鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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注意・今回のお話スラング多め。口が悪いのう…

プロローグだけ投げときます。


鬼は眠り、世界は廻る

…………ハハッ。

やろうと思えばやれるもんだ。

現代の戦場は一人の英雄を一発の銃弾で素人が殺せる。

だから英雄など生まれない___と聞いた事がある。

しかしだ、俺がやった事は一つの本に出来そうだなぁ………

まぁ、英雄譚と言うには血生臭いにも程があるが。

 

後悔は無い。

アイツを守る為なら俺はそれこそ鬼にでも悪魔にでもなってやろう。

一人を守る為にこれまで何万と殺したが、誤差に過ぎんさ。

俺の家族と赤の他人。どっちが大切かなんて議論するのも億劫だ。

どうだ?お偉いさんよ。

舐め切った相手に殺される気分は。

 

ハハッ、悪かないだろ?俺たち底辺みたいに地べたを這う気分ってのも。

趣向を凝らして歓待してやってんだ。ちったぁ喜んでくれよ。

 

「…貴様!こんな事をしてなんになると言うのだ!?」

 

なんになる…ねぇ。

さぁな。俺にも分からん。

 

強いていうなら憂さ晴らしだな。

テメェらが契約を切って裏切ってくれやがるモンだから俺ァ今にも死にそうだ。

後は…リスクシューティングって奴だ。

お前らは俺の家族に手を出すと言う。

…馬鹿なこった。そんなんが嘘っぱちなのはお見通しだよ。

だが、それがアイツの将来に僅かばかりでも陰りが出来るかもしれないなら…

俺は命懸けでそれを断つさ。それが兄貴として俺がアイツに出来る唯一の愛情表現だからな。

 

prr!prr! prr,prr!

 

……ん?

おいおい、携帯はマナーモードにしとけよ。常識だろ?

ハハッ、睨むな睨むな。冗談だ。

 

『……こちらヤシャ。今更何の用だクソガキ共。』

 

『ッ!繋がった!!!先輩!今何処に居るんですか!?』

 

『あ?……そうだな、首都官邸?大統領だとなんて言うべきだ?分からん。』

 

『どうしてそんな所まで!?…カッコつけて死ぬ気ですか?馬鹿なんですか先輩!』

『そうだ!人に散々死なねぇように言っておきながら真っ先に死ぬんじゃねぇぞ隊長!』

『只今現在の位置と所要時間を計算しています。推奨・生還の為に最大の努力を、司令官。』

 

あーあー、うるせぇな。

耳がキンキンしちまうよ。

 

生還は無理だ、弾が無ぇし、銃はオシャカ。しかも正直もう眠くて仕方ねぇ。

 

『先輩!』『隊長!』『司令官。』

 

喧しいんだよ!!!

たかだか一人死ぬくらいで泣き喚くんじゃねぇよ!

こっちは戦争してんだ、人の生き死になんか日常茶飯事だろうが。

何時まで()のケツ追っかけてる気だガキ共!

テメェらはカルガモかゲイか?俺にそっちの気はねぇ、諦めな。

 

「ハッ、感動的だな。」

そうかい?そりゃ有難い。

「貴様のようなイレギュラーがいようが、私にこの国と権力がある限り!貴様にも!お仲間にも!未来など有ると思うな、下賎な傭兵風情が…!」

………ほう、今俺に殺されかけて床を舐めてる権力ねぇ。

面白い。じゃあこうしよう。

『…こっから先は俺からお前らへの依頼だ。反政府軍に助力してこの国ぶっ潰せ。

…ああ、弾代は気にするな、全部持ってくれるとよ、大統領さんがな。』

元々内乱が起きて傭兵に頼るような政府。

頭を失ってどの程度持つかな?ハハハハッ……

そんな顔するなよ、最高の余興だと思わねぇか?

残念だ、俺も見たかったぜ、アンタの嫁さんや娘が()()()群衆にファックされるのをよ。

 

ハハハハハハハ『先輩!』ハッ……………ああクソ。最後に馬鹿らしくなってきた。

テメェら耳の穴かっぽじってよく聞け。PMC『巣』司令官として最後の命令だ。

『俺以外全員欠けることなく生還しろ…繰り返す。必ず生還しろ。いつもの掟通りだ。

絶対に死ぬな。もし死んだら俺がお前らをブッ殺す。いいな?』

 

『…』『…』『…』

 

…返事!

 

『………』『…ッ!ウィルコ!』『……ウィルコ。』

 

なら良い。通信を終了する。

諸君らの奮闘に期待する。

 

 

 

 

 

 

「…別れは済んだかね?もうじき私の私兵が来るが。」

うっせ、まーだガキばっかで世話が焼けるぜ。

ハァ、拾ってくるんじゃ無かったな…

アイツらにも戦い以外の道があったかもしれないのに。

 

『…先輩。』

……(レイヴン)、まだ切ってなかったのか?…湿っぽいのは無しだぜ?

