかく、貴方は誰だ?
一応名の知れた英霊ならば一通り知っているつもりだったが、その中にミゼーアなる英霊は居なかった。
「今の私は所詮枯れた老執事。知らぬのも無理は有りませぬよ。
ああ、お市様、お茶はいかがで?フォートナム&メイソンのアールグレイが入りまして。」
p.s 何故か通信が繋がらない。腹立つ。
というかフォートナム&メイソンはともかくTWGは2008年創設の筈なのだが……?
………皆が寝た真夜中。老人は一人部屋を抜け出す。
「………あんまり無理はしないでね?」
もう若く無いんだから。と帰蝶はカラカラと笑う。
奥様に心配して頂けるとは、至極恐悦の極み。
勿論、少々フラリと出歩くだけ___では無いのだが。
心配無用。とばかりに刀を腰に提げ、霧の中へと消えて行った。
詳しくは数えていないが、およそ三十から四十の人形を屠った頃だろうか。
ドカーンッ………!!!メッキャァ………!
静かな街におよそ不釣り合いな轟音が響く。
誰かが戦闘を行っている?
……やれやれ、静かな夜に無粋極まりない事だ。
そう思い当たり、音の出処に向かう。
対峙するは少女と男……魔術師。
…少女の方も純粋な人間では無いと感じるが。
無論加勢するは少女の方。
執事たるものレディーファーストは当たり前なのだ。
「お嬢さん、どうやら分が悪いようで。恐縮ながら逃走をオススメ致します。
この道を真っ直ぐに、三本目で右折なさって下さい。」
少女の元に駆け寄り、迫る魔弾を撃ち落としながら告げる。
「ヴゥ……?」
言葉を発せないのか、唸り声でもって返す少女。
電力消費が思わぬ激しく、出力が低下し始めていたフランからするとまさに渡りに舟だったのだろう。
素直に言われた方向へと駆け出す。
「さて……貴方はどうやら先程のお嬢さんとは違い招かねざるお客様だと推定致します。
故、これ以上の詮索、介入は賢い行いでは無いと心得の上、どうか一度再考をご検討下さい。」
返答の代わりに飛来する魔弾。
どうやら交渉の気は無いとみた。
残念だ。なるべくは交渉で解決したい物なのだが。
まぁいい。
交渉決裂ならそれはそれで分かりやすい。
「掃除は執事の仕事に間違い有りませんからね。皆様の安眠の為にも。
…ここでお隠れ遊ばして頂きたく存じます。」
そう言って老人は魔術師を蹴り飛ばす。
しかし魔術師は即座に反転、魔弾を高速で射撃し、距離を取る。
悠々とそれを回避した老人は太刀を引き抜き、最速を持って迫る。
「ッ………!!!」
点や線の攻撃は当たらない。ならば。
面を持って制圧する。
宝具・
アゾット剣の原典にあたるそれは刀身の全てを超々高密度の賢者の石で構成された魔術礼装。
刀身の魔力によって瞬時に儀式魔術を行使し、五つの元素を触媒に用いることで、一時的に神代の真エーテルを擬似構成し、放出する事が可能。実体化する擬似的な真エーテルはほんの僅かな一欠けらではあるものの、恐るべき威力で周囲を砕き、四種のエレメンタルと完全同期させれば対城宝具に比肩する破壊力すら一時的に発揮できる。
あっさりと魔弾を回避し、インファイトを挑んで来る老人を明確な敵と認識し、街道一体を巻き込む攻撃で倒す。
そう魔術師__サーヴァント、パラケルススは考えていた。
即座に術式を組み立て、不可視の壁を作成。
これを越えられる前に宝具を展開する。
引き抜いた魔剣に魔力を充填、後十秒。
壁を破壊された、後五秒。
間に合う___そう断じたパラケルススはしかし。
舐めていた。
ミゼーアと言う老人を。
__縮地。
それは、古来から
上体を振らさず、投げ出すように踏み込み、迫る。
縮地の弱点は踏み込み後に力を込めにくいという点。
故に大抵は投げ技や、武器術と組み合わせて使う。
勢いのまま、太刀でパラケルススの身体を貫き、返した刃で唐竹割りに両断する。
余談だが、パラケルススは五元素と四種のエレメントを使いこなせる。
つまりどういうことか?
「……………
それも、魔力を含んだ霧が有るのだ。
画してパラケルススの魔剣はロンドンの街道を引き裂き、
窓を叩き割り石壁を破砕し街灯を捩じ曲げて一帯を吹き飛ばした。
ガラスの破片舞う中、パラケルススは勝利を確信した。
しかし、あの少女、フランケンシュタインの怪物は逃がしてしまったな。
霧の様子から探知を図ろうか_____その思考は途中で閉ざされた。
最期にパラケルススが見たのは首の落ちた自らの身体と___
傷一つ無い姿で太刀を振るった老人の姿だった。
「…駄目ですよ、私どもを相手取るならば、大規模な破壊は不味い。
もし次回があるならば、球体の中に閉じ篭もるのですな。」
角張ったガラスの雨を背景に、老人はそれだけ呟くと、興味無さげに視界を外した。
「先程のレディー…フランケンシュタインの怪物?でしたかね。
お一人で行かせる訳にも行きません。エスコートせねば。」
それこそが
そして、気づいた時には老人の姿は掻き消え、辺りには戦闘跡と静寂が残るのみとなった。
今回ヒント多いな。
フォートナム&メイソン TWG
高いお茶屋さんだと思ってくれれば。
TWGのジャスミンは無茶苦茶高いですが美味しいです。
シンガポールに行く機会が有れば是非。