 

『本当に脱出は出来ないんですか?』

無茶言うなっての、ここに来るまで何十発撃たれたと思ってやがる。

下半身の感覚が無い、今回ばかりは強心剤でもどうにもならん。

 

『……好きでした。あの日からずっと、貴方の事が。』

 

………マセてやがるなぁ、まだまだ子供の癖によ。

ハハッ…スマンな。生憎俺は幼児性愛者(ロリコン)じゃないんでな。

 

『ッ…………!!!』

 

それに今、俺に言ってどうなるよ。勿体無い。

その言葉はいつかお前にも出来る大切な誰かに取っておきな。

 

 

………足音だ。悪ぃ、お客さんがいらっしゃるんでな。

()()()()酒でも飲むか、良い店探しといてやる。

 

『約…束……ですよ?』

おうとも、俺は嘘はつくが約束は守るぜ?

一足先に地獄で待っててやるよ。たっぷり遅刻してこい。

それでのんびり聞かせろよ、この後先お前らが辿った軌跡をや。

 

んじゃ、切るぜ。またな。

 

『…ええきっと早死した事を後悔させてみますよ、先輩。…烏、アウト。』

 

 

 

 

「武器を捨て腹這いになって降伏しろ!」

 

おーおーそんな躍起になるなよ、発情期か?

武器なんて出さねぇよ。弾もねぇし相棒なんてほら、バレルがガタガタだ。

最新モデルをカスタムしたんで世界に一つしか無いんだぜ?

 

わっとっと、わーった、分かったって、別にお前らを殺そうってワケじゃない。

煙草くらい吸わせてくれよ……あ、ライター。誰か火貸してくんね?ダメ?

…じゃあしょうがない。自分で付けるよ。

「舐めやがって…」

 

…ほう?撃つ気か?その銃で?セーフティがかかってるぞルーキー。

 

「ルーキーだと!?俺はこの道三年のベテランだ!」

 

ルーキーじゃねぇか。おい…

 

「動くな!…………?」

兵士はつい安全装置を確認してしまった。

時間にしてほんの僅かな隙。しかしそれこそが致命的だった。

 

バレルを跳ね上げ射線を遮りつつ捻り引き、銃を奪う。

同時に関節部に打撃を加え体勢を崩し、感覚器に銃床を叩き込んで無力化する。

 

とは言え、後十数秒もすれば数多の兵士が部屋に入ってくるだろう。

問題はない。既に仕掛けは済んでいる。

満足気に煙草に火を付け、紫煙を曇らせる。

…最後の一本だったか丁度良い。

最期に一息大きく吸い込むと同時に敵兵が雪崩込む。

その姿を見て男は不敵に嗤いながら呟く。

 

「よう、クソ野郎共…………派手な葬式はお好みか?」

 

全身を余すこと無く撃ち抜かれる刹那___指先から放られる焔が何かに衝突する。

 

一拍遅れて、爆煙。

 

____あーぁ。葬式はこじんまりと、身内の何人かだけでやってもらいたかったんだがなぁ…

まぁ、いいさ。こんなのも悪くない。

じゃあな、クソ共。地獄まで付き合ってもらうぜ。

じゃあな、クソガキ共。もう二度と逢わない事(またいつか会える日)を祈ってるぜ。

 

 

 

じゃあな、■■…せめてお前だけが幸せになってくれりゃ。

それだけで俺は……

 

 

撃ち込まれた弾の衝撃と炎の熱、そして降り注ぐ瓦礫を感じながら俺の意識は闇に飲まれていった。

 

 

…愛してるぜ。

 

 

故にその言葉が、ヤシャと呼ばれた傭兵の最期の言葉が本当に発せられたのか、

誰に対して言われたのかは誰にも分からない。

この事件にて幾つもの命が潰えたが、

殆どの人間はそんな些事など知らずに生きていく。

 

今日も世界は廻り続ける。

 

 

人理定礎値A+
第五特異点

 

 

 

 

A.D.1783 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

鋼鉄の鬼兵

 




……起きよ。












…起きよ、傭兵(野良犬)












…とても面白い人生を送ったのだな。
面白い…実に愉快よな。


………気に入ったぞ、傭兵。


貴様を我が下僕にしてくれよう。
クハハハ…勿論タダとは言わぬよ。

貴様の遺した家族、その幸福は保証しよう。
どうだ……ハハハ、そんなにがっつくな…愛い奴よ。

良かろう、これより貴様は我が下僕だ。
………褒美をくれよう、傭兵。
貴様に与えるのは……そうだな……








無限に続く闘争を、貴様に。

期待しているぞ?兵士(首輪付き)

